/e/ の発音

 今一度、前舌母音の舌の位置の関係を見ることにしましょう。

front vowels

 左の図を見て分かる通り、「前舌母音」と呼ばれる5種類(/i/を加えれば6種)の母音は、舌の位置が段階的になっています。舌の位置が高いほど、舌の筋肉に力が入っており、それを「緊張した音」といいます。舌の力が抜けるに従って、その位置も下がり、それは顎の開き具合とも連動します。

 すなわち /iː/ の音で最も舌に力が入り、位置が高く、顎の開きが狭く、唇の両側が左右に強く引かれています
 逆に /a/ の音で最も舌の力が抜け、位置が低く、顎の開きが大きく、唇の両側を左右に引く筋肉の動きがありません
 そしてその2つの両極端の中間に、/ɪ/, /e/, /æ/ が等間隔に分布していると考えればよいわけです。特に専門的に発音を訓練する人は、口の中に箸やスプーンを入れて、舌の高さの段階を確認して覚えたりさえしますが、一般的にはそこまでしなくても感覚的に「一番上、やや上、中間、やや下、下」という5段階をイメージすればよいでしょう。

 今回学ぶ発音は、記号としては普通のアルファベットの e と同じですね。 これも日本語の「エ」で代用して意味の理解に支障はきたしませんが、英語本来の音としては、上右の調音点表を見て分かるとおり、もっと前、もう少し上で出される音です。日本語の「エ」より意識的に口の左右を引き気味にして発音してください。舌の位置としては、 / iː/ より舌の位置は低めです。簡単に言えば「 はっきりとした『エ』の音を出す」という感じですね。

 先ほど / iː/ と対象させて / ɪ / を練習しましたが、今度はこちらの / e // ɪ / を対象させてその区別をしっかり認識するようにしましょう。

   
pit / pɪt /
petペット / pet /
 
sit座る / sɪt /
set据え付ける / set /
 
mittミット / mɪt /
met会った / met /
 
pinピン / pɪn /
penペン / pen /
 
disc円盤 / dɪsk /
desk / desk /

 なお、/e/ の下に /ɛ/ という記号がありますが、pen などの母音は、もともと /e/ で発音されていたのが、特に最近のアメリカ英語では口の開きが大きめに変化してきており、pen の発音を /pen/ と表記する辞書もあれば、/pɛn/ としているものもあるようです。アメリカ英語を中心に解説している EnglishCentral のビデオでも /e//ɛ/ の記号が使われてます。

 このサイトでは pen の発音を /pen/ と表記し、/ɛ/ の記号は /ɛɚ/(air) といった重母音の中で用いています。/e/ だった音があとに続く別の母音に以降しやすいように、あらかじめ口の開きが大きめに発音された結果なのですが、/e//ɛ/ に関してはあまり神経質になる必要はありません。なぜなら英語ネイティブでもこのあたりの区別は厳密ではなく、年代差、地域差、個人差が見受けられるからです。



 
/ɛ/(=/e/)の発音

 それではまた EnglishCentral の動画を使ってさらに練習を重ねることにしましょう。

 左のサムネイルをクリックすると動画プレイヤーのウインドウが開きます。操作の要領については「EnglishCentral動画使用法」を参照してください。

  • スクール(Round-EC Language Instutute)の受講者の方は、ブラウザの別タブであらかじめ EnglishCentral にログインしておくと、埋め込み動画での学習が記録されます。
  • スクールに関する情報は、「 Round-EC Language Institute」のページをご覧ください。


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/ʊ/, /u ː/, /u/ の発音

pronunciation OO

 / ɪ // iː/ が音の長さだけでなく質も違うということを述べましたが、今回の /ʊ//uː/ もやはり、音の質に違いがあります。

 調音点として /ʊ/ と日本語の「ウ」はかなり近い位置にあります。上図(左右とも)を見ていただくと分かりますが、/ʊ/ の音は /ɑ/ の顎の開きが小さくなったもの。それに対して /u//ɒ/→/ɔ/→/o/→/u/ という並びの中にあり、言うなれば「オ」の口の丸みを非常に狭くした音です。

 この2つの母音を区別する上で意識すべきなのは、/ʊ/ は「ア」の仲間であり、顎の開きの大小の違いであるの対して、/u/ は「オ」の仲間であり、口の丸みがその音を特徴づける重要なポイントです。

 /ʊ/ の発音では口を丸めることを意識せず、顎(口)の開きを小さめにしつつ、舌の後部を高くして発音されます。

 /u/ の方は、唇を丸くすぼめることを意識します。この発音でさらに唇を小さく丸めるともう母音ではなく、子音の /w/ になるわけです。唇を小さくすぼめるということは頬や唇の左右の筋肉に力が入りますので、特にアクセントのある場合や長母音 /uː/ として現れる場合に、/ʊ/ との音質的な差が際立ってきますが、アクセントのない /u/ はそういう頬や唇の緊張が弱まるため、/ʊ//uː/ の中間的な音として発音されることが多くなってきます。

  / uː / の音は調音点図で見て分かる通り、口の最も奥で、最も上に調音点があります。つまり口の中の容積は広げつつ(舌をまず全体にべったり下げる)、舌の付け根部分だけが盛り上がる形となります。唇の丸めは母音の中で一番強く、これ以上丸みを強めると、もう子音の / w / の音になってしまいます。

 まだ英語が今ほど日本に浸透していなかった時代、外来語は主に耳から聞いた印象を文字にして書き表しました。だから古い外来語と新しい外来語で文字使いが変化した例もあります。たとえば machine という単語は、最初 ミシンに聞こえ、それが裁縫の用途のミシン(sawing machine)として定着し、machine というスペルをローマ字に近く読めるようになってからマシンという書き方が加わり、こちらは機械全般の意味に使い分けるという面白いことを日本人はしました。他にも glass は「ガラス」と「グラス」で材質と器の意味に使い分けますね。 cook( 料理人)という単語も、 / kuk / という発音なので今なら「クック」と表記されたところでしょうが、この単語が入ってきたときは「耳で聞いた印象」を文字にしたため、「コック」という外来語が料理人の意味として定着しました。このことからも / u / の音は日本語の「オ」に近く響くということが伺えるのです。他の例としては、 hook / huk / が現代では「フック」ですが、古い外来語では「ホック」ですね。

それでは / ʊ / と / uː / の音を含んだ単語の発音練習をしましょう:

 
book / bʊk /
look見る / lʊk /
cook料理人 / kʊk /
goodよい / gʊd /
 
youあなた / juː / (発音記号での j は「y」の音)
who /huː /
doする / duː /
use使用 / juːs /
※“you” や “do” には弱形と強形発音がありますが、ここでは強形発音で練習します
pull引く / pʊl /
pool水たまり / puːl /
 
full満ちた / fʊl /
fool愚か者、道化師 / fuːl /

full and fool




/ʊ/ の発音

 それでは EnglishCentral のビデオで /ʊ/ の練習をさらにすることにしましょう。

 このビデオの中では、/u/ との発音上の違いについても触れています。なお、EnglishCentral では長音記号を用いていませんので、 /u/ の記号は本サイトの /uː/ の音も含めて表しています。
 23のセリフのうち12番目の行で /u//ʊ/ を交互に発音してその違いを伝えています。その音声を聞くと /ʊ/ の方が「唇の丸めが弱い」ことがわかります。

/uː/ の発音

 こちらは発音練習に特化したビデオではありませんが、セリフのあちこちに /ʊ//uː/ が現れますんで、それぞれ青と赤の色をつけてあります。その箇所に特に注意して練習するようにしましょう。

(口語表現ワンポイント)
 6行目のセリフに「Come on.」という言葉があります。
 文字通りの意味は「きなさい」ですが、間投詞的に様々な使われ方をします。
 「そらいけ!」とか「がんばれ!」のような何かに期待しながら応援のように発することもあれば、今回の例のように「あらやだ」とか「何言ってるの」、「いい加減にしろ」、「冗談じゃない」のような、軽く相手の発言・行動を否定するようなニュアンスに用いられることもあります。

  1. Shh, you need to keep quiet in the library.
    しー。図書館ではお静かに。
  2. Sorry to bother you.
    迷惑かけてごめん。
  3. But I really want to know where Korean history books are.
    でも韓国の歴史についての本がどこにあるか是非知りたいんだ。
  4. What are you doing, Paula?
    何してるの、ポーラ?
  5. I'm getting ready to go to school, Mom.
    学校にいく支度をしてるのよ、ママ。
  6. Come on, it's Sunday today.
    あらやだ、今日は日曜よ。
  7. You need not go to school today.
    今日は学校に行かなくていい日よ。
  8. Jake, will you please put the water in the refrigerator?
    ジェイク、水を冷蔵庫に入れてくれる?
  9. Do we need to keep water cool all the time?
    いつでも水を冷蔵庫に入れておく必要があるのかい?
  10. Of course. Cold water keeps us cool in summer.
    もちろんよ。冷たい水があれば夏を涼しくすごせるでしょ。


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