子音 / θ /, / ð /

 この音は日本語にはまったく近似音さえない英語特有の音ですが、この音を含む the は英語で最も使用頻度の高い単語であり、これが正しく発音できず「ザ」や「ジ」で代用していると常に相手に「強い日本語訛り」によるストレスを与え続けることになります。是非、しっかりと習得してください。

consonant th/TH

 この発音は単語のスペルに「th」を含むのが特徴で、舌の先端を上下の歯の間に軽く挟んだ状態を作り、歯と舌の間に息・声を通過させる摩擦音です。しかし実際には、舌の先端を歯の間からわずかに出しながら、同時に舌の先端に近い面を上の歯から歯茎にかけて接触させるため、一旦息や声がせきとめられ、/ t/d /に似た聴覚的印象を与えることがあります。

 実際、この th を上手に発音できない英語話者もいて、俗語では / t/d /音で代用している例もよく見かけます。またそういう俗語的な発音を文字にまで表し、「the」が本来のスペルであるところを「da」と書いてあるものを見ることさえあります。もちろん、これは正式な英語ではないのですが、日本人が / θ / ð /の音を / s/z /で代用し、threeを「スリー」、thatを「ザット」と発音してしまうよりはずっと英語として通じやすいものなのです。

 数字の「3」を日本語風に「スリー」ということに比べれば「tree(木)」の発音でそのまま代用した方が通じますが、適切に上下の歯の間に舌先をはさみさえすれば /θ/ð/ の音を出すのはなんら難しいことではありません。

 この発音が苦手だと感じる人は、「口から舌を(少しですが)出す」ことへの抵抗をなくすこと(それが正しい音になるのですから)と、「舌を出した状態で発音」するというより「上下の歯の間に挟んだ舌を『抜くとき』に出る音」ということを理解してください。

無声音 / θ / を含む語の練習:

 thick / θík /厚い;太い
 three / θríː /
 thief / θíːf /泥棒
 path / pǽθ/ pɑ́ːθ/通り道
 month / mʌ́nθ/一ヶ月
 fourth / fɔ́ːrθ , fɔ́ːθ/第4
 cloth / klɔ́ːθ , klɒ́θ /

注意:

  1. monthの複数形は「months」で、ただ -s を添えるだけです。/ -θs /という語尾は発音しにくく感じ るかも知れませんが、「hit-hits」のような組み合わせが簡単に発音できるように、/ -θs /もただ舌先 を歯の間に一旦挟んでそれを引き抜きながら「ツ」と言えばよいのです。

  2. 「cloth(布)」の複数形「cloths」は / klɔ́(ː)θs/klɔ́(ː)ðz / 両方の発音が認められています。。

語尾が「 -ths / θs / 」の発音になる例も練習しましょう:
※名詞の複数形発音は、Oxford Advance Learners Dictionary に音声サンプルがありませんでしたので、別の辞書のリンクを使いました。単数形のページにリンクしていますが、その中に複数形の形と発音もあります。「three-fourths」については「fourth」のページの「fourths」の音声サンプルを参考にしてください。

 months / mʌ́nθs/monthの複数形 
 paths / pǽθs , pɑ́ːθs/pathの複数形 
 three-fourths / θrìː fɔ́ːrθs /4分の3(4分の1が3つ)
 cloths / klɔ́(ː)θs / klɔ́(ː)ðz /cloth(布)の複数形

有声音 / ð / を含む語の練習:

 that / ðǽt /あれ;それ
 then / ðén /それから;そのとき
 those / ðóʊz /あれら
 smooth / smúːð /なめらかな
 mother / mʌ́ð-ɚ , mʌ́ð-ər /
 father / fɑ́ː-ðɚ , fɑ́ː-ðər /
 clothe / klóʊð /着せる

注意:

「cloth(布)」の複数は「cloths」ですが、「clothes」と書くと「衣服」の意味。clothes は close と全く同 じ / klóuz / と発音して構いません。つまりthを無視した発音でよいのです。/ klóʊðz / と発音する ことも間違ってはいませんが、むしろ使用頻度はあまり高くありません。

/θ/ の発音
/ð/ の発音

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子音 / l /

consonant l

 これまでは「無声音と有声音」がペアになった子音について学んできましたが、ここからはペアのそろっていない子音を学びます。
 英語の発音と言えばよく「日本人は R が下手だ」と言われます。しかし、よく考えてみてください。それならなぜローマ字の「ら行」には L ではなく R が使われているのでしょうか?

 よく「 R は舌をどこにもつけないで発音する。日本語の『ら行』は舌先を上歯茎につけるから L だ」という誤解を耳にしますが、日本語の「ら行」子音は、英語の L でも R でもないのです。しかし英語には日本語の「ら行子音」を表す文字がないため、「どちらかと言えばより近いと言える」Rでそれを表すことにしたのです。ということは、日本語の「ら行」子音は、英語の L からもっと離れているということですね。つまり英語のRを習得する以上にLの習得には注意が必要で練習を要するとも言えるのです。

 日本語の「ら行」子音は舌先が上歯茎に接触しますが、それは L のように強い力で舌の先端を歯茎に押し付けながら声を出すのではなく、舌先で上歯茎を「はじく」ようにして発音されます。この「はじき音」の R は、英語でもイギリスの一部の方言に見られるもので、音の種類としてはLではなく R に属するため、ローマ字では R が用いられたわけです。
 IPA(国際音声記号)で、日本語の「ら行」子音は /ɾ/ (単顫音[たんせんおん]=はじき音)という英語には用いられない特殊な記号で表されます。これはRの小文字 r に似ていますが、縦の棒がまっすぐ上に突き抜けてないという図柄上の違いがあります。もちろん、英語のアルファベットでこの音を表す文字はありませんので、Rによって「代用」しているのがローマ字で「ら行」にRを用いている理由です。

three kinds of Rs

 電話の音を表す擬音で「RRRRRRRRRRR」というのを英語の漫画などで見たことがあるでしょうか?これは舌先をぶるぶると振動させながら連続して上歯茎に触れたり離れたりを繰り返す音です。このような発音方法は「顫動音(せんどうおん=ふるえ音/ trill)」と呼ばれ、スペイン語やイタリア語などにも見られますし、ロンドンの一部でもこの音を使う方言があります。IPAでは上の図を見て分かるとおり、本来この「ふるえ音」に対して /r/ の記号が当てられており、英語特有の「舌先を上歯茎に接触させない」で発音されるRの音に対しては、別の /ɹ/ という、Rの小文字を上下ひっくり返したような特殊記号が使われています。

 ただ英語だけを学ぶ学習者にとって、ただでさえ日常的アルファベット文字と別の記号を沢山覚える負担があるところに、キーボードでタイピングもできない特殊文字をこの発音だけのために追加するまでもないだろうという考え方によって、多くの辞書(このサイトでもそうですが)は、英語のRの発音に通常のアルファベットのrを用いているわけでえす。(ちなみに本サイトが動画埋め込みなどで連携している EnglishCentral では、本来のIPAに則り、英語のRの発音にこの上下反転記号が用いられています。)

 一方、英語の「L」の音は、舌先を上歯茎(上の歯の付け根あたりか、上の歯に触れないぎりぎりの位置あたり)に「押し付ける」ように構え、下の両側から声が出て行くというものです。(だから「側音」と呼ばれます。)

I rub you

 /l/ を発音する際は、舌先を上歯茎にしっかり当てて声を出し、その声が自分の耳にしっかり入ってきたらその直後の母音を発音してください。日本語の「ら行」のように舌先を歯茎にぽんと当てるだけではなく、「押し付けたまま」声を出すのです。この要領で発音された La, Li, Lu, Le, Loは日本語の「らりるれろ」と随分印象が違うことに気づくでしょう。このように英語のL音が綺麗に聞こえるコツは、「少し長めにLの音を出す」ことです。Lの発音時間が短すぎると、舌と歯茎の接触が「はじき」になってしまうため、「d」や「r」の音に聞こえてしまうことがあります。つまり日本語感覚で「I love you.」と発音すると英語話者の耳には、「I rub you.(私はあなたをこすります)」に聞こえているということなんです。

 なお、この発音要領は「L音が音節の最初に来る」場合のものです。L音が音節末尾に来ますと発音の仕方が違ってきますので、その解説はあとに回し、まずL音が音節の最初に来る例で練習しましょう。

/ l / 音が音節の最初に来る単語の例:

 love / lʌ́v /愛;愛する
 lucky / lʌ́k-i /幸運な
 leave / líːv /置いていく
 alive / ə-láiv /生きている
 clock / klɑ́ːk , klɒ́k /置時計・掛時計
 black / blǽk /黒;黒い

 さて、/ l / の音が音節の最後に来ると上記の要領と違った発音となると言いましたが、どのような違いがあるのでしょうか。

 これまで説明した「音節の最初にくる L 」が、「 Clear-L(明るい L )」と呼ばれるのに対して、「音節の末尾に来る L 」のことを「 Dark-L(暗い L )」と言います。この Dark-L「舌先を歯茎につける」とかつかないを意識するより、「ただ口を丸めて終わる」だけでよいのです。まるで子音ではなく「オ」か「ウ」の母音が発音されたような印象を与えます。

 例えば「people」という単語は「ぴーぼー」のようにきこえるでしょうし、hospitalは「はすぺろー」、apple は「あぽー」、table は「ていぼー」ように聞こえることでしょう。それでよいのです。この Dark-L に関しては、「唇を丸めて終わる」という要領を守りつつ、あとは音声サンプルの聞こえを真似て習得するのがよいと思います。

Dark-L で終わる単語の練習:

 salt / sɔ́ːlt /
 meal / míːl /食事
 fail / féɪl /失敗する
 male / méɪl /男性;男性の
 snail / snéɪl /かたつむり
 people / píː-pl /人々
 apple / ǽ-pl /りんご
 table / téɪ-bl /テーブル
 uncle / ʌ́ŋ-kl /おじ
 ankle / ǽŋ-kl /足首
 beautiful / bjúː-tə-fl /美しい
 hospital / hɑ́s-pi-təl, hɒ́s-pi-təl /病院

注意:

  1. people の発音記号を見て「おや?」と思った方はいませんか?これまで「音節は母音の数だけある」と言ってきたのに、people, apple, table, uncle は母音が1つしかないのに2音節ですね。これは Dark-L が半母音という性質(母音の性質を帯びた子音)を持つため、まるでそこに本当の母音があるかのように音節を作ってしまうためです。現実の発音としては、スペルに母音文字がなくても Dark-L の直前に「曖昧母音」が自然発生してしまうと考えてもよいでしょう。(「beautiful」の第3音節などは、「-ful」ともともと母音があり、それがアクセントのないことで弱形化し曖昧母音となり、それがさらに 脱落したというものですから音として曖昧母音が出ていても不思議はないわけです。)

  2. 曖昧母音が完全脱落したあと、母音なしで音節を構成できる子音には /l/ と /n/ があります。

/l/ の発音


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