三重母音

 二重母音の数をいくつと考えるかについては、アメリカ英語での /ɚ/ の音を母音として考えるか、そこに子音の /r/ があると見なすかによって異なりました。その考え方の違いが、そのまま三重母音の数をいくつと見るかについても当てはまります。

 本書では、英米ともに2つの三重母音があると見なして解説しますが、/aɪɚ/, /aʊɚ/ の末尾の母音 /ɚ/ を子音 /r/ に過ぎないと見なせば /aɪr/, / aʊr/ と表記されることとなり、これらは二重母音に含まれますので、「アメリカ英語に三重母音はない」という考え方もあるわけです。

 一方イギリス英語では、/aɪər/, /aʊər/ という音の並びとなるため、末尾の /r/ が後に続く母音とリンクしてもしなくても、三重母音であることに変わりはありません。

vowels

 三重母音でも音の中心は最初の母音です。/a/ の音をまずはっきり明確に発音し、その直後に第2母音を短めに添えてから舌の緊張をふっと抜いてやります。その際舌を /r/ の位置に構えていればアメリカ英語、/r/ の音色を帯びない曖昧母音 /ə/ とすればイギリス英語となるわけです。

 すでに述べました通り、二重母音にしても三重母音にしても、「その音のまとまりで1つの母音」だという意識を持って発音することです。2つや3つの母音を並べて発音するのではなく、「1拍(=1音節)の中に収めて発音」する要領が大切です。

 /aɪɚ/ の音を含む語
 • fire /faɪɚ/  
 • wire /waɪɚ/ 針金
 • tire /taɪɚ/ 疲れさせる
 
 なお、「liar」という語は発音表記として /laɪɚ/ になりはしますが、これは「lie(嘘をつく)」という動詞に 人を表す語尾の-ar(=-erのバリエーション)が接辞されたものなので、li-ar /láɪ.ɚ/ という2音節語です。 従って「二重母音音節+単母音音節」という組み合わせなので、三重母音を含む語とは見なしません。
 
 /aʊɚ/ の音を含む語
 • our /aʊɚ/ 私たちの
 • hour /aʊɚ/ 時間
 
 liarが「li-ar」の2音節であり、三重母音で1音節になっているのではないのと同様、以下の例も2音 節に分かれていますので、/aʊ.ɚ/ という音の並びではあっても三重母音ではありません。通常は発音記 号の表記の中で音節の切れ目を示すことはしませんが、ここでは便宜上「.」でそれを示します。(そこで音を切るという意味ではありません)
 
 flower (flow-er) /fláʊ.ɚ/
 power (pow-er) /páʊ.ɚ/
 tower (tow-er) /táʊ.ɚ/
 coward (cow-ard) /káʊ.ɚd/ 臆病者

flower と flour

※現実問題として、たとえば「花」の「flower (flow-er:2音節)」と「小麦粉」の「flour(1音節)」とで、発音上の区別がされているかといえば、「同じ発音」だと言えるでしょう。もともと「花」と「小麦粉」はまったく同じ「flower」のスペルだったものが、意味上の区別をするために19世紀に入ってから「flower / flour」と書き分けるようになったものです。つまり「元は同じ単語」であったわけですから、読み方の区別もされていなかったわけです。それがスペルの上で「flow-er」と「flour」の違いが音節数の差に反映されることとなりました。

 英語の詩では、行末の音をそろえる「脚韻」というものが用いられますが、「flower」の末尾音節は「-er /ɚ/ 」だけであるのに対して、「flour」は「-our /auɚ/ 」という違いがあるため、厳密にはこの2つの単語は「韻を踏んでいない」とされます。しかし、実際の発音に差がないため、しばしば「flower」が /auɚ/ の韻を踏んで用いられるようです。

 様々な母音の中でも特に三重母音は、その存在を認めるかどうかで意見が分かれるところがありますので、あまり神経質になりすぎる必要もありません。本来「音節」というのは「聞こえの単位」であるはずであり、「flower」を「flow-er」という2拍で、読むという意識があってしかるべきところなのですが、「二重母音+単母音」という、子音を間に挟まない母音だけの並びであるため、耳で聞いた印象も、それが2拍(二重母音+短母音)なのか、1拍(三重母音)なのか、その区別は極めて微妙、あるいはまったくありません。。

ページトップに戻る



 
flour の発音

 今回のビデオは全体でもわずか1分16秒ですが、前半と後半に分かれています。前半は、同じ母音を含む単語を4つ簡単な例文で練習します。

 後半は「Jazz Chant」といって、心地よいリズムに乗せて易しい英語の詩を読むものです。日本語とはまた違う、英語特有の「強弱リズム」の現れ方に注意して練習してください。この中に flour という単語も出てきます。

 「子供向け」といってなめてかからないように。この種の強弱リズムに十分なじむことは、発音・聞き取りのどちらにとっても大変重要なことなのです。日本人は感覚的に「宴会調の表拍子」で手をたたいてリズムを刻みがちですが、英語圏の言語リズムはもともとジャズ的な「裏拍子」なんです。下のスクリプトの13行目からが Jazz Chant ですが、ビデオを見る前に、自分で 13~20行目にかけて音読してみてください。いかにもリズミカルで読みやすい調子の文だと感じるでしょうか?その後ビデオの音声に合わせて、英語という言語が本来持っているリズム感を吸収していただきたいと思います。

  1. Cube.
    立方体。
  2. I have a cube.
    ここに立方体があります。
  3. I have a big cube.
    とても大きな立方体があります。
  4. Dune.
    砂丘。
  5. I walked on the sand dune.
    私は砂丘を歩きました。
  6. I walked on the long sand dune.
    砂丘をはるばる歩いて行きました。
  7. Fuse.
    導火線。
  8. The fuse is long.
    導火線は長い。
  9. The fuse is very long.
    導火線はとても長い。
  10. Mule.
    ラバ。
  11. I see a mule.
    ラバが見えます。
  12. I see a mule at the farm.
    農場にラバがいるのが見えます。
  13. Flour, flour, we put in some flour.
    小麦粉、小麦粉、ちょっと小麦粉を入れます。
  14. Sugar, sugar, we put in some sugar.
    お砂糖、お砂糖、ちょっとお砂糖を入れます。
  15. Salt, salt, we put in a little salt.
    お塩、お塩、ちょっとだけ押しをも入れます。
  16. Eggs, eggs, we put in two eggs.
    卵、卵、2個の卵を入れます。
  17. Milk, milk, we put in some milk.
    牛乳、牛乳、牛乳を少し入れます。
  18. Butter, butter, we put in some butter.
    バター、バター、バターも少し入れます。
  19. We mix it up and put it in the oven.
    よく混ぜてからオーブンに入れます。
  20. Yum, yum, how yummy these cookies are!
    おいしい、おいしい、なんておいしい、このクッキー!


ページトップへ HOMEへ 次の項目へ

inserted by FC2 system