様々な音声学的現象

これまでの解説・練習で「母音、子音」といった個々の音素を習得しました。
ここからは単語、フレーズ、文章といった長い単位で、意味に即した読み方をす るポイントを学びます。

 なお、ここから先の発音関連の項目は、ビデオによる講義形式となります。ビデオは20分程度から長いもので30分ほどまでありますが、一緒に練習できる構成になっています。あくまでも実技技能を身につけるためのものですから、単に知識として理解しようとするだけでなく、自分自身の発音技能の向上に結び付けてください。

 基礎音声学としての知識を整理したい方は、ノートを取りながらビデオを見ていただくとよいでしょう。

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音節を理解しよう

 日本語は基本的に「ひらがなの文字だけ音節がある」というシンプルな仕組みなので、英語の音節の成り立ちをなかなか理解しにくいかも知れません。

 日本語とはまた違う英語特有の言葉のリズムがどこから来ているのかを理解し、日本語の言語習慣からより脱却して、さらに自然で通じやすい英語となるために「音節」の理解は大変重要です。

 日本人の話す日本語がなぜ自然で「いかにも日本人らしい日本語」に聞こえるのか。「正確な音」を出すだけでなく「その言語が本来持つリズム」が聞こえの印象を大きく左右します。皆様はすでに発音記号の習得により「日本語にない英語の音」を出せるようになりました。次のステップとして、英語が持つ言葉のリズムを正しく理解し、自分でもそれを実現できるようになりましょう。

 「自分が出せる音は聞き取れる」という大原則についてはすでにお話しましたが、それは「母音、子音」という音の問題だけではなく、言葉のリズムについても同様のことが言えます。自分自身が適切な音節によって英語本来の言葉のリズムによって話せることで、そのリズムを使う英語話者の言葉の聞き取りも容易になってくるのです。

 それではビデオを通じて「音節」を完全に理解していただきましょう。

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音の連結

 発音記号によって「どんな音を出すか」を学び、その基礎の上に「どのようにしてその音を出すか」という発展的内容を学んでいきます。

 発音記号を習得し、音節を理解できましたので、皆さんは「単語」の発音については正しく自然な発音要領をすでに身につけたことになりますが、2つ以上の単語がつながったフレーズになると単語と単語を連続的に発音するために理解しなければならない重要なポイントが3つあります。それが:

  1. 音の連結(Linking)
  2. 音の脱落(Elision)
  3. 音の同化(Assimilation)

 です。自分が知っている単語しか使われていない英語ネイティブの会話がなぜか聞き取れなかったりするのは、単語を連続的に発音するときの英語特有の「音声学的現象」に慣れていないことが原因です。

 「自分の出せる音はすべて聞き取れる」という原則に則り、上記3つの現象について、まず自分の口で言えるようになりましょう。その上達によって同時にリスニングの技能も確実に伸びてきます。

 知識・情報の体系的な 整理・理解のため、ここからは少々、堅い音声学用語も出てきますが、用語を暗記しようとするより、それによって表される「実際の現象」自分の発音でもできるようになってください。

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音の脱落

 前の単語の末尾の子音と次に続く単語の最初の子音が同じ場合、2つの子音を2回に分けて発音するのではなく、1つにまとめた要領で発音されます。この現象を「脱落(Elision)」といいます。

 正しい音声学的知識を持つことで、自分の発音に根拠と確信が持てるようになります。ビデオの中で解説されている実例を自分でもよく練習してください。

 このような音声学的現象を1つ1つ習得していくと、これまでに比べて英文をより滑らかに読めるようになっている自分に気づくでしょう。英語ネイティブの音声を聞くときも、これまで学んだことが確かに実際の音声に反映されており、それを聞き取っている自分に気づきます。

 今までの内容を着実に学んでこられた方であれば、自分の技能の上達を実感しはじめる時期でもあります。達成感がもたらす喜びは、さらなる上達への意欲をもたらします。その意欲を大切にして今後の学習を継続してください。

 本ビデオシリーズの内容は、学習順序を綿密に計画して、ステップ・バイ・ステップにて無理なく習得できるように構成されています。「英語音声学」というと、どこか難解な学術的なものを連想するかも知れませんが、整理された知識に基づいて1つ1つの練習をしていけば、何も難しいものではないことがきっと分かることでしょう。

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音の同化

 2つ並んだ単語をスムーズに発音しようとして、前の単語の末尾と次の単語の最初の音のいずれか一方あるいはその両方の音の質が臨時変化することがあります。前の音が後ろの音に影響を及ぼす場合もあれば、後ろの音を出す準備の構えをするため前の音が予測的に変化してしまうこともあります。またどちらの音とも違う別の音が発生することさえあります。このような現象を「同化(Assimilation)」といいます。

 発音の上達は「英語という外国語の発音習慣」を新たに身につけることでもたらされますが、その習慣を確実に身につけるには「いつ、なぜ、どういう場面でそれが起きるのか」をよく理解、納得することが大切です。暗記したルールに従うのではなく、深い理解に裏付けられた根拠を背景に「自分自身の自然な欲求」が言葉に反映されたとき、本当の意味で「新たな言語習慣」を得たことになります。そのプロセスこそが本当の「慣れ」であり、その慣れによって英語が精神的距離の遠い「外国語」から「自分自身の言葉」へと取り込まれていくのです。

 これは発音に限らず、今後学ぶ「文法」に関しても同様のことが言えます。今、正しい発想、構えと順序により発音を習得していることが、文法を含め他の領域を学習するときにも「正しい英語の学び方」を一貫してつらぬける学習習慣につながっていきます。


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