実践を積もう

 「聞き流すだけ」では決して英語は上達しません。話す力も、聞き取る力も、まして読む力や書く力を習得できる期待はほとんど持てないことでしょう。

 しかし、「聞き流す」時間も確かに重要なのです。それは基本としての発音技能やリスニングの訓練もしっかり行った人が、「豊富な経験量」として、より多くの英語音声に触れる機会を得るという意味で、大きな価値を持ちます。

 インターネットのおかげで、英語教材としても価値的に活用できる豊富な英語音声素材や動画へとアクセスできるようになりました。よい教材ほど制作コストもかかっているものですから、何もかもを無料で済ませようとするのは虫が良すぎるとも言えるのですが、事実、すべて無料というサイトも存在します。

 また英語学習のためと狭く考えるのではなく、自らの「英語環境」を拡大するという視点にも立ってみてください。そうすれば、「英語学習者向け」ではない多くの音声・動画素材もまた、学習者側の姿勢1つで教材となります。

 英語圏への留学を望んでいる方も多くいらっしゃると思いますし、それが可能ならば大いに価値的な時間をすごし、貴重な体験を積んでいただきたいとは思いますが、今の時代、海外にいかなければ英語学習環境として不足か?といえばそんなことはありません。ある意味、日本国内ほど英語学習に最適な環境はないかも知れません。

 英語を学ぶのも大切ですが、コミュニケーションのツールとして活用されて始めて語学は価値を発揮します。ですから「英語”で”学ぶ」ということも忘れないでください。たとえばアメリカの小学校ではどんなふうに算数の授業が行われているのだろう?アメリカの大学で美術を学んだらどんなふうだろう?政治学を学ぼうか?心理学も面白そうだ。などまさに留学しなければ無理だった体験を積ませてくれる無料サイトもあるのです。

KHAN ACADEMY
https://www.khanacademy.org/

khan academy

 このサイトはもともと主催者が親戚の子供に遠方から家庭教師をするためにビデオに自分の授業を録画して youtube を通じて見せていたのが発端だと聞いています。それが拡大して、いまでは小学校の授業内容から大学の専門課程までを網羅する膨大なビデオがすべて無料で閲覧できるようになっています。登録は必要ですが、会費もありませんし、一切 の費用も発生しません。(ネット接続料とかは別ですよ)

 ただし「英語を学ぶ」ためのものではなく、「英語で学ぶ」サイトであり、「日本人の英語学習者の便宜」を図っているわけではありません。だからこそ、留学状態に自分を置けるといえます。留学したいと常日頃口にしている方は、このサイトを通じて、自宅に いながらにしてアメリカの大学にしばらく通ってみてください。その授業についていけないのなら、今留学してもお金の無駄です。

 また実際に留学しても、現地の小学校の授業を参観する機会はめったに持てるものではないでしょう。それがこのサイトでは小学校の算数の授業も英語で見ることができますので、この際、アメリカの小学校から順に擬似入学・卒業するというのも面白いのではないでしょうか。

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EnglishCentral
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 順を追って読み進められたこられた方は、すでにご存知のとおり、本サイトは、EnglishCentral という動画コンテンツによる英語学習サイトとの連携により、豊富なビデオコンテンツの埋め込みを可能にしています。

 EnglishCentral について、また当サイトの管理者が運営するオンラインスクールについては「こちら」をご参照ください。

 発音、文法、語彙などの基礎を学んだら(あるいは学びながら)、自分自身をどっぷりと英語環境に浸らせるということは大変価値があり、うまくすれば大きな効果が得られます。そのように「英語にどっぷりつかる」ことを「 emmersion 」といいますが、語学は「学習」だけでは実践力が備わらず、かといって、学習のない実践経験だけでは効率的ではありません。適切な英語の学び方を理解し、正しいアプローチによって文法を学び、地味な努力で語彙を増やしつつ、同時に「多くの英語に触れる」という環境作りが最も望ましいといえるでしょう。

 その意味において当サイトは、「学習」と「実践」の両方を最大限に提供することを目指しています。

音声情報の処理能力を高める訓練

 英語は実技科目です。求めるべきものは「技能」です。
 書かれた英文を目の前にしたとき、「いかに音読するか」を度外視して、「どう和訳するか」を考えるべきではありません。「英文そのものが理解」できていなければ和訳はできません。「英文の意味は理解できるけど、うまく和訳ができない」というのは、よくあることなのです。「和訳できる」ことが英語の理解では決してありません。

 さて、これまで学んできた音声面の技能をさらに強化し、英語がより「自分自身の言葉」だという実感に近づけていくための訓練方法をご紹介します。かなり地味ですが、効果はてきめんです。

 学校の教科書でも文法書の例文でも構いません。もちろん、このサイトに埋め込まれた動画を訓練の素材としていただいても大いに結構です。

 書かれた英文を目の前にして、まずは音読します。1回ですらすら読めなくてもかまいません。繰り返し声に出してよみながら、「和訳したい」誘惑をこらえて「英語の音声」を通じて文意を把握してください。動画を使うのであれば、日本語字幕に頼らず、英語音声だけから意味が伝わってくるくらいになるまで、まずは繰り返し聞いて、自分でも口慣らしをしてください。

brain

 数回の音読練習をして、とりあえずつかえることなく読めるようになったら、1つの英文を文頭からピリオドまで(疑問文なら「?」まで)をまず普通に音読します。(動画の場合は、冒頭からその行の終わりまでを再生して聞きます。)

 文末まで読めたら、すかさず目をテキストから離して、何も見ないで今読んだばかりの英文を口にしてみてください。それが簡単にできるようなら、その英文はマスターされています。つまり、単語も構文も身についていると考えられます。
 それが動画などの音声素材であれば、「今聞いたばかりの短い英文」をその場ですぐに復唱できるかどうかということです。

 しかし、最初のうちは「たった今読んだばかりの英文」なのに、テキストから目を離した瞬間、思い出せなくなっていたり、すらすらと口をつかなくなってしまうものです。うまくできなかったら、またテキストを見ながら口を慣らします。そしてまた「テキストを見ながら音読→何も見ないで今読んだ英文を言う」を繰り返します。

 「これが日本語で書かれた文章なら」、それほど苦労せずか なりの長さの文章でも同じことができるでしょう。その違いがどこにあるか?を考えてください。日本語でならできるが、英語だとうまくいかない。この差、ギャップ、段差が、今の自分にとって「まだ感覚として身についていない」部分なのです。

 1文丸ごとではつらいと思ったら、無理せず、フレーズの切れ目など、切っても不自然にならない適当な部分で区切りつつ、そこまでで同じことをやってみましょう。フレーズごとにうまくできたら、1文まるごとでもやってみましょう。

 今音読したばかりの英文をテキストを見ないで復唱できる---こうなってくるとその英文に含まれている単語や構文が非常に実用的なレベルで身についてきています。最初にテキストを見ながら音読している最中にも、目の前の英文に含まれている「情報」を効率よく吸収しようとする脳の活動が活発化してきます。これが「英文を和訳しよう」と思いながら読んでいても、そういう脳の活動は起こらず、英語技能はなかなか磨かれません。

 これを2ヶ月程度根気よく続けると、聞こえてきた英文でも同じことができるようになってきます。音としての英文をリアルタイムに脳が処理できるようになってきますので、会話の力が顕著に高まってきます。日本語を先に思い浮かべ、それを英訳して口にするのではなく、最初から英文が口をつくようになってきます。これは「日本語でならば、今聞いたばかりの言葉をすぐその場で繰り返せる」感覚と同じものを英語に対しても持てるようになってくるからです。まさに英語的感覚の養成であり、脳の中に「英語的思考回路」が新たに構築されてくる状態です。

 そしてそのような能力に効率よく到達できるのは、これまで習ってきた「発音の基礎」があるからこそなのです。淀みなく滑らかに、意味に即した音読ができるからこそ、音声化された英文も覚えやすくなるのです。

 この練習では「英文暗誦」をしようとまでしなくて構いません。今読んだばかりの英文をその場限りでは覚えている、という程度で十分なのです。1分後は忘れていてもよいのです。まずは「読み上げたばかりの英文をその場で復唱できる」ようになってください。それができるというだけで、発音、文法、語彙などあらゆる側面からじわじわと感覚が磨かれてきます。日本語に対する精神的距離感と、英語に対するそれが縮まってきます。この地味な訓練を続けていると、ディクテーションがぐっと楽になってきます。それは「今聞いたばかりの英文を復唱できる力」がついてくるからです。「音読の練習」でありながら、それを通じて文法理解が深まり、聞き取りの能力も高まってくるのです。


 
会話を始める(39秒)



 それではこちらの動画を使って英文復唱の練習をしましょう。
 教材として作成された易しい動画で、クリアに発音されていますので聞き取りやすいと思います。
 アメリカの大学に留学してきた韓国人男性とアメリカ人女子学生が出会った直後の会話です。
 内容が把握できたら、動画プレイヤー右下の「字幕」ボタンを押して日本語字幕を非表示にしましょう。その方が和訳の言い回しにひきずられず、よりダイレクトに英語的感覚に入っていけます。文中に知らない単語があったら、字幕の中の単語をクリックするとミニ辞書が開きます。

  1. Changmin, you said you're from Korea, right?
    チャンミンさんは、韓国出身だとおっしゃいましたよね。

  2. Where in Korea are you from?
    韓国のどちらからですか?

  3. I'm from Busan. It's the second largest city in Korea.
    釜山です。韓国で2番目に大きな都市です。

  4. When did you come to the States?
    アメリカにはいつ来たのですか?

  5. I just got here a month ago.
    ほんの1ヶ月前なんですよ。

  6. Really? Wow, but your English is so good.
    そうなんですか。わあ、英語がお上手なんですね。

  7. Thank you. How long have you been studying at Columbia, Kathy?
    それはどうも。キャシー、あなたはコロンビアでどれくらい学んでいるのですか?

  8. This is my second year. I'm a sophomore.
    2年目です。私は2年生なんです。

  9. And what do you study?
    で、何を学んでいるんですか?

  10. I study philosophy.
    哲学を勉強しています。

  11. Are you from New York?
    ニューヨーク出身なんですか?

  12. Yes, I'm from Long Island. But I am originally from England.
    ええ、ロングアイランド出身です。でも、もともとはイングランド出身なんですよ。

  13. How about your family? Where do they live?
    ご家族は?どちらにお住まいですか?

  14. I'm from a big family, and they all live in England.
    うちは大家族でしてね。皆、イングランドに住んでいます。

「発音」の章の最後に

 いかがでしたでしょうか。
 これは英語に限らないことだと思いますが、基礎からの丁寧な積み重ねが大切です。外国語の学習においては、発音の基本を固めつつ、文法や語彙を身につけ、その際また発音の練習を重ねるという繰り返しになります。

 今後文法を学ぶ際も、例文を常に音読することを忘れないでください。その文章がそういう意味を伝えていることを「音として実感」することが大切です。
 英作文でも、多くの学習者は「まず文字に書いてみてから音読する」という順序になっていますが、そうではなく「書く前にまず口で言う。口で言えたら文字に書き留める」という順序を守ってください。この順序を常に守り続けるだけで、実践的表現力は高まってきます。

 学習方法さえ適切であれば、「話す、聞き取る、読む、書く」といった4技能は常に連動して、全体的に伸びていきます。英語は言語ですから、4技能すべてを包含する基礎が音声であることを再認識しましょう。「話す、聞き取る」は音声を直接媒体とするのでわかりやすいのですが、「読む」や「書く」でさえ、要領は同じだということです。「読む」とは「聞き取る」と同じであり、実際の音楽を聞く代わりに「楽譜を見てそれを想像する」ことです。「書く」とは、実際の演奏をする代わりに「頭に浮かぶメロディを文字として記録しておくこと」です。浮かんでもいないメロディを楽譜にはできないはずであり、演奏された音をイメージできない楽譜から、それがどんな曲かも理解できないものなので す。


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