ここでは、 /iː/, /ɪ/ そして /i/ といった記号で表される音について説明します。

　英語の母音を理解するには、母音同士の相対的な関係を、口の開きや舌の位置を段階的に比較してみるとよいでしょう。
　「前舌母音」と呼ばれる口の前の方で発音される母音として、左上の図を見ると /iː/, /ɪ/, /e/, /æ/, /a/ といった母音が並んでいます。

　これらの母音は上にあるものほど「口の開きが狭く、唇の両側が強く横に引かれる」構えとなります。そして下に行くほど「唇を左右に引く緊張が弱まり、同時に顎が下がって口の開きが大きく」なっていきます。すなわち一番上にある /iː/ を発音する「最も開きが狭く、左右に唇が引かれている」構えと、一番下にある /a/ を発音する「最も開きが大きく、左右に唇を引く緊張がない」構えの間に、その中間となる口の構えを段階的に探し出すことができます。
　冒頭の図の右側は、それらの母音を発音するときの舌の高さを段階的に示したものです。やはり /iː/ を発音するとき舌が最も高い位置にあり、 /a/ の発音では最も低い位置にあることがわかりますね。

　記号として /iː/ と小文字の “i” に長音記号のついた音と /ɪ/ という大文字の “I”を小さめに書いたような記号がありますが、それぞれの図を見て分かるとおり、単純に音の長さの差ではなく、口の開きも、舌の位置も違う「別の音」です。

　そして長音記号のついていない小文字 "i" だけの /i/ という記号は、この /iː/ と /ɪ/ の間のどの音を使っても構わないとされます。例えば happy /hǽpi/ という単語の末尾の -y の部分の発音ですが、これは人によって /hǽpiː/ のように発音する人もいれば、 /hǽpɪ/ と読む人もいて、どちらでも構わないとされています。これは決まって単語の末尾だけに現れ、かつアクセントがないときの発音となります。若い年代の人ほど /i/ を /iː/ の音質で読む傾向が強いそうですが、アクセントがありませんので、 eat の母音に比べると音の長さは短くなります。

　日本人学習者としては、やはり /iː/ と /ɪ/ について明確な発音の区別を習得するべきでしょう。

　中学や高校初級向けの入門用英和辞典などでは、覚える記号の種類を減らすために /ɪ/ の記号を用いず、/i/ と /iː/ だけを使って発音を表記しているものもありますが、「音質そのものが違う」ため、やはり記号も別のものを使うことが結局不要な混乱を避けられるのではないかと感じます。そこで本書では記号の種類は多少増えてしまいますが、 /iː/ と /ɪ/ を区別することとし、多くの上級者用英和辞典や英英辞典の表記に合わせることとします。この２つのどちらの音質で発音しても構わない短めの /i/ についてはあえてそれだけを独立させて練習する必要はないでしょうから、 /iː/ と /ɪ/ の２つについて違いをはっきり区別できるような練習課題を設定します。

/ɪ/ の発音

　/ɪ/ の音は、日本語でいうと「イ」と「エ」の中間の音です。この２つの仮名の音を実際に交互に出して見て、徐々にその中間をさぐってみましょう。「エ」ほど口を上下に開けず、「イ」ほど口を左右に引かない。音としては「イだと思い込めばイに聞こえる。エだと思えばそうも聞こえる」という、ちょっと中途半端な印象を感じるでしょう。それが / i / の音です。日本語の「イ」で置き換えると、どうしても音が硬くなりすぎる傾向があります。ただしそれで通じないわけではありません。調音点表を見ても「イ」と /ɪ/ はかなり接近した位置にありますので、代用したとしても「日本語なまりを感じるけれど意味の理解に支障はない」という程度の差です。それでもこの /ɪ/ の音は実に多くの英単語に含まれる母音ですので、是非とも十分な練習を積んでいただきたいと思います。

/iː/ の発音

　 /iː/ の方は非常にはっきりした音なので習得は容易でしょう。すべての母音の中で最も前、最も上に調音点がある音、つまり、明るくはっきりした、堅い音色です。日本語で「イー」と言いながら、意識的に口の中の舌の前の部分をもっと持ち上げて上あごに近づけてみてください。すれすれまで近づけてしまうと子音のYの音（記号では / j /）になってしまいますので、日本語の「イ」よりは心持ちもう少し上という程度でよいでしょう。

	• it	それ	/ ɪt /
	• eat	食べる	/ iːt /
	• mitt	ミット	/ mɪt /
	• meet	会う	/ miːt /
	• sit	座る	/ sɪt /
	• seat	座席	/ siːt /
	• hit	打つ	/ hɪt /
	• heat	熱	/ hiːt /
	• ship	船	/ ʃɪp /
	• sheep	羊	/ ʃiːp /

　それでは音質の違いに注意して左のペアで練習しましょう。

　/ɪ/ と /iː/ の違いは音の長さではなく、「音の質」そのものが違うということを念頭に置いて練習してください。

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/iː/ の発音

　EnglishCentral の発音記号では長音記号(ː)を一切用いていませんので、/i/ という記号が、このサイトでの /iː/ と /i/ のどちらにも相当することがあると考えてください。

　左のサムネイルをクリックすると動画プレイヤーのウインドウが開きます。操作の要領については「EnglishCentral動画使用法」を参照してください。

• スクール（Round-EC Language Instutute）の受講者の方は、ブラウザの別タブであらかじめ EnglishCentral にログインしておくと、埋め込み動画での学習が記録されます。
• スクールに関する情報は、「 Round-EC Language Institute」のページをご覧ください。

/ɪ/ の発音

　/ɪ/ の発音については、EnglilshCentral と現在のこのサイトは記号の使用において共通しています。

PedigreeのＣＭから

　短くて楽しい動画素材で、/iː/ の練習をしてみましょう。

　動画の字幕を下に示しました。英文中の発音について、
/iː/ ＝赤い文字
/ɪ/ ＝青い文字
　で示してあります。ＣＭなのでほんの短い動画ですが、うまい具合に今回の２つの母音が沢山出てきます。

1. It's dinner time.
   ご飯の時間だ。
2. I want meat.
   お肉が欲しいな。
3. The protein keeps me strong,...
   タンパク質が僕を強く保ってくれるんだ...
4. ...so I can keep going.
   ...それで、僕はずっと頑張ってられるんだ。
5. And believe me,...
   本当だよ、...
6. ...I will.
   ...そうするから。
7. Pedigree. Really good food for dogs.
   ぺディグリー。栄養満点の犬の食事。

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