疑問代名詞
代名詞の解説の中で、日本語の「こそあど」と呼ばれる言葉のグループについて少し触れました。
「これ、あれ、それ、どれ」の1文字目を拾うと「こそあど」となりますが、「ここ、あそこ、そこ、どこ」や「こっち、そっち、あっち、どっち」、「こう、ああ、そう、どう」など、色々な言葉のグループに「こそあど」が見られます。
これらの言葉の「ど」で始まる「どれ、どこ、どっち、どう」などが、英語の「疑問詞」と呼ばれるグループに相当します。日本語と英語では品詞のたて分け方が異なりますので、あくまでも理解の参考としていただきたいのですが、「こそあど」の「ど」で始まる言葉は「内容が分からないからたずねている」タイプの言葉です。
数学の式で X という「未知数」を表す文字がありますが、疑問詞は、文章の中の X です。つまり X に「何かを代入する」ことで等式が成り立つように、「ここに何を入れたらよいですか?」と尋ねるのが疑問詞を使った疑問文の仕組みというわけです。
「疑問詞」という独立した品詞があるのではありません。「代名詞、形容詞、副詞」といった3種類の品詞それぞれの中に、数式の X のような働きをする言葉があり、それらをまとめて「疑問詞」と総称しているものです。ですから、疑問詞の中身を細かく見ると「疑問代名詞、疑問形容詞、疑問副詞」というふうに3種類の品詞の中に、それぞれの疑問詞が含まれているということになります。
今は「代名詞」の解説項目の中ですので、疑問代名詞が解説の中心であり、他の疑問形容詞や疑問副詞は、形容詞、副詞の中で改めて触れることになりますが、まずは「疑問詞」と呼ばれる言葉のグループについて全体像を眺めておくことにしましょう。
|
|
※ from where, until whenのように「本来副詞」である語が意味を明確にするため前置詞を伴って「臨時の代名詞」として使われることもあります。
疑問文には「 Yes / No 」で答えられるタイプの疑問文(=一般疑問文)」と、Yes / No では答えられず「具体的な答えを言わなければならないタイプの疑問文(=特殊疑問文)」があります。疑問詞を使った疑問文は「特殊疑問文」と呼ばれます。
特殊疑問文(疑問詞による疑問文)は次の手順によって作り出されると理解してください。
- まず「答えそのもの」になる普通の英文があります。
- その英文の一部に「わからない箇所」を作り、それを数学の X つまり疑問詞に置き換えます。
- それでもし、疑問詞がすでに文章の出だし(文頭)にあれば、もう完了です。最後に「?」をつければできあがり。
- もし、疑問詞に置き換えた部分が文中にある場合は、それを文頭に引っ張り出します。これは「相手に尋ねたい情報」であり、まず相手に疑問としてぶつけたいため、一番最初に口にするからです。
- 疑問詞を文頭に出したら、残った部分を「疑問文」の語順にします。
具体例を見てみましょう。同じ例文を元にしても「どの箇所を尋ねたいか」によって作られる疑問文は変わってきます。
例: Bob went to the zoo with Tom yesterday.
(ボブは昨日、トムと一緒に動物園に行った。)
この英文には色々な情報が含まれていますが、次の箇所を尋ねたいとき、どうやって疑問文にすればよいかを考えます。
(1) Bob : もし文頭の主語である「Bob」が「尋ねたい情報」だとします。つまり「誰が、トムと動物園に行ったのか」がそもそもわかっていないとき、どう尋ねるか、ですね。
先ほどの手順によって、Bob を疑問詞、ここでは疑問代名詞で「誰が?」を尋ねる言葉である who に置き換えます。
Who went to the zoo ......
さて文頭の主語を疑問詞にしたので、すでに疑問詞で文章が始まる形になっています。ということはもうこれで終わりです。ちゃんと出だしを大文字にして、末尾に「?」をつけてやれば完全な特殊疑問文の出来上がりです。
Who went to the zoo with Tom yesterday?
(誰が、昨日トムと一緒に動物園に行ったのですか?)
英語の構造と対応させるため、参考訳は日本語としてちょっとぎこちないものになっています。和訳は常に英文理解の参考、確認のために「添えてある」だけのものですから、和訳によって英語を理解しようとはしないでください。日本人ならこういうとき「トムと昨日動物園に行ったのは誰ですか?」というような言い回しを用いるところでしょうね。
(2) to the zoo : 昨日どこかへ行ったのはボブ。それは分かっている。一緒に行ったのがトムだとかも分かっている。ただし「どこへ行った」のかが若らないわけですね。
手順に従い、「そのままの位置で疑問詞に」してみましょう。
「 to the zoo 」という3語でひとまとまりにします。
STEP 1: Bob went [ where ] with Tom yesterday.
このように「 to the zoo 」の箇所を数学の X である疑問詞に置き換えました。実を言いますと、このままの形でも使われることがあるのですが、それについてはまたあとで説明します。
さて [ where ] は文頭になく、文中にめりこんだ位置にありますので、「まず聞き手にぶつける疑問」となるために文頭に引っ張り出します。
STEP 2: [ Where ] Bob went with Tom yesterday.
これは「文」ではありません。英語表現としては、これでも正しい1つの形なのですが、このままだと「ボブが昨日トムとどこへ行ったのか」とか「ボブが昨日トムと一緒に行った場所」という、「文の一部」としての意味になってしまいます。そういう意味に使いたいならそれでもいいのです。たとえば
I want to know / where Bob went with Tom yesterday.
とすれば、「私は知りたいのです/ ボブが昨日トムとどこへ行ったのかを」という意味を表す正しい英文となります。このような形式は「間接疑問」と呼ばれますが [ where Bob went with Tom yesterday ] は「文」ではありません。「文の一部(正確には「節」といいます)」です。
今は、疑問文を作っていますので、STEP 2 からさらに次の段階へ進みます。
STEP 3: [ Where ] did Bob go with Tom yesterday?
(昨日、ボブはトムとどこへ行ったのですか?)
[ where ] を文頭に引っ張り出し、ちゃんと大文字で書き始めたら、残った部分を「疑問文」の語順にしてやらなければなりません。これは最も基礎的な「疑問文の作り方」ですね。「 Bob went 」の2語だけ(主語と述語)に注目すればよいのです。
「 went 」という過去時制の述語動詞が使われていますから、「 did (過去の助動詞) + go (動詞の原形)」に分割してやり、「 Bob did go 」にしてから、主語( Bob )と「述語動詞の中の助動詞( did )」を逆転させることで「です」が「ですか?」に変わります。それ以外の「 with Tom 」や「 yesterday 」はノータッチのままでOKです。
英語は「常に語順のまま理解する」ことが大変重要です。和訳を経て英文を理解するのではなく、英語のままストレートに英語の情報を汲み取れるようにならないと「聞き取り」も「話す」力も伸びてきません。英会話の最中にいちいち相手の発言を和訳して理解しようとしていたら、とてもついていけませんし、話すときも先に日本文を用意してから高速で英訳しようとしたら、プロの通訳でも間に合いません。そもそも英語ネイティブ同士が英語で会話しているとき、日本語を思い浮かべているはずもなく、私たち日本人が英語を話せたり、聞き取れたりできるためには、そういう「英語ネイティブの言語活動と同じ状態」にならなければなりません。初歩の段階から「英語の語順」に必然性を感じるように努めましょう。「なぜその順序でその言葉を言うのか」を理解し、実感して、訓練を重ねることで、自分自身が英語を話すときも、「英語として適切な順序」で単語が思い浮かぶようになってくるのです。
特殊疑問文は「疑問詞」ではじめます。
なぜなら「これが知りたい!」という最重要な部分であり、何よりも先に相手(聞き手)にぶつけておきたい「疑問のかなめ」だからです。英語というのはせっかちな言葉のようで、日本語のように「ジェインが忙しいからといって、ボブがトムと昨日出かけていったのは『どこ』ですか?」なんて、ずっとあとになって「尋ねたいこと」を言うなんて我慢できないんです。『どこ?』が聞きたいときはまず「どこ?」と尋ねてしまうのです。日本語のまま英語風にこの疑問文を言うとしたら、「ねえ、どこなの!?ボブが行ったのは。ほらトムとだよ。昨日ね。だってジェインが忙しかったからって」なんていうふうに言葉を使っているんです。それが「英語的言葉の順序」なのです。
ですから「どこ」であろうと「誰、いつ、なぜ、どうやって」などあらゆる「疑問」は一番最初にぶつけてしまいます。これが「特殊疑問文が疑問詞で始まる理由」です。英語文化とは、そういう発想で言葉を並べてつなげる文化ですから、この「発想そのもの」を自分の感覚に取り込むことが一番大切です。文法用語など知らなくても、この感覚さえ身につければ、英語は話せて聞き取れるようになるのですが、私たち日本人は、そういう「感覚をどうやって習得すればよいのか」を知る、訓練の指針として文法を学んでいるわけです。
英語文化で暮らしている人にとって、聞き手になったときもまた、「答えてあげるべき一番大事なポイント」を最初に与えて欲しいと感じます。Who や Where がまず最初に聞こえてさえくれば、文章全体を最後まで聞き取れなくても、通話の途中で携帯電話のバッテリーが切れても(笑)、何を答えてあげればいいのかが分かった状態になっていられるのです。
さて他の部分が「尋ねたい箇所」の場合も見てみましょう。
(3) [ Tom ] :Bob went to the zoo with [ Tom ] yesterday.
今回は「一緒に行ったのが『誰』だった」のかを聞きたい場合ですね。
手順は同じです。まずその場で適切な疑問詞にします。
STEP 1: Bob went to the zoo with [ whom ] yesterday.
Tom は「 with 」とつながっていますので、he なら him の形になっているべきところです。人名は目的格になっても語形は変わりませんが、疑問代名詞 who は「 I - my - me - mine 」や 「 he - his - him - his 」と格によって異なる形が使われるように「 who - whose - whom - whose 」という格変化をします。ここでは目的格として whom が正しい形となります。
STEP 2: [ Whom ] Bob went to the zoo with yesterday.
疑問詞になった whom を文頭に引っ張り出しました。with が置いてけぼりになってしまいましたが、構いません。
そして文頭に出た疑問詞以外の残りの部分を「疑問文」の語順にするのでしたね。
STEP 3: [ Whom ] did Bob go to the zoo with yesterday?
(ボブは誰と一緒に昨日動物園に行ったのですか?)
これで完成。
ただし、この「 whom 」という本来正しい形は「古めかしい英語」になってきており、(今でも使って構いませんし、まったくそれで正しいのですが)、通常の会話では、主格に使われる「 who 」の形で済ませてしまうのが普通になっています。 Whom は「文法的には正しい」のに、いかにも頭で考えて作ったような英文に感じてしまい会話的にはあまり好まれないのです。だから
STEP 4: [ Who ] did Bob go to the zoo with yesterday?
(ボブは誰と一緒に昨日動物園に行ったのですか?)
これが現代英語で普通に用いられている形です。
ちなみに今の手順では with Tom の「 Tom だけ」を疑問詞にして文頭にひっぱりだしましたが、「 with whom 」をひとまとまりの単位として扱うこともできます。この方法は「文語的(書き言葉風で堅苦しい)」ものですが、公式文書などでは今でも使いますので、この方法も見てみましょう。もう一度もとの文から各ステップを追います。
元の文:Bob went to the zoo with Tom yesterday.
STEP 1: Bob went to the zoo [ with whom ] yesterday.
STEP 2: [ With whom ] Bob went to the zoo yesterday.
STEP 3: [ With whom ] did Bob go to the zoo yesterday?
(ボブは誰と一緒に昨日動物園に行ったのですか?)
このように「前置詞+名詞」で「句」になっている場合は、名詞だけを疑問代名詞にして文頭に出してもいいし(口語的)、あるいは句としてのまとまりを保ったまま「前置詞+疑問代名詞」をまるごと文頭に引っ張り出すという方法もあるのです。なお「前置詞+ whom 」とまとまった形で前に出すときは「 whom 」は「 who 」で代用されません。さすがに前置詞と隣り合ってならんでいると代名詞は前置詞との結びつきが明確になるため、あえて「 with who 」と言う方が無理を感じてしまうためです。(それでもそういう言い方をする人はいますが)
ただし、「前置詞+疑問代名詞」を句として一緒に前に出してはいけない場合があります。 たとえば
He is looking for the watch. (彼はその時計を探している)
この英文で
He is looking for [ the watch ] .
というふうに「 the watch 」を尋ねたいとき、
He is looking for [ what ] .
と疑問代名詞 what に置き換えられるわけですが、
(○) | [ What ] is he looking for? |
(×) | [ For what ] is he looking? |
と、What のみを文頭に置くことは許されますが、[ for what ] を句としてまとめて前に出してはいけません。なぜなら「 look for the watch(時計を探す)」という言葉は、意味から考えて「 look for(探す)」+「 the watch 」という構造であり、「 look 」+「 for the watch 」と分けてしまうと「探す」という意味が感じられなくなってしまうからなのです。(言葉の由来としては「 look (視線を向ける)+ for (~をもとめて)」という組合せが「何かを求めて視線をめぐらせる=探す」なのですが、「 look for 」のように2語以上で熟語的な意味を作り出している場合は、動詞と前置詞を引き離して配置するようなことはしません。意味がつかめなくなってしまいますからね。)
もちろん
[ for what ] が「何のために」という意味の句であれば、それを1つのまとまりとして文頭に出しても構いません。
For what did you come here? / What did you come here for?
(君は何のために [ = why ] ここに来たのか?)
「探す」を意味する「 look for 」の他、熟語的なまとまり(句動詞)となっていて、前置詞と名詞を句にして移動させてはならないものとしては「 come across (~と偶然出会う)」や「 take care of (~の世話をする)」など色々ありますが、詳細は「動詞」の章で解説します。
(○) | Who(m) do you take care of? | (君は誰の世話をしているの?) |
(×) | Of whom do you take care? |
このように疑問詞を使った疑問文(特殊疑問文)というのは、もとになる普通の文の「どこかの箇所」が不明であり、その箇所を X に置き換えるものであり、置き換えられる「分からない箇所」が名詞であるとき、疑問代名詞(who, which, whatなど)が用いられるということです。もしも置き換えるべき相手が「副詞(上記の例では [ to the zoo ] = Where )」なら疑問副詞が使われます。
参考:Echo Question
会話をしていて、相手の言葉の一部だけ、相手の声が小さかったとか、雑音が入って聞き取れなかったとかで、わからなかったとき、その他の箇所はちゃんと聞き取れたとき、「分からなかった箇所」だけをその場で疑問詞にしただけの文章を返して「この箇所が聞き取れなかったんだよ」と伝える言い方があります。これを Echo Question といい、まるで山彦のように「相手の言葉をそのまま(一部だけ疑問詞に置き換えて)反射させる」ような疑問文です。実際の会話ではかなりの頻度で現れますし、簡単で便利な尋ね方なので是非覚えておきましょう。
例1:
Tom: I went to the zoo yesterday. (僕、昨日動物園に行ったんだ)
Bob: You went [ where ]? (え?昨日どこに行ったって?)
例2:
Tom: Jane married John! (ジェインがジョンと結婚したぞ)
Bob: Jane married who? (ジェインが誰と結婚したって?)
例3:
Tom: Jane married John!(ジェインがジョンと結婚したぞ)
Bob: Who married John? (誰がジョンと結婚したって?)
例3は、基本として学んだ手順の結果と同じですね。
また例2と例3をもっと省略した形で言うことがあります。
例4:
Tom: Jane married John! (ジェインがジョンと結婚したぞ)
Bob: Who(↘)? (誰とだって?)= Jane は聞き取れている。
Tom: John! (ジョンとだよ!)
例5:
Tom: Jane married John!
Bob: Who (↗)? (誰が?)=John は聞き取れたが主語の Jane が聞き取れなかった。
Tom: Jane! (ジェインがだよ!)
さあ、この例4と例5で、Bob が返した省略形の疑問文は、いずれも「 Who? 」であり文字的にはまったく同じですね。それでも Tom は答えを変えています。それはつまり Bob の「 Who? 」の発音の仕方が違うため、Tom には「誰が」、「誰と」のどちらが聞き取れなかったのかがちゃんと伝わったからです。これについては「発音」の「かぶせ音素(10)抑揚(3)-末尾連接」のビデオの中(19分ごろ)でも解説していますが、このような実例に触れますと、いかに音声が重要か、発音が大切であるかを再認識します。
例4の Who?(誰と?)= Jane married who? = Who did Jane marry? は「 Who (↘) ? 」と下げ調子で発音されるのに対して、例5の Who?(誰が?)= Who married John? では、「 Who (↗)? 」と上げ読まれます。たったそれだけの違いから、聞き手の Tom は「誰と?」、「誰が?」の意味の違いをちゃんと感じ取れるのです。
| 疑問代名詞 who の目的格 whom は、通常口語では用いられませんが、前置詞と並んで直接の目的語となっているときは、whom の語形も普通に見られます。このビデオでは Line 24 にその実例を見ることができます。 |
|
|
とてもコミカルなビデオです。 進化しすぎたエレベータには押しボタンがなく音声で行き先の階を認識するのですが、英語ネイティブでも強いなまりがあると正しく認識されず、行きたい階に行けません。おまけに降りることもできず、2人の男は大変な苦労をします。 ほどよく色々な疑問詞が現れますので、楽しみながら練習してください。 ちなみに1行目で「 Where's the buttons? 」と言ってますが、 buttons と複数形名詞が主語なのですから、本当は、 Where'are the buttons? というべきところなんです。英語ネイティブでも、口語ではこのあたり結構いいかげんだとう事実が伺えますね。 |
|
現在サイトで紹介している範囲はここまでです。 |
ページトップへ | HOMEへ | 次のページへ |