再帰代名詞
-self (複数形で -selves )の形になるものを「再帰代名詞」と呼びます。「再帰」という名称は「再び帰ってくる」と読めますが、これは例えば SVO の構文の目的語に -self の語を置いたとき、主語の行為が主語自身に対して行われることからそう名づけられたものです。
I hate myself.
自分が大嫌いだ。
He killed himself.
彼は自殺した。
単数 | 再帰代名詞 | ||
I | > | myself | |
you | > | yourself | |
he | > | himself | |
she | > | herself | |
it | > | itself | |
複数 | 再帰代名詞 | ||
we | > | ourselves | |
you | > | yourselves | ※主格人称代名詞では同じ形の you も、 再帰代名詞では語尾に単複が現れる |
they | > | themselves |
他に「 oneself 」という単語がありますが、これは不定代名詞の one に対する再帰代名詞で、辞書の説明などで「 one の位置に色々な代名詞が入る」という形式を意味してよく用いられます。たとえば「 kill oneself =自殺する」と書いてあれば、文脈に応じて oneself は、 myself, yourself, himself, herself などに置き換えて使うことになります。
上記が再帰代名詞のすべてですから、語形自体は実に簡単です。
「再帰」と呼ばれるのは、動作が「自分自身に再び帰ってくる」という意味からの名称ですが、自らを動作対象(目的語)とする動詞を「再帰動詞」と特に呼ぶこともあります。
再帰代名詞があることで文脈上の意味の誤解をさける効用があります。
(1) She sent the letter to her. (sheとherは別人)
(2) She sent the letter to herself.(自分に宛てて手紙を出した)
(1)では、sheによって示される女性と、herによって示される女性は別人であり、それぞれが誰を指すのかは文脈から判断されます。
(2)では、主語であるshe自らに宛てて手紙を出したという意味です。
(3) Betty's sister looked at her in the mirror. ( her = Betty)
(4) Betty's sister looked at herself in the mirror. ( herself = Betty's sister )
(3)では、her は「 Betty 」を受けており、主語である「 Betty's sister 」自身ではありませんが、曖昧に解釈される恐れがあります。
(4)では、主語である「 Betty's sister 」に動作が帰ってきていることを意味します。
※ただし上記は、本来文法的にはこうあるべきという指針ではあっても、解釈の紛れが発生しやすく、代名詞が何を指しているのかはっきりしないと感じるためできるだけ避けた方が無難です。
She sent the letter to Betty.
Betty's sister Jane looked at Betty in the mirror.
のように曖昧さが発生しやすいと感じたら、あえて代名詞ではなく具体的な名詞を使う方が好ましいと言えます。
(本来再帰動詞だったものが自動詞化した例)
hide は「隠す」という他動詞の意味のほか、自動詞として「隠れる」としても用いられますが、これはもともと「 hide oneself (自らを隠す)」の「 oneself 」が省略<あるいは目的語を動詞が飲み込んだ>されたのが、そのまま自動詞として定着したものです。このような動詞は oneself とともに他動詞として使うことも、もちろんできます。
adjust (oneself) to | :~に順応する |
behave (onself) | :行儀よくする |
prepare (oneself) for | :~に備える |
shave (oneself) | :ひげをそる |
prove (oneself) | :~であることがわかる |
Behave yourself!
(行儀よくしなさい!)
などは親が子供をしかるときよく言う決まり文句ですね。
over- との複合動詞は、本来「~させる」という他動詞で、その目的語として再帰代名詞が置かれたのですが、それが形式化して、over- の動詞を自動詞、oneself を強意の副詞的な語として考えるのが今では一般的となっているようです。
overeat oneself | :食べ過ぎる |
oversleep oneself | :寝過ごす |
overwork oneself | :働きすぎる |
Don't overeat yourself.
(食べ過ぎるなよ)
I overslept myself this morning.
(今朝寝坊しちゃった)
You're overworking yourself.
(君は働きすぎだよ)
これらの例文で over-動詞 を自動詞としてポツンと使われるとなんだか言葉の調子も尻切れトンボに感じられますが、~-self の語が添えてあった方が(本来目的語なので必要だったのですが)語調も滑らかで読みやすく感じるかと思います。
まれな例として、再帰代名詞が脱落した結果、もともと他動詞だった語が自動詞として扱われるようになったものに make を become の意味に用いる文があります。
She will make a good wife.
(彼女はいい奥さんになるよ)
これは 「 make herself a good wife (自分自身をよい妻にする)」から再帰代名詞 herself が脱落したものです。(SVOCが元で、そのOが脱落したSVCです)
再帰代名詞の強意用法
「主語、補語、目的語」と同格に配置され、それを強める用法。強める語の直後に置くのが基本位置ですが、副詞的な使い方となっているため、比較的自由な位置を取ることがあります。
You have to talk to your teacher himself.
(先生自身に話しなさい)
I am a stranger here myself.
(この土地のことはよく分かりません。[ 直訳:私自身がよそ者です ])
I myself didn't think of it.( I didn't think of it myself. も可)
(私自身、そんなことは思いもつかなかった)
再帰代名詞の語形についての疑問
ところでこれは私自身が中学生の頃、疑問に感じていたことなのですが、「 myself, yourself 」などでは代名詞の所有格(属格)であるmy や your に -self が接辞しているのに、 himself, themselves では目的格の him, them とつながっていて、なんだか統一性に欠けるのはなぜでしょう。herself の「 her 」は所有格と目的格の語形が同じなのでどちらに由来するのか見た目ではわかりませんし、itself の it も主格と目的格が同形なのでどちらに由来しているのでしょう。
中学生当時、日本語の感覚から見ると「 my + self 」で「私の自分自身」という意味がもとになっているのかと思っていたのですが、実はそうではなく古い英語では、「目的格+ self 」で統一されており、さらにまだ1語に合体する前は、me self ( mē selfum ) と2語に分けて書かれていたものでした。また代名詞に限らず名詞とも並べて用いられ、要するに名詞や代名詞の意味を強める働きをする self (selfum) という単語があったわけです。( selfum の語尾 -um は後に脱落)
「God selfum (神みずから)」という言い方も「 God himself 」と変化していきました。
古い語形の selfum は名詞的形容詞であり、他の名詞や代名詞に添えて意味を強調するものだったので、本来それ自身は名詞ではなく、従って複数形もありませんでした。しかし、her self を「所有格+名詞」という組合せに感じてしまうようになったことから、my self の語形が生まれ、1語として myself とつづられるようになり、self を名詞に感じたことから ourselves などの複数語尾が誕生しました。
ですから herself は「目的格の her」+ self だったわけです。ところが、me self の me にアクセントがないため、母音が弱形化し、mi self という形が発生し、それが herself の her が所有格だと勘違いされたこととあいまって myself という語形になっていったという経緯があります。 -self につながる代名詞部分をすべて所有格とする「 hisself, theirselves 」という形も実際「方言」としては存在するのだそうです。
ですから himself, herself, itself, themselves が古来の語形をそのまま維持して伝わった正統派であり、myself, yourself, ourselves は「代名詞部分を所有格だと誤解した」ことに由来する間違いがそのまま定着した語形なのです。
さて中学・高校の先生方、生徒さんからこの疑問を投げかけられたとき、これでしっかり答えられますね。(ご自身でも語源辞典などで裏づけを取られることをお勧めします。)
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よいウエイター・ウエイトレスになる秘訣を語るビデオ。 この中に出てくる「 Put yourself in the customer's shoes. 」という言葉は、直訳すれば「自分自身をお客様の靴の中に入れよ」となりますが、これは「相手の立場に立ってものを考え、行動せよ」という意味のイディオムです。つまり「客が履いているのと同じ靴を履く」=「客の立場に立つ、客の望みを自分のこととして理解する」というような意味になっているわけですね。 | |
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