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193. 4、不定形容詞(不定代名詞の形容詞用法)

 「形容詞」の中の「限定詞」についてもいよいよこの1項目を残すのみとなりました。
 ここまで見てきた「限定詞」は、

  1. 冠詞
  2. 指示形容詞(指示代名詞の形容詞用法)
  3. 所有形容詞(代名詞の所有格)

 でした。今回の「不定形容詞(不定代名詞の形容詞用法)」で「限定詞」はすべて出揃ったことになります。そして、次は「限定詞」以外の「一般の形容詞」へと進む流れです。

 ここは「形容詞」の章の一部ですので表題としては「不定形容詞」という名称にしてありますが、これは「不定代名詞」の形容詞用法と同じものです。
 「my」を「Iという人称代名詞の所有格」と扱うか「名詞にかかるから形容詞の一種として代名形容詞」となづけるかの違いと同じです。つまりどちらでも構わないのです。

 まず具体例をあげます:

one(1つの、或る), another(また別の), some(いくつかの、或る), any(どの〜でも), each(それぞれの), every(どれでも), either(どちらかの、どちらでも), neither(どちらもない), no(どれでもない、まったくない)

 ここに上げた例も「beautiful, good, big, happyなど」の一般の形容詞とちょっと毛色が違うな、と感じますね。
 不定形容詞も「限定詞」と呼ばれるグループに属しますので、他の限定詞と重ねて用いることができません。つまり「a one pen」や「my one pen」、「your another pen」、「the some books」、「the each book」、「an every student」などとは言えないということです。しかし「the one book」とは言えないくせに「the only one book」や「the two(three, four...) books」ならいえるという変則性もあります。このあたり文法とは単なる傾向性であり、人為的ルールではないことの表れといえます。ですからルールとして暗記しようとするより個々の標準的とされる表現を「口に慣らして」感覚的に身に付けていくのが一番の近道といえます。

 「不定形容詞」は「不定代名詞の形容詞用法」とも呼ばれると書きましたが、「every, no」は名詞と組み合わさる使い方しか なくその他の例のような代名詞としての使い方がありません。ですから「every」と「no」を「不定代名詞の形容詞用法」に入れるのは無理があるのですが、便宜上ここでまとめて解説します。

 ※なお本サイトの「代名詞>不定代名詞」では重要基本事項として一部の不定代名詞しか取り上げていません。ここに上げた中でも「each, either, neither」などが含まれていませんので、不足分についてはお手持ちの参考書などで学習してください。(今後「構文」の章で取り上げることがあるかも知れません)

 「品詞」とは単語固有のものではなく、「ある単語が今文中でどのような働きをしているか」の名称であるということは先に述べました。「one」にしても「1」という数字を意味すれば「普通名詞」ですし「すでに出た名詞を内容として、それを1つ」なら「不定代名詞」、「1つの」なら、「形容詞」であり、特にここで解説する「限定詞」に属します
 他の語も同様で「another」は単独で「不定代名詞」ですが、「another person(今挙げたのとはまた別の誰か)」と使えば「形容詞(特に「限定詞」)」です。

 「限定詞」は2つ同時に用いることはできませんが、同じ単語でも限定詞以外として用いられている場合はその限りではありませんので注意してください。

I don't like this. Please show me another one. / Please show me a bigger one.
(これは気に入らない。他のを見せてください。/ もっと大きいのを見せてください。)

 この英文には「another one」、「a...one」が同時に用いられていますが、ここでの「one」は限定詞ではなく「不定代名詞」であり、限定詞は「another」だけです。
 つまり「oneは限定詞だ」という覚え方は不適切であり、「不定形容詞の意味で使われるときのone限定詞だ」というなら正しいということです。

 不定形容詞は「不定代名詞の形容詞用法」と同じものですから、「品詞代名詞」の中の「109.不定代名詞」という項目も合わせて参照するようにしてください。



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194.(some/any)

 中学の初歩段階では、「肯定文にはsome、疑問・否定文ではanyを用いる」と「仮に」教えられたかも知れません。しかしそれは固定的なルールではありません。

(1) He has some pencils in his hand.(彼は手に数本の鉛筆を持っています)

 具体的は本数は分からない(あるいは重要でないのであえて言わない)が、少なくとも「1本だけ」ではないことを「some」で伝えています。この文中のsome「個別用法の"a"」が複数になったことで半ば自動的に現れるものですから、「a pen」の「a」を和訳に出さなくてもいいのと同様、「数本の」は訳出しなくても問題はないものです。
 ただしストーリーの必然性から和訳の中で「2本以上(複数)」であることを伝えておかなければならないと判断された場合は「何本かの」などの言葉を添えるべきといえます。

(2) Does he have any pencils in his hand?(彼は手に鉛筆を<本数を問わず>持っていますか)

 ここでの「any」は「数にこだわらず」、「何本でもいいから」の意味。つまり「1本」だけ持っていても、この質問には「Yes, he does.」と答えることができます。くれぐれもこの英文を「数本(複数)の鉛筆を持っていますか?」と解釈しないようにしてください。

(3) He doesn't have any pencils in his hand.(彼は手に鉛筆を一本も持っていません

 (2)と同じく「any」が「数にこだわらず」の意味です。「1本も、2本も、100本も、いかなる本数も持っていない」というのが「not any」の意味です。

 この(1)(2)(3)が基本として中学で習うものです。
しかし、実際には次の言い方も存在します。

(4) Does he have some pencils in his hand?(彼は手に何本かの鉛筆を持っていますね

 この英文は「He has some pencils in his hand.だよね」という疑問を表すものです。疑問文ではありますが、話者は答えとして「Yes」を期待している含みがあります。

(5) He doesn't have some pencils in his hand.(彼は手に数本の鉛筆を持っているわけではありません

 こちらは「He has some pencils in his hand.とは言えない」の意味。anyと違ってsome」は「1を含みませんので、1本しか持っていない場合はこの英文の表す内容に含まれることになります。
 「some」は「more than one but not all」の意味を持ち、「最低2以上だが、すべてではない」ということを表す言葉です。論理的には「全体の99%」もsomeなのですが、「100本以上」もの鉛筆を持っているのを指して「some」はやはり不自然です。ですから、100本持っているのを描写して、(4)の疑問文に「No」で答えたのち、この(5)を言い、さらに「He has MANY pencils」と「言葉尻にこだわった」やりとりがなされる可能性もなきにしもあらずです。
 ただsome」には「少数の」というニュアンスよりも「単数じゃないよ」の意味合いの方が強いので「少ない」という意味としては「a few」の方が普通です。

 また「いくつかの」という意味だとよく誤解されている「a number of」は非常に曖昧な表現で、「ある数の」と直訳されますがその「数」が多いのか少ないのかが言葉に出ていません。「一定数の」というこの表現が多いという意味に使われているのか少ないという意味なのかは文脈に依存します。「number」に「large/small」という形容詞を付けて「a large number of/a small number of」とすれば「多い/少ない」がはっきりします。

 「some」が示唆する数は、現実的には「ぱっと見て即座に本数が把握できない程度(多くは3本以上)」であり、なおかつ「多い」とは感じないくらいまでの範囲を意味して用いられることが多いと言えるでしょう。「2本」くらいは一目見て本数が把握されますので、「some」よりも「two」や「a couple of」がまず口をつくところです。(「two」は明確に「2」ですが、「a couple of」はそれより多少ぼけた表現であり、「2〜3」の範囲を指すこともあります。)

 具体的な数を明確に言う表現でない限り、「many」ですら主観に基づく「多い」ですから、その具体的にイメージされる「数」には個人差が大きく出る場合があります。「I bought many eggs.」という英文から「何個の卵」を連想するかは実に様々な回答が返ってきます。「多い」と感じる基準が問題であり「100個必要な(ギネス挑戦の巨大オムレス作りに挑戦など)場面」での60個は「少ない」わけです。

 「some/any」を「機械的対応」と考えてはいけません。
 中学のごく基礎的な段階では、日本語の発想を元に英語を理解する比率が高いため、どうしても「日本語での典型的な反対表現」などになぞらえた説明がなされます。
 「いくらかはある」の逆は「まったくない」なので、some/anyを機械的に対応させてまずは覚えておこうというのは導入としては間違っていないと思いますが、その段階でさえ「決して機械的なものじゃないよ」とか「もっと学習が進んだらさらに応用形も習うからね」と将来的見通しを軽く伝えておくだけでも学習者を誤解から遠ざける効果があります

 「some」と「any」は互いに独立した別の単語ですから「それぞれが意味」を持っています。

 「some」は上の用例の中でも解説しましたが、理屈から言うと「2以上だが全体数ではない」範囲を広く含むものです。「some people」という表現に「少数の人たち」という意味はありません。むしろ「全員ではない」ということが表現の主眼です。もちろん「全員ではないがほとんど」として「most」がありますので、それら既成の語でカバーしにくいと考えているからこそ「some」が使われていると考えるのが普通であり、someがその文中で意味する具体数や全体に対する比率は常に文脈から適宜判断しなければなりません。

 (重要) 「any」には2つの意味があり、1つは「1でも、2でも、3でも、どんな数字でもよい」という意味。この意味に用いられるときは必ず「any 複数となります。こちらの意味では「any number of」と互換性があります。
 もう1つの意味は「どれでもいい、種類を問わない」の意味であり「any 単数」で表れるときは必ずこちらです。こちらの意味では「any kind/type of」などとの互換性があります。

(1) I want to read any book.(どんなジャンルの本でも読みたい)
(2) I want to read any books.何冊でも本が読みたい)

 それでは「どんなジャンルの本でもいいし、何冊でも読みたい」なら?

(3-1) I want to read any kind of and any number of books.
「any kind of」なおかつ「any number of」と2つの熟語をつなげた表現。(a big and white houseと同様)
(3-2) I want to read any number of books of any kind.
「何冊の本でもよく、それがどんな種類でもいい」と前後からbooksを修飾。
(3-3) I want to read books, of whatever kind and however many.
「ああ、本が読みたい!」と先ず述べておき、「種類も数も問わない」とあとで添える口語的な言い方。

などと表現できます。

※ここは「限定詞」の項目内であり、その中に含まれる「some/any」を中心にしつつ、関連事項として「限定詞」ではな語句にも触れています。

(4) Any girl is welcome.(女の子なら誰でも歓迎します)
(5) Any girls are welcome.(女の子なら何人でも歓迎します)

 「any 単数」と「any 複数」は似ていても随分違うことを表します。場面によっては使い間違えると顰蹙を買いますのでしっかり習得してください。

(6) I want to date any girl.(女の子なら誰でもいいからデートしたい)
(7) I want to date any girls.(何人の女の子でもいいからデートしたい)

 うーん、(6)だと「女なら誰でもいいのかい!」と、(7)だと「この浮気物!」と、どちらも顰蹙を買う例ですね、これは(笑)。

(8) I have to find any job.(職種は問わず、とにかく何か1つ仕事を見つけなきゃ)
(9) I have to find any jobs.(1つと言わず、2つ3つでもいいから仕事を見つけなきゃ)

 (8)はまさに失業中で「何か仕事」が必要という状況でしょうね。
 (9)だとよほど大金が必要で、昼も夜も働くのか、と聞こえます。

 (1)〜(9)まですべて「any」が肯定文に用いられています。中学の初歩として習った「anyは疑問・否定文の中で」があくまでも仮の教えだったことがよくわかると思います。本来「any」にはこれらの例を通じて分かるとおり「強い意味(どれでも、いつくでも)」があるのです。その強い意味が「not」と共に用いられると「強い否定(どれも、、、ない/まったく、、、ない)」となる(全文否定)のです。

(重要) ちなみに「not」と「any」という部品さえ同時に現れればよいのではありません。現れる順序も「否定が先」であり「否定文の中」だと聞き手が理解してはじめて「any」がそれを追いかけることができます先に「any」が登場すると、その時点で聞き手は「どれでもいい/いくつでもいい」という「強い意味の肯定文」だと了解してしまいますので、それをnotが追いかけると聞き手は理解できなくなります。

(10-1) *Any animal is not allowed here. (文頭の「*」は非文<間違い>という意味)

 これは

(10-2) Not any animal is allowed here.(いかなる動物もここでは許可されない)
と「not」を「any」の前に引っ張り出すか、
(10-3) No animal is allowed here.
と「not any」を合体させた「no」を使う必要があります。



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195. ( no )

 「no」は「Yes/No」の1つとして返事に使えば「副詞」と見なされますが、not any」が合体したものと見なすこともでき、その場合は「形容詞(不定形容詞で「限定詞」)」です。

 全文否定の「not any」には順序も重要であり、Anyで始まった英文はその時点で肯定文であることが確定します。  そのため、あとからnotが追いかけることがもう許されなくなり、そのために「no(=not any)」があります。

 「No」で始まる英文は「形式上は肯定文」とも言えますが(「no 名詞」を主語とした肯定文形式)、意味から言えば明らかに否定ですので、これは「否定文」と呼ぶのが普通です。
 もちろん「no+名詞」は文頭に来なければならないわけではありません。

(11) I have no money.= I don't have any money.(私は一文無しだ)

 この書き換えのように「(形容詞の)no」は常に「not any」に分離が可能です。意味は同じですが「not any」と語数と音節が増えた分だけ、ことさらにより強調しようとするときに用いられることが多いといえます。

 「money」は種類を意味するとき以外は不可算名詞なので、(11)の英文は「any amount of money」なのか「any kind of money」なのかの見かけはつきません。実際どちらの意味にも使用可能なのですが、通常は前者の意味にしか用いられず、後者の意味としては「any kind of money」と種類を意味することを明確に言葉に出すのが普通です。

(この例に限らず「文法的にこうだから」で自分の意味を曖昧な文で主張するのではなく、「少しでも誤解を避けられる言い回し」を工夫するのが正しい姿勢です。ただし故意に表現の曖昧さ、2重解釈の可能性を利用した「だじゃれ」や「掛詞(かけことば)」、「ジョーク」はその限りではありません。)

 ところで「not any」が「全文否定」であるのに対して「部分否定(すべてが〜なわけではない)」も当然あり、それは「not all」の組み合わせです。(「all」は限定詞ではありません。「all the 複数」と言えます。)  関連事項として限定詞ではないallについても「部分否定」の構文をここで取り上げましょう。

 「all」は代名詞(不定代名詞)として「すべてのもの、人」の意味に、「形容詞」として「すべての」の意味に用いられますが、そこに not を含んでいると「全部が〜というわけではない」の部分否定を表します。これは構造から見て

I didn't read all the books here.→NOT <I read all the books here.> と見なすことができ、<私がここにある全部の本を読んだ>という命題を「否」とするのがnotです。

 「not any」は文中に現れる順序も重要と述べましたが、「not all」については「all, not」の順序もまれに見受けられます。

(12) All is not gold that glitters.(輝くものすべてが金というわけではない<諺>)

 これは諺(ことわざ)であり、語調を整えるため「all(すべてのもの=代名詞)」を修飾する関係代名詞thatに導かれる形容詞節(that glitters)が all の直後ではなく、先に主節を言い終えて、そから追いかけていますが、これはallとの距離がそれでも遠くないからこそ許されるものです。また「all」を主語とする述語動詞が「is」という単数なのは「all」をひとまとめと見なしているからです。

 「not any」ほど厳密ではないにしても「not all」も多くの場合は、否定語(not)が先ず現れてそれが否定文であることを確定させてから「all」が登場します。また「all+複数名詞」を主語とする場合、Not all と not を文頭に引っ張り出して「全部じゃないよ」とその文が部分否定であることを最初に明確にすることが圧倒的に多いといえます。

(13) Not all the rich people are happy. (「All the rich people are not happy」は不自然)
「この世の金持ちすべてが幸福なわけではない

 また「all」で「すべての」と呼べる対象は全体数が最低3以上である場合であり、全体数が2のときは「both of」か「副詞のboth」が使われます。

(14) Both of the two agreed. (二人とも了解した)=The two both agreed.

 「no」=「not any」ですが、

1、数に限らず〜ない。ひとつも〜ない。any 複数名詞
2、種類に限らず〜ない。どれも〜ない。any 単数名詞

 というどちらの意味の「anyがこめられている」かによって、「no」の意味も2つあるということになります。

(1) I have no book.=I do not have any book.
(私はどんな種類の本も持っていない

(2) I have no books.=I do not have any books.
(私は一冊も本を持っていない



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196.(every)

 「限定詞」の中に含まれる「every」は「〜みな」の意味ですが、「みなどれも、みなだれも」と「個々」を指す意味ですので、通常は「every + 単数名詞」と組み合わせて使われます。これは「everyday(毎日)」や「everyone(皆誰もが)」で馴染んでいる人も多いことでしょう。しかし「every three days(3日ごとに=2日置きに)」と複数名詞とつながることも珍しくありません。これは複数名詞を「1単位」と見なしているのです。気をつけていただきたいのは、日本語の「2日置き」とは「●××」、「●××」の連続ですから「/3」であり「3日毎」として「every three daysだということです。
 「1日置き」は「every other day」または「every second day」です。

(注意)another」は限定詞ですが、otherは違いますので、everyという限定詞と連続して用いられます。実はこれも「another」が限定詞というより「an」という不定冠詞が限定詞なのであり、「an+other」にそれが含まれて1語になってしまっているため「another」を限定詞に含めざるを得ないというだけのことなんです。そして「an+other day」の不定冠詞と「every」が取って代わったのが「every other day」ということです)

 また「every」が用いられるためには「全体数」が最低3以上必要です。(全体数が2のときはeitherを使う)


 以上で本サイトにおける「限定詞」の解説を終わります。
1、限定詞は「形容詞」の中でも特殊で「2つ(以上)重複して用いることができない」。
2、限定詞の種類としては「冠詞(a/an, the)」、「指示形容詞(this, these, that, those)」、「所有形容詞(my, our, your, his/her/its, their, whose」、「不定形容詞(190項〜194項の色々その他)」がある。

 このことを再度確認して、次の項目から「形容詞(限定詞以外の一般の形容詞)」に入ります。



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