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(3)文法

086.文

 まず最初に申し上げますが、もしあなたが、このサイトを初めて訪れた方で、もくじをざっと見て「文法」の章へ直行したとしたら、それは目的あってのことなのでしょうが、、どうか先を急がず一旦もくじに戻られ、「000.はじめに」「(1)英語学習全般」だけは先に通読しておいて頂きたいと思います。

 このサイトは英語学習「全般」を扱うものですが、それは言い換えると「必ず英語の技能全般を高めていただく」ためのものだということでもあります。もくじをざっと見渡し「発音?あ、いらない。テキトーにカタカナ読みでいいから。リスニング?いらない。学校の試験で文法が弱いからそれをまず勉強したいから」という発想でいるとしたら、その姿勢自体から直さないと、文法も理解できません。このサイトで解説する文法とは、その辺の英文法解説サイトのものとは違い、市販の参考書ともかなり違ったアプローチをします。

 ですから何よりも先に、このサイトが何なのか?から知っていただかないと、私としても話を進められないところがあるのです。たとえどんなに文法学習を急いでいる方であっても、いや、だったらなおさらのこと、「正しい順序」で読み進めていただく必要があります。

 理想的には、まったく順序を追って、「000.はじめに」から「(1)英語学習全般」でこのサイトのコンセプトをつかみ、「(2)発音」で発音記号をしっかり習得し、英語という言語の実体が「音声」であることに立ち返り、「読む、書く、話す、聞き取る」の総合的技能の向上の意義を十分に理解してから、いよいよ具体的な文法を扱う、この章へと進んでいただくことです。どうしても、この文法の章から手をつけたい方は、合間の時間でも構いませんので、くれぐれも「ここに至る過程」である前の章にも目を通しておいて欲しいと思います。

 一応、前の章をまったく読んでいない方のためにも、すでに述べたことをときに繰り返すつもりですが、順序良くここまで進んでこられた方は「また同じことを言ってる」と思わず、それだけ大切なことだから常に確認するのだと理解していただきたいと思います。


文とは何か?

 「文」とは何か?については実に様々な定義がありますが、あまり言語学の専門的な話や哲学的なことをここで述べても仕方ありませんので、「文とは、話し手の考えを相手に伝える言葉のまとまりである」という程度に留めることにしましょう。

 「Fire!(火事だ!)」というたった1語でもこれは文と呼べますが、学習上重要となるのは、主語とか述語とかそういう要素がどう組み合わされて英文を構成するかというような内容となります。

 ところで「文」にはどのような種類があるのでしょうか?
 
これは今から学ぼうとする内容全般を先に見通す地図となる理解ですので、学んでおいた方がいいでしょう。「学ぶ」というのは、見ず知らずの土地にひとり飛び込むようなものであり、「自分がどこにいて、これからどこへ行こうとしているのか」を客観的に把握していることで学習の効率がよくなります。知識を身につけようとするときも、ただやみくもに目の前の情報を覚えればよいのではなく、常に頭の中に整理ダンスを作り、知識と知識の縦横の関係を理解しながら前に進むことが大切です。特に文法については、それが極めて重要なのです。

 ではまずあなたが思い浮かぶ「文の種類」を言えるだけ言ってみてください。文には何種類ありますか?---答えは次の項で。



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087.文の種類

 ありとあらゆる英文を分類するとき、何に着目して分けるかによって、考え方は変わってきます。

機能による分類)---何のために使われる文章かで分類した場合

1、平叙文---もっとも普通にものを述べる文章
2、疑問文---相手にものを尋ねる文章
3、感嘆文---驚きなどを表す文章
4、命令文---相手に動作の要求などをする文章

 このそれぞれに「肯定文」と「否定文」があります。つまり「肯定平叙文、否定平叙文」などと組み合わせた名称となるわけです。

1、肯定平叙文---「~が、、だ」や「~が、、する」などの文。
I go to school by bicycle.

2、否定平叙文---「~は、、ない、しない」などの否定の意味。
She doesn't know how to swim.

3、肯定疑問文---「~しますか?」、「~ですか?」と尋ねる文。
Do you understand what I said?

4、否定疑問文---「~しませんか?」、「~ではありませんか?」と否定で尋ねる文。
Don't you know who he is?

5、肯定命令文---「~しろ、しなさい、してください」
Come here.

6、否定命令文---「~するな、しないでください」という禁止の命令
Don't leave the door open.

7、感嘆文だけはすべて肯定で、否定がありません。これは「否定感嘆文(なんと、、、でないことだろう)」という言い方自体が不自然であり使い道が存在しないからです。
How fast he runs!
What a fast runner he is!


 このように論理的には存在してもいい(でも実際には使われない)否定感嘆文までかぞえれば8種類。現実としては7種類の文があることになります。「それぞれに肯定と否定があり」と例外こみで覚えておき、全体は最初にあげた4つと理解するのが実践的でしょう。

 あとから学ぶ内容ですが、上記のように「意味、機能によって分類」する方法以外に、「構造によって分類」することもできますし、他の着眼点による分類もありますが、まずは「平叙、疑問、感嘆、命令」の4種類あると、この段階では知っておきましょう。



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088.品詞

089.品詞とは

 これは重要中の重要事項です。文法で何が大事といって、品詞を正しく理解し、知識的に整理されているかどうかで文法全体の理解の半分は決まると言って過言ではありません。
 さて、今回もまずは自分で「英語の品詞」を言えるだけ言ってみましょう。そして英語には「いくつの品詞がある」のか数えてみましょう。もし、これに正解できたら、あなたはすでに文法がかなり得意な方です。(つまり私の予想として、文法に課題を感じてこれを読んでいる方なら、98%は正解できないだろうと予測しています)

 さて、どんな品詞が思い浮かびましたか?
 名詞、形容詞、動詞、定冠詞、不定冠詞、疑問詞、関係代名詞、、、、????

 では正解を。

英語には「8つの品詞」があります。それだけです。それを「英語の8品詞」といい、具体的には、

1、名詞
2、代名詞
3、動詞
4、形容詞
5、副詞
6、前置詞
7、接続詞
8、間投詞

です。ここで「あれ?冠詞がないぞ。関係代名詞は?助動詞だってないじゃないか。あ、そうそう。過去分詞とか不定詞とか『~詞』という言葉は他にも沢山あるはずなのに、、、」と思った方いませんか?
 そんなあなたに尋ねます。日本の地名を次に続けて言ってください。

 北海道、青森県、岩手県、(いくつでもお好きなだけ)

 こう尋ねられて「練馬区」とか「横浜」とか、まして「横山町」や「ひので通り」なんてものを並べる人はいません。なぜなら、都道府県という「分類レベル」が最初に示されているから、同じようにどこかの都道府県名をつづけようとしますからね。
 またもし英語の品詞の話なのに「形容動詞」や「連体詞」なんてものまで思い浮かべたとしたら、それらは日本語文法の品詞なので「日本の地名」と言われているのに「外国の都市の名前」を混ぜてしまうようなものです。

 品詞を分類するときには、段階的な分類レベルというのがあるんです。無数に存在する英単語を「まず大雑把に8つにわけ」それから、そのそれぞれについて、「さらに細かく分類」することができます。ですから第1段階の分類は「8品詞となるのです。

 さて、先に英語の8品詞の名称だけを並べてしまいましたが、そもそも「品詞」って何でしょう?日本語で「~詞」とつく言葉なんて説明はだめですよ。だって品詞の名称を英語にしたら、そんな共通の語尾はまったくついてきませんから。
 ここでまた考えかたについての注意事項を。
 たとえば「 go は動詞、school は名詞」なんて覚え方は危険です。品詞というのは決して1つの単語について1つだけと決まっていないからなんです。なぜ1単語1品詞じゃないんでしょう。その方が勉強する側としては楽なのに残念ながらそういうふうにはなっていません。同じ単語であっても、それが文章のなかでどう使われているかによって品詞が変わります。

 品詞というのは、たとえば学級の中で生徒1人1人が受け持つ役割分担のようなものです。  今、1つの学級があり、生徒全員が必ず何かの係分担につくとしましょう。学級が正常に運営されていくためには、生徒各自が自分に任された役割分担の仕事をちゃんとこなすことです。それにより学級がスムーズに運営されます。この「学級」が「文章」であり、「係分担」が「品詞」です。

 さて最初に「英語の8品詞」として「名詞、代名詞、動詞、形容詞、副詞、前置詞、接続詞、間投詞」の名称を列記しました。これからそれぞれの品詞について個別に詳しく見ていきますが、今の段階でこれら8種類の名称を(まだそれが何を意味するのかわからなくていいですから)覚えてしまうことにしましょう。

 次のような要領で覚えてください。

名詞、代名詞、動詞」---ここまでを1つのグループにして一気に言う。
形容詞、副詞」---この2つを1つのグループとして覚える。
前置詞、接続詞、間投詞」--これらを「その他」のグループとして一気に言う。

 こうして8つの品詞を3つに区切って、ぶつぶつ唱えて口慣らしをしてください。どうしてこんなふうにグループ分けするかは、これから分かってきます。



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090.英語の8品詞

 さっそく前の項の復習をします。英語の品詞は大きく分けて全部で8種類。

1、名詞
2、代名詞
3、動詞
4、形容詞
5、副詞
6、前置詞
7、接続詞
8、間投詞

 でしたね。そしてこの8つを「3つのグループ」にして覚えてもらいました。

(1)名詞、代名詞、動詞
(2)形容詞、副詞
(3)前置詞、接続詞、間投詞

 どうしてこういうふうに3つのグループにしたかといいますと、

(1)主語述語になるもの
(2)修飾語になるもの
(3)その他

 という意味になっています。英文には必ず「主語」と「述語」が含まれており、この2つはちゃんとした体裁の文章を作る上では最低限必要不可欠な要素なのです。そして「主語」になれる言葉として「名詞、または代名詞」があり、「述語」になれるのは「動詞」だけです。だからここまでをグループ(1)としたわけです。今はまだそういう細かいことまでわからなくても構いませんが、あとからの解説が理解しやすくなる準備として、どうか私が用意したグループごとに覚える方法に従っておいてください。

 ところで学校では、「S+V」などの基本文型というものを習いますが、Sを「主語」、Vを「動詞」と覚えてしまっている人は要注意です!(そう普段から教えている教員の方もです。)
 確かにSは「Subject」の頭文字で、この英単語は「主語」を意味します。しかし「V」と略されている部分を正しく言うと「Predicate Verb」すなわち「述語動詞」であり、この「Predicate Verb」のVを文の要素を表す記号として用いています。
 「文の要素」と「品詞」をちゃんとたてわけて理解しているのなら特に問題はないのですが、同じ「動詞」という言葉をS+VのV(文の要素)と「名詞、代名詞、形容詞、副詞、動詞、、、」という品詞の1つとで、共通して用いてしまうと概念の混乱をきたす恐れがあります。事実、中学生や高校生で、この区別がついていない人を大勢見てきました。
 文の要素であるV(Predicate Verb:述語動詞)を指すときは、ちゃんと「述語動詞」と正しく呼ぶか、あるいは「述語」と呼んで欲しいと思います。「動詞」という用語は、品詞の1つを意味する場合に限って使うのが不要な混乱を回避します。

 2つめのグループは「修飾語になれる言葉」です。
 修飾語とは、「他の言葉の意味をより詳しくする飾りつけ」のようなもので、ただ「りんご」というより「赤いリンゴ」と言った方が、自分が思い描いている物と少しでも近いものを相手にイメージしてもらえ、言いたいことがより正確に伝わります。ただ「走る」というより「速く走ると言った方が詳しくなります。ここでの「赤い」や「速く」は、それぞれ「リンゴ(名詞)」、「走る(動詞)」という言葉を修飾しているわけです。修飾する相手の言葉が何であるかによって名称が2つに分かれ、「名詞(または代名詞)を修飾する言葉」を「形容詞」、「名詞以外を修飾する言葉」を「副詞」と言います。だからこの2つをペアにして覚えておくのです。

 3つめは何も共通点はなく、「1と2のグループ以外」というだけの「その他」です。

 これら3つのグループを演劇にたとえれば、(1:主役と相手役)、(2:脇役)、(3:小道具やスタッフたち)という感じです。
 さて、今完全に覚え切れなくてもいいですから、

英語の品詞は全部で8種類」、具体的には「名詞、代名詞、動詞、/形容詞、副詞、/前置詞、接続詞、間投詞

 と何回か声に出して言ってみましょう。



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091.品詞の上位分類と下位分類

 英語には8種類の品詞があります。あらゆる英単語を文章中の役割で大雑把に分類すると、8つの働きに分けることができ、それを「名詞、代名詞、動詞、形容詞、副詞、前置詞、接続詞、間投詞」というんでしたね。
 この8種類の分け方が「最上位分類」です。つまり「第1段階」の分け方ということです。  ここから更に第2段階、第3段階と細かく分けていくことができますが、文法の専門家を目指すわけではありませんので、このサイトでは、英語が使えるようになるための基礎知識として必要な話だけに絞って進めてきます。

 これも今ここで覚える必要のないことですが、あらかじめ「英語の8品詞」をさらに細かくわけるとどうなるかの一例を示しておくことにします。暗記しなくていいですから、一通りの名称に目を通してください。どこかで見覚えのある名前もあるでしょうし、初めて聞く名前もあるかも知れません。この先学ぶことがらをメニュー的にながめておくことにしましょう。

名 詞 1、可算名詞 :「普通名詞」、「集合名詞」
2、不可算名詞:「物質名詞」、「抽象名詞」、「固有名詞」
代名詞 1、人称代名詞
2、指示代名詞
3、疑問代名詞
4、関係代名詞
5、不定代名詞
動 詞 1、本動詞:「他動詞」、「自動詞」
2、助動詞
形容詞 限定詞:「冠詞(定冠詞、不定冠詞)」、「指示形容詞」、「所有形容詞」
数量形容詞
疑問形容詞
関係形容詞
など
ここに「a,an/the」つまり冠詞が含まれます。すなわち冠詞とは形容詞の仲間なのです。
副 詞 場所・様態・時の副詞
頻度の副詞
強意の副詞

疑問副詞
関係副詞
など
前置詞 語としての前置詞
句としての前置詞
接続詞 等位接続詞
従属接続詞
相関接続詞
間投詞 語としての間投詞
句としての間投詞


 8品詞を中心に下位分類していくと、沢山聞き覚えのある言葉が出てきたと思います。最終的には「暗記」しなくていいですから、頭の中に整理ダンスを作り、様々な言葉の役割について理解し、辞書を引いて「品詞」を見れば、その単語の使い方が分かるようになることを目指します。(辞書に「品詞」が必ず書かれているのは、その名称が「単語の使い方」でもあるからなのです)

 今まで「冠詞(a,an/the)」を独立した品詞と思っていた人は、それらが「形容詞」の一部につけられた「下位分類名称」であることを認識しなければなりません。だから誰かが「the は形容詞だ」と言ったとき「違うよ、それは定冠詞だよ」などと反論してはいけないのです。それは「横浜は日本にある」と言われて「違うよ、それは神奈川県だよ」と言い返すようなものです。

 「疑問詞(what, which, who,など)」という言葉がありますが、それは「疑問代名詞、疑問形容詞、疑問副詞」をまとめた名前。

 「数詞」という名前がありますが、それは「名詞や形容詞の中で特に数を表す言葉」をまとめた便宜的な呼び名。

 このようにこのメニューにまだ名前のあがっていない「~詞」もありますが、それらは各項目の中で必要に応じて解説します。皆さんは、まず「8品詞」を覚え、それ以外の色々な「~詞」という言葉は、その8つの中のどこかにあるのだ、と理解しておいてください。

 文法はちっとも難しくありません。一見ごちゃごちゃに見えることがらを「すっきりと整理」するための手助けとして文法があり、段階を踏まえて学習していけば、誰にでも理解できることなのです。

 それでは次の項から、「英語の8品詞」それぞれについて、個別にもっと詳しく見ていきましょう。



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092.名詞

 「名詞(noun)」とは、語源的に「名前」という意味です。漢字を見ればまさにそのまま「前を表す(ことば)」ですね。
 人と人とがコミュニケーションしようとするとき、身の回りのあらゆるものに名前をつけ、その名前があるからお互いが何をさしているかがわかります。名詞の中には、姿かたちがはっきりあり、目に見えて、手で触れられるものにつけた名前もありますし、言葉としては名前があっても、現実には姿形を持たない「概念」につけられた名称もあります。(例:愛、親切、苦痛など)

 「名詞とは何か?」を理解するのは簡単です。誰でも沢山、名詞の例を言えることでしょう。
pen, desk, table, chair, dog, cat, animal, man, woman, boy, girl, beauty, love, kindness, life, death, family, water, Ben, Tom, などなど
 これらの名詞は例によって、さらに細かいグループに分かれることになりますが、今はどういう言葉をまとめて「名詞」というかだけ確認することにしましょう。



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093.可算名詞と不可算名詞

 英語の名詞を考える上で非常に重要なポイントは「数えられる名詞可算名詞)」と「数えられない名詞不可算名詞)」の区別です。数えられる名詞には「単数形」と「複数形」があり、1つなのか、2つ以上なのかを言葉の上で常に明確にするというのが英語の習慣です。
 これは英語特有の言語習慣の1つであり、日本人が普段の生活の中で別に気にしない区別を英語では注意しないと正しく名詞を使えないということにもなってきます。

 「可算名詞」とは、1つ、2つ、3つ、、と数えることのできるタイプの名詞で、英語では1つだけの場合と、2つ以上のときとでは単語の形まで変えて区別する習慣があります。だから英語が話せることを目指すためには、日ごろから名詞の単複を気にかけるように心がけなければならないということです。今まで「犬」と言えば済んだところを英語で話すときは、「a dog」なのか「two dogs」なのかを反射的・無意識に正しい形で言えるように訓練しなければならないわけです。

 「不可算名詞」とは、数でかぞえることのできないタイプの名詞。こちらは「量」で捉えます。たとえば「water(水)」は容器に入った状態でなければ、数えられず、それを数えているときは、水そのものを数えているのではなく「容器の数」を数えています。「容器(たとえば cup とか glass )」は可算名詞ですが、水自体は不可算名詞ということです。
 a cup of cofee
 two glasses of water


 他に不可算名詞としてざっとあげてみると
air(空気)、beauty(美)、kindness(親切)、bread(パン)、chalk(チョーク)
 などがります。ここで「あれ?」と思った人、いませんか?

 日本語的な感覚から言えば「パン」や「チョーク」は、1個、2個、、1本、2本と数えられそうなものですよね?でも、それは日本語の発想であり、英語ではこれらも数えられない部類に入るのです。ということは、日本人が「パン」というときと英語話者が「 bread 」と言うときとでは、思い浮かべるイメージも実はちょっと違っているということでもあります。ですからこういうちょっとした文法を学ぶときでも、「新しい言語文化」を自分の感覚の中に構築していくことから始めるのです。
 いいですか?この考え方はとても重要ですよ。新しい知識を覚えるのではなく、新しい感覚を身につけようとすることが大事なのです。今までとは違ったものの見方をする(=新しいものの見方もできる)というのが、外国語を学ぶときに非常に重要な姿勢です。どう違うのかを最初は言葉や理屈で学びますが、そうして感覚が得られたら、もう文法という理屈は忘れていいんです。文法は暗記するためのものではなく、感覚の鍛え方を教える指針です。いくら文法事項を暗記しても、感覚そのものが身につかなければ英語は話せるようになりません。

 さて、英語で「 bread (パン)」は数えられないといいました。なぜでしょう?
 まず自由に1つのパンを思い描いてください。食パンでもコッペパンでもどうぞご自由に。それを2つにちぎってください。
 ちぎられたそれぞれの「破片」は、あいかわらずパンと呼ぶことができますね?もっとこまかくちぎってください。指でやっとつまめるほどの小さな破片になっても、やっぱりパンです。
 「1本のチョーク」と聞けば、黒板に字を書くあのチョークを思い浮かべますが、新品なら10センチ程度の長さですか。それをポキッと半分に折って2つにします。その2つのどちらもチョークですね。粉々に砕いても、つまみあげたかけらがやっぱりチョークです。

 一方、万年筆( pen )はどうでしょう?ボッキリと折ってしまったら、どちらか片方だけを指して万年筆と呼べますか?いいえ、それはもう万年筆ではなくなってしまいます。折らずに分解したとしましょう。キャップ、軸、芯、ペン先などの部品に分かれていきますが、それらの部品の1つを取り上げて「これは万年筆です」とは言えません。

 これが「 可算名詞」と「不可算名詞」の感覚的な区別です。可算名詞とは、「ある決まった姿形」のイメージがあり、その形がくずれてしまうと、もう同じ名前で呼べなくなるのです。決まった形のまま、それが複数あれば、1つ、2つと数えられます。

 パンやチョークのように日本人的感覚からは一見数えられるように思える名詞でも、英語ではイメージの方法自体が違う場合がありますので、こういう例に出会ったときは注意しましょう。

 さて、名詞全体を「可算名詞」と「不可算名詞」の2つにわけましたが、もっと細かく分類されていきます。

可算名詞 1、普通名詞
2、集合名詞
不可算名詞 3、物質名詞
4、抽象名詞
5、固有名詞

 つまり名詞全体は「最初に2つ」、「それから5つ」に分けられるということです。どういう理由でこんなふうに細かく分けなければならないかを次の項から丁寧に説明していきます。



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094.普通名詞

 2つある可算名詞のうちの1つ。名詞と聞いて一番普通に思い浮かぶ、身の回りにある品物の一般名称です。特徴としては次のようなことが言えます:

1、その名前で呼ばれるもの(人や生き物もすべて含めて)が、この世に少なくとも2つ以上は存在する。(多くは無数にある)
2、可算名詞ですから、1、2、3、、と数えられる。2つ以上になると「複数形」という形を取る。
3、決まった形と限界があり、それがくずれるともうその名前で呼ぶことができなくなる。(くだけたペンのかけらの例)
4、単数形のとき原則として「名詞単独」で用いられることがなく、必ず「限定詞(冠詞「 a,an/the 」や my, your など)」を伴う。

 1から3については、すでに述べたこととも重なりますのですぐ納得がいくでしょう。
 4はちょっと問題です。また日本人が持ち合わせていない「新しい感覚」が使われています。実際、これまでどれほど「 a,an/the の使い分けがよく分からない」という悩みの声を聞いてきたかわかりません。私としても早くそれを解決してさしあげたいのですが、物事には順序があります。もうちょっと辛抱してくださいね。必ずあとから深く納得できるようにしますから。(すでに簡単に学んだとおり「冠詞」は「形容詞」に属しますので、その項目で説明することとなります。

 この解説は中学生で一応英語を多少なりとも学んだことのある方なら理解できるように進めますので、軽く説明したことをあとになてまた、より深い解説を加えていきます。

 さて、以上1~4の条件に当てはまる名詞の例をあげてみますので、それらを見て「普通名詞」というもののイメージをまずつかんでください。

簡単に理解できる例:
book, mother, child, baby, school, car, bus, dog, catなど

There are some books on the desk.
(机の上に数冊の本がある。)
Many mothers and fathers are sitting in the room.
(大勢の父母が部屋の中に座っている。)
I have one cat and two dogs.
(私は猫を1匹と犬を2匹飼っている。)

ちょっと理解が難しいかも知れない例:
earth (地球)、moon(月)、sun(太陽)>常識的には1つしかないけど普通名詞。

The moon travels around the earth.
(月は地球の周りを回っている。)
The sun is shining through the window.
(窓から陽がさしこんでいる。)

earth, moon, sun は、それぞれ1つしかないので、普通名詞の1番目の条件である「その名前で呼ばれるものがこの世に沢山ある」という条件に合っていませんね。しかし、それについてはこう考えてください。「宇宙は無限に広いため、地球や月や太陽が、どこかにまだあるかも知れない」----まだあるのかないのかわからないから、「あるかも知れない」可能性のため、普通名詞にしておく、ということです。実際、地球以外の惑星で「月がいくつかある」とされるものもあり、これは「地球にとっての月にあたる星」という意味なので、確かに普通名詞ですね。

There are some planets which have some moons with them.

 だから太陽が普通名詞であるのも「太陽系の中心で光り輝いているのが我々の太陽だが、ほかの宇宙では、また別の太陽が中心になっているかも知れない」という考えからだと言えます。

 こうして現実の例を見ていくと、最初の理解の範囲内にうまくおさまらない例も出てきますが、それでもどこか「基本通り」のイメージがあり、その延長の中で「普通名詞」として把握されているわけです。

 普通名詞には単数形と複数形があり、形が違ってきますが、誰でも知っているのは、「 pen→pens 」や「 >peach→peaches 」のように単数形の語尾に -s/-es をつけるということでしょう。そのほかに「 child→children 」や「 ox→oxen」のように単語の形自体が変わってしまうものや、「 fish→fish 」のように「単複同形」と呼ばれる「複数形になっても同じ形のまま」のものがありますが、「複数形の作り方」についての詳細は、名詞を一通り説明したあとにまわすこととしましょう。(まずは全体像をざっとつかんで、さらに細かいことを理解するようにしましょう)



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095.集合名詞

family, people, staff, police, class, team

 これらの名詞にはある共通性があります。それは1人や1つのものの名前としてではなく(だけでなく)、あるグループ・団体に対してつけられた名前だということです。つまり「団体名」としての名詞を「集合名詞」といいます。団体についた名前なので、イメージとしては、その団体に属する「人たち」がその意味となり、従って、見かけが単数形でも、複数を表す名詞として扱います。

My family are all fine.(うちの家族は皆元気だ。)
Some people are good; others are bad.(善良な人々もいれば、悪い人々もいる。)
All the staff are out now.(スタッフは今全員外出中だ。)
I will call police.(警察を呼びます。)

 集合名詞として使われる単語は、そのまま普通名詞にもなれます。その場合は団体1つで1つの単数名詞として扱うため複数形も取ります。

There are only ten families in the village.(その村には、10家族(=世帯)しか住んでいない。)
There are a lot of peoples in the world.(世界には多くの種類の民族がある。)
All the staffs joined the party.(すべての部署が、パーティに参加した。)

 「 family 」がその構成員である「父、母、私、兄、姉、弟、妹」などの「人の集まり」としてイメージされると、代名詞なら wethey で受けることになりますが、「家族」というものを「単位」として見れば「沢山の家族」があってよいわけですから、その場合は普通名詞として扱います。1つの言葉に1つの品詞が固定されているのではなく、「どういう意味として使われるか」によって品詞がその都度決まるのだということを忘れないでください。(「品詞」とは「文中における言葉の使われ方」の名称でしたね。)

 「 people 」は、「人々」の意味としては最初から意味が複数であり、かつ少なくとも3人以上の人の集まりというイメージがあります。「人ひとり」を one people とは言えません( one personという)し、2人程度も「 two people 」というのは不自然とされます(これも two persons )。「人々」は最初から複数形のようなものですから、その意味をまた複数にする理由がありません。しかし、「民族」という意味なら、地域や人種などそれぞれで「1つ」のグループとみなせますから、グループは沢山あっても構いません。つまり「 many peoples 」というのは「 Japanese people, American people, French people.. 」など様々国の人たちの意味だったり、「 Asian people, European people, African people... 」のように地域ごとの民族の意味だったりします。

 police は、よく間違えて使われやすいのですが、「警察官」1人だけを指すなら「 policeman 」とか「 plice officer 」といいます。( policeman が男性中心の表現で女性差別だという批判があり、最近では性別を意味に含まない police officer が主流です。)police は「警察職員」を総称的に指す言葉であり、他の family, people, staffなどと同じように考えます。

 集合名詞というものが理解できましたでしょうか?くれぐれも「 family は集合名詞だ」という覚え方はしないでください。繰り返しますが、品詞とは単語が文の中で「どう使われるか」の名称ですから、family という名詞は、集合名詞としても、普通名詞としても使われることがあるというふうに覚える必要があります。集合名詞という単語があるのではなく、集合名詞という使い方があるということです。「 My family are fine. という文で family は集合名詞だ(=集合名詞として使われている)」というのは正しい言い方ですよ。同様に「 There are ten families in the village.families は、普通名詞 family の複数形だ」というのも正しい言い方です。

 以上、094と095で、「可算名詞」のグループである「普通名詞」と「集合名詞」がどんなものかを説明しました。



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096.物質名詞

 ここからは「不可算名詞」に入ります。
 094「可算名詞と不可算名詞」の中で軽く触れたように「 bread(パン)」や「 chalk(チョーク)」は、ちぎっても砕いても、そのかけらの名前が同じです。これは「ある形になったもの」に名前があるのではなく、それを作っている「材質」にその名前がつけられているからです。すなわち日本語の「パン」は食パンやコッペパンのように、なんらかの形になっているもののイメージが先行しますが、英語的発想では「パン生地」のことを bread と呼ぶのだと考えてください。

(物質名詞の例)
water, air, sugar, salt, rice, iron, beef, mutton

 物質名詞に共通する特徴は次のようなものです:

1、材質そのものにつけられた名称。決まった形を持たず、量が多くても少なくても名前が同じ。
2、そのままでは数でかぞえることができず、容器や単位を数えることで数量を把握する。
3、従ってもともと one を意味する「 a/an 」を直接、物質名詞につけることはできない。
4、単複の区別がないから、複数形にしない。

 先の「集合名詞」も使い方によって「普通名詞」になりましたが、物質名詞もまた使い方(意味)によって普通名詞的に扱うことがあります。実はすべての名詞が、その基本である普通名詞に一時的に扱いを変えることがあります。それを「転用(本来の使い道と違う使い方を一時的にすること)」といいますが、最初からそういう特殊なことを扱うと混乱しますから、まずは典型的な意味と使い方を学ぶことにしましょう。

 数で数えられないということは、many(多数の)と組み合わせられないということでもあります。日本語の「多くの」という言葉は「多数、多量」の両方に使えますが、英語では、数が多いなら「 many 」、量が多いなら「 much 」と使い分けがあります。その両方の意味に使ってよいのが「 a lot of/lots of 」です。
 これもあとから詳しく説明しますが、「 some/any 」も「いくつかの・いくらかの/いくつでも・いくらでも」と数量両方の意味に使えますから、物質名詞と一緒に使うことができます。

 名詞によっては、意味によって普通名詞だったり物質名詞だったりする例があります:
glass:「ガラス」という材質の意味なら物質名詞。「グラス(容器)」の意味なら普通名詞です。
glasses は、「眼鏡」の意味として使われると、普通名詞ですが、これは「左右のレンズ一組」という発想から「つねに2つで1つ」の複数形しかありません。だから眼鏡1つを「 a pair of glasses 」といい、2つ以上なら「 two pairs of glasses 」と「 pair 」を数えて表現します。

 coffee, milk など本来は物質名詞であり、そのまま数えることのできないものでも、状況から決まった容器を自動的に連想する場合は、「その容器に入った状態のもの」という意味として普通名詞になります。

Two hot coffees, please.

 これを「 two cups of coffee 」と本来の物質名詞として表現することはまったく正しいのですが、喫茶店などでは、「1人前」という「決まった容器に決まった量」でなければ one と呼べないため、その発想が coffee を普通名詞化してしまいます。

 日本人的発想から特に注意しなければならないのは「肉」でしょう。
 食生活に馴染みの深い動物ほど、生きているときと死んで肉になったときとでは呼び名の区別があります(cow-beef, , pig-pork, sheep-mutton など)。生きている動物は1匹、2匹、、と数えられる普通名詞と考えますが、肉になってしまったら、これは物質名詞です。「動物」と「肉」で名称が違うものについては、使い間違えるととんでもない意味になりますから注意しましょう。

I like a pig./I like pigs.(私は豚<という動物>が好き)
I like pork.(私は豚肉<を食べるの>が好き)
I ate pork last night.(昨夜、豚肉を食べた)
I ate a pig last night.(昨夜、豚<まるごと1匹>を食べた)

 すべての動物に「生きているとき用」と「肉になったとき用」の名称が用意されているわけではありません。英語話者の文化の中で食用として広く認識されていない動物は、肉になっても名前がかわりません。だから、そういう動物の名前を英文で使うときは、「a,an/the」の使い分けや単複の用法がしっかり身についていないと、これもまたとんでもない誤解を招きます。

I like a cat/cats.(猫<という動物>が好き)
I like cat.猫肉が好き)!!

 「文法なんて知らなくても通じる!」と基本をおろそかにする人は「 I like 」に続けて冠詞もつけず単数の「 horse, dog 」などをつなげてしまって平然とするでしょう。たとえそれが状況から「まさか肉を食べたい」の意味でないと常識的にわかってもらえたとしても、その言葉の響きには「馬肉、犬肉」がしっかり込められているのであり、英語話者は、その生々しい言葉の響きに驚き、戸惑い、抵抗感を感じながらも、「文法を知らない教養のない英語」として仕方なく理解に努めてくれているだけなのです。そんな相手の気分も知らず「これで通じるんだから、これでいい」なんて、このサイトの読者の皆さんは決して考えないようにしてくださいね。

 このように「特に肉としての名称が用意されていない動物」を表す名詞を「無冠詞、単数形」で文章に用いると、それは「その動物の肉」の意味になってしまうのです。

I want to eat fish.(魚<の肉、あるいは魚料理>が食べたい)
I want to eat a fish.(魚1匹まるごと食べたい)

 魚程度なら、「魚を食べたい」が「魚の身という食物」の意味でも「1匹まるごとの魚」でもあまり問題は起きないでしょうが、これでも意味するものはちがうのです。

 普通名詞と物質名詞の違いがしっかり分かってくると、「普通名詞は、単数形のとき、かならず最低でも冠詞をつける」なんて規則でしばられたような暗記が意味のないこともわかります。「 dog は普通名詞だ」という固定的な暗記も、これまで述べた理由から無意味なのです。

Dog was all around.

 さてこの英文の意味は?
 今の話の流れがありますから、さほど難しい問題じゃありませんね?この英文の意味は、たとえば犬が車にはねられるなどして、「犬の肉がそこらじゅうにとびちっていた」という状況です。死んで肉辺になってしまえば、a dog は、ただの dog になってしまうのです。逆を言えば「 a dog 」というべきところで「 dog 」といえば、犬肉の意味なのです。(ただし「 hot dog(ホットドッグ=ソーセージを挟んだコッペパンの料理。物質名詞)」を短縮して単に「 I like dog.」とは言いますので、それまで犬肉とは思わないようにしてください。)

 さて、「物質名詞」、分かってきましたか?これについてもまだまだ補足すべきことがありますが、基本だけ押さえて今は次へ進みましょう。



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097.抽象名詞

 物質名詞に続いて「不可算名詞」の2つめは「抽象名詞」です。
 これは具体的な物(人や生き物、物体)につけられた名称ではなく、実際には姿形のない「イメージや思考」につけられた名前です。たとえば「愛、喜び、悲しみ、美、平和、教育」など「それは確かにある」んですが、「本、犬、机」などのように具体的で固定的な形を持ちません。すなわち「人間の思考」によって生み出された「概念」につけられた名称です。
 この抽象名詞の中には「別の品詞(特に形容詞)から派生」して作られたものも多くあります。(逆に抽象名詞から作られた他の品詞もあります)
 これについては(もとになる品詞の話がまだなので)他の品詞の中でまたお話しますが、ここでは軽くその例を見ておくに留めましょう。

形容詞から派生した抽象名詞
cruel(残酷な)>cruelty(残虐性)
kind(親切な)>kindness(親切心)

抽象名詞から名詞が派生した例
beauty(美)>beautiful(美しい)
courage(勇気)>courageous(勇敢な)

(抽象名詞が普通名詞に「転用」される例)

 さて、品詞というのが単語固有のものではなく、あくまでも「その単語が文中でどう使われているか」の名称だということはすでにお話しましたが、この抽象名詞も、使われ方によっては普通名詞とみなせる場合があります。

kindness
1、「親切心、親切」という概念を指すときは抽象名詞(複数形もなく、単数形に「 a 」もつかない)
2、「親切な行い」という具体的行為を指すときは普通名詞(だから「 kindnesses 」と複数形にもなる)

beauty
1、「美」という概念を意味するときは抽象名詞
2、「美人」という意味に使えば普通名詞

 この違いは「物質名詞」の glass(ガラス=材質名)が、glasses(眼鏡)という普通名詞にもなることとよく似ています。

 だんだん、色々な種類の名詞が理解できたきたでしょうか。不可算名詞もあと1つです。



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098.固有名詞

 これは人名、地名など「その人、そのもの」に対してのみ与えられた名前のことです。常に大文字で書き始めます。
 本来、「それだけ」につけられた名前ですから、数える理由が最初からなく、そのため不可算名詞であり、「 a,an/the 」もつきませんし、複数形にもなりません。

Tom, John, Japan, America, Mt. Fuji

 ところで人の名前など「同姓(同名)」もありますよね。でも固有名詞としての考え方から言うと、それらは「偶然の一致」とみなします。しかし、あえて「~という名前の人」という意味に用いると、臨時に固有名詞を普通名詞扱いとすることもできます。書き方は固有名詞として最初を大文字にしたままですが、「 a,an/the 」をつけたり複数形にしたりもできるのは普通名詞としての扱いを受けるからです。このあたり固有名詞と普通名詞の「完全な線引き」が多少あいまいなときもあり、それがかえって表現としては便利さをもたらしています。

There are three Suzukis in my class.
(私のクラスには「鈴木」という名前の人が3人いる)
A Mr.Sato came to see you last night.
佐藤さんという方が昨夜あなたに会いにきました)
The Taro in my classroom is taller than the other Taro in your class.
うちのクラスにいる太郎君の方が君のクラスの太郎君より背が高い)
Yamadas went to America yesterday.
山田家の人たちは昨日アメリカに行った)

 「固有名詞」とは人が自由につけた名前ですから、その呼び方はそれに従うほかありません。
 本のタイトルなど「 A Better Guide to English Grammar 」のように普通名詞を元に名前としてあるものも多くあり、これは「それでそのまま固有名詞」と考えます。

 地名でも、the がついていたり複数であったりするものがあります。これも「そういう名前」としてそのまま覚えるほかありません。

the United States of America (the U.S.)(アメリカ合衆国)
the Philippines(フィリピン)
the Alps(アルプス山脈)

 このような例は「州の集合体」、「諸島」、「山脈」のように意味として確かに何かの複数をまとめて1つの固有名詞にしている場合が多いです。

 有名な固有名詞は「それが持つイメージ」を一般化して「~のような人・もの」、「~の製品」という意味に使うことがあり、その場合は普通名詞扱いとなります。

I want to be an Edison in the future.
(将来、エジソンのような人物<偉大な発明家>になりたい)
This is a Sony.
(これはソニーの製品だ)
I will buy a Honda next time.
(次は本田<の車>を買う)

 このような例文では普通名詞にしないと「エジソンという人物」には決してなれませんし、「これがソニーだ」というのも変なのがわかりますね。また a Honda で「 a 」がなければ、本田という会社を丸ごと買う意味になってしまいます。
 このように「~のような人、もの」、「~の製品」として普通名詞に転用されるのは、その固有名詞が広く知れ渡っており、誰もが共通のイメージとして理解できる場合のみです。「 I want to be a Mr. Sato. 」では佐藤という人物がどういう分野で有名なのかが伝わらないため、意味として通じません。


 これまで5種類の「名詞」を見てきましたが、様々な例を通じて理解できるのは、1つの名詞が別の名詞下位分類に使い分けられたり、ときには同時に2種類の使い方をされることも珍しくないということです。
 これは名詞の中だけに限ったことではなく、名詞が形容詞的に用いられたりなどということもあります。単語の品詞はその場その場での「使われ方」であり、それが同時に複数の使われ方を兼ねているということもあるのだ、と理解しましょう。決して固定的になりすぎないことが文法を素直に理解する上で大切なことです。



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099.名詞の複数形

 英語には普通名詞の単複を言葉の形でも区別するという習慣があります。
 必要に応じて普通名詞の単数形・複数形を使い分けるということは中学の段階で習うことですが、日本語にはそういう習慣がないため、なかなか感覚にまで定着させるのは難しいことです。現実問題として言えば、英語話者から見れば外国人である私たちが名詞の単複で間違えても、あまり大きな問題が発生することはないと思われますが、これもやはり「慣れ」の問題で、日ごろから名詞の単複に問題意識を持っていれば、徐々に自然と正しい形が口をついて出るようになります。

 まずはごく基本的な普通名詞について、頭で考えるのではなく感覚的に単複の語形を選んで使えるように自分自身を訓練します。これはあとで述べる「冠詞」の使い方とからめる必要があるので、ここではごく簡単に説明しますが、

a cat (A)「どれとはいわないが、この世に多くいる猫の中から任意に取り出した1匹の猫」
a cat (B)「実際に目にしている猫であり、数は1匹」
the cat 今話者と聞き手の両方が共通理解している「その猫」
cats (A)の意味の複数形(「猫」全般を指す。「猫という動物」)
some cats (B)の意味の複数形(何匹か具体的な数字はともかくとして、少なくとも複数の猫)
the cats 1、お互いが了解している「あの猫たち」 2、世界中の猫一匹残らず)

 これらの原則的な区別をしっかり理解し、使いこなすことが重要です。だから名詞の使いこなしとは「冠詞」の用法とセットになって身につくものなのですが、たとえそれを身につけたくても、普通名詞をどうやって複数形にすればいいかが分からないとできません。
 まだまだ英文理解の直接的な手がかりとなる話に入る以前の「断片的基礎知識」の段階なのでちょっと退屈かとは思いますが、「名詞の複数形の作り方」がわからないとさすがに困りますので、ここでそれを解説します。

 一応、色々な場合をまとめて解説しますので、中にはたとえば中学校段階の方にはまだ必要ない解説も出てきます。ですから「すでに習ったことを確認する」か、ちょっと「まだ習っていないことにはどんなことがあるか先取りして眺めておく」気持ちで読んでください。学習者の現状によっても話は変わってきますが、ここで何かを暗記しようとしなくても構いません。すでに覚えていなければならないことで記憶が曖昧になっている事柄があれば、それはしっかり復習していただきたいですが、そうでなければざっと見通しておいて、あとから必要に応じて詳しく学びなおしてもよいでしょう。


 それでは、普通名詞について、その複数形の作り方を見ていくことにしましょう。

 名詞の複数形については大きくわけて3種類あります:
1、規則的に変化するもの
2、不規則な変化をするもの
3、単複同形(単数形と複数形で形がかわらないもの)

※中には上記1~3にまたがる名詞もあります。

 「名詞の複数形なんて簡単じゃないか。-(e)s で終らせればいいだけで、あとは多少の例外を覚えておけばOK」なんてたかをくくっている人、次の「規則的に変化するもの」だけでも、ちゃんと学ぶと意外と面倒な問題が沢山あることに気づきますよ。



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100.---1、規則的に変化するもの

 原則としては単数形に「-s/-es」を加えるる形となります。この語尾が「複数語尾」であり、日本語の「~たち」にあたると考えてもよいのですが、日本語の「~たち」は人にしかつかず、さらにつける・つけないは自由なことも多いのに対して英語の複数形は言葉の習慣であり、つけるべき複数語尾をつけないとそれは間違いとされます。

(1)一番簡単なのは、名詞にただ「-s」をつけるだけのもの。その「-s」の発音は名詞の語尾が「有声音」か「無声音」かに合わせて [ s ], [ z ] となります。 [ s/z ] は発音するときの口の形がまったく同じであり、だから名詞語尾が有声音ならそのまま有声音、無声音なら無声音で発音するのが読みやすいからです。

名詞語尾が無声音: books, desks, pets, cats など
名詞語尾が有声音: doors, eggs, games, chairs など

(2)名詞語尾の発音が [ s/z ] と紛れてしまい、複数形であることが発音から明確にならない場合は、「-es [ iz ] 」で終わらせます( 具体的には [ s, ʃ, ʒ, tʃ, dʒ ] )
 (ただし英語の歴史から言うと「発音しにくいから [-iz] というふうに [ i ] 音を挟んだのではなく、実はもっとも古く、複数語尾はすべて「 -es 」だったのです。それが -ese が脱落するようになり、そのまま s をつければよい形となるものが現れたというのが本当のところなのだそうです。つまり -es 」を[ iz ] と読まないと「読みにくい、聞き取りにくい」ものだけが、古い形をそのまま残したということですね。これなど「 a/an 」の使い分けの歴史に似ています。)

bus buses
lens lenses
box boxes
bush bushes
bench benches
face faces

※原則として単語の意味や発音記号は書きません。もし意味のわからない単語があったり、単数形の発音も分からない場合は goo辞書をご参照ください。(自らが一手間かけるのも単語を覚える上では大切な経験となります。)

★注意1:もとの単数形が最初から「 -e 」で終わっている場合は、「 -s 」のみを加えますが、単数形のとき発音されなかった「 e 」も複数になったときは [ iz ] の発音の一部となります。

★注意2:日本人が英単語を「カタカナ読み」してしまうと「month」などをつい「monthes」としてしまいがちですが、「month」の語尾は [ θ ] 音なのでこれはまったくの原則通りです。

month [ mʌ́nθ ] months[ mʌ́nθs ]
bath [ bǽθ ] baths[ bǽθs ]
cloth [ klɔ́ːθ ] cloths[ klɔ́ːθs ] (ただしclothes[ klóu(ð)z ] は「衣類」の意味)

★注意3:複数形の語尾は発音」によって決まるものであり、スペルで決まるのではありません。ここを混同しないように。

stomachstomachs (chは [ k ] と発音)

★注意4文字を複数形にする場合、ただ「 -s 」をつけて構いせんが、見た目にわかりにくくなるため、「 's」をつけることも多くあります。特に小文字を複数形にすると「as, is」など別の単語に見えてしまいますので、小文字の複数形はすべて「's」で複数にするべきでしょう。

There are two t's in 'hitting'. (hittingという語には t の文字が2つあります)
I have five A's and three B's. (私<の成績に>は、Aが5つ、Bが3つある)

★注意5house という単語はやや変則的で「 houses 」の発音が「 [ z ]前方同化(「様々な音声学的現象」の「066.同化」参照)して、もとの単数形「 house 」の語尾が有声音化し [ háuziz ] という発音になります。

(3)単数形の語尾が「 o 」1個で終わるタイプの名詞には要注意!これは「 -es 」をつけるものと「 -s 」だけをつけるものがあり、さらに加えてそのどちらでもいいというもさえあります。

potato potatoes
tomato tomatoes
hero heroes
echo echoes

 これら「 -es 」をつける「 -o 」で終わる単語は日常的に馴染みの深い名詞であることが多いと言われます。一方、語源的に別の単語の省略形に由来するものは、-s だけをつけます。これらはたとえば「 photographs 」がまずあり、そこから「 graph 」が脱落したと考えればよいでしょう。

piano(<pianoforte) pianos
photo (<photograph) photos
kilo(<kilogram, kilometer, etc) kilos
auto(<automobile) autos

 このように「 -o」で終わる単数形は、その複数形の作り方がまちまちに見えます。「日常的に馴染みがある」とか「もともと別の単語の短縮形だ」と言われても、英語を学び始めた人たちにとって、そんなことピンと来ませんよね。ですから、基本としては、「 -o 」で終わる単語は(確信が持てなければ)辞書で複数形をきちんと確認するというのが一番でしょう。

banjo banjos, banjoes
mosquito mosquitos, mosquitoes
mango mangos, mangoes
zero zeros, zeroes
volcano volcanos, volcanoes

 英語本来の語彙に「 -o 」で終わるものはもともとなく、これらは外国語から取り入れられた外来語です。
 英語に多少なれてくると自然と理解されることですが、英単語には非常に多くの「外来語(外国語から取り入れられた語彙)」がまじっており、それは日本人が外来語と純粋な大和言葉とに精神的な距離感を違って感じるのと同じく、英語話者にとっても外来語は、「やや外国語っぽいイメージ」がつきまとうものです。そのようなものは、「ただ -s をつける」傾向が強く、一方、より深く英語文化に浸透した単語は、完全な英単語としてみなされるようになり、そうなると「 -es 」の語尾をつける傾向が出てきます。
 上記のように「どちらも使われる」というのは、外国語由来の英単語が、完全な英単語になる「過渡期」にあるものと言えます。だからいかにも外来語という扱いもされるし、すでに完全な英単語という扱いをする人も大勢いるという現状があるわけです。このような「揺れ」が現実に存在することからも、「名詞の単複」ということさえ「人が決めたルールに従っている」のではなく、英語文化を共有する人々の「感性」によってそのスペルなどが定着していることがわかります。

buffalo buffalo, buffalos, buffaloes

 この「buffalo」にいたっては、あとで述べる「単複同形」まであり、「 -os 」という外来語扱いの複数形と「 -oes 」という英語としてすっかり浸透した複数形を加え、3通りの複数形が辞書的には認められています。単複同形についてはあとで詳しく述べますが、「群をなして生活する生き物」によくある傾向で、もともと群につけられた名称が個体にもそのまま用いられたのが単複同形です。だから buffalo という動物も英語文化の中では「群生動物」というイメージが先行する人たちもいて、その人たちはこの単語を単複同形で使いますが、buffalo に馴染みのない地方にいる英語話者たちは、dog, cat 同様に単なる動物なわけです。そして buffalo という o で終わる「外来語」との日常的距離感によって「 -os/-oes 」のどちらを主に使うかという傾向性が出ているわけです。(こうなってくると「規則変化」と言いながら、ちっとも規則的でないように思えてきますね。)

(4)-f, -fe」で終わる単語も要注意!これらは先の「 house→houses 」と同様に複数語尾の -es を [ iz ] と発音し、それが前方同化を起こす(=直前の子音を有声化する)ことで [ f ] [ v ] となるケースが原則。しかし、そうならない例外もある。またやはり、どちらでもいいという例もある。
 こうなってくると原則はあっても、例外に接したときすぐそれを見抜くのはまず不可能と言えます。英語話者たちは日常でそういう例に数多く接する中で「正しい形に馴染んでいる」に過ぎず、逆を言えば、正しくない形が「耳に逆らう」という感性を作り上げているわけです。また、この種の例外は決して多くないので、先にそれらを覚えてしまい、あとは常に原則通りと考えておいてもいいでしょう。(それでも不安なときは必ず辞書で確認するのが一番です。)

原則通り:
knife knives
wife wives
wolf wolves
shelf shelves
half halves
thief thieves
life lives
leaf leaves

例外的:
safe  safes
chief  chiefs
handkerchief  handkerchiefs
mischief mischiefs
proof proofs
belief beliefs
gulf gulfs
cliff cliffs

どちらの形もある:
dwarf dwarfs, dwarves
turf turfs, turves
hoof hoofs, hooves
scarf scarfs, scarves
wharf wharfs, wharves

(5)複数語尾が -ths となるもの。これも少々やっかいです。本当に英語って規則通りにいかない例外だらけで、困った言語ですよね。この語尾が -ths となる単語も一応の原則らしきものはあっても例外多発でとても「ルール」とは呼びにくいものがあります。慣れるしかないということですね。(つまり使ったことのない-thで終わる名詞を複数にするときは辞書で確認ということ)

[ θs ] :主に「短母音+ th 」の場合、「 -ths 」は無声音 [ θs ] で発音されるが、別の子音をはさんだ長母音も語尾は無声音のまま。また例外もある。

cloths(布)
deaths(死)
smiths(鍛冶屋)
months(月)
breaths(呼吸)
depths(深さ)
lengths(長さ)
ninths(9分の~)
births(誕生)
hearths(炉床)
fourths(4分の~)

faiths(信仰)
heaths(ヒース<低木>)
growths(成長)

[ ðz ] :主に「長母音(二重母音含む)+ -th 」が複数になると [ ðz ] の発音になる。

mouths
baths

[ θs ], [ ðz ] どちらの発音も認められている例

truths
youths
oaths
sheaths

 以上が「規則的に変化するもの」です。「どこが規則的なんだ!?」と言いたくなるくらい様々な場合があって困ったものですね。



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101.---2、不規則な変化をするもの

 語尾を「-(e)s」で終わらせることで複数形とするものを「規則変化」とするのに対して、「不規則変化」をする名詞には次のようなものがあります。

(1)母音が変化するもの
(2)語尾が-enとなるもの
(3)外来語の複数形をそのまま使うもの
(4)単複同形

(1)母音が変化するもの

 footfeet となるように単語の中の母音が変化して複数形となるもののこと。これは一見母音が変化することで複数を表すと見えますが、英語の歴史から言うと、実はそうではなく、footの語尾に複数標識がつけられ、音声学的な理由からその影響を受けて母音も変化した時期があり、その後語尾の複数標識が脱落し、母音変化だけが形として残ったものだそうです。まあ、このあたりは現代英語を学ぶ上であまり重要なことではないかも知れませんが、一応事実として補足だけしておきます。(英語で「変母音複数」と呼ばれるものはすべてこの原理によるそうです。)

foot [ fút ] feet [ fíːt ] [ u ] → [ iː ]
tooth [ túːθ ] teeth [ tíːθ ] [ uː ] → [ iː ]
goose [ gúːs ] geese [ gíːs ] [ uː ] → [ iː ]
man [ mǽn ] men [ mén ] [ ǽ ] → [ é ]
woman [ wúmən ] women [ wímin ] 要注意:第1、第2音節とも不規則に変化する
gentleman [ géntlmən ] gentlemen [ géntlmən ] アクセントが第1音節のみにあるため、-man, -men は弱形発音 [ -mən ] で同じ
snowman [ snóumæ̀n ] snowmen [ snóumèn ] -man, -men にも第2アクセントがあるため弱形化せず発音も異なる
louse [ láus ] lice [ láis ] 母音発音の変化だけでなく語尾のスペル変化にも注意
mouse [ máus ] mice [ máis ] 母音発音の変化だけでなく語尾のスペル変化にも注意

 発音として注意しなければならないのは「 man → men 」では確かに母音部分の発音が変わっていますが、「gentleman/gentlemen」では、「 gentle- 」のみにアクセントがあり、「 -man/-men 」はいずれも曖昧母音 [ -mən ] で発音は変わらないということ。しかし「 snowman 」では、「 snow- 」に第1アクセントがあり、なおかつ「 -man/-men 」にも第2アクセントがあるため、「 -man/-men 」の発音も [ -mæ̀n / -mèn ] と変わっています。
 また「louse → lice」、「mouse → mice」では、単複で「s / c 」とスペルまで違っていることにも注意しましょう。

(2)語尾が -en となるもの

 古い時代の英語では、「弱変化複数」というものがあり、ほとんど廃れてしまいましたが、日常的によく使われる一部の単語にはそれが名残として生きています。この -en という語尾を取る不規則複数の単語がそれです。つまり「 -(e)s 」で終わらせることで複数にするのが「原則」となった現代英語から見れば不規則・例外的であっても、この変化は歴史的に見れば「英語本来」とも言えるわけです。

child children
brother brothren (「信仰仲間」という意味の場合だけ。通常の「兄弟」の意味では、brothers
ox oxen


(3)外国語の複数形をそのまま使うもの

 外国語の語彙をそのまま英単語に持ち込んだものについては、もとになる外国語の複数形もそのまま持ち込まれます。これはラテン語やギリシャ語由来の学術的な語彙に見られるもので、学術的な言葉であるために語源にまで忠実に複数形ごと英語に持ち込んだわけです。しかしそのような単語でも日常的によく使われるものほど「英語化」が進み、普通の英単語のような「-(e)s」による複数形も持つことがあります
 また同じ単語を元にした複数形が意味により変わる例もあり、これらについては「日常的に馴染みのある意味」では規則変化、特殊な意味では外国語の複数形を用いるというふうに使い分けが行われています
 英語に不慣れな日本人からすれば、どの単語がラテン語やギリシャ語語源なのかなど見た目に判別できないかと思いますが、このような単語はただでさえ学術用語など難しい単語であることが多いので、初対面の際、その単語の意味を辞書で調べる際、複数形の取り方が特殊であることも同時に気づきますので、そのとき、「ああ、これがそうか」と思えばよいでしょう。

(ラテン語由来の例)
stimulus stimuli
alumnus alumni
bacterium bacteria
focus foci, focuses
radius radii, radiuses
curriculum curricula, curriculums
medium media, mediums
genius  geniuses(天才)<日常的な意味では普通の英単語の複数形
 genii(守護神)。<特殊な意味では語源に忠実な複数形。
antenna  antennas(アンテナ)
 antennae(触角)
datum  data(データ)<アメリカ英語ではdataを物質名詞扱いし、そのまま単数形として用いる
 datums(基準点、基準線など)
index  indeces(指標)
 indexes(索引)
appendix  appendices(付録)
 appendixes(盲腸)

(ギリシャ語由来の例)
analysis
分析
 analyses [ ənǽləsìːz ]
crisis
危機
 crises [ káisìːz ]
axis
 axes [ ǽksìːz ]
(axesは「ax(e)(斧)」の規則変換による複数形でもありうるが発音が異なる。ax(e) → axes [ ǽksiz ]
basis
基礎
 bases [ béisiːz ]
(basesは「base(基地)」の規則変化による複数形でもありうるが発音が異なる。base → bases [ béisiz ]
ellipsis
文法的省略
 ellipses [ ilípsiːz ]
(「ellipse(楕円)」の複数でもありうる。その場合は発音が [ ilípsiz ]
phenomenon
現象
 phenomena [ finɑ́mənə ]

(日本語由来の例)
tsunamitsunami, tsunamis
ninjaninja, ninjas
samuraisamurai, samurais
kanjikanji, kanjis
geishageisha, geishas
bon-odoribon-odori, bon-odoris

 英語には非常に多くの外来語がありますが、その語彙が「英単語」としてどれだけ広く認知され、その地位を確立しているかによって、複数形の作り方が変わってきます。
 「 ninja 」を複数形で「 ninjas 」とするのは、それだけすでに「 ninja 」という言葉が「英訳不要」なまでに英単語としてそのまま使われるようになってきたため、英語話者にとっては身近な「英単語」となり、複数形まで英語の習慣に沿って使われるようになったものです。(上記例の中で「 tsunami 」に至っては「 tsunamic 」という形容詞まで派生しています。)
 これはその英語話者が日本語や日本文化とどういう距離感を感じているかに依存するもので、「 bon-odori 」などは「 ninja 」に比べればまだまだ英語文化の中での認知が浅く、それが何であるか自体そのままでは理解できない人も多いと思われます。そのような人たちには、まったくの外国語であり、一度は「 bon-odori 」が何であるかを説明し、それを理解してもらってからは、外来語として会話で使えます。でもその段階では「 bon-odori 」という単語への精神的距離感が遠いため、複数形を「-s」とはしません。もし、その英語話者がしばらく日本に住み、その人にとって「 bon-odori 」が「 ninja 」のように説明不要になるに従い、やがては「 bon-odoris 」という複数形にしたくなるという心理にも発展していくわけです。
 逆を言えば、たとえばある英語話者が会話の中で「 daimyos 」と「大名」を複数形にして使ってきたら、それだけでその人が「大名」を説明不要の英単語として理解していることが伺えます。

 外来語との「精神的距離感」というのが、その外来語を「いかにも英単語的に扱う(複数で-(e)sをつける)かどうか」のポイントとなります。上で上げたラテン語やギリシャ語由来の外来語は、「学術用語」という堅さを感じるほど精神的距離感が遠くなり、言語の複数形をそのまま取り込みますが、たとえラテン・ギリシャ語由来であっても日常化するにつれ、普通の英単語と同じ「精神的距離感」を感じるようになり、「日常用語」となれば普通に「-(e)s」による複数形を作ってしまうわけです。

 これは他の言語に由来する外来語にもあてはまることで、英語にはフランス語やイタリア語などその他の言語からも多くの外来語が入っており、それらの複数形については、上記と同様の発想で「原語の複数形」を使うか「英語風の複数形」を使うかが決まってきます。
 ここではただ煩雑になるだけなので、これ以上、外来語の複数については取り上げませんが、外国語本来のつづりや発音を生かして用いるほど、「遠い存在」という意識が働いており、ときにはそれが「学術的」な響きになったり「お洒落」な印象を与えたりするわけです。外来語というのは英語話者にとっても「学んで習得する」語彙であることが多いので、それを(特に原語の発音で)使うというのは教養のアピールともなるのです。


(4)単複同形(単数形と複数形で形がかわらないもの)

 単数形の語形がまったく同じ形で複数形としても用いられるものもあります。これについてはそのすべてを通じてあてはまるルールはないのですが、次のような傾向性がある場合もあります。

1、群生動物の名前について、英語話者の文化の中ではその名称から真っ先にイメージされるのが「個体」としての動物ではなく、群れの姿である場合、その群れの名称を「個体」を指す場合にも使うようになったのです。
 従ってある動物について馴染みの深い地方の人もいれば、そうでない人々もいて、同じ動物名であっても、それを単複同形として使うか、「dogs, cats」などのようにごく普通の名詞として使うかは地域差や個人差も出てきます。

fish fish
sheep sheep
deer deer (これは多少の「揺らぎ」が認められ、deersの形を認めている辞書もあるが認めていない辞書もある)
carp carp, carps
cod cod, cods
trout trout, trouts
salmon salmon
buffalo buffalo, buffalos, buffaloes

 「 fish 」については「魚が一匹、二匹、、」と数える場合は単複同形で「 one fish, two fish...」ですが、「3種類の魚」というふうに種類」を数える場合は「 three (kinds of) fishes 」と普通に複数形を取ります。後者は「 family, people 」などのように集合的に用いられているということです。

 英語の文法は決して「理論から導き出された」ものではありません。だからこそ、こういう不統一さや理屈で単純に縛り切れない事例が多く存在するのです。理屈から言えば「 dog, cat 」を個体としてみなし、1匹、2匹、、と数えるのに対して「魚」やその個別種である「 carp, cod, salmon, trout 」などを単複同形として扱う理由がありません。まして「 carp, cod, trout 」には規則変化としての複数形も用いられることがあるのに「 salmon 」だけは広く単複同形のみとされているのも実につじつまの合わない妙なことです。つまりこういう事例から「英語という言語が多くの点で不合理であり、システム的に多くの欠陥も抱えている」ということを知るべきだと思います。
 「 buffalo 」に至っては、単複同形として使う人、規則変化の複数形を使う人、さらに複数形の語尾を「 -os, -oes 」とする人がいるなど、もう規則もなにもあったものではありませんね。(ただし私個人の交友範囲を通じての個人的印象としては「 buffalo 」を単複同形と見なしている人が多数派のようではあります。)

※ちなみに buffalo の3種類の複数( buffalo, buffalos, buffaloes )について、仮説的な域を脱しませんが、概ね次のようなことが言えると思われます。
(1)もともと buffalo は外来語。さらに「群生動物」としてのイメージが強い。そのため単複同形がまず好んで用いられる。
(2)buffalo を「個体の名称」として受け取っている人にとっても外来語という意識が強いと buffalos と「直接-sのみをつける」複数形を用いたくなる。これは piano→pianos などにも見られるもので、「母音で終わる名詞には、-esをつけるのが純粋な英単語における複数形の作り方」だが、外来語については、もとの単語にそのまま-sをつけて複数形とする。
(3)buffalo という単語に対してさらに精神的距離感が近くなり、外来語という意識がほとんどなくなると、純粋な英単語にならって「母音で終わる名詞には -es をつける」方法で複数形を作るようになる。

 ことによると大勢の英語話者にインタビューして、「あなたは buffalo の複数形としてどの形を常用しますか?そしてbuffaloは、あなたにとってどの程度身近な存在ですか?」などを尋ねると、好んで用いる複数形と、その人の生活環境の中の buffalo の位置づけとの間になんらかの相関関係が見出せるかも知れない。
 私の限られた交友範囲では、単複同形の buffalo を使う人が最も多かった。そしてその中には「近くにbuffaloの牧場がある」という人もいた。つまりその人にとっては「群れなす buffalo の姿」が真っ先に思い浮かんでいるのであろう。ただ「傾向性を観察する」にはあまりにサンプルが少なすぎるので、はっきりしたことはまだ何とも言えない。

2、その他の単複同形
Japanese Japanese
Chinese Chinese
yen yen
percent percent

 語尾が「 -ese 」で終わる固有形容詞(国名)に由来する名詞は複数形にしないのが習慣。理由はない。
 「 yen 」が単複同形なのに「 dollars 」は複数形があるというのも根拠がない。
 「 percent 」については「100につき」=「per cent」という由来があり、それを1語として発音したものなので、意味から考えても「cent(100)」を複数形にしてしまうのは理屈に合わないと言える。(仮に「 per cents 」にしてしまうと「数百あたりにつき」の意味を成すこととなってしまい、もはや「パーセント(100あたりにつき)」ではなくなる。)

 情報不足の言い訳をするわけではないのですが、このサイトはあくまでも「英語学習の指針」を伝えることが最大の主眼であるため、個々の文法事項についてありとあらゆる事例を紹介することはしません。名詞の複数形の問題についても、ここで触れていないことがらがまだありますが、このサイトとして解説すべき「発想」や「英語話者の心理」という角度からの話は十分したかと思いますので、これくらいでこの項については終わりにします。さらに詳しい具体例を学びたい方は市販の文法書などをご参照ください。



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102.---3、複数形についてのその他

 ここまでの原則的な話が理解されればあとは補足に過ぎないのですが、ときおり質問としても出てくることがらなので、軽く触れておこうと思います。

1、文字や数字の複数形
2、固有名詞の複数形
3、複合名詞の複数形
4、2種類の複数形で意味が変わる例
5、単数形と複数形で意味が違う


 「軽く」という割りには色々ありますね(笑)。これらについてはまだ折に触れて解説してもいいのですが、折角なのでここでいつくかの例をあげてまとめておこうかと思います。

1、文字や数字の複数形

Don't forget to dot your i's and cross your t's.
(「i」に点を打つことと「t」に横棒を引くことを忘れないこと)
His 3's often look like 8's.
(彼が書く「3」はよく「8」に見えることがある)

 本来「アポストロフィ(')」は複数形を作るために使うものではないのですが、「何の複数形か」を区切りを示してわかりやすくさせるため使われることがあります。このような場合「所有格」と見かけは区別がつきませんので、意味からどちらなのかを判断してください。
 小文字の複数形はそのまま「-s」をつけたのでは読みにくいですし「as, is」など中には別の単語と区別がつかなくなるため、「'」で区切って文字の複数であることを示しています。
 これが大文字の複数形の場合は、「'」をつけてもつけなくても構いません。特に複数の大文字からなる略号は、ただ「-s」をつけても見掛け上まず判断に迷うことはありません。

Have you ever seen any UFO's (=UFOs)?
(君は今までにUFO<未確認飛行物体>を見たことがあるかい?)

1970's (nineteen seventies)=1970年代

 これは「1970, 1971, 1972...1979」の10の数字がいずれも「nineteen seventy-」で始まることから、「nineteen seventy」で始まる年という意味の複数形です。そこから「~年代」という日本語に相当します。普通は「1970という数字が沢山ある」ではないのです(もちろん、文脈によってはその意味に使えないわけではありませんが)。

 ちなみに「ページ」を意味する普通名詞は「page」で、その複数形は「pages」ですが、それを略号として使うときは次のようになります。

p.10 = page ten(第10ページ目)
pp.10 - 20 = pages ten to twenty (10ページから20ページまで)<「から」の部分は「-(ハイフン)」で表現。

 同様に「行」を意味する「line」も次のように表現します。

l.15 = line fifteen (第15行目)
ll.15 - 20 =lines fifteen to twenty(15行目から20行目まで)

2、固有名詞の複数形

 本来不可算名詞に属する固有名詞が、普通名詞に転用されると「形は固有名詞」のまま複数形を取るようになります。

three Marys and two Bills
(メアリーさん<という名の女性>が3人とビル<という名の男性>が2人)

 固有名詞を複数形にする場合、純粋な普通名詞の場合と違って「固有名詞」そのもののスペルを変化させてはいけません。だから「Mary」を複数にしても「Maries」とはしないということに注意しましょう。
(英語ネイティブの書く文章では、しばしば固有名詞の複数形を所有格のように「Mary's/Bill's」とアポストロフィSによって表現している例もありますが、これは1の「文字や数字の複数形」の発想の延長から来ているものです。しかし正書法(標準的とされる英語の書き方)」としては正しくないとされています。)


3、複合名詞の複数形

baby sitter baby sitters
tooth brush tooth brushes
boyfriend boyfriends

 これらは「名詞+名詞」の組み合わせとなっているが後ろの名詞が意味の中心なので、それだけを複数形にする。言い換えるならば前の名詞は「形容詞的な色彩」が強くなっているため複数形にならないということです。
by-stander by-standers
looker-on lookers-on

 これらは名詞と別品詞が組み合わさった複合語。意味の中心となる名詞を複数形にすればよい。

grown-up grown-ups

 構成要素に名詞がない複合名詞は、それ全体で1個の名詞とみて複数語尾をつける。

brother-in-law brother-in-laws

 一見意味の中心である名詞「brother」を複数にしたくなるが、これは習慣的に全体で1語とみなし、語尾を複数とする。
(sister-in-law, mother-in-law, father-in-lawなどすべて同様)

woman doctor  women doctors(女医たち)
 woman doctors(婦人科の医者たち)<womanが形容詞的

 「女医(女性である医者)」は womandoctor 」が同格的であるため、両方を複数形にする。ここで「 doctor 」だけを複数形にすると「婦人科の医者(その人の性別は男でもいい)」の複数形となるのでそれと区別するために「女医」では woman も複数にするとも言える。


4、2種類の複数形で意味が変わる例

 1つの単数形を元にする2種類の複数形があり、それぞれが違った意味を表す例もある。

penny(ペニー貨幣)
1, pennies(ペニー貨幣が複数ある意味)
2, pence(ペンス=貨幣単位として)

cloth
1, cloths(布の意味での複数形)
2, clothes(衣類、衣服)

genius
1, geniuses(天才)
2, genii(守護神)

brother
1, brothers(兄、弟の意味での複数形)
2, brothren(信仰仲間の意味での複数形)


5、単数形と複数形で意味が違う例

 これは単数形の意味のまま数が複数であるという基本に加え、複数形になると単数形のときにはなかった意味が生じるものと、単数形の意味では複数形にならず、複数形になると常に特殊な意味となるものがあります。

arm(腕) arms(「腕」の複数形の他、複数形だけに「武器」の意味がある)
color(色) colors(「色」の複数形の他、複数形だけに「軍旗」の意味がある)
letter(文字、手紙) letters(「文字、手紙」の複数形の他、複数形だけに「文学」の意味がある)
manner(方法) manners(「方法」の複数形の他、複数形だけに「礼儀作法」の意味がある)

good(善)) goods(商品)
look(見ること)) looks(見かけ)
pain(苦痛)) pains(骨折り)

glass → glasses
単数形glassは「ガラス(物質名詞)」や「グラス(普通名詞)」の意味。「グラス」だけは複数形として「glasses」となれるが、「眼鏡」の意味では「glasses」と複数形しかない

これも多くの例がありますが、ここでは一例をあげるにとどめます。


6、複数形しかない名詞

 「絶対複数」という呼ばれるもので、単数形を持たない複数形。つまりイメージとして何かがペアになってはじめてなりたつ物を指すことが多く、そのようなものは「片方」だけでは物として成り立たなくなってしまう。しかし中にはペアの片方だけを意味できる単数形もある。

gloves(単数形gloveなら片方の手袋)
compasses(コンパス)
shoes(単数形shoeなら片方の靴)
glasses(眼鏡)
socks(靴下)
scissors(ハサミ)
trousers(ズボン)
pants(ズボンやショートパンツなどの総称)
panties(パンティ)

 このようにペアで成り立つ品物は、「 a pair of 」をつけることで「1つ(1セット)」を表し、2つ以上は、two pairs of というふうに「 pair 」を複数形にして数えられる。
 上に上げた名詞は原則として「複数形しかなく、名詞としての単数形がない」という変わったものであるが、形容詞的に用いられるときは単数形でよい。

Scissor Hands(「映画の題名」で「両手が挟みになっている人造人間」の話)
shoe box(下駄箱)<これを「沢山の靴」を入れるのだからshoes boxと考えなくてよい

 次にあげるのは複数形がもはや形式的となり、複数の意味をすでに失っているもの。語形は複数形でも単数名詞として使われる。学術名、ゲームの種目名、病名などによく見られる。

mathematics((数学)
linguistics((言語学)
economics((経済学)
politics((政治学)
billiards((ビリヤード)
cards((トランプゲーム)
measles((はしか)
mumps((おたふく風邪)
news((ニュース)



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103.---4、物質名詞の数量的把握

 これまで名詞というものの全体像を見てきました。

1、名詞には「可算名詞」と「不可算名詞」がある。
2、名詞全体を5種類に分けると「普通名詞、集合名詞」(可算名詞)、「物質名詞、抽象名詞、固有名詞」(不可算名詞
3、可算名詞の複数形については、「規則変化」によるものと「不規則変化」がある。

 ということでしたね。「可算名詞」はその名の通り「数えられる名詞」ですが、「不可算名詞」に属す「物質名詞」が数えられないとすると「パン1個」が表現できないことになってしまい、ちょっと困りますね。ここでは、そういう物質名詞を数量的にどう表現するかについて見ていきたいと思います。

 日本語では「多くの、沢山の」という言葉は英語の可算名詞とも不可算名詞とも結びついて用いられるが、英語では次のような使い分けがあります。

1、可算名詞を修飾するもの(数を表す言葉):

・one, two, three, ..などの数詞
・many, few, a couple ofなど
・a number ofなど
・不定冠詞「a/an」は「one」の意味を持つので可算名詞にしかつかない。


2、不可算名詞を修飾するもの(量を表す言葉):

・much, (a) littleなど

3、どちらも修飾できるもの:

・some/anyは、可算名詞、不可算名詞のいずれとも用いることができるが、意味が違う。
 可算名詞に対しては「いくつか(の)」、「どれ(1つ)でも」、不可算名詞に対しては「いくらか(の)」、「どの種類でも」。
・a lot of/lots ofも「many, much」両方の意味に用いられる。
・定冠詞「the」


 「たくさん」や「ちょっと」という漠然とした表現でなく、もっと具体的に物質名詞の量を表現するにはどうすればよいでしょう。それには次のような方法を用います。

(1)物質名詞を「数」ではなく「量」として把握する方法。
(2)物質名詞を単位や容器、特定の形状などの「可算名詞」である「助数詞」と連結し、その助数詞を数える方法。
(3)物質名詞そのものを普通名詞に「転用」して数えたり、複数として用いる方法。
(4)同じ名詞が意味の違いにより、物質名詞としても普通名詞としても用いられることもある。

 このうち(1)はすでにのべた「 much/little 」などによる表現です。(2)から先についての具体例を見ていきましょう。
 物質名詞には「決まった形状」や「限界」がないので、1個、2個、、と数えることはできません。その代わり、漠然と「少量」や「多量」という表現はできます。
 また「助数詞 of 物質名詞」という形式にすることで可算名詞である助数詞を数えて表現することもできます。これは物質名詞を数えられる単位や形状などに変換するものといえます。

piece :「piece」は「かけら」、「一片」の意味を基本とする普通名詞ですが、非常に多くの物質名詞や集合名詞とともに用いられます。固定的な和訳は禁物。

a piece of paper(1枚、1切れの紙)
a piece of bread(1ちぎりのパン、1個のパン)
a piece of wood(1片の木材)
a piece of furniture(家具1点)
a piece of information(1つの情報)
a piece of news(1つのニュース)
a piece of advice(1つのアドバイス)


two pieces of paper, many pieces of paper などと「piece」を数えたりすることで「数」として把握できます。
その他様々な助数詞の例を見てみましょう:

a cake of soap (「cake」は「ひとかたまり」の意味)
a slice of bread/two slices of bread
a loaf of bread/two loaves of bread
a bar of chocolate/two bars of chocolate
a lump of sugar/two lumps of sugar
a spoonful of sugar/two spoonfuls of sugar
a cup of coffee/two cups of coffee
a glass of milk/two glasses of milk
a bottle of beer/two bottles of beer
a foot of wire/two feet of wire
a pond of meat/two ponds of meat

 上記の例にあるように「coffee, milk, beer」などは「water」と同じく液体という物質名詞ですが、場面としてたとえば喫茶店やレストランの中でそれらを注文するような場合は「カップやグラス、ビンなど」に入った形状が最初から常識的にイメージされるため、普通名詞に転用して用いることができます。(もちろん、そのような場面でも上記のように表現してまったく問題はありません。)

Two coffees, please.
One beer, please.

 また同じ名詞がちょっとした意味の違いにより物質名詞として扱われたり、普通名詞になったりもします。

hair:「頭髪」全体を意味するときは物質名詞。「髪の毛1本」を意味するときは普通名詞。
tear:「涙」は液体なので本来物質名詞。「1滴の涙( a drop of tear )」の意味として「 a tear 」と言え、複数として「 tears 」もある。
dew:「露」という単語も「tear」と同様に扱われる。

 日本人の感覚からすると可算名詞に思える「 news, furniture, advice 」などが英語では不可算名詞だったりと、発想にずれのあることも多いので、慣れないうちは(慣れてきても少しでも不安があれば)こまめに辞書で確認することが望まれます。1つの単純な法則性で可算名詞と不可算名詞をたてわけることはほとんど不可能です。



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104.「名詞」:日本語と英語の比較

 「文法」の章に入って、文体を「です、ます」調に変えました。今後それで統一していく予定なのですが、ここでは以前に書いたものをそのまま転載しますので、そのときの「だ、である」調の文体となっていることをご了承ください。
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 日本人が英語を学習する上で、名詞の単数・複数に関しては、かなり基本的なところでつまずくことが多い。
 そして「冠詞(a,an/the)」がからんでくると、これはもう「頻出Q&A」として常にその疑問の声を聞く。なぜ日本人にとって英語の名詞の扱いがこれほどに難しく感じられるのか?それは日本語と英語というまったく異なった言語文化の「違い」が理解されていないからだと感じる。そして、何よりも日本人、日本語ネイティブである我々が「日本語の名詞」というもの実体を深く理解していないことが大きな理由だ。日本語の名詞がどういう言葉なのかをちゃんと理解していないから、英語の名詞について「普通名詞、集合名詞、物質名詞、抽象名詞、固有名詞」とかを習っても、日本語とどこが同じでどこが違うかが見えてこない。

 非常にありがちな間違いとしては、「言葉の置き換え」だけで日本語から英語、英語から日本語になるという安易なものの考えに基づいて英語を学んでしまうことだ。
 そういう私自身、長い間日本語を客観的に見つめなおすなどということもせず、日本人だから日本語はわかっているくらいのつもりでいた。しかし英文法を学ぶ中で、自らの姿を鏡に映して見るように、初めて自分の母国語である日本語の姿に気づかされることが多かった。つまり英文法は英語を学ぶためだけでなく、それと比較して日本語の姿も見せてくれるのだ。

 日本語には、名詞の単数・複数を言葉の上で明確にしなければならないというルールはない。それを言い分けるという習慣がないのだ。「犬」は1匹でも何匹でも「犬」でよく、「鉛筆」も「家族」も「水」も「愛情」も「山田太郎」も、感覚的に大きな違いはなく、どれも単なる名詞と感じられる。

 英語の名詞について一通り学んだ今、英文法における5種類の名詞の概念と日本語の名詞のそれを比較してみよう。
 私個人が最近強く感じるのは、「日本語の名詞はすべて(英語的に考えると)『抽象名詞』ではないか」ということだ。つまり「犬、猫、鉛筆、机」などというごく身近で具体的に思える言葉さえ、それらの名詞は英語で言う抽象名詞であることが基本的な実体だと思える。言い換えれば、日本人が何らかの名詞を口にするとき、その名詞によって表される「抽象概念」があり、たとえば「犬」という言葉は「犬的な存在」という漠然としたイメージにとどまっているのではなかと思う。だから単数・複数の区別もない。

 外国人が日本語を学ぶとき非常に苦労するのが、「物の数え方」だ。人間なら「ひとり、ふたり、、、」、椅子なら「1脚、2脚、、」、鳥なら「1羽、2羽、、」、犬なら「1匹、2匹、、」、もっと大きな動物なら「1頭、2頭、、、」、飲み物なら「1杯、2杯、、」、ビンなら「1本、2本、、」、書物なら「1冊、2冊、、」、、と実に様々な「助数詞」と呼ばれる語をつけることで数える。

 Online百科事典の「Wikipedia」日本語版で、「助数詞」を調べてみた。

イカ - 食品の場合は一杯(はい)、生物の場合は一匹(ひき)
遺骨- 一体(たい)、一柱(はしら)
印籠- 一具(ぐ)
ウサギ- 一羽(わ)
- 一席(せき)、費用は一献(こん)
団扇- 一柄(へい)
エビ- 一頭(かしら)、一尾(び)
- 一筋(すじ)、一条(じょう)
- 一面(めん)
地蔵- 一尊(そん)
三味線- 一棹(さお)
数珠- 一連(れん)
算盤- 一面、一丁(ちょう)
箪笥- 一棹(さお)
手紙- 一葉(よう)

 などなど日本人でも知らない数え方がかなりある。

 なぜ日本語はものを数えるとき、助数詞を用いるのか?それは英語で
  a cup of cofee
  a glass of water
  a cake of coap
  a slice of bread
  a sheet of paper
などと物質名詞を数えるのに似ており、日本語ではたとえ「犬、猫、鉛筆」のようなありきたりの名詞でもその名詞自体は本来「概念的なもの」を表すため、固体としての「単位」に置き換えることではじめてイメージの実体化がもたらされると思われる。
 言うなれば「犬1匹」は「an animal of dog」と我々日本人は言っているのだ。助数詞という単位になってはじめてあらゆる名詞は具体的な姿を現す。

 「私は犬より猫が好き」

 この文章は英語なら「I like dogs better than cats.」と「犬、猫」の部分が「無冠詞複数形」となるところ。これは「総称的用法」である。
 それを「抽象用法」という文語的な表現を使って次のようにも言える。
I like the dog better than the cat.(注意:日常的な言い方ではありません)
 こちらは「the 単数名詞」である。ここでは「特定の犬、猫」を指しているのではなく、「犬というもの」の意味なのだが、このtheは、名詞が持つ特質を抽象する働きがあり、「the dog」とは「犬たるもの」、「犬というものに備わる性質」、「犬という抽象的なイメージ」を意味する。だから文語表現なのだが、日本語で「犬」といえば、それはこの抽象表現「the dog」に極めて近いといえる。

  「ペンは剣よりも強し」---The pen is mightier than the sword.

 有名な諺だ。実際にペンと剣を手にして決闘したら、常識的に考えてペンに勝ち目はないが、ここでいう「ペン」とは「文筆活動、ジャーナリズム」のことであり「剣」とは「暴力」を意味する。しかし、そんな解説がなくとも、この文語的な the pen, the sword を直訳した「ペンは剣よりも強し」で十分意味が伝わってくる。それはもとより、日本人が名詞を常に「抽象概念」として把握しているからだ。

 英語では「抽象名詞」も「物質名詞」も数えられない漠然としたものであり、一定の形にしたり容器に入れて物質名詞は数えるし、beauty(美)という抽象名詞は「美人」という人の姿になれば数えられる。「kindness(親切)」も概念としては抽象名詞だが、「親切な行い」という意味なら普通名詞で数えていい。

 日本人は無意識のうちに、あらゆる名詞を抽象的、物質的に用いるのが習慣となっているため、「普通名詞」そのものずばりが存在する英語の語法に戸惑うのかも知れない。

 「英語では、breadは物質名詞だから1個2個と数えられない」と学んだが、そもそも日本語でもパンを数えるときには「1個、2個という塊」か「1枚、2枚」という板状の形にして数えており、これは「a loaf of bread, a slice of bread」と同じことを助数詞によって行っているのだ。

 そう考えると特殊なのは日本語の方ではなく、人間(man)を「1人、2人、、」とせず、いきなり1人間、2人間、、、と数えている英語の方とも言える。(a man, two men..は、まさに「1男(おとこ)、2男、、」と数えているわけだ。)
 日本語の方があらゆる名詞について一貫した扱いをしており、英語の方が名詞によって直接数えてよかったり、形や容器に変換して数えたりしているというバラバラなことをやっているわけだ。

 日本人が英文法で「名詞」を学ぶと、「普通名詞は簡単に理解できるが、物質名詞や抽象名詞が難しい」と言う人がいるが、実はそうではなく、日本人にとってもっとも難しいのは英文法の「普通名詞」の概念なのである。日本語には英文法でいう普通名詞は存在しないからだ。これまで述べたように日本語ではすべての名詞が抽象名詞であり物質名詞なのだ。英語の名詞がもし「いつでも単数形で冠詞もいらない」となれば、日本人にとってこんなに楽なことはない。

 角度を変えて考えてみよう。

「その部屋に男が3人いる。」---There are three men in the room.

 極めて直訳的に英語にしようとすると、「男が」だから「(助数詞を伴わない)男(だけ)」を主語にしたくなる。そして「3人」の部分は「3人分だけ」という意味の副詞に感じられる。しかし英語ではそこを「3の男(three men)」と言い表す。つまり「男」を数えてよいのだ。でも日本語では決して「男」そのものは数えず、「人」という単位を数える。それは「男が3人いる」の場合も「3人の男がいる」と言う場合も同じだ。  日本語では「男」という言葉は「抽象概念」であり、「3人」という単位になってはじめて具体的な「人」の姿となる。つまり「three persons of 'MAN'」と私たち日本人は言っているのであり、この 'MAN' は抽象名詞といってもいいし、物質名詞といってもいい。

There are three persons in the room.

 これを日本語にして「その部屋には3人いる」というより「その部屋には3人の人がいる」という方が通りがいい。「人」でさえも「人がいる」の部分では上記「男」と同じ抽象概念になっており、単位としての「人(にん=人の姿)」にあてはめてやっと数えることができるのだ。
 だから上の英文を日本人は「There are three persons of 'PERSON' in the room.」と言うのが習慣になっているわけだ。

 また日本語では「数」を副詞的に扱う言い回しが普通である。

1、男が5回来た。
2、男が5人来た。

 これは日本語としては同じ構造の文章だが、英語なら「5回、5人」の位置がまるで違ってくる:

1, The man came (here) five times. 「5回」は「副詞」
2, Five men came (here). 「5人」は「形容詞+名詞」

 と1の「5回」は副詞だが、2の「5人」は「男」を直接数える形容詞で表現する。こんな習慣の違いもわかっていないと英文を作るときに失敗する。日本語のように「男が5人来た」という言い方をしたくても英語では、冒頭の「男が」ですでに単複をはっきりさせなければならないため、無理なのだ。
 また上で「男が5人来た」を「Five men came (here).」としたが実はこれも正確ではない。日本語で「男が5人来た」と言うとき、それは必ずしも5人が同時に来たことを意味しておらず、「最初1人が来て、次に2人同時、それからまた2人で、1晩のうちに合計として5人」ということかも知れない。それを英語で言うなら「Five men in total came here through the night.」とでもなる。

 今まで「a dog, two dogs, three dogs..」という表現を何の疑問もなく、簡単な英語だと思っていた人は、実はこういう言い回しこそが極めて英語的であり、「dogをいきなり数えていいのか!?」と驚かなければならなかったのだ。

 「他山の石をもって磨く」という言葉がある。英語という外国語を学習することを通じて、英語だけでなく、日本語という我々の母国語についてもときに振り返ってじっくり考え、外国語の学習によってより一層日本や日本語を知っていこう。



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105.名詞の格

 名詞が文章の中で用いられるとき、その使われ方によって「格」という文法的な位置づけが与えられます。具体的に言うと
1、主格:主語として用いられる場合
2、目的格:他動詞や前置詞の目的語として用いられる場合
3、所有格:他の名詞と形容詞的に結びつき、「所有」などを表す場合
4、独立所有格:3の意味でさらにあとに続く名詞をその意味に含んでしまう場合

 があります。

(1) Bob is a student. (Bobは主格)
(2) She loves Bob./She went there with Bob.(Bobは目的格)
(3) This is Bob's book.(Bob'sは所有格)
(4) This book is Bob's.(Bob'sは独立所有格)

 名詞の場合、主格と目的格はまったく同じ語形となるので見掛け上は区別がありませんが、文法的には主格と目的格は区別されます。
 また目的格としては次のようなものもあります。

He is 20 years old. (「20 years」は目的格)
That bridge is 200 meters long.(「200 meters」は目的格)

 上記例文で「 20 years/200 meters 」を抜かしても英文は成立します。つまりこれらの語は名詞でありながら副詞的な役割をかねており、これを古い英文法では「副詞的対格」とか「副詞的目的格」と呼びました。あまり重要な文法事項ではないと思いますが、一応、このように使われる名詞も格としては「目的格」にあたるとされているということだけはお話しておくことにします。

 (4)の「 Bob's 」はその直後に名詞が省かれている( Bob's book )と考えても構いませんが、私個人としては、単なる省略というより、「名詞を飲み込んでしまった」とみなす立場を取っています。
 これは次の項目の中で説明する「代名詞」の格変化( I-my-me-mine )の「 mine 」に相当するものです。
 ですから「my」は単独で用いることがなく常に「my book」のように名詞を修飾しますので、「代名詞が変化した形容詞」と考えることができ、同様に「Bob's book」の「Bob's」も形容詞と呼んで構いません。そして「mine」は「所有代名詞」という名称もあり、これで代名詞とみなす方が理論的な統一性がありますので、同じく「This boos is Bob's」の「Bob's」も代名詞(のようなもの)とみなしてよいでしょう。

 ここで問題とするのは、「Bob」に対する「Bob's(3,4両方の場合)」の語形です。基本的には「名詞+アポストロフィ('記号)+s」という形になりますが、それをしっかり整理しておきましょう。

(名詞の所有格・所有代名詞の作り方)

1、名詞に「アポストロフィS」をつける
Bob's, Tom's, today's, earth's, men's, children's

2、名詞の語尾が[s/z/sh]の発音で終わる場合は、「'」のみをつける
 students', ladies', Moses'

 ただし、人名で語尾が「-s」で終わるような場合は、1,2いずれも用いられることがあります。
Dickens → Dickens', Dickens's ( [ díkenz, díkenziz ] 両方の発音が可)<どちらを使ってもよいが1つの文章中で別々のスタイルを混在させないように

 所有格の「's」の発音は複数形の読み方に準じますが、上記「 Dickens's 」のようにスペルに「e」が含まれていなくても [ díkenziz ] と読むことがあるのが、複数形にはない例外的なものです。

 1による所有格の作り方がもっとも基本となりますが、「名詞の複数形」と違う点は、名詞の形自体が変化しないということです。たとえば「 wife 」は複数形で「 wives 」となりますが、所有格では「 wife's 」です。
 2では、特に名詞の複数形が「-s」で終わることが多いですが、不規則変化の複数形では、「 children's 」のように1の方法で所有格を作ります。
 「lady's(単数名詞の所有格)」と「 ladies'(複数名詞の所有格)」では発音が同じでも意味応じてスペルは区別されますので注意しましょう。(日本国内で見かけるトイレの男女表示などでは、よく「 men's room/lady's room(正しくは ladies' room )」という間違いもよく見かけます。)

 名詞の所有格の用法についてはどの文法書にも書かれていることですので、本サイトではその説明を割愛します。



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106.代名詞

 代名詞とはその名が示すとおり「名詞に代わって用いられる語」のことです。
 ですから基本としては、先に具体的な名詞がすでに登場しており、それを受けて言葉の繰り返しを避けるために名詞を代名詞にして言うのですが、ここでも日本語との言語習慣の違いを踏まえる必要があります。
 日本語では英語と違って同じ名詞を平気で繰り返し用いることが非常に多く、英文に含まれる代名詞をそのまま(いかにも代名詞らしい訳語で)和訳するとかえって不自然になることが多いのです。
 たとえば自分の父親・母親を指して「彼・彼女」という言葉は日本語では使われませんし、英語の「they」を無条件に「彼ら」と和訳して納得するのも危険なことです。英語の「they」は「女性だけの複数」かも知れませんし、犬猫などの動物を指しているかも知れませんからね。

 名詞が下位分類として「可算・不可算」にわかれ、さらに全体で5種類に分類されたように、代名詞も下位分類として次のような種類を持ちます。

(1)人称代名詞
(2)指示代名詞
(3)不定代名詞
(4)再帰代名詞
(5)疑問代名詞
(6)関係代名詞

 よく聞く疑問の1つとして「日本語の『それ』はitか、それともthatか?」というものがありますが、その疑問もこれから上記各下位分類を理解する中で完全に解消されます。

 さて、英語の代名詞を学ぶ下準備として、日本語の代名詞についてほんの軽く復習してみましょう。自分の言葉がしっかりわかっていなければ、外国語との比較もできませんからね。

 日本語には「こ・そ・あ・ど」と呼ばれる言葉のグループがあります。
 「これ、それ、あれ、どれ」、「こっち、そっち、あっち、どっち」、「こう、そう、ああ、どう」など、1文字目を拾うと「こそあど」となるグループのことです。
 「これ、それ、あれ、どれ」を取り上げて考えると、最初の3つ(これ、それ、あれ)は「近称、中間称、遠称」と言って、話者・聞き手から指し示すものがどういう距離関係にあるかを3種類に分けて示すものです。

これ(近称)=話者から近い
それ(中間称)=話者から遠く、聞き手から近い
あれ(遠称)=話者・聞き手の双方からともに遠い

 このシステムが英語にも同じようにあると思わないでください。英語には「近称」と「遠称」の2つしかなく、「中間称」にあたる単語はないのです。詳しくはあとで説明しますが、こういう言語習慣のずれを知らずにただ言葉の置き換えで英語が日本語に、日本語が英語になると思わないことがとても大切なことなのです。

 ところで「 you 」を「あなた」と和訳するのが定番(?)になっていますが、そもそも「あなた」とは上記「こそあど」のどれでしょうか?

古い言葉 現代語
こなたこちら
そなたそちら
あなたあちら
どなたどちら

 このように「あなた」とは本来「あっち側」を意味する「方向を示す」言葉だったのです。日本語では「物事を直接的に指し示す」のがしばしば失礼とされ、婉曲表現により丁寧さを表すという言語習慣があるため、相手を示す代名詞に「向こう側」という遠い方向を意味する言葉が転用されて用いられるようになりました。時代劇などでは上の「そなた」をまだよく聞きますね。

 このように歴史的な由来もからみ、日本語の代名詞と英語のそれとはかなりずれたところが多く見受けられます。ですからすでに申し上げましたとおり、くれぐれも「言葉の置き換え」で英語の代名詞が理解できるとは思わないようにしてください。これをい認識していただくことが今ここで日本語の代名詞に触れる最大の目的です。



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107.人称代名詞

 代名詞としてまず学ぶのが「人称代名詞」です。これは「すでに登場した名詞」を受けて、その繰り返しを避けるために用いられる語であり、ということは人称代名詞があれば、そこには常にそれが具体的に指し示す名詞が理解されなければなりません。

 これを理解するには、「人称」という言葉をまず知っておきましょう。

1人称=話者(自分)を含む
2人称=聞き手(相手)を含む
3人称=話者も聞き手も含まない

 さらにそれぞれに単数と複数の区別があり、3人称単数については「性別(男性・女性・中性)」もあります。

 単数複数
1人称Iwe
2人称youyou
3人称 he/she/it  they 

 「中性」とは「性別がない」無生物や「性別を考える必要がない」動物や赤ん坊などを指すものです。(「通性」という言い方もあります)
 「a pen」という言葉が先に出てきて、それを指す代名詞を使おうとするとき、「he/she」のどちらでもうまくいかないことはお分かりですね?このとき「中性」の代名詞(it)を使うわけです。中学などでは、it を「それ」という訳語で教えてしまいますが、これがそもそも多くの誤解を生む根源なのです。あくまでも「he/she/it」を「仲間」として理解するようにしてください。
 3人称複数の代名詞に性別がないのは、男女が入り混じるグループを指す場合もあるため、「男性だけ、女性だけ、男女まじって、ものだけ」などと多くの表現を1種類で済ませていると考えてください。ですから「they」には様々な訳語が考えられるわけで、決して「they=彼ら」という和訳にとびつかないことも重要なこころがけです。

(人称代名詞の「格」)

 今あげた人称代名詞はすべて基本の「主格」です。つまり文章の主語として使われるときの形ですが、名詞と同様に代名詞にも文中の使われ方により「格」があります。

 主 格  所有格  目的格  所有代名詞 
Imymemine
youyouryouyours
hehishimhis
sheherherhers
ititsit-
weourusours
youyouryouyours
theytheirthemtheirs

 この中で「 it 」だけは所有代名詞がありません。
 これら様々な格が何を意味するかはこの先文型などの章で詳しく説明することとなりますが、中学で英語を習った方ならば、なんとなくでも、これらの形になじみがあることでしょう。
 日本語には「て、に、を、は」と俗に呼ばれる「助詞」という言葉があり、それによって「私が、私の、私を、、、」などと「私」の文中における働きを示すことができますが、英語ではそれと同じことを「語順」と「語形」によって示します。ですから「私は」の意味に相当するところで「me」などを使うと意味が違ってしまうということなのです。

 市販の参考書を見れば分かる事柄はそちらに譲るとしまして、意外な盲点として多くの学習者が間違えやすい点についてここでは注意したいと思います。

(代名詞の所有格についての注意)

 この「所有格」という言葉が私は好きではありません。その名称自体が誤解を招きやすいからです。
 「 my book 」という表現の「my」がその所有格ですが、「所有」という言葉からつい「持ち物(所有物)」という狭い意味だけでこれをとらえがちですが、文脈・前後関係によっては「私が図書館で借りてきた本」ということもあるのです。
 古い英文法では、my, your, his, ...などを「属格」という名称で呼んでいました。ちょっと何のことか名称からわかりにくいということで「所有格」という名称にとって代わられたのですが、文法的な観点から言うと「属格」という名称の方が正しく実態を表していると言えます。つまり「my book」では「私」と「本」との間に何らかの「属性」があることを示すものであり、その属性の種類としては「所有」もあれば「その他の関係」もあるということなのです。ですから「所有」というのは「様々な属性」の中の1つに過ぎず、それだけを名称にしてしまったところに学習者を迷わせる原因があると私は感じます。

 それが分かると「my hotel」という表現も「私がオーナーであるホテル」という意味だけでなく「そのとき私が滞在したホテル」という意味にもなることがわかります。思考を柔軟にして、文法用語から間違った思い込みに誘導されないためにも「属格」という言葉を積極的に使うことを個人的にはお勧めするものです。

(英文中に代名詞を見たら)

 すでに申し上げましたとおり、代名詞を機械的に決まった訳語に置き換えることは禁物です。訳語をあてはめてしまった瞬間「その箇所を理解した」と思い込みやすく、それが英文の誤読から脱却できない悪い原因になることがしばしばあるからです。
 ですから英文を読む際には、人称代名詞をみたら、できるだけ「具体的な名詞」に読み替えることをお勧めします。それが和訳結果としても自然な日本語になるのです。たとえば「my father」を受けた「he」がそこにあれば「彼」とはせずに「父」という具体的な訳語をあててやるのです。

(人称代名詞は文脈なしに現れない)

 これも極めて当たり前のことでありながら、「言葉の置き換え」で和訳ができると思い込んでいる学習者の多くが陥るあやまちの1つなのですが、たとえば、遠くに立っている男性を指して「彼は私の学校の先生です」というのを英語で「He is a teacher of my school. 」とはいいません。この場合の「彼」は「That man」と具体的な名詞でいったん表現して、はじめてその後「he」でそれを受けることができるのです。
 学校で習う文法では、例文として突然「he/she」などで始まる英文が教えられてしまいますが、それらは「なんらかの文脈を受けた続きの文章」だと理解しなければなりません。前もって具体的な名詞が出ていないのにいきなり使える人称代名詞は「I/you」だけです。(なお、お互いの視線が共通して同一人物に向けられているという状況を踏まえているときなら、「今二人が注目しているあの男性」の意味でheを使うことはできます。)

 さて、「人称代名詞」は文脈なしに現れないと申し上げましたが、それは裏を返すと「いきなり人称代名詞が現れると『はて、何を指しているんだろう?』と聞き手は疑問を感じる」ということでもあります。そこを逆手にとって利用した構文が生まれます。

It is difficult for me to learn English.(私にとって英語を学ぶのは難しいことだ)

 この文章の冒頭にある「it」は「仮主語」というもので、内容保留」の「それ」です。そしてその具体的な内容が「 to learn English (英語を学ぶこと)」という形であとから明かされる構造になっているのですが、こんな構文が成り立つのも、「 it 」という人称代名詞が具体的に指す言葉がないのに突然現れることにより「何を指しているんだろう?」という聞き手の疑問を引き出すことにより、その疑問を解消しようとあとから「真主語」が追えるという英語の言語習慣の中での心理の機微によるものなのです。

 つまり「 It is difficult 」までを聞かされた聞き手は「 it って何が?」という疑問を抱きつつも、結論である「(それは)難しい」だけを先回りして理解します。「難しいというのは分かったけど、何が?」と感じながら、その先に耳を傾けていると「 for me to learn English(私にとって、英語を学ぶことは)」という保留にされていた主語の内容が聞こえてきて納得するという順序になっています。

 英語という言語は「主語と述語」が必須です。(日本語は違う)  その必須条件があるため、「6時です(It is six o'clock.)」や「雨が降っています(It is raining.)」のような文章でも、「何かを主語にするしかない」という事情が発生してしまいます。ここで it を使うことについて「主語がなければならないという事情を背負った英語の悲鳴が聞こえてくる」と評した人もいるほどです。これらの英文では「時や天候を指すit」と呼ばれる形式的な主語を置くことで「主語+述語」という必須条件をなんとか満たし、英文としての体裁を保っているわけです。



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108.指示代名詞

 次に「指示代名詞」という種類の言葉を見てみます。指示代名詞とは「指で指し示す」ように何かを具体的な名称を使わずに表す言葉であり、「近称、遠称」の2種類があり、それぞれに単数と複数の区別があります。

  単数  複数 
 近称 :thisthese
 遠称 :thatthose

 これだけです。指し示すものにより物でも人でも使えます。日本語には「これ、それ、あれ」というふうに「近称、中間称、遠称」の3種類があるのに対して英語には2種類しかないということです。つまり英語の指示代名詞は、話者から近い・遠いだけで区別されます
 ということは「日本語の中間称」である「それ」は「thatの意味の一部」に含まれるということなのです。

 ここで多くの学習者は混乱してきます。「あれ??『それ』って it じゃないの? thatit はどう違うの?」と。

 さあ、前の項目で学習したばかりのことをここでも復習しますよ。
he/she/it 」は「人称代名詞」でしたね?人称代名詞とは「すでに現れた名詞の繰り返しを避けて使われる言葉」ですね。
 それに対して「 that 」は指示代名詞です。何かを指差して示している言葉です。

 ですから、日本語として「それ」という言葉が、「今話題にでたそれ」の意味なら itであり、「あなたが手にしているそれ」なら thatです。人称代名詞の itは、文脈をうけての「それ」であり、話者や聞き手からの距離は問題になりません。すでに話題に登場した男性の名前の代わりに he を使うことの延長として理解してください。

会話A
A: I met Mr. William last night.
B: Oh, he is my uncle.

会話B
A: I saw a very big, black dog out there.
B: Ah, it/that is my dog.

 会話Bで「 it/that 」のいずれも用いることができます。英語ネイティブでもこの違いを敏感に感じて使い分けている人がどれだけいるかは疑問ですが、厳密に言いますと、it 」はAさんの会話の中に登場した「 a very big, black dog 」を受けて「the very big, black dog」という代わりに用いられた人称代名詞であり、それは会話Aで「Mr.William」の代わりに「he」を使うのと同じ発想によります。一方、thatは「外にいる犬」を心理的に指差す気持ちで用いられた語であり、指示代名詞です。

 このように「内容を受けて言葉の繰り返しを避ける」のが人称代名詞であり、「話者との距離に応じてthis/thatを使い分け、指差して対象を示す」のが指示代名詞ということなのです。

That's right.(その通りです)

 この言い方では、あまり「 It's right.」というのは耳にしません。その理由は「It is right to ...」という仮主語の構文の出だしに聞こえてしまうことと区別する気持ちが働くため、thatが好まれるとも言えるでしょう。
 しかし、たとえば相手が「この英文に使われている、この単語のスペルは間違っているんじゃないか?」というような疑問を投げかけたことに対してなら「 It's right.その単語のスペルは合ってるよ)」と言えます。
 ここで「 That's right. 」だと「その通り=君の言う通り=その単語のスペルは間違っている」となり、逆の意味になることに気づいてください

(指示代名詞は「人」にも使える)

 日本語で「これは私の父です」とそばに立っている人物を紹介するのは「人に向かって『これ』とは何だ」と叱られてしまいそうですが、英語で「 This is my father. 」はまったく失礼ではない自然な言い方です。すでにちらりと話題に出ましたが、日本語の文化では「人間を指差す」というのは失礼とされており、直接指し示さず、その周囲や方向という漠然としたものを指すことで婉曲さを出すことが言葉の礼儀とされています。「~様に『おかれましては』」などというのも、人を場所に転換することで「オブラートにくるんだ」ような表現として直接さを回避しているわけです。

(「ここ」は英語でなんと言う?)

 もしあなたが外国のどこかで道に迷って「ここはどこですか?」と人に尋ねるとして「Where is here?」とはいえません。
 「here」は代名詞ではなく副詞であるため「Where is here?」は主語のない珍妙な英文になってしまうからです。それを言うなら「 Where am I?(私はどこにいるのですか?)」と表現します。
 英語でも「from here」というある種の決まり文句の中ではhereを代名詞的に用いることがありますが、基本としては「here/there」は副詞だと覚えておいてください。ですから「ここ」を英語で表現するなら「this place」がそれに相当します。つまり「 Where is this place? 」は正しい表現です。(が、道に迷ったなら「 What is this place? 」とその場所の地名などを聞く方がより自然です。)

 なお「 this/that 」は、使い方によっては代名詞でもあり、形容詞(指示形容詞)でもあり、さらには副詞でもありえますから、これも固定的に暗記したりしないように注意しましょう。

That is my book.(「あれ」は私の本だ。=thisは指示代名詞)
That book is mine.(「あの」本は私のものだ。=thatは指示形容詞)
I can't run that fast.(私は「あんなに」速くは走れない。=thatは副詞)

(代名詞の格の扱いに関する注意)

 これは代名詞だけに関する問題ではなく、接続詞や前置詞といった他品詞とのからみでもあるのですが、英語ネイティブの中には品詞というものを深く意識せず言葉を使っている人も多く、現実の会話などでは本来文法的でないとされる言い方が普通に使われることもあります。

Me and my father went to the zoo yesterday.(非常に口語的)
My father and I went to the zoo yesterday.

 「me and my father」はそれで主部(S)になっているので、正しくは「 My father and I 」とすべきところ。しかし子供の会話などを中心として「me and ~」の言い方が普通に見られます。極めてくだけた口語表現で、しつけの厳しい家庭なら「my father and I」と言い直させることさえあります。(さらに語順について言えば、「I」はあとから出すのが礼儀。「you」は「you and he」のように他の代名詞より先に出すのが同じく礼儀とされます。ただし「悪い内容」について述べるとき(例: I and he were arrested for speeding.<スピード違反でつかまった>)は、その逆で「I」が先に来ます。)

 また「It's me.」という表現になると、「It's I.」以上に浸透しており、もはや「It's me」を間違いだと指摘する人もほとんどいなくなっています。文法的には「主格補語」といって「it=I」の関係であるため、代名詞も主格であるべきところですが、「It's I.」は現実にはかなり格式ばったものの言い方とされています。最初の例「me and my father」は真似ることを勧めませんが、「It's me.」は安心して使って大丈夫です。もちろん、正式な文書の中で「It's I.」と書くことはまったく正しいことです。

 代名詞の格については特に接続詞や前置詞の直後に注意してください。

(1) He loves you more than I.
(2) He loves you more than me.

 これは「I/me」では文章の意味自体が違ってきます。(1)(2)はそれぞれ次の文章を省略したものです。

(1) He loves you more than I (do)=than I love you
(2) He loves you more than (he loves) me.

 つまり、1では、「 He loves you. 」と「I love you. 」を比較しており、「 than I 」は「私があなたを愛する以上に」の意味。
 2では、「 He loves you.」と「He loves me.」の比較であり、「 than me 」は「彼は私を愛する以上にあなたを愛している」の意味。
 この違いが「 I/me 」だけに現れており、これを取り違えると文意全体が変わってしまいます。

between you and me(私とあなたの間で)

 「between」は前置詞ですから、名詞・代名詞の「目的格」としか結びつきません。したがってこれをbetween you and I 」とするのは単なる間違いです。にもかかわらず現実の英語ネイティブの会話ではこれもたまに聞かれます。
 英語ネイティブの間でしばしば見られる「文法に対する誤解」があるのですが、「me and my father」のような言い方が正しくないと注意され「meを I に直される」経験をしたり、「It's me」が本来の文法では「It's I.」だと聞いたりすると、その文法的根拠(主格だから I だとか)を知らず、安直に「ああ、そうか。me は粗野な言葉で、I は丁寧で綺麗な言葉なのか」というふうに思い込むことがあります。その結果、本来 meが正しい「between you and me」のような場合まで間違った類推から「between you and I」としてしまうのです。このあたりのたてわけは文法から英語を学ぶ日本人の方がかえって間違えないという面白い傾向があります。

(人称代名詞の「一般用法」)

(1) They speak English in the US.(アメリカでは英語が話される)
(2) Do you speak English in the US?(アメリカでは英語が話されますか?)
(3) We use hiragana, katakana and kanji in Japan.(日本では平仮名、カタカナ、漢字が使われます)

 これらは特定の誰かを指すのではなく、1なら「アメリカ人たち」全般、2なら「聞き手を含めてのアメリカ人全般」、3は「話者を含めての日本人全般」を意味する代名詞。
 同様の用法に書籍の中で著者が読者全般に対して呼びかける意味で使われる「 you(「読者の皆さん」の意味)」もあります。
 また書籍の中では「Editorial "We"」と呼ばれる特殊な we があり、たとえ1人の著者であっても、その著者の独善的な言葉という響きを避けるため「編集部一同」のような意味合いで用いられます。

(Royal "We")

 王などがみずからを指して「We」という1人称複数の代名詞を用いるが、これは「自らの意思=国民の総意」という発想が背景にあるもので、他の格も「our, us, ours」となりますが、「 ourselves 」だけは「 ourself 」という独自の語形が使われます。
 なお最近では王族なども国民の視線に立つという親近感をもった言葉遣いになってきており、ごく普通に1人称として「 I 」を使うことも珍しくなくなってきているそうです。(国王に知り合いがいないので直接はよく知りません(笑))



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109.不定代名詞

 ※本サイトの「代名詞>不定代名詞」では重要基本事項として一部の不定代名詞しか取り上げていません。ここに上げた中でも「each, either, neither」などが含まれていませんので、不足分についてはお手持ちの参考書などで学習してください。(今後「構文」の章で取り上げることがあるかも知れません)

不定代名詞の基本理解(oneとsome)

 文法書の「不定代名詞」の定義を見てみると:
「不特定の人や物を表し、また一定でない数量を表す代名詞」
とある。う~ん、、、、なんともわかったようなわからないような難しい表現ですね、、。
 「代名詞」の一種なのですから、「名詞に代わって用いられる言葉」であるのは確かですが、これまで見てきた人称代名詞や指示代名詞とは、また違うタイプの代名詞であることは確かです。混乱しないためにも、不定代名詞に入る前に、今一度、人称代名詞と指示代名詞を復習し、それら2つについての理解を固めておいてください。

 ここはなまじ不定代名詞の定義をするより、具体的な実例を通じて「こういうものが不定代名詞なんだ」と理解した方が早そうです。

ONE

I don't have a pen. Will you lend me one?
(ペンを持っていないんだ。貸してくれる?)

この「 one 」が不定代名詞です。「 Will you lend me a pen? 」という代わりに「 a pen 」を「 one 」で済ませています。つまり基本としての考え方は「a/an + 普通名詞」に代わる表現ということです。(不定冠詞ごと意味に含むということに注目)

人称代名詞の中に「 it 」がありますが、これは「すでに話の中に登場した具体的なもの」をさして用いられますので「the + 普通名詞」に置き換わるというのが、oneとの違いです。

(1) I don't have a pen. Will you lend me one? ペンならどれでもいいから1本貸して
(2) I don't have a pen. Will you me it to me? 「そのペン」を貸して

one ← a/an+普通名詞
it ← the+普通名詞


 このように人称代名詞が「すでに話の中に登場した名詞を指して、その繰り返しを避けるため」用いられるのに対して、不定代名詞は「どれを指しているかがはっきりせず」、しかし何のことかはわかっている必要があります。上記例では、少なくとも「ペン」という話題があるから「one」が「a pen」の意味だと理解されるわけです。これを唐突に

Will you lend me one? (Will you lend one to me?)

といわれても「何を貸せばいいのか」が相手にはわかりません。


SOME

 I have no butter. I need some.(バターがない。また必要だ)

 これは「 butter 」という物質名詞を受けた不定代名詞「 some 」の例。最初の「 one 」は「a/an+普通名詞」に用いられますが、不可算名詞を受けるために one は使えません。そのため、someを用いるわけです。
 「it」は可算名詞も不可算名詞も指すことができますが、「one/some」は使い分けが必要となります。

(1) Do you have butter? May I use it?
(2) Do you have butter? May I use some?

 この1,2はどちらも正しい英文ですが、意味合いが異なります。
 1だと「あなたが持っているそのバターを使ってよいか?」に加えて、まるで「それを使い切ってしまう」ように聞こえます。あるいは他にもバターを持っている人がいる中で「特にあなたのバター」を使いたいという意味にもなります。
 2は、あなたが持っているバターの「一部」を使い、残りは返すという意味がうかがえます。あるいは相手が持っているバターのかたまりをそのままポンと借りるのではなく、ナイフで少し切り取ってもらうような状況がイメージされます。


A 形容詞 ONE

 最初の基本として「one」は「a/an+普通名詞」に代わるものと述べましたが、oneに形容詞がつくと、不定冠詞(a/an)が形容詞の前に姿を現します。

I have a blue car, but I want to buy a red one next time.
(今青い車を持っているが、今度は赤いのを買おうと思う。)

この「a red one」は「a red car」と同じ。「red a car」という語順を取りませんから、形容詞 redよりも前に「a」が姿を現すことになります。

さて、不定代名詞「 one 」は複数形「 ones 」という形もあります。「 one 」を「1つ」という固定的な意味で理解してしまうと「ones?1つの複数形?何だそれ?」となってしまいますが、意味として具体的な名詞の繰り返しを避けているのだという「機能」から理解する必要があります。

My shoes are too small now, so I need new ones.

 この ones は「shoes」という複数形普通名詞に代わって用いられています。
 「 I need new shoes. 」と普通に名詞を使って表現しても間違いではありませんが、英語の習慣で「名詞の繰り返し」はできるだけ(文意が誤解されない限り)避けるというものがあるため、名詞の繰り返しは極力避けて代名詞を使える箇所は使うというのが基本です。

This bridge is longer than that one.
(この橋は、あの橋よりも長い)

 こうしてみてみますと、「one」という不定代名詞は日本語の「の、やつ」に非常に近いことがわかります。
the big one :その大きいやつ、その大きいの
the third one:3番目の、3番目のやつ

There are so many beautiful shirts. I wonder which one(s) I should buy.(素敵なシャツがたくさんある。どれを買おうか迷ってしまう)

 ここで「one」と言えば「多くのシャツの中から1着だけ」を買うつもりであり、「ones」なら2着以上を同時に買う可能性もあることを意味します。

 なお不定代名詞「one(s)」は、「固有名詞」の直後や「具体的な数詞」と組み合わせては用いない習慣があります。

My house is smaller than Tom's. (Tom's oneとは言わない)
Bob has five books, but I have two. (two onesとは言わない)

 いずれの例でも「 Tom's (=Tom's house)」、「two (=two books)」が代名詞になりきっています。

 不定代名詞には「one(s), some」以外にも多くの種類がありますが、「不定代名詞とはどういうものなのか?」という基本理解をここまでの例を通じて理解してください。


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one-another, some-othersなど

 これは非常によく用いられる便利な表現なので是非完全に習得していただきたいのですが、「多くの中から、1つ適当に取り出し、また次に別のものを取り出して、、」というような状況を表現するのに、one, another, some, othersなどを適切に組み合わせて表現する必要があります。

(1) There are two pencils on the desk. One is black, and the other is red.
(2) There are some pencils on the desk. One is black, and another is red.

 1は「全体の数が2」とまず分かっています。全体が2の中から、最初に1つを選ぶとき、選ぶ対象は「2つ(以上)ある」わけですから「one(of them)」となります。2つの中から1つを取り出してしまうと「自動的に残りは1つ」しかありません。決まった1つしか残っていませんので、「the other」とtheをともなってother(他のもの)が用いられます。
 2では「全体の数が2よりも多い」となっており、そこから1つ(one)を取り除いても、残りはまだ2つ以上ありますから、「an+other」(otherと呼べるものが2つ以上ある中の1つ)となります。an+otherは習慣的に常に1語につづります。

 詳しいことは「冠詞」の項目の中でまた触れますが、「the」がついているときは常に「全部」を指します。1つだけでも、2つ以上でも、その範囲にある「すべて」を指すのがtheの機能です。これをよく覚えておきましょう。

(3) There are 40 students in my class. Some (students) go to school by bus, and others go to school by train.
(4) There are 40 students in my class. Some are boys, and the others are girls.

 3では全体の数が40。通学手段は「バス、電車」以外にも「徒歩、自転車」など他にもありますから、40人の生徒から「バス通学」の数名(some)を取り出しても「残り全部(the others)」が電車通学とは言えません。(実際に40人の生徒の通学手段が「バスが電車の2方法だけ」なら、言えます)
 つまり3の例では、「まだ全員の通学方法を述べきっていない」ことが分かり、さらに「 others go to school on foot 」などが続くことが予測されます。
 4では、生徒の性別として「男女2種類」しかありえませんので、「数名の男子」を40名の中から取り出してしまえば、「残り全部が自動的に女子」となります。だから「the others」です。

 多くの全体から何かを順に取り出す言い方は、「one, some」、「another, others, the other, the others」を自在に組み合わせて表現できます。常に念頭におくべきは「これで最後の全部」となったとき、theがつくということです。

全体の数が2のとき

 1つ目はone。2つ目は自動的にthe other

全体の数が3のとき

 1つ目はone。2つ目はanother。3つ目(これで最後の1つ)は、the other

全体の数がたくさんのとき

 最初に取り出すのが1つならone。複数を最初に取り出すならsome
 2回目以降、まだ「その次」がある限り、単数ならanother、複数ならothersを繰り返し、
 最後の全部となったとき、それが単数ならthe other、複数ならthe others

 特に最後の例は、単数と複数が入り混じってもかまいません。たとえば、テーブルの上にさまざまな色のボールが雑然と散らばっているとしましょう。
 そこから最初に「赤いボール」だけを探し出して取り除きます。
---もし赤いボールが1個しか混じっていなければ「One is red.」であり
---もし数個の赤いボールが見つかれば「Some are red.」となります。
 次にテーブルを見渡すと、まだまだ多くの色のボールがあることが分かれば、取り出す作業は数回続くことになりますね。
 2回目として青いボールを取り出すとき、
---もし青いボールが1個しか混じっていなければ、「Another is blue.」であり、
---もし数個の青いボールがあるなら、「Others are blue.」となります。
 以下同様に「anotherかothers」によって表現しながらどんどんボールを取り除いていき、ついにテーブルの上には「あと1色」のみのボールが残されたとします。
---残る1色のボールが1個だけなら「The other is black.」
---残る1色のボールが複数あれば「The others are black.」
 としめくくられるわけです。

 このように「the」には「あと全部」の意味があることをよく覚えておきましょう。


ANOTHER

 これまでの例で何度も出てきましたが、「an+other」が発音的な結合の強さからスペルとしても完全に1語として書かれるようになった語です。意味はもともとの「an other」を引きついでおり、「otherと呼ばれるものが最低でも2つ以上ある中の1つ」ということです。another, otherは、代名詞としても使われますが、そのまま形容詞としても用いることができます。

Would you like another cup of coffee?
(コーヒーをもう一杯いかがですか?)

 これは「今すでに飲んでいる(飲んでしまった)一杯」がoneであることを受けて、それとは別の一杯(other)に不定冠詞anがついたもの。anotherであるということは、「まだ続きある(あってよい)」ということを言外に含みとして持っており、「2杯目で終わりじゃなく、よければさらに3杯目も、、」というあとが続くことを意味します。
 これがもし

Would you like the other cup of coffee?

 と言うなら、最初から「全部で2杯しかコーヒーがない」ことを意味し、今飲んだ1杯のほか、「残っているもう1杯」も飲みますか?とたずねていることになります。

 さらに「another」は複数形をあとに従えることもあります。

I have read ten books, but I have to read another ten.
(すでに10冊の本を読んだが、あともう10冊読まなければならない。)

 これは「先に1つの『10冊』があり」、それとは「また別の10冊」という意味からanotherがついています。
 この意味から言うと、論理的には「another+複数形」は「先に同じ数の複数」があってはじめて「さらに別の同数」が続くように使われるべきなのですが、現実には次のようにも用いられます。

I have read three books, but I have to read another ten.

 これは「I have to read ten more books.」と同じ意味。実際にはまだ「3冊」しか読んでいないので、「another」に先立つ「one」に相当する「10冊」が存在しないので、理屈から言うとanotherは使えないのですが、口語的にはこのように、単なる「もう、、」の意味でanotherが使われることもよく目にします。

 なお考えてみれば当然のことですが、anotherは「an+other」から成り立つ語ですので、複数形(anothers)はありませんし、他の限定詞(the, my, that, thoseなど)と組み合わさることも決してありません。


--------------------------------------


不定代名詞にはこれまで述べた one, some, another, others のほかに次のような語があります:
any, both, all, each, either, neither, none
someone, anyone, somebody, anybody, no one, everything(複合形)

any, both, all, each, either, neitherはそのまま形容詞としても使われますが、noneとその他の複合形には形容詞としての用法はありません。


SOMEとANY

 ここでは非常によくある疑問として、someanyの使い分けについて解説します。ここは「代名詞」の項目ですが、この場で形容詞としての用法も合わせてみてしまうことにしましょう。(代名詞としてのsome/anyは、「some/any+名詞」の名詞がsome/anyに飲み込まれた(あるいは省略された)ものとして自動的に理解できます。)

 よく中学校の文法などでは、「肯定文にsomeを用い、否定文や疑問文ではanyを使う」とまるで機械的な決め事であるかのように覚えている人がいますが、これは決してルールなのではありません。中学段階の基礎として、「よく使われる例文」の対応を軽く述べただけの説明であり、現実には「some, any」はそれぞれ肯定文にも否定文にも現れることがあります。

 まずは中学校で習う基本的な考え方(someは肯定、anyは否定か疑問)について、見てみましょう。

(1) There are some books on the desk.
(机の上に<数冊の>本がある。)

 この「some」は「This is a pen.」の「a」と同じように本来、和訳として言葉に出さなくてもかまわないものです。事実として「それが複数」であることさえ分かれば、「名詞の単複を言葉に表す」という英語の習慣によって半ば機械的に持ちいらえる語であり、言うなれば「不定冠詞 a」の複数形のようなものなのです。

 発想を深く理解するために(1)の英文を別の日本語に和訳してみましょう。

「机の上には、<その数が何冊かは定かでないが、とにかく少なくとも2冊以上の>本がある」

 こういうことを述べています。話者が「ある本は複数だ」と理解しているのであり、それをいちいち言葉に出して和訳するかどうかは、前後関係などから判断して適切な日本語表現を選べばよいのです。「こう和訳しなければならない」などと固く考えてはいけません。

 すなわち「some」というのは、ぱっと見た目に「複数の普通名詞」があるとき、「book」を「books」にすることと連動して「a」が「some」になると理解してください。

 ちなみに「I like dogs.」を「I like some dogs.」とは言いません。この「dogs」は「無冠詞複数」で使うことによって「種族全般(<一部の例外があってよいが>犬というもの全般)」を意味します。
 あえて「I like some dogs.」と言えば「基本的に犬はあまり好きじゃないが、中には私が好きだと思える犬もいる」というかなり消極的な意味となります。

 さて話を戻しましょう。(1)の「There are some books on the desk.」を否定にしましょう。つまり「正反対の意味」に書き直すのです。いいですか?意味として「正反対」にするんですよ。

 「数は分からないがとにかく何冊かはある」の反対は「1冊もない。まったくない」です。だから

(2) There aren't any books on the desk.

 となります。この「not any」とは、「1でもなければ、2でもなく、どんな数字もあてはまらない=要するにゼロ」という意味の「強い否定」を表す組み合わせです。もし(1)の英文にただnotだけを加えて

(3) There aren't some books on the desk.<不自然で使われない英文

 としてしまうと「机の上に数冊の本があるわけではない」という、なんとも意味不明な英文になってしまうのです。これは、notの機能として、

NOT→[ There are some books on the desk.]

 と[   ]の文を否定するからです。

This is not a pen.にしても
NOT→[This is a pen.]=「これはペンである」というのではない。
が本来の構造です。だから「これはペンではない」となるわけです。

 ということはany単独の意味がまずあるわけで、any booksだけの意味をしっかり理解する必要があります。
 これについては、「any book」と「any books」という見た目にはほんのわずかな違いですが、意味が大きく違うペアを通して理解することにしましょう。


any book:どの本も、どれ1つの本をとっても、いかなる本であっても
any books:何冊の本でも、その数がいつくであっても本は

 こういう違いです。「any+単数」では、「どれをとっても」という意味であり、「どれでもいい」というニュアンスを「any」が表しています。
 それに対して「any+複数」では、「数は関係ない。いくつでもいい。何冊でもいい」という意味をanyが「積極的に」表しています。つまり「any+複数」での「any」は「数に関係なく」というニュアンスを示すのです。

 ということは上記のそれぞれを否定するとどうなるでしょう?

not any book:どれ1つとっても、、、ない。どれもだめ。
not any books:数に関係なく、、ない。いくつだろうとだめ。

 こういうことです。

(1) I don't have any book.
(2) I don't have any books.

 もうお分かりですね?
 (1)は「どの本も持っていない」、「いかなる種類の本も持っていない」であり
 (2)は、「数にかかわりなく本を持っていない=1冊も持っていない」の意味なのです。

 では疑問文で考えてみましょう。

(3) Do you have any book?
(4) Do you have any books?

 (3)は、「どんな種類でもいいから、とにかく1冊の本を持っているか?」とたずねる英文。
 (4)は、「何冊でも数にはこだわらないから、とにかく本を持っているか?」とたずねる英文。

言い換えると「any+可算名詞」は次のいずれかだということです:
1、「any+単数名詞」:any kind of 単数名詞(どの種類の~でも)
2、「any+複数名詞」:any number of 複数名詞(どんな数の~でも)

 すなわち3の質問は、「小説でも漫画でも辞書でも、ジャンル、種類は問わない。それが本でありさえすればいい」という気持ちを背景とした質問です。
 4の質問は、「数はどうでもいい」という気持ちであり、たった1冊でもあれば「Yes」で答えられます。


疑問文の中のsome/any

 some/anyの単語としての意味を十分理解できてくると、これらが疑問文に用いられたときのニュアンスの違いも理解できます。

(5) Do you have some books?
(6) Do you have any books?

(5)は「You have some books.ですか?」とたずねているわけです。つまり質問の前提にあるのが「あなたは何冊かの本を持っている」という肯定的事実であり、そういう期待をこめて尋ねていると言えるのです。だから「あなたは何冊か本を持っていますよね?」のように「Yes」の返事を最初から予測・期待した質問と考えます。
 (6)は、「数に関係なく本を持っているか?」が細かい意味ですから、「1冊でもいいし、2冊でも、もっと多くても、それは関係ない」のであり、こういう質問の仕方をするのは、「相手が本をどれだけもっているかがまったく不明」である前提となります。ですから「Yes/No」のどちらの返事が返ってくるか質問者は予測できていません。純粋な疑問として質問しているのです。そのあたりを言葉に出して和訳するなら
何冊でもかまわないんだけど、君は本を持っていますか?」
となります。


 さてこれまで「数えられる名詞」とsome/anyの組み合わせを見てきましたが、some/anyは数えられない名詞とも用いることができます。もちろん、その場合意味が少し変わってきます。

 数えられる名詞は「いくつ」で数的に把握されますが、数えられない名詞は「いくら」という量で把握されます。

some water いくらかの水
any water 1、水でさえあれば量を問わずいくらでも 2、どの種類の水でも

 数えられる名詞の場合、any book/any booksと名詞が「単数形か複数形か」によって上記、1,2いずれの意味であるかが判別できましたが、不可算名詞には複数形がありませんので、見かけ上、1,2どちらの意味なのかは分かりません。あくまでも文脈から判断されることになります。
 「any+不可算名詞」は次のいずれかと同じ意味だと言えます:
1、any kind of 不可算名詞(どんな種類の~でも)
2、any quantity of 不可算名詞(どんな量の~でも)

  このような意味として「any」は肯定文にも当然用いることができるのです。

(1) Any wine is fine with me.(ワインでさえあれば私は種類にこだわらない)
(2) Did you drink some beer?(ビール飲んだんじゃない?/飲んだでしょう?)
(3) Did you drink any beer?(ビールを飲みましたか?)
(4) I'd like to have some beer.(ビールでも飲みたい)
(5) We don't have any water.(水がまったくない)


not any =完全否定

 これは本来、この代名詞の項目ではなく「構文」の中で解説すべきことがらですが、これまでの理解と関連性が深いので、この場でとりあげたいと思います。

I don't have any books.私は一冊も本を持っていない。

 この英文で「not...any」の組み合わせが「1つも、、ない」の完全否定を意味していることは、中学段階でも習うことかと思います。ここで是非注意していただきたいのは「not, any」という「部品さえそろっていればいい」のではなく、not が先に現れ、あとから any が出てくる」という「語順」も重要だということです。

 ですから
Anybody is not in the room.<間違い
 として「部屋にはひとりも人がいない」の意味にはできないのです。
 これは英語の習慣として「肯定文なのか否定文なのか」をできるだけ早い段階で明確にするというものがあるためで、「any」が先に見えた(聞こえた)瞬間、読者(聞き手)は、それが「いかなる、、でも、、だ」や「いくつの、、、でも、、だ」という強い意味の肯定文だと思い込みます。そこにあとから「not」が出てきてしまうと、その理解が混乱し、意味がつかめなくなってしまう(=通じない)のです。

 しかし先に「not」が現れれば、それが否定文であることがまず了解され、「どの程度の否定か」について、あとからanyで「完全否定」となり、読者(聞き手)は、思考の混乱もなく、スムーズに文意が理解できます。

 では、上の「anybody is not..」のような文章はどうすればいいのでしょう?
 答えは簡単。Notをanyより前に引っ張り出すのです。

Not anybody is in the room.

 まずはこれで正しい英文になります。「not anybody」と否定語を先行させることで「誰一人として、、、ない」という「ない」の結論を先んじて伝えることができ、聞き手は「否定文を聞いている」ということをあらかじめ理解できます。また「not any」を「合体」させると次の英文が得られます。

Nobody is in the room.

英語に「 no 」という言葉がある大きな理由がこれで見えてきます。つまり「 No+名詞」を主語に取ることで文頭からそれが否定文であることを明示することができ、「肯定・否定をできるだけ早く明確にする」という言語習慣にかなうわけです。


 さて他にも多くの不定代名詞がありますが、辞書で調べればわかることがほとんどですから、このサイトでの解説はここでとめましょう。また必要があれば、別の項目を設けて追加説明もすることにします。



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110.再帰代名詞

 -self(複数形で-selves)の形になるものを「再帰代名詞」と呼びます。

I > myself
you > yourself
he > himself
she > herself
it > itself

we > ourselves
you > yourselves※主格人称代名詞では同じ形のyouも、再帰代名詞では語尾に単複が現れる
they > themselves

one(人) > oneself (その人自身):辞書などで上記再帰代名詞を「ここに入れる」という一般化した意味に用いられる


 上記が再帰代名詞のすべてですから、語形自体は実に簡単です。
 「再帰」と呼ばれるのは、動作が「自分自身に再び帰ってくる」という意味からの名称ですが、自らを動作対象(目的語)とする動詞を「再帰動詞」と特に呼ぶこともあります。

 再帰代名詞があることで文脈上の意味の誤解をさける効用があります。

(1) She sent the letter to her. (sheとherは別人)
(2) She sent the letter to herself.(自分に宛てて手紙を出した)

 (1)では、sheによって示される女性と、herによって示される女性は別人であり、それぞれが誰を指すのかは文脈から判断されます。
 (2)では、主語であるshe自らに宛てて手紙を出したという意味です。

(3) Betty's sister looked at her in the mirror.(her=Betty)
(4) Betty's sister looked at herself in the mirror.(herself=Betty's sister)

 (3)では、herは「Betty」を受けており、主語である「Betty's sister」自身ではありません。
 (4)では、主語である「Betty's sister」に動作が帰ってきていることを意味します。

(本来再帰動詞だったものが自動詞化した例)

hideは「隠す」という他動詞の意味のほか、自動詞として「隠れる」としても用いられますが、これはもともと「hide oneself(自らを隠す)」の「oneself」が省略<あるいは目的語を動詞が飲み込んだ>されたのが、そのまま自動詞として定着したものです。このような動詞はoneselfとともに他動詞として使うことも、もちろんできます。

adjust (oneself) to:~に順応する
behave (onself):行儀よくする
prepare (oneself) for:~に備える
shave (oneself):ひげをそる
prove (oneself):~であることがわかる

over-との複合動詞は、本来「~させる」という他動詞で、その目的語として再帰代名詞が置かれたのですが、それが形式化して、over-の動詞を自動詞、oneselfを強意の副詞的な語として考えるのが今では一般的となっているようです。

overeat oneself:食べ過ぎる
oversleep oneself:寝過ごす
overwork oneself:働きすぎる


再帰代名詞の強意用法

 「主語、補語、目的語」と同格に配置され、それを強める用法。強める語の直後に置くのが基本位置ですが、副詞的な使い方となっているため、比較的自由な位置を取ることがあります。

You have to talk to your teacher himself.(先生自身に話しなさい)
I myself didn't think of it.(私自身、そんなことは思いもつかなかった)



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111.疑問代名詞

 一般に「疑問詞」という総称で呼ばれている「 who, what, which, where, when, why, how 」は、それぞれ「代名詞、形容詞、副詞」が内容不明の言葉としてそれをたずねる用途に用いられます。つまり、「疑問詞」というのは「疑問代名詞、疑問副詞、疑問形容詞」の総称です。

(疑問詞)

疑問代名詞
what(何)
who(誰)
whom(whoの目的格:誰を)
whose(whoの所有代名詞:誰のもの)
which(どれ、どちら)

疑問副詞
when(いつ)
where(どこで、どこに、どこへ)
why(なぜ)

疑問形容詞
what(何の)
which(どちらの)
whose(whoの所有格<所有形容詞>:誰の)

※from where, until whenのように「本来副詞」である語が意味を明確にするため前置詞を伴って「臨時の代名詞」として使われることもあります。

 今の段階では、まだ名詞、代名詞以外の品詞を解説していませんので、本来は「疑問副詞」や「疑問形容詞」は、「副詞」、「形容詞」の項目で解説すべきなのですが、ごく基本的なことがらについて、すべての疑問詞についてまとめてしまうことにします。

 疑問詞というのは、数学の式の中の「X(エックス)」のようなものです。考え方としては、疑問詞を含まない普通の英文を元となる文として、その文に含まれる「ある箇所」が分からないものとして疑問文を作るのが、疑問詞を使った疑問文です。
 疑問詞を使った疑問文のことを、通常の「Yes/No」で答えられる疑問文(一般疑問文)と区別して「特殊疑問文」と呼びます。

 疑問詞は、その疑問文で「もっとも相手に強く伝えたい言葉」ですから文頭に置かれ、文章の体裁は「疑問文の語順」となります。ただし、元の文の「主語」を疑問詞に置き換えた場合は、それより後の部分の語順変化は起きません。

例:

(元の文章): Bob went to the zoo yesterday.

Bobが不明:Who went to the zoo yesterday?
to the zooが不明:Where did Bob go yesterday?
yesterdayが不明:When did Bob go to the zoo?

 元の文章の中で2箇所以上を同時にたずねる場合、可能なら疑問詞を文頭にならべますが、主語とそれ以外を同時に疑問詞にする場合は、もとの文章の語順を一切変えず、不明な箇所だけを疑問詞に置き換え「 echo question 」の形式を取ります。

When and where were you born?
Who went where?
Who bought what/, where and when?

 疑問詞を正しく使いこなすためには、それぞれの疑問詞が所属する「8品詞」の使いこなしが前提となります。

 1つの疑問詞であっても、使い方によって「代名詞」、「副詞」、「形容詞」の品詞のどれにでもなる可能性があります。

What do you have in your hand? (what=代名詞)「何を」
What color do you like best? (what=形容詞)「何色=どんな色」

Whose is this book? <This book is mine.が元。(whose=代名詞)「誰のもの」
Whose book is this? <This is my book.が元。(whose=形容詞)「誰の」

Which do you like better, summer or winter?(which=代名詞)「どちらを」
Which way should I go, right or left?(which=形容詞)「どちらの」



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112.関係代名詞

 非常に多くの文法事項を含む「関係代名詞」なので、先にここで扱う内容を紹介しておきます:

01, (関係詞とは)
02, (関係詞の区別)
03, (関係代名詞の種類:基本)
04, (直読直解の基礎)
05, (関係代名詞の目的格)
06, (前置詞+関係代名詞)
07, (関係代名詞を含む「一部分」が前に出る例)
08, (自動詞+前置詞の熟語的性質が強い場合)
09. (色々な関係代名詞)
10, (関係代名詞の2重限定)
11, (制限用法と非制限用法)
12, (前文の内容を受けるwhich)





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01,(関係詞とは)

 「疑問詞」と総称される語が、個別には「疑問代名詞、疑問副詞、疑問形容詞」と、8品詞分類レベルで存在するのと同様に、「関係詞」と一般に呼ばれる語にも「代名詞、形容詞、副詞」の3種類があります。

 まず総称としての「関係詞」という名称ですが、これは「接続詞他の品詞(代名詞、形容詞、副詞)」を兼ねている言葉という意味です。そして「関係詞によって導かれる節」は全体として「形容詞か名詞」の機能を持ちます。

 もっとも基本となる「形容詞節」を作る場合から見ていくことにしましょう。

This is a <big> apple.
This is an apple <which I bought yesterday>.

 この2つの英文の「要素」だけを抜き出すと、いずれも

This is an apple.

 となります。そして「apple」という言葉に「さらに詳しい説明」を付け加える修飾語として「red」や「which以下」という形容詞がついているわけです。つまり「which以下」という長い説明も全体で「big」1語と同じ働きをしていると言えます。
 このように複数の語がグループとして1語の機能をしているもの、特にそのグループの中に「SV(主語と述語)」の形式を含んでいるものを「」を呼びます(SVがないものは「句」)が、グループとしての機能が「形容詞」なので、これを「形容詞節」と言います。

 英語にはさまざまな形容詞がありますが、「単語」という形であらかじめ用意された形容詞だけで、あらゆる説明すべてを語りつくすことは当然できません。

高い→山
私が去年登った→山

 いずれも「山」を説明(修飾)する形容詞として「高い」と「私が去年登った」があるわけですが、「高い(high)」は単語としての形容詞があっても、「私が去年登った」という意味を表す「語」は用意されていません。(もし仮にそんなものがあるとしたら、highと入れ替えてそれを使うだけで済むんですけどね。)

 そこで「which I climbed last year」という複数の語から成り立つグループを使って、「大きな形容詞」を作り出すわけです。これが関係詞が存在する目的であり、「いつでも好きなだけ詳しい内容を盛り込んだ、大きな形容詞を特注で作ることができる」わけです。これにより表現の自由度が大幅に拡大することがお分かりですね?



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02,(関係詞の区別)

 さて、関係詞と総称される語には「関係代名詞、関係副詞、関係形容詞」の3種類があると最初に述べましたが、これはどうやって区別されるのでしょうか?
 それは、関係詞節の中」で、関係詞が「代名詞、副詞、形容詞」のいずれとして用いられているかによって決まります。

(1) a house + he built <it> by himself
→a house which he built by himself
([彼が自分で作った]家)
(2) a house + he lives <there
→a house where he lives
([彼が住んでいる]家)
(3) a girl + <her> mother is a famous pianist
→a girl whose mother is a famous pianist
([その母親が有名なピアニストである]少女)

 1では、「he built it(=the house) by himsel
 2では、「he lives there(=in the house)
 3では、「Her(=the girl's) mother is a famous pianist.
 というふうに文章中で、それぞれ「代名詞、副詞、形容詞」であった語が、関係詞になって前に出ています。
 このように関係詞節のもととなる「文章」の中で、代名詞、副詞、形容詞のどれであるかによって、「関係代名詞、関係副詞、関係形容詞」のどれであるかが決まるということです。

 関係詞によって導かれる節を、文章全体の部品として使うメインの文章のことを「主節」、関係詞によって導かれている「部品となる側」の節を「従属節」と言います。(そんな文法用語が難しければ「親分」と「子分」だと思ってください)

 本章は「代名詞」の下位分類の1つとして、関係代名詞を中心に説明してきます。他の関係詞については、それぞれが属す8品詞(副詞、形容詞)の中で、改めて取り上げることにします。



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03,(関係代名詞の種類:基本)

 関係詞によって導かれる形容詞節は、修飾(説明を加える)する相手の名詞を直前に持ちます。関係詞節によって修飾される名詞のことを「先行詞」といい、それが「」であるか「もの」であるかによって関係代名詞は「who(とその格変化形)」、「which」にわかれます。さらに「that」という関係代名詞は、先行詞が人でも物でも(そして両方が同時に先行詞になっている場合に)用いられます。

先行詞が「人」の場合:

主 格 who
目的格 whom
所有格 whose (これは関係形容詞に分類される)

先行詞が「もの」の場合:

主 格 which
目的格 which
所有格 whose (これは関係形容詞に分類される)
(上記「格」はすべて「関係詞節」jの中での格です)

 ところで、関係代名詞「who, which」はいずれも「疑問代名詞」にもまったく同じ形がありますね。これはもちろん、先に疑問詞としての用法があり、それが関係詞としても使われるようになったというのが順序です。ですから、細かく考えてみると、関係詞には疑問詞としての意味合いがちゃんと残っているのです。

 英語は「常に語順に従って理解」していくのが正しい理解の仕方ですが、それによって次の英文が聞こえてきたとき(読むとき)に、聞き手(読み手)の脳裏にはどういう心理変化が起きているかを考えてみましょう:

(1) Do you know a girl who lives near the station?
(2) Do you know the girl who lives near the station?


 (1)では、まず「Do you know a girl」までが伝わってきます。そこまでの内容から「あなたは少女を知っているか?」という質問が伝わってきます。ここで「 a girl 」と「不定冠詞+名詞」ですから「この世に『少女』として呼ばれる人は大勢いるが、その中から任意のひとり」という意味です。特定の「誰か」を指しているのではありません。
 「 Do you know a girl?」という質問では、質問があまりに漠然としすぎていて、「どの少女のことを聞いているのか」が分かりません。そりゃあこの世には「girl」という名称で呼ばれる人は無数にいますから、その中の誰かひとりでも知っていれば、あなたは「Yes」と答えられるのですが、質問者は、「a girlについてなんからの条件をあたえ、絞り込もうとします。それが「who以下」です。

Do you know a girl who ...

 と「who」まで言いかけた段階において、この英文は「少女を知っていますか?『少女』と言っても色々いますが、『』のことかといえば、特に次のような条件に当てはまる人です」と続いていることが分かります。
 このようにちゃんと『誰』という意味がwhoには含まれており、「色々ある中で特に、、」という「選択」の気持ちを表すのが「疑問詞の形」をしている関係代名詞なのです。

(1)は、

a ( girl [ who lives near the station ] )

という構造ですから、「駅の近くに住む少女」自体も大勢いて、「その中の誰かひとり」という意味です。質問者としても、その少女の氏名まで分かった上で尋ねているのではありません。「少なくとも数名以上はいるであろう、駅の近くに住む少女」の中の1人を(誰もいいから)知っているか?という意味の質問なのです。

 それに対して(2)は

the (girl [who lives near the station])

 と「the girl」ですから、話者(質問者)の頭の中にはあらかじめ特定の少女が具体的にイメージされており、「その少女を知っているか?『その少女』って言われてもどの少女か分からないだろうから、説明するけど、、」という気持ちでwho以下が追いかけているのです。ですから、こちらの英文では「駅の近くに住む少女」は、最初から1人だけがイメージされており、他にも駅前に住んでいる少女がいるかどうかは問題ではありません。
 聞き手としても、the girlだけでは「どの少女のことを話題にしているか」がわからなくても、あとの「who以下」の説明がつけくわえられた段階で「ああ、あの子のことね!」と特定の少女のことが思い浮べられます。

 thatは関係代名詞として、先行詞が人でも物でも用いることができますが、「who, which」が疑問詞由来であるのに対してthatは「指示代名詞」に由来するという違いがあります。ですから「疑問詞由来の関係代名詞」が「選択のニュアンス(その中でもどれ・誰かと言えば)」を常に持つのに対し、「指示代名詞由来の関係代名詞 that」は、そのような選択のニュアンスがなく、「ほら、あれだよ!」とずばり何かを指差すような気持ちが込められます
 このような由来とニュアンスの違いを理解していると、「どちらでも使われる場合」と「いずれか一方しか使われない場合」が深く理解できてきます。(詳細はこの先述べます)

 現実においては、英語ネイティブでさえ、疑問詞由来のwho, whichと、指示代名詞由来のthatを、区別なく完全な互換性を感じて使用する例も多いのですが、それは「本来あるべき区別が、意識されなくなったもの」です。しかし、この区別は意識の底ではちゃんと生きていますので、ある種の英文では、その区別に対する意識が明確に蘇り使い分けがなされるのです。

I lost the ring that my husband bought for me.
(夫が買ってくれた指輪を失くしてしまった)

 この英文で that which としても間違いにはなりませんが、もしこの英文を口にする女性が、「大切な指輪をなくした」という事実に切迫した危機感や悩みを強く感じているなら、思わず(whichではなく)thatが使われるところです。なぜなら「the ring(あの指輪)」、と言ったあと「『あの』って『どれのことかというと』と、、」と言葉をつなげるのは、どこか落ち着いた気持ちがあり、比較的のんびりとこの事実を語っていますが、「the ring(あの指輪)」のあと「that...」を用いる気持ちというのは、「たった1つの、かけがえのない指輪」を意識の中でも「明確に指差して」おり、それだけ「ああ、あの大切な指輪を失くしてしまって、どうしよう、、」という切実な感情が現れていると言えるのです。

 とはいえ、現実の会話では「目的格の関係代名詞」は省略するのが圧倒的であり、

I lost the ring (which/that) my husband bought for me.

と「which/that」のいずれもまったく発音されることはありません。しかし「発音されない」ということと、「もしそこに関係代名詞を文字として補うならどちらを思わず使うか」は別問題です。意識の中では、このどちらを省いているかという違いがちゃんと存在するのです。特にレポート、論文、ビジネス文書など正式な書き言葉では、発音されない関係代名詞目的格のwhich/whom/thatもちゃんと文字として表記しなければなりません。

 本サイトは「文法学習の方法(勉強法、訓練法)」を主眼に解説するのが当初からの狙いですから、一般の文法解説書のように、ただ文法事項をもれなく、あれこれ列記することを最重要視してはいません。他のサイトや書籍を参照すれば出ていることは、そちらに任せていいと思っています。しかし、他では解説されていない「話者の心理」や、英語を習得しようとする上で、日本人が感性に取り込んでいかなければならない「英語ネイティブの思考回路や感覚」については十分なページを割いてお話しようと思います。今回の「which, who/that」の使い分けについても、一般の解説では「先行詞が最上級を伴う場合など」というふうに「事例」としては取り上げられているものの、そこにある単なる「箇条書き」の向こうに存在する「生身の人間の感覚」にまで触れ、さらにその感覚を自分のものにするには、どうすれば(どう考えて、どういう練習をすれば)いいのかが、はるかに大切です。言語の習得は「知識」の次元にとどまらず、得た知識を自らの「知恵」にまで昇華してこそ、はじめて使える技能となるのです。


 これは現実の英語ネイティブたちの発語を慎重に観察していると分かることですが、先行詞となる名詞を口にした直後、関係詞節を続けて言うとき、「whichやwhoが続くときは、そこで長めの『間』があくことが多く、thatに導かれる節が続くときは、その間がほとんどなく一気に関係詞節までを口にする」ことが多いのです。この現象がなぜ起こるかは、これまで述べた「疑問詞由来の関係代名詞」では「その中でもどれかっていうと」という選択(つまり迷い)の心理が話者にもあるからであり、それに対して、関係代名詞thatが続く場合は、その文章を口にし始める時点ですでにthat節の内容までが意識にあるため、which/whoを続けるときの「間」が発生しにくいのです。

Yesterday, I saw the house / which he built by himself.

 この英文で話者は、あらかじめ「which以下」までを意識においていません。まずは「あの家を見に行った」という事実だけを思い浮べており、I saw the houseまで言ってから、はじめて「the houseだけじゃ、どの家か聞き手はわからないだろうな」と感じ、「家って、どの家のことかと言えば、ほら」と、さらに説明を続けているのです。ですから、そういう心理の流れがあるとき、この英文はhouseまでで一旦切れ目(間)が発生します。
 そして、そのような「追加説明」であることを伝えるときは「目的格関係代名詞which」もかなり明確に発音されています。

 しかし

Yesterday, I saw the house (that) he built by himself.

 と、冒頭から「彼が自分で建てた家」という意味のまとまりを思い浮べているときは、「the house he built by himself」をまるで1個の名詞のようにイメージできていますので、先の「the house which..」のときに発生したような間は、ほとんど発生しないものです。

 これらの違いは日本人が日本語で話すときと重ねても十分理解することができます。

1、僕は昨日、彼が建てた家を見てきたよ。←thatの感覚
2、僕は昨日、家を見てきたよ。ほら、彼が建てたっていう、あの家のことさ。

 1の形式を口にする人は、最初から「彼が建てた家」という言葉を思い浮べてから、この文章を発していますが、2を口にする人は「家を見てきた」までしか頭になく、それを口にする途中で「説明を追加しなきゃ」という気分があとからわきあがっているのです。
 このようにあとから「追加説明」をすれば済むような内容の場合は「who,which」という疑問詞由来の関係代名詞が用いられる傾向が強まります。すなわち英語話者は「ルールに従って関係詞を選んでいる」のではなく、自らの心理に応じて、思わずどの関係詞を使うかを選んでいるのです。

 上記1,2の和訳を参考にして、自分自身がそういう心理の流れを感じるつもりで
1,Yesterday, I saw [ the house (that) he built by himself ].
2,Yesterday, I saw the hosue /which he built by himself.

 を口にしてみてください。自らの心理と言葉が密接に対応していることを自覚しながら。


 上記の練習をしばらくしてみてから、次の英文を読み比べてみましょう:

1, I lost a ring which my husband bought for me.
2, I lost the ring (that) my husband bought for me.


 意味をよく感じながら英文を音声化してください。すると上記2つの英文が違う事実を述べていることが、自らの音声=自らの意図として実感を伴って理解されるはずです。
1は、夫が買ってくれた指輪はいつくかあるが、その中の1つを失くしてしまった、の意味。
2は、夫が買ってくれたのはその指輪だけ、あるいは他にあるとしても、失くしてしまったその指輪がことさらに大切なものである、という気持ちを背景に述べられるものです。

 多くの文法解説書には、「先行詞が最上級を伴う場合などは、関係代名詞としてthatを使う」ということを「ルール」のように書いていますが、そういう例について具体的に見てみましょう。

1, He is the fastest runner (that) I've ever seen.
2, He was the first man that went to the moon.
3, I lost the only ring (that) my husband bought for me.
4, He is the very man (that) I need for this job.


 1の「 fastest 」は「 fast 」の最上級ですから文法的な観点から「1つしかない」という意味になることが理解できます。しかし、その他の語は「意味的に」それに準じるものです。
 このように先行詞が「それしかない」もの・人を意味するときは、その文章を言い出す前から「なぜ1つだけなのか」という条件が話者の中で用意されているものです。だから「指示性」の強いthatを関係代名詞として使いたくなるのです。
 上記1~4のような英文でもwhich/whoを関係代名詞として使う英語ネイティブがいますが、これはthatが本来持つ指示性の強さに対する意識が希薄になったもの。厳密に言えば避けるべき用法なので、あえてそれをまねる必要はないでしょう。

 ところで、先行詞が最上級など限定性の強い形容詞を伴っていなくても、関係代名詞としてwho/whichを使えない(thatしか使えない)場合もあります。

Look at the boy and his dog that are walking over there.
(向こうを歩いている少年と犬を見ろ)

 この英文では「 the boys and his dog 」が先行詞です。つまり「人間と動物」が1つのかたまりであるため、人に合わせたwhoでも、ものにあわせたwhichでも、都合が悪いのです。だから「人にも物にも使える」thatを関係代名詞として使うことになります。



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04,(直読直解の基礎)

 さて、中学で英語が苦手になるきっかけとしてもっともよく挙げられるのが、この関係代名詞のあたりです。生徒を英語嫌い、英語苦手に追いやる最大の原因は「英語の理解を和訳によってのみ確認」しようとする安易で工夫のない指導法と言えるでしょう。そして、「関係代名詞があるときは『後ろから訳せ』」という台詞こそが、英語指導における「最悪」のアプローチです。

 英文が「和訳できる」のは「英文が理解できる」からです。当然のことですよね?にも関わらず現実には「意味は分かっていないが和訳はした」という勉強の仕方をする学生が多いのです。自分自身、その英文が何を言いたいのか理解できていないのに、パズル解きの公式のようなものにあてはめて英単語を日本語の訳語に置き換えれば、和訳になる、と思い込むのはなんと奇妙なことでしょう。英文に含まれている単語も発音できず、文としてのイントネーションも理解せず、それでも「和訳」ができる理由など存在しないのです。

 英文を読んで「ああ、なるほど」と内容は理解しても、「さて、これをどう日本語で言い表せばいいものか」で悩むのは至って自然なことです。英語を理解するのは決して難しいことではありませんが、「翻訳」という作業は、専門技術でさえあり、高度な日本語運用能力、日本語作文能力を背景とする、大変難しいことなのです。

 日本語によって展開される英語の授業において、英文の和訳を求めるのは無理からぬところではありますが、「和訳をさせるのが生徒の英文理解の確認」のためであるとするなら、決して「英文→和文(自然な言葉づかいの完全な文)」を求める必要はありません。(ただし、時に構造の難解な英文を素材に「翻訳」をしてみることは、「日本語の勉強」としての価値もあり、総合的な学習という観点から否定するものではありません。)


 英語学習の目的は「英語が使えるようになる」ことです。学習の補助として日本語(和訳)を用いるのは、やり方によっては十分効果的ですが、主眼はあくまでも「英語の理解・習得」にあります。

 私がもっとも推奨するのは「直読直解」というアプローチであり、英文を「語順のまま理解」し続け、その理解を日本語を通じて確認するというものです。直読直解において、生徒は、英文を一定の区切りごとに音読しては、そこまでの意味を日本語で言い、そのあとに続く英語表現との「つながり方」を言葉に出して述べながら、さらに音読・和訳を続けていきます。

例)
Yesterday, I met a girl who wanted to meet you.

まあ簡単な英文なので、いきなり「昨日、私はあなたに会いたいという少女に会った」と和訳してしまうのは楽なことでしょうが、初歩の段階ほど、これを一気に和訳させません。生徒を指名して、この英文の理解を「発表」させたとしましょう。

 多くみかける授業では、次のように進められてしまいます:

(悪い例)
1、生徒は教科書を手に取り、英文を通読する。
教員の対応→生徒の音読で、区切る場所が不自然だったり、イントネーションも意味に即したものになっていなくても、「単語の読み」さえ(カタカナ発音でも)一応合っていれば、よしとして何も指導しない。

2、生徒は教科書をポンと机の上に置き、あらかじめ予習で和訳を書き込んであるノートを手にし、その日本語を読み上げる。
教員の対応→その和訳が正しければ、「よく予習してある」と喜びOKとする。そして先に進ませる。

 これではその和訳がどういう経緯で導かれたものかを知ることはできません。他人のノートを丸写ししても、その場をやり過ごせますし、その生徒が今発表した英文を「実践的」にどこまで昇華しているかなど問題外の置き去りにされています。
 そういう教員の対応を通じて、生徒は次のような致命的な誤解をすることになります。

  1. 英語の授業とは、英文を和訳すること。
  2. 単語の発音がいい加減でも、和訳が大事だから心配ない。
  3. 英文の意味は「文字的な表現」だけから決まり、抑揚をつけたり、適切な場所で区切るなどの音声的な要素は重要でない。文の意味がかわるためには、文字表現を変えるしか方法がない。(読み方で英文の意味が変わることに気づかなくなる)
  4. 和訳できることが英語の理解だ。いつも「どう訳す」かを考えればいい。
  5. 英文そのものを意味に応じた読み方で暗唱する必要などない。
  6. 英語が話せるとは、日本語から瞬時に英訳できることだ。
  7. 日本語と英語は、単語同士対応しており、単語の置き換えさえちゃんとやれば正しい英文、和文になる。 などなど、、。

 こんな指導を中学・高校の6年間を通じて徹底的に叩き込まれれば、誰だって英語が話せなくなります。

 直読直解を活用した授業では、次のように展開します。

Yesterday, I met a girl who wanted to meet you.

  1. yesteday だけを発音。「昨日」と意味を言う。
  2. 「昨日、何があったかというと」と言葉に出して言う。
  3. I met までを発音。「私は会いました」と意味を言う。
  4. 「誰に会ったかというと」と次の「 a girl 」とのつながり方を言葉に出して言う。
  5. a girl」を発音。「ある少女に」と意味を言う。
  6. 「どんな少女に会ったかというと」と「who以下がその少女の説明として続いている」ことを言葉に出して言う。
  7. who wanted 」を発音。「その子が望んでいる、したがっている」とその部分だけの意味を言う。
  8. 「何をしたがっていたかというと」と言葉に出して言う。これにより「want to (do)」の理解がわかる。
  9. to meet you 」を発音。「あなたに会うことを(欲していた)」と意味を言う。
  10. 一定量を上記のように進めてから、「ここまでを自然な日本語にすると」として、今までの直読直解を思い出しながら、自然な日本語にもしてみる。
  11. さらに理想的には、以上の理解を踏まえ、その英文全体を「正しい音素、強勢、抑揚で」発音しなおします。これによりちゃんと「意味に即した読み方」ができているかを確認できます。

 どれだけの分量で区切るかは、ケースバイケースです。その気になれば単語ごとに切って進めることも可能で、それにより極めて緻密な文法理解ももたらされます。特に「修飾・被修飾」の関係が明確に確認されます。

 英文というのは、話者と聞き手の間で常に一定の「心理的なキャッチボール」が展開されており、聞き手は「疑問>納得>新たな疑問>また納得」を繰り返しながら、話者の言葉を理解していきます。

 上記、直読直解のプロセスで「一定量の英語について音読、和訳」をするのは、聞き手の「納得」する箇所。そして、2,4,6,8で言葉に出す「つぎの部分とのつながり方」は「そこまで得られた情報から沸き起こる聞き手の中の疑問」に相当します。つまり「すでに聞こえてきた情報」から何が分かり、まだ何が分かっていないのか、さらにどんな情報の追加を聞き手はその時点で期待するものなのか、という極めて自然な英語的考え方が、この要領を通じて無意識のうちに習得されていきます。

 語順に素直に従った理解の連続なので、「聞き取り」の技能向上にもそのまま結びつきます。慣れるに従い、直読直解での区切りの単位も徐々に長くなってきますが、それは「一度に理解できる英語情報」の量が増えることであり、聞き取れる英語の長さが伸びていることでもあります。

 本サイトの「084.聞き取りの力を伸ばすには」において
4、耳から聞こえてきた順番に意味を理解し、和訳することなく相手の発言を解釈できる。
 という項目の中でも説明していますが、聞き取りの力は「音声の聞き取り」に加えて「語順のまま意味をinputできる能力」なのです。その能力を培うためには初歩の段階からこの直読直解に習熟することが最短の近道となります。

 「不定詞の名詞用法」とか「時制」とか、さまざまな文法的要素が盛り込まれた英文であっても、直読直解を活用した授業展開なら、そんな文法用語をほとんど使わずにその理解の確認ができます。英文の中に現れる区切りごとに、「すでに理解された情報」と「さらに続く情報」の関係性を言葉に出して言いますので、構造を読み違えていれば、その時点でわかるのです。そして生徒もまた、区切りごとの「つながり方」にこそ、英文の構造が現れるのであり、英語の語順に「必然性」を感じながら英文を理解することができるようになります。

 英語の語順に「必然性」を感じられるようになるというのは、極めて重要なことであり、自らが英語を発するとき、そこで培った感覚に基づいて「今言うべき英語」だけに専念し、それを言ってから、英語として自然につながる次の情報を思い浮べるという思考法が上達してきます。これこそが「英語が話せる」ものの考え方であり「英語で考える」ことなのです。そしてこの感覚を育成することこそが、日本人でありながら、後天的に英語ネイティブの感性を得ることなのです。

 どんなに英文が高度になり、挿入や倒置など複雑な構文を駆使したものになっても、いや、そういうものになるほど、直読直解法は強力な武器になります。そして最後は、区切りごとの和訳というプロセスさえ必要でなくなります。
 よく長文が苦手という声を聞きますが、直読直解法に英文の長さは関係ありません。この訓練を十分に積めば、高校生の段階でも英文を読み進めるスピードが、他人(直読直解法を知らない生徒)の4倍以上になります。速く、かつ、より正確な理解で英文が読み進められるのです。それが試験であれば、結果における差は歴然です。

 直読直解は、英文を理解する「受動的」プロセスですが、それは同時に「他人(英語ネイティブ)の中で起きている発語のメカニズム、心理回路」を熟知するプロセスでもあり、自らが英語を発する側になったとき、どう考え、どう感じ、どういう順序で「今発する言葉」を思い浮べればいいかという「能動的側面」を教えてくれるものでもあります。

 今、文法の章の中で「名詞、代名詞」と8品詞の最初の2つを扱っているに過ぎませんが、今後いかなる例文であっても、常にこの直読直解の発想により理解することを忘れないでください。



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05,(関係代名詞の目的格)

 名詞、代名詞が「目的語」として使われるのは、
1、他動詞の目的語として(動作の対象)
2、前置詞の目的語として
 の2つの場合があります。これは難しいことを考えなくても、たとえば「he」に対する「him」が使われる例として、

1, I know him.(「彼を」知っている=know<他動詞>の目的語)
2, I did it for him.(「彼」のために=前置詞 for と結びつく形が him

 ということが分かっていればいいのです。「 for him 」が正しく「 for he 」とは言わないということが自然と理解できてさえいれば、ここから先の解説は理解できます。

 関係詞節を作る場合、もととなる文(節)の中における名詞・代名詞の「格」がそのまま関係代名詞にも引き継がれます。もと主語であれば、関係代名詞になっても「who/which」の主格として現れ、もと目的語であれば「関係代名詞になっても「whom/which」という形で用いられるということです。

the man + I met <him> last night
→the man (<whom>) I met last night

 このように「him」という目的格を元に関係代名詞「who」を使う場合、それも目的格である「whom」という形にしなければなりません。ただし目的格ですから、口語ではもっぱら省略されてしまいます。

 今「whomという形にしなければなりません」と言いましたが、ここで早速別のことを言わなければなりません。それは「whomという純粋に形式的には正しい形」が実際の会話の中では、省略されないときでも「who」という本来は正しくない形で普通に現れ、それがすでに許容(間違いとされない)となっているということです。つまり

the man who I met last night

 と書くことも、それがよほど公式の文書の中でない限り、間違いとはされないということなのです。
 これは元の文章では「I met him」と他動詞の直後にあった代名詞が、「who(m) I met」と位置が先頭に引っ張りだされたことで「他動詞との距離が離れ」てしまい、whomという「文法上の理由から」目的格にするのだ、という意識が薄れたこと。それを忠実に守ることがまるで「人為的に定められたルールに従ってそうする」という論理にしばられた印象を伴うこと。さらに、「whom I met」と関係詞を目的格にすることが「いかにも頭で考えた英文」となるため、口語では「人が先行詞」ということだけが意識され「the man who ..」の形式が広まったものです。
 しかし「I met him.」を「I met he.」というのはいかにも「無学」な英語として間違いと見なされます。
 これは理屈よりも感覚優先で英語の語法が存在することの証といえるでしょう。  感覚的に「他動詞の直後」や「前置詞と並んで用いられる場合」は、目的格を口にする方が自然に感じられるのです。

the man + I went to the zoo <with him> yesterday

 これを元に関係代名詞を用いてつなぐと次の2通りの表現があります:

1, the man <with whom> I went to the zoo yesterday
2, the man (<who(m)>) I went to the zoo <with> yesterday

 1は文語的(書き言葉的)な堅い表現ですが、極めて正しい英語です。ただ会話で使うにはフォーマル過ぎる響きがあります。ここで<with whom>と前置詞と並んだ形で関係代名詞whoの目的格がありますが、このwhomは決して「who」としません。これは先に述べたように、「前置詞の直後」であることが感覚的にも目的格代名詞を自然と口にさせるからです。

 2では、「目的格なのでまったく省略される」のがもっとも多いのですが、そこに関係代名詞を言うなら「who」が口語では好まれて使われる傾向があり、あえて「whom」と正しい形を言うのは「論理に気を使ってる」か「purist(文法に囚われすぎる人)」という印象を与えるところがあります。これは目的格代名詞を直接後ろにとるはずの「前置詞with」が節の末尾に置き去りにされ(これを省くわけにはいかない)たため、先にあげた「the man (who) I met」と同じで理由によります。

 このように文法事項の現実の運用は「ルールよりも心理」によるところが非常に大きいことを知っておきましょう。



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06,(前置詞+関係代名詞)

 ではここで、関係代名詞がさまざまな前置詞と組み合わさって用いられる例について、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。

 関係代名詞を正しく理解し、使いこなせることの前提は、シンプルな「単文」に習熟することです。それが変形されて「形容詞節」になるだけのことですから、基本となる単文が正しく扱えないのでは、それを発展的にした関係詞節が使える理由はありません。

1,the house + He lives <in the house>.
2,the topic + He is talking <about the topic>.
3,the dictionary + I am reading English <with the dictionary>.
4,the road + We are walking <on the road>.
5,the river + We are walking <along the river>.
6,the forest + He walked <through the forest>.

 これらの右側の単文について、正しく「自動詞+前置詞+目的語」が使いこなせることが、関係代名詞の基礎理解となります。つまり、様々な前置詞の意味と用法に慣れ、適切に使うことです。

 上記単文に含まれる< >の部分はいずれも「前置詞+名詞」となっており、その「名詞」と同じ言葉が先行詞にあります。右側の単文を単独で正しく言えない限り、これらを先行詞につないだ形容詞節は作れません。

1A, the house in which he lives
1B, the house which he lives in
(彼が住む家)=家+その中に+彼が住む

2A, the topic about which he is talking
2B, the topic (which) he is talking about
(彼が話している話題)=話題+それについて+彼が話している

3A, the dictionary with which I am reading English
3B, the dictionary (which) I am reading English with
(私がそれを使って英語を読んでいる辞書)=辞書+それを使って+私は英語を読んでいる

4A, the road on which we are walking
4B, the road (which) we are walking on
(私たちが歩いている道)=道+その上を+私たちは歩いている

5A, the river along which we are walking
5B, the river (which) we are walking along
(私たちがそれに沿って歩いている川)=川+それに沿って+私たちは歩いている

6A, the forest through which he walked
6B, the forest (which) he walked through
(彼が通り抜けて歩いた森)=森+それを通り抜けて+彼は歩いた

 いずれもAが文語的な形、Bが口語的な形です。
 伝統的で本来純粋に正しい文法を維持しようとする運動がかつてあり、その主義(伝統文法主義)を唱える人たちは「文章を前置詞で終わらせてはならない」と主張しました。そのような英文は今では普通に見かけますし、正しいとされますが、伝統文法では「名詞の前にあるからこそ『前置詞』」であるという考えがあり、上記Bの例文のように結びつく相手となる目的語(関係代名詞目的格)だけを前に引っ張りだすのは間違いとされたものでした。今日では、極端に伝統文法に縛られた文体は文語では用いられますが、口語では堅苦しすぎるという印象を与えます。
 英語に限らず「人の言葉」というのは第三者的な権威がそれを規制しきれるものではなく、無数に存在する言語使用者の実態がどうしても先行するものです。その中で「正しい文法、言葉遣い」を維持できるかどうかは、それぞれの言語を使う民族の意識の問題です。大勢が間違えればそれが正しくなると言うのも1つの考え方でしょうし、何人が間違えても間違いは間違いなのだ(だから正しい用法を継承していかなければならない)という歯止めもなければ「言葉の乱れ」に抑制も効かなくなります。

 言葉は時代とともに変化するものであり、日本語にしても古典で習う言葉とはまったく違う日本語を現代人は使っており、英語にしても古代、中世の英語と現代英語では、語彙、文法などあらゆる点で大きな違いがあります。これは今後も同じであり、100年後の日本語、英語が今とどれくらい違うものになっているかは予想もつきません。

 今私たちが「動詞の三単現の-(e)s」で今苦労して、正しくそれを使いこなそうとしていることでさえ、100年後には「昔の英語では、He goesなんて言ったが、そんな区別は今は誰もしない」ということになっているかも知れませんね。(実際、三単現にしか-(e)sがつかないのは、もっと複雑な<主語ごとに別々の語尾だった>形式の名残です。)

 なお「that」は、「前置詞+that」という関係代名詞の使い方はされません。ただし前置詞と分離される場合は、whom/whichに変わって用いられることもあります。



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07,(関係代名詞を含む「一部分」が前に出る例)

the house + The roof of the house is green.

 右側の文で「 the roof of the house 」はひとかたまりの名詞であり、それが主部(S)となっています。
 また「 of the house 」は roof にかかる形容詞句です。そういう構造についての着目点の違いによって次のような語順で関係詞が使われます:

1, the house <the roof of which> is green
2, the house <of which the roof> is green
3, the house <which the roof of> is green
これと「関係形容詞」で扱うwhoseによる次の形式もあります
4, the house <whose roof> is green

 1は、「主部に含まれる先行詞相当の語」をそのままの位置で関係代名詞にしたもの
 2は、「主部の中の形容詞句」を前に出したもの
 3は、「主部に含まれる先行詞相当の語」を関係詞にし、前に出したもの
 4は、言うなれば「the house's roof」を元にして「whose roof」となっているもの

 いずれの形式で現れても正しく解釈できなければなりませんが、自分が使う場合は、1~3の中では1の形式が扱いやすいと思います。



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08,(自動詞+前置詞の熟語的性質が強い場合)

 これまで見てきた例は「自動詞+前置詞+名詞」が
1、先行詞+<前置詞+関係代名詞目的格>+SV
2、先行詞+<関係代名詞(口語では主格、文語では目的格)>+SV+前置詞
 のいずれの形式にもなりました。

 しかし前置詞を含む「句動詞(phrasal verb)」(=複数の語で「1語の他動詞扱い」となるもの)については、「前置詞+名詞」をつないだまま前に引っ張りだすことができません。
 これはある種の自動詞が特定の前置詞と組み合わさることで熟語的に特殊な意味となる場合で、自動詞と前置詞を分離してしまうと、その「熟語としての意味」が分かりにくくなってしまうからです。

look at(~を見る)
正:the girl you're looking at
誤:the girl at whom you are looking

look for(~を探す)
正:the man you're looking for
誤:the man for whom you are looking

take care of(~の世話をする)
正:the baby I'm taking care of
誤:the baby of whom I am taking care

※上記で「誤」としてあるものも、まれに見かけることはありますが、我々日本人学習者はその使用を控えましょう。

 また熟語として前置詞を関係詞節の後ろに残したまま「句動詞」として使われますので、関係代名詞として「who(m),which,that」のすべてが使われます。(もちろん、目的格ですから省略する方が普通です)



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09,(色々な関係代名詞)

 もっとも基本となる「who, which, that」の理解が固まったら、他の関係代名詞についても見ていきましょう。

 「but, as, than」が関係代名詞として用いられることがありますが、この3つは特に「擬似関係代名詞」と呼ばれています。

but
逆説の接続詞に由来する関係代名詞で、文語的な響きを持ちます。
これは関係代名詞thatが内容として否定を含むのと同じです。

There is no rule but has exceptions.
=There is no rule that has no exceptions.

None came to him but were fed.
=None came to him that were not fed.
(先行詞はnone)


as
「such 先行詞 as...」の形式で、suchと呼応してasが用いられます。
同様に「as..as」、「the same 先行詞 as..(...と同種のもの・人)」の形式で。

I need such friends as are always ready to listen to me.
(いつでも私の話を聞いてくれるような友人が必要だ)

He is as wise a man as ever lived.(彼は古来まれな賢人である)
>asは形容詞と直接結びつく「引力」が強いため「a wise man」のwiseを前に引っ張りだしてしまいます。
=He is such a wise man that has ever lived.

This is the same watch as I lost the other day.
(これは私が先日失くしたのと同種の時計だ)
>ここで「the same watch that I lost..」とすると「私が失くしたまさにその時計(=同一の物)」の意味になってしまう、と以前はよく解説されていました(事実そういう発想はこの2つの表現にはあります)が、最近では「the same .. as/that」は区別なく用いられている例が非常に多くなってきているとのことです。

As is often the case (with ~), ...
(慣用表現:(~に)よくあることだが)


than
これは比較級と相関的に現れます。

Don't bring more money than is needed.
(必要以上のお金を持ってくるな)
>「thanがisの主語」になっているので確かに関係代名詞の機能を果たしています。

Don't bring more money than you need.
>上の文と意味は同じ。こちらのthanは「need」の目的語と見なせば「関係代名詞の目的格」と解釈できますが、thanを単なる接続詞と考えることも可能です。


 「but, as, than」だけがなぜ「擬似」関係代名詞と呼ばれるのか、他の関係代名詞とどこが違うのかを少し掘り下げて考えてみましょう:

(1)英語の品詞の最上位分類として一般に「8品詞」があり、「名詞、代名詞、動詞、形容詞、副詞、前置詞、接続詞、間投詞」とわけられている。

(2)「代名詞」はさらに下位分類として人称代名詞、指示代名詞、不定代名詞、再帰代名詞、関係代名詞に分けられるが、「関係代名詞」としての機能を持つ語のうち「who, which(さらにwhat)」は疑問代名詞に由来し、「that」は指示代名詞に由来するもの。

(3)そのようにもともと「代名詞」に分類される語が、先行詞を修飾する形容詞節(whatだけは先行詞のない名詞節)を作るように機能するのが「関係代名詞」本来の働き。

(4)しかし、but, as, than は8品詞分類で代名詞に属さず、接続詞に含まれる語である。関係代名詞として用いられる場合があるが、それ以外に代名詞として使われることがない。すなわち「本来代名詞でないくせに、まるで代名詞のふり(擬似)をして関係代名詞として機能してしまっている」といえる。

 以上のことから一般的な関係代名詞と区別して「擬似関係代名詞」と呼ばれるものの違いは次のように考えることができます。

 関係代名詞とは「代名詞が接続詞的役割をかねる使われ方」。
擬似関係代名詞とは「代名詞でない接続詞が、臨時に代名詞の役割をかねる使われ方」。

 本来代名詞に由来していないということから:

(A)but, as, than が「関係詞代名詞」ではなく、純粋な代名詞として用いられることがない。

(B)つまり、特定の構文においてのみ「臨時に代名詞としての機能を兼ねる接続詞」という点で、一般の関係代名詞と異なる。

 ということがいえます。



what
これはユニークな関係代名詞で、先行詞をもちません。というか、自らの中に先行詞の意味を含んでしまっているのです。考え方としては「what=the thing/the things/things which」と読み替えて理解してもいいでしょう。
普通、関係代名詞は先行詞を取るので、先行詞を修飾する「形容詞節」を作りますが、whatは自分自身が先行詞を兼ねてしまうため「名詞節」を作ることになります。

What you do is quite different from what you say.
(「君が言うすること」は「君が言うこと」と全く違っている。=君は言行がまるで一致していない)
>「what you do」、「what you say」がそれぞれ名詞節になっています。

I don't understand what you think.
(君の考えが理解できない)
>「what you think」はunderstandの目的語となる名詞節。
>これなど「whatを疑問詞」と解釈することも可能であり、関係代名詞なのか疑問詞なのかを客観的に断定することは不可能。またそこまでの解釈をする意味もあまりないと言えます。

whatの慣用表現

A is to B what C is to D.(AとBの関係は、CとDの関係と同じ)
よくクイズの質問形式に使われるものですが、
"(Kitten)" is to "cat" what "puppy" is to "dog".
(dogに対するpuppyに相当するのは、catに対する(Kitten)である)
のように「 A:B=C:D 」といった論理的対応を表現するのに便利です。
構造的には「to B」が副詞句であり、この例文で使われる位置に「挿入」されているのですが、そこにあるからこそ「A,B,C,D」という順序良く言葉が現れているという点にも注目してください。

Reading is to the mind what food is to the body.
>「reading:mind=food:body」の関係。
(読書は精神にとって、食べ物が体に対して何であるかと同じだ=読書と精神の関係は、食べ物と身体の関係と同じだ)

I will give you what money I have.
(少ないけどこのお金を君にあげる)
>これはwhatが形容詞として用いられていますが、ニュアンスとして「少ないけど、ありったけの」という意味を含みます。



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10,(関係代名詞の2重限定)

 1つの名詞(先行詞)を2つの関係詞節で修飾したいとき、「関係詞節A」と「関係詞節B」をただand, butやorで結んだのでは、文章全体として「誤解を招く」可能性があるため、あとに続く方(関係詞節B)については、それが目的格関係詞であっても省略してはいけません

This is the book (that) my father gave me and that I have read 5 times.
(これは父が私にくれて、もう5回も読んだ本です。)

 「(that) my father gave me」の「that」は目的格関係代名詞として省略されますが、「and that...」のthatは省けません。もし省いてしまうと、

This is the book my father gave me. And I have read 5 times.

 と、最初の関係詞節の終わりで1つの文が終了し、「and」以下からまた別の文が始まったように聞こえてしまうからです。複数の関係詞節が並列に同じ先行詞を修飾している場合は、その構造を分かりやすく相手に伝えるため、2つ目以降の関係詞は決して省いてはいけません。

 関係代名詞の2重限定には、これまで述べたものとよく似ていますが、構造的にはかなり違うものもあります。

(1) He is the only person that I know and that she knows.
(彼は、私が知っており、なおかつ、彼女も知っている唯一の人だ)

(2) He is the only person that I know that she knows.
(彼は、私が知っている中で、彼女も知っている唯一の人だ)

 多少意味として不自然ですが、対照的に見やすいものにしてあります。
 (1)は「2つのthat節」が並列に並んでいます。つまり「条件1」と「条件2」がandで結ばれており、その両方の条件が同時にあてはまるものとして先行詞を修飾する構造です。
 (2)は(1)と見比べてandがありません。これは省略されているのではなく「あってはならない」のです。なぜなら構造自体が「入れ子構造」になっており、「条件1」があてはまるものの中でも特に「条件2」が当てはまるものだけとして先行詞を修飾しています。

 一見同じ意味を表すようにも見えますが、(1)では「条件1」と「条件2」を入れ替えても同じことを表すのに対して、(2)では「条件1」の中に「条件2」が含まれているため、逆順にすることができません。

 これらの違いを図で表すと次のようになります:

 多くの文法書では、上記の(2)のみを取り上げて「関係詞の2重限定」として扱っているようですが、このサイトでは、両方のタイプをともに2重限定と呼びます。その違いは、(1)が「共通集合」を絞り込むための並列構造であり、(2)は「条件1」を先に設定してから、その中に新たな「条件2」を設定して絞り込む「入れ子構造」になっている点です。



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11,(制限用法と非制限用法)

 関係代名詞の基本は、「先行詞となる名詞を修飾する形容詞節を作る」ことでした。  形容詞というのは、「色々ある名詞の中でも特にある条件のあてはまるもの」という意味により「多くの中から条件にあてはまるものを絞り込む」という働きがあります。この「絞込み」のことを文法では「限定」と言います。

 しかし時には「絞込み」のためではなく「補足説明」を加えるために関係詞節を用いることがあり、そのような場合においては、関係詞節を「補足情報」として、先行詞との「修飾=非修飾」の関係を「断ち切る」必要があります。

Mt. Fuji, which I've climed 5 times, is 3,776 meters high.
(私がこれまで5回昇った富士山は、3776メートルの高さがある)

 これなど日本語では「私が登った富士山」という言い方が自然に用いられますが、英語の論理で言うと「私が登った富士山」という言葉の裏側に「私がまだ登っていない富士山」の存在を示唆してしまうこととなり、固有名詞(1つしかない名詞)」に修飾語(形容詞)をつけて限定するのはよくないこととされます。
 そこで「 which I've climed 5 times 」の前後にコンマを打ち、2つのコンマに挟まれた部分をちょうど括弧に入れたような形とします。コンマがあることで「形容詞→名詞」の「矢印(→)」が断ち切られるということです。(このように「ある部分を括弧に入れる働きをする2個のコンマ」のことを「ペアコンマ(pair commas)」と呼びます)

 このような英文を「和訳」する際には、英語の論理を日本語に表した「補足情報」的な表現にしてもいいですし、日本語の言語習慣に従って「私が登った富士山」のままにしても別にかまいません。しかし英語を書くときは、必ずコンマで切ってやる必要があります。

Mr. Wilson, who teaches us English, is from London.
1、英語の論理に従った和訳:ウィルソン氏は、私たちに英語を教えてくれているが、ロンドン出身だ。
2、日本語の言語習慣に従った和訳:私たちに英語を教えてくれているウィルソン氏は、ロンドン出身だ。

 このように多くの場合は「日本語の言語習慣」に従った方が当然のことながら自然な和訳になりやすいものです。

英語の論理を念頭におきつつも、日本人として自然に使う言い回しを用いることは何の問題もありません。

 固有名詞に説明を加える際は、日本語では「~な<固有名詞>」と普通に言えても、英語で表現する場合は、「~な」の部分をあくまでも補足説明にするということを覚えておきましょう。

My brother, who is a famous football player now, used to be a weak kid before.
(兄は、今でこそ有名なフットボール選手だが、子供のころは弱かった)

 この英文で「who..」の前後にコンマがなければ、「何人かいる兄弟の中で、今有名なフットボール選手の兄」という意味になります。1人しかいない兄について語るなら、ここでのコンマは必要です。



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12,(前文の内容を受けるwhich)

 非制限用法の延長として、特定の語を先行詞とするのではなく、「それまでに述べられた内容」全体を先行詞とする「, which」の使い方があります。(内容としてどこからどこまでを受けているかは文脈に応じて判断します)

He said he was sick in bed, which was not true.
(彼は病気で寝込んでいると言ったが、それは事実ではなかった)
>ここでは「彼が病気で寝込んでいる」という内容を「which」が受けています。















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