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197. ★一般形容詞

 学校でも、一般の文法書でも「一般形容詞」という用語は使っていません。事実、このような文法用語はないのですが、本サイトでは「形容詞」の下位分類として「限定詞」に対するものとして「一般形容詞」と呼び分けることにします。しかしその呼びわけもこの項のみで行い、他の章などでは、「形容詞」という一般名称を用います。(ただし8品詞の1つの「形容詞(冠詞などの限定詞も含む)」なのか、「限定詞を含まない意味での形容詞」なのかを明確にするべきときは、またこの「一般形容詞」という言葉を用いることがあります。

 「164〜193」の項目の中で、形容詞の中でも「限定詞」と呼ばれるものについて先にまとめました。
 ここから先は「限定詞」ではない、「beautiful, good, tall, slow....」などの、普通「形容詞」と聞けば常識的に思い浮かべるようなごく一般的なものについて解説を進めます。(それができるために、これらと同次元に扱えない「限定詞」を先にまとめてしまったわけです。)

 「形容詞」とは英文中で、なんらかの「語(1語)、句(複数の語のあつまりを1単位とするもの)、節(複数の語の1単位でそこに<主語+述語動詞>をまた含むもの)」が果たしている役割の1つであり、

1、名詞(や代名詞)を修飾する
2、 自らが補語となる


 のいずれかの機能を持ちます。上記1,2が具体的に何のことか分からなくても今はかまいません。

 最も分かりやすいのは、「修飾語」として「名詞(や代名詞)」にかかって用いられる使い方でしょう。

1, an apple
2, a red apple

 1の「apple(りんご)」という言葉からは「どんなりんご」かがまったく伝わってきません(「an」によって表される「この世の多くのりんごの中から取り出した不特定・任意の1つ」という意味以外)。話し手の頭の中にあるイメージと聞き手がそこで思い浮かべる「りんご」が一致するとは限りません。

 2では「red(赤い)」という言葉が追加されました。これによって「少なくとも『赤くない』りんご」は除外されたことになります。
 すなわち、「red」という単語が「この世に無数にある、様々な色(赤もあれば、青りんごもありますからね)」のりんごの範囲から、「赤い」という条件が当てはまるりんごだけに「対象を絞り込んだ」といえます。
 このように「条件を与えることで、対象を絞り込む」ことを文法では「限定」するといいます。

 「red」がそこになくて「an apple」だけでも
This is an apple.
 という英文は成立します。しかし、appleなしの
*This is a red .....
 は言葉の言いかけとしか聞こえず、これでピリオドを打つわけにはいきません。(This is red.<これは赤い。>は別物ですよ)
 このように「そこになければないで、文章の意味の詳しさが減少するものの、『文の要素(文章が成立するための最低限必須の言葉)』ではないので文章の構造には何の影響も与えない言葉を「修飾語(modifier)」といいます。

 「修飾語」は常に「修飾する相手」の語を持って使われ、その相手の語を「被修飾語」といいます。「a red apple」では、
a red apple
 のように「red」から「apple」に向けて「修飾→被修飾」というつながりを持っています。英文の構造を正確に把握するためには、この図のように矢印によって「修飾→被修飾」の関係を図示するとよいでしょう。

 形容詞が修飾できる相手は名詞(か代名詞)だけです。
 ※この「か代名詞」をたびたび書くのは見た目にも邪魔なので今後「名詞に対して行える機能は名詞の代理である代名詞にも自動的に行える意味と理解してください。

 裏を返して言えば「名詞を修飾していればそれは形容詞だ」ということでもあります。
 さて「red」は次のような使い方で現れることもあります:

This apple is red.

 ここでは「red」が直接修飾する相手の語は存在しません。意味から考えると主語である「apple」の様子を述べているのだから、遠くから間接的に修飾しているとも言えなくはありませんが、さきほどの図のような矢印が「red」から「apple」へと伸びていはいません。

 さらにもしこの「red」がなかったらどうでしょう?

*This apple is .....

 これではまた文は完結していません。

This is a red apple. > redは修飾語それがなくても文章は成立する
This apple is red.  > redは「文の要素」。それがないと文章として成り立たない

 芝居で言うなら「修飾語」は「小道具」のようなもので、「文の要素」は「役者」です。「役者」にも「主人公」や「脇役」がいますが、それぞれ必要ですね。しかし「小道具」がなくても芝居そのものはできます。ストーリーに変化はありません。しかし舞台の上に「小道具だけ」が並んでいて誰も役者が登場しない「演劇」はありえません。
 文の要素と修飾語を「木」に喩える人もいます。「文の要素」が「幹」であり「根」で、「修飾語」が「枝葉」というふうに。(確かに「枝葉」のない「幹と根っこ」だけでも樹木と呼べますが、「幹と根」のない「枝葉」だけを指して「樹木」とはいえませんね)

 修飾語になれる品詞には2つあります。8品詞を「名詞、代名詞、動詞 / 形容詞、副詞 / 前置詞、接続詞、間投詞」という3つのグループを意識して覚えてもらったのは、2つ目のグループが「修飾語になれる」言葉としてです。

 すなわち

「名詞(か代名詞)」を修飾する働き→ 形容詞
「名詞(か代名詞)以外」を修飾する働き→ 副詞

 という区別です。簡単でしょ?「名詞(か代名詞)以外」とは8品詞からそれを差し引いた「動詞、形容詞、副詞、前置詞、接続詞、間投詞」となりますが、現実には「前置詞、接続詞、間投詞」を修飾することはあり得ませんので、「動詞、形容詞、副詞」のいずれかを修飾していれば、それは副詞と呼ぶということになります。
 ごく基本的な理解として次のことを念頭に刻んでおいてください:

  1. 形容詞とは「名詞(か代名詞)」を修飾するなどして、その意味をより詳しくする働きを持つ語のこと。またはその働きのこと。
  2. 「名詞(か代名詞)」を修飾していれば、それは即ち形容詞である。
  3. 形容詞の使い道には2種類あり、「名詞を直接修飾する」方法と「文の要素となる」方法である。

 以上がほぼ理解できたら、段々詳しい話に入っていきましょう。



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198. 限定用法と叙述用法

 形容詞の2つの使い方、それぞれに名称があります。

1、限定用法:名詞と直接結びついて、それを修飾する使い方。形容詞は修飾語である。
2、叙述用法:形容詞自らが「文の要素」となる使い方。この形容詞は修飾語ではない。

(1)This is a red apple.
(2)This apple is red.

 文法用語で言われるとなんだか難しそうですが、例文を見ればどうってことありませんよね?

 形容詞にも多くの種類があり、名詞の性質・状態・種類などを表すタイプの「性質形容詞」とか、物質名詞の「量」や、普通名詞の複数形について具体的にそれがいくつであるという情報を含む「数量形容詞」などなど文法書には出ていると思いますが、ここではそれらをいちいち解説しません。たいして重要なことではないからです。

 「名詞」の章では、名詞の下位分類5つ(普通名詞、集合名詞、物質名詞、抽象名詞、固有名詞)を個別に解説しましたが、こちらはかなり重要度が高いからです。日本語と大きく違う英語的な発想、英語話者の言語文化を理解・吸収する上で必要な知識を沢山含んでいますので、個別解説も必要と判断しました。
 しかし「形容詞」については重要な情報の種類がまた違います。形容詞そのものの下位分類よりも、「用法」すなわち「使い道」に力点を置く必要があります。(名詞では下位分類がそれぞれの用法に直結しています。)

 冒頭で述べた「限定用法」と「叙述用法」。これは形容詞を理解する上で最も重要となる基本事項です。



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199. 限定用法

 形容詞の2つの用法の1つである「限定用法」に絞って解説します。
 「194項」でも少し触れましたが、「名詞に条件を与えることで、その名詞が表す対象を絞り込む」働きを「限定」といいます。

 限定用法に用いられる形容詞は、名詞と密接に結びつきますので、「できるだけ名詞の近く」に置かれます。あまり距離が離れてしまうと「修飾→被修飾」の関係がわかりにくくなるからです。「できるだけ近く」で最も近いのが「すぐ隣、直前か直後」ですね。

 日本語では「赤いりんご」と形容詞が名詞に先行するのが通常ですが、英語でも幸いその習慣は同じです。ただし常にそうとも限らず場合によっては名詞を先に言っておき、それに付け加えるように形容詞があとからおいかけることもありますので、固定的に考えないようにしてください。

 中学生くらいの方はここまでの理解で充分ですが、高校生以上の方は、限定用法について、あと少し掘り下げた考えも理解してほしいところがあります。

 次の例を見てください:

(1) a white rose
(2) white snow

 roseは普通名詞ですから単数で「a」が必要なのはここでは問題になりません。
 同じ「white」でも(1)と(2)で何か違いを感じませんか?

 (1)の「a white rose」は「様々な色がある中でも特に白いバラ」というふうに「対象の絞込み」をしており、典型的な「限定」用法です。
 (2)の「white snow」は、自然な英語ではありますが、(1)とちがって「色々な色の雪がある中でも特に、、」という意味合いはありません。こちらは「もともとその名詞が持っている性質・特徴の何かをことさらに言葉に出して強調」する使い方となっています。
 (1)は「他との区別」が念頭にあるのに対して、(2)は何と区別しているわけでもありません。

the blue sky(青い空)----青以外の空と区別しているのではない
the sun shining in the sky(空に輝く太陽)----空で輝かない「別の太陽」の存在は示唆していない

 (1)も(2)も形容詞の用法としては、確かに「名詞と直接結びついてそれを修飾している」ので「限定用法」に含めて扱われるのですが、「限定用法のくせに、制限してない」という変な、わかりにくいものです。「わかりにくい」と感じるのは「言葉をルールでしばりつけてしまおう」という発想が強いとなおさらそうなるでしょう。現実の言葉の存在が先にあり「できる範囲でそれを整理する」という柔軟な姿勢で文法を学べば、それほど強い抵抗は感じないことと思います。

 「限定用法」は「叙述用法」に対する名称なので、これはもうしょうがないんです。「修飾語用法」と「『文の要素』用法」とでも呼べば、もう少し実態に近くなるともいえますが、これは従来から使われている(どの参考書でも共通して用いられている)言葉で統一していくことにしましょう。

 いずれにしましても、名詞を修飾する使い方の形容詞にも

1、名詞が表す対象を「制限(<限定と言葉を区別しましょう)」して絞り込む使い方
2、対象の制限ではなく、名詞に付随する性質を強調する使い方


 の2種類があることを理解しましょう。

 この2の使い方は「固有名詞」に対しても現れることがあり、「beautiful Jane(美人であるジェーン)」や「poor Tom(可愛そうなトム)」などは、口語的によく現れる表現で、決して非標準的なものではありません。しかし「a beautiful Jane, the beautiful Jane」などと冠詞まで付けてしまうと、これは「数ある中の、、」の意味にはっきりなってしまいますので、「数名いるジェーンという名前の女性の中でも特に『美しい方』のジェーン」と制限の意味となります。これとは区別してください。

 英語の発想で、固有名詞は制限してはならないというものが基本としてあり、「私が去年登った富士山」というのを英語でそのまま

Mt. Fuji <which I climbed last year>

 とは書きません。これは「私が去年登った」の部分を「補足情報」として添える感じで

Mt. Fuji, which I climbed last year, is 3,776 meters high.

 とするのが正しい書き方です。<which I climbed last year>の前後にコンマが打たれていますが、その2個のコンマが1セットで「ペアコンマ(pair commas)」という句読点です。括弧( )と同じ働きをし、文中に補足情報を「挿入」するときに使われます。
 書き言葉ではコンマの存在が目で見てわかりますが、会話でこれに相当する言葉を言うときは、コンマのところで一旦停止するようなポーズ(短い時間)を起き、挿入部分だけ声のトーンも他より下げて読み、聞いた印象としても、そこに挿入があるとわかりやすく読まれます。

 上記「beautiful Jane」や「poor Tom」と同列だともいえますが、「原則がまずある」上で、「美人であるジェーン」や「可愛そうなトム」が日常的にその言い方を必要とする場面が多いことから「許容」となっているのだと理解してください。

 学習初歩の段階では、「固有名詞に形容詞はつかないんだ」というくらいの理解でちょうどよく、「poor Tom」のような例に接して「あれ?」と思い先生に「これでいいんですか?」と質問するくらいでちょうどよいのです。そこで「あれ?」と思えるくらいなら形容詞というものをよく理解している証拠であり、そういう疑問を抱くようになってから、「現実の例」を知っても決して遅くはありません。基礎文法の理解がないまま、現実の用例(実は原則外の「許容」)に何の疑問も持たず抵抗も感じないと、「私が去年登った富士山」を直訳するような間違いのどこが悪いのかが理解できなくなり、こちらの方が深刻な問題です。



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200. 限定用法形容詞の位置

 一般的に英語の形容詞は「形容詞+名詞」という順序で現れますが、名詞の後ろに置かれる場合もあります。

1、something, nothing, everthing / someone, no one, everyone (somebody, nobody, everybody)を修飾する場合

 これは「語調」(読みやすさ)によるものです。「-thing, -one, -body」で終わる語(1語としての「thing, one, body」は含まない)については

something cold (何か冷たいもの)
nothing funny (何も面白いものは、、、ない)
everthing sweet (甘いものすべて)
someone/somebody kind (誰か親切な人)

 ただしこれら複合語が分離しているときはこの限りではありません。(意味も同じではありません)

every sweet thing (甘いものごとに、どの甘いものも)

 また口語では「my everything(私のすべて)」のように(広い意味で形容詞の一種である)「限定詞」がつくこともあります。

2、「名詞+関係詞節」を元にした省略形

There is only one thing possible.(可能性のあることは1つしかない)
=There is only one thing (that is) possible.
=There is only one possible thing.

この「関係代名詞+be」を脱落させて生まれる形は、形容詞の意味を強意的に表していることもあれば、単にその語順が慣用的に定着したものもあります。また「関係代名詞+be」の省略であることが濃厚に感じられる場合は、必然的にこの語順となります。

(a) stolen money
(b) money stolen

 どちらも「盗まれたお金」という意味ですが、(a) では「stolen」が「動詞の過去分詞に由来する形容詞」としての色彩が強いのに対して、(b) は「money which was stolen by someone」と、より動詞としての意味合いを強く感じさせます。

(c) a running dog
(d) the dog running

 (c)は「the」でなく「a」にしました。「the」があり得ないわけではありませんが、「running dog」の意味するものは、「今目の前で走っている特定の犬」を指すことよりも「走る犬全般」をイメージさせるものであることが多いからです。今その場に「走っている犬」がいなくても構わず、「犬が走っている状態にあるとき」のようなものを指して使うことが多いのです。その意味で「the running dog」というのは非常に文語的な言い方なので、ここでは「a running dog」を例としました。

 (d)は「the dog (which is) running」の「関係代名詞+be」を脱落させた色彩が強く残っている分、「running」に「今走っている」という動詞の意味を強く感じさせます

 ただし(c)の語順が普通に「今している」の意味を持った形容詞で用いられることも普通にありますので、(c)の語順が常に「その場にいないが一般論として」の意味に限られるということではありません。

Look at that running girl! (あの走っている女の子をご覧よ!)

 これなど「running」が「beautiful」と同様の働き(「制限」ではなく「描写」としての補足)をしているといえます。

「〜ing +名詞」については「読み方」も重要で、それによって意味も変わりますので、「発音」編の「073.語強勢(1)」と「074.語強勢(2)」も必ず合わせて参照するようにしてください。


3、外国語由来の形容詞で、外国語の語順をそのまま引き継いだもの

the sum total (総計)

 これはフランス語に由来しており、フランス語では英語と違って(日常的な一部の語以外)「名詞+形容詞」が標準語順となっており、それをそのまま持ち込んだものです。慣用的な語順となっています。

4、形容詞が他の修飾語を伴う場合

 これは分詞形容詞(動詞の現在分詞<〜ing>や過去分詞が形容詞的に用いられている場合に多く見られ、「動詞」の機能を兼ね備えているため、動詞を修飾する副詞、副詞句などをさらに引き連れてくると、結果として「名詞」と「形容詞(分詞形容詞)」との間にそれらの語句が割り込むこととなり、「修飾語と被修飾語」が引き離されて意味のつながりが見えなくなるからです。

1, a running dog
2, the dog running
3, the dog running in the park

 1と2の違いは上記2のケースで述べましたが、「running in the park(公園の中を走っている)」が「dog」を修飾するとき、それを「dog」の前に置いてしまうと「修飾語本体」である「running」と「dog」の間に「in the park」が割り込んでしまいます。これは「できるだけ名詞と形容詞は近くに置く」という原則から外れてしまいます。そこで「a dog / running / in the park」とすれば、「running」と「dog」、「in the park」と「running」がどちらも隣同士となり、ともに「最も近い」位置となれるわけです。

 またこれも上記2の「名詞+関係詞」に含めて理解することも可能です。

 名詞を修飾する形容詞が日常的に使用頻度の高い1語なら(慣用的に名詞の後ろに置くタイプでない限り)反射的に名詞の前に置いて使うでしょう。しかし、「複雑な意味を込めた長い形容詞(つまり「句」など)」を用いようと思ったとき、「とりあえず名詞だけを先に述べておき、それからゆっくりと『どういう形容内容か』を考えながら話そう」という気持ちが自然に働きます。このように「理屈やルール以上」に、心理的必然性から「他の修飾語句を伴う形容詞」は後回しになるのです。

 日本語の習慣では、「<長い説明>な<名詞>」と、その形容内容が長くても、名詞より先にそれを言いますので、その心理状態を引きずったまま英語を話していると(「日本文を先に思い浮かべてそれを英訳しているとき」は典型的にこの状態になる)、「長い説明」を英語にできてからでないと言葉が口をついて出てきません。しかし「頭を英語に切り替え」ている人は、上記の「とりあえず名詞だけを先に述べておき」の発想に自然となるため、「ある言葉を口にしながら次に言うべきことを考える」という余裕が生まれます。
 英語の語順は基本的に「情報<補足情報<その補足情報」という連鎖から成り立っていますので、ある意味日本語よりも「いきあたりばったりで、思いつた単語を口にしてしまってから、その後を考える」というものの言い方が適しています。そして、日ごろから(英文を読むときでも)その習慣に自分を慣らしていくことで、「英語的な語順で言葉が思い浮かぶ」ようになってもいくのです。

 極端なことを言えば、「英単語をまったく口にしない」でも英語スピーキングの訓練は可能なのです。

例:私が思うには、何を思うのかというと、彼は知らないのではないかと、彼女が入院したと、ね。

 日本人同士の会話でいつもこんなものの言い方をしていては、「もっと言いたいことを整理してからしゃべれ」と叱られそうですが、一人部屋の中で「英語の練習」としてやる分には人に迷惑(?)もかけませんし、案外効果的なのです。「英語的語順で情報を連鎖させる」訓練ができてくると「あとは単語力さえつけばどんどん話せる」という状態になってきます。また、「同時通訳」の基礎力練成にさえつながってくるのです。

 これもまた余談になりますが、高校生の中・上級生くらいになってくると、それまで正しい英語学習を重ねてきた人は、授業で先生の英文朗読を聞きながら心の中で同時通訳ができるほどになっています。それは耳から聞こえて来る英語を「英語の語順の必然性」の理解を土台として「次に聞こえてくるはずの情報」の予測ができるようになっているからです。だから聞こえてくる順番で意味を汲み取り、それを一瞬遅れ(これを実際には「同時」通訳という)で日本語にし続けられるのです。ただし、「聞く(耳を傾けて理解しようとする)」ことに神経が行くと「和訳を口から言う」がおろそかになります。思った以上に難しいですよ。それがたとえ「日本語を聞きながら、聞こえてきたままの日本語をオウム返しのように言い続けるだけ」であっても。
 試しにテレビのニュースキャスターの言葉を聞きながら、そのままを口から言い続けてみてください。自分の発する言葉が邪魔でキャスターの声が聞き取りにくいと感じたり、キャスターの言葉に聞き入ってしまいオウム返しができなくなっていたりします。

 こんな「英語をまったく使わない英語の訓練法」もあるんです。



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201. 叙述用法

 形容詞の用法のもう1つは、自らが「文の要素」という不可欠な部品となるもので、この使われ方をしているときはもう「修飾語」ではありません。(「文の要素」とは「修飾語」と相反するものですから当然ですね。)

 叙述用法」とは「形容詞が文の要素(補語)になる使い方」のことだ、というだけで説明は終わってしまうのですが、本サイトの文法解説のこれまでの流れでは、まだ「基本文型」について詳しく述べておりませんので、「文の要素」が具体的に「主語、述語動詞、補語、目的語」であるとか、それぞれが何を意味するかなどについて充分な予備知識がなくても、本項目を理解できるよう配慮しつつ進めたいと思います。

(1) She is beautiful.(彼女は美しい
(2) I think (that) she is beautiful.(彼女は美しいと私は思う)
(3) I think it true that she is beautiful.(彼女が美しいというのは真実だと思う)

 (1)は最も基本的な形式。いまさら説明の必要もないほどでしょう。「beautiful」が直接名詞と結びついて使われておらず、ただでさえたった3語からなるこの短い文の「必要不可欠な部品」として機能しています。

 (2)は「I think(私は思う)」という「主語+述語動詞」で始まっており、この「I think」が文章全体の主語、述語動詞です。そのあと続く「she is」も「主語と述語動詞」の組み合わせですが、こちらは「that以下」に組み込まれた形となっており、「that she is beautiful」で「彼女が美しいということ(を)」という大きな「名詞」のかたまりを作っています。文の中に別の文が「入れ子構造」のように組み込まれたもので、入れ子の中の文(正しくは「節」といいますが)も、独立した文として成り立つ構造を持っています。
 この(2)の英文は「I love you」型です。つまり「I love you.」とまったく同じパターン、構造なのです。「I love」までが「I think」にそっくり相当し、「you」1語のかわりに「that she is beautiful」があるということです。

 「129.(3)---自動詞と他動詞」の中でごく軽く触れたのですが、上記例文の「think」も「love」も他動詞です。他動詞は次に「目的語」という「動作の対象」を必要とする動詞です。それが「you」であり、「that以下」ということです。

 (3)では「think(他動詞)」の直後に「目的語」として「it」が来ていますが、これは「形式目的語」と呼ばれ、「すでに文脈の中に登場した何か」を受けて用いられるものではありません。英語の語順として、どうしても他動詞のあとには目的語が来なければならないため、「内容保留」の代名詞を「仮に」そこに置いておくわけです。
 形式的にでも「it(目的語)」がまず来ないことにはさらに「true(本当の)」という言葉も追いかけるわけにはいかないのです。
 「I think it true」までで「私は思う、それを本当だと」となります。「it」は「内容保留」ですから、そこで「it」が聞こえてくると「何を指しているitなのかな?」と聞き手は(無意識にでも)疑問を抱きます。その疑問に答えるように「that以下」があとから現れ「it」の位置に本来置きたかった(でも長すぎて置けなかった)内容を最後に伝えるという流れになっています。

 (3)の例文には「beautiful」以外に「true」も「叙述用法の形容詞」としてそこにあります。「it true」という2つの語は「it is true」の関係となっており、それは(1)と同じパターンであることが分かりますね。

 このように様々な形式の英文の中に「叙述用法」の形容詞が現れますが、どれも(1)の応用に過ぎません。
 「叙述用法」は直接名詞を修飾していませんので、「限定」や「制限」という意味合いは持っておらず、「名詞の描写」の働きをしていますから、普通名詞に限らずどんな名詞の描写をしても構わないのは言うまでもありません。

(1) Mr. Fuji is very high.(富士山は高い
(2) Jane is beautiful.(ジェーンは美しい
(3) The sun is bright.(太陽は明るい

 これらが「高くない別の富士山」、「美しくない別のジェーン」、「明るくない別の太陽」の存在を示唆してはいないということです。



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202. 特定用法のみにしか用いられない形容詞

 普通、形容詞といえば

1, That is a beautiful girl.(限定用法
2, That girl is beautiful. (叙述用法

 と1つの形容詞が「限定用法」と「叙述用法」のいずれの使われ方もできるものですが、中にはこの2つの用法のうち「どちから1つ」にしか用いられない性質を持っていたり、「両方に使えるが、それぞれで意味が違う」というものもあります。

 これは語彙力を伸ばしていく上で充分注意しておかなければならない区別であり、重要なだけにどの文法解説書にも必ず出ています。ただ、例によって「まるでルールのように」、どういう形容詞がどちらのタイプなのかを分類してその例を挙げており、まるでその分類法まで覚えなければならないかのように感じてしまうかも知れません。(覚えられる人はどうぞ覚えてください。私は覚えてませんけどね、、。)

 たとえその分類法を暗記できたとしても、そういう「限定、叙述」いずれかにしか用いられない形容詞を現実の会話の中でとっさに正しく使い分けられるとは限らず、むしろ大切なのはそちら(=正しい使い分け)の方です。文法それ自体を学問として研究していこうという以外は、特に分類法を暗記しなくても構いません。個々の形容詞を覚えるとき、その都度用例を通じて慣れていくほかに方策はありません。つまり「限定用法専用の形容詞」を「叙述用法」に用いてある英文(間違い)を見たとき「自分の耳に逆らう」という抵抗感によって正しいのか間違っているかを判断できるようになることが最良です。

 たとえばある文法書には「限定用法にしか用いられない形容詞」の例として「元来比較級・最上級の形容詞だったもの」と書かれています。(elder, latter, upper, inner, outer, utmost が挙げられている)
 この記述自体は正しいのですが、「なぜ?」に対する回答ではありません。たとえば「He is elder than I. (elderはolderが正しい)」について、「なぜelderじゃいけないのか?」と聞かれて、この「『元来、、、だったもの』だから」を言うのは答えになっていないのです。そこを履き違えないように。文法書は、現実の多くの用例を観察、分析、分類して「整理したもの」です。つまり「統計結果」のようなものなのです。なぜそういうかの理由・根拠ではありません
 そしてその理由・根拠を示すのはもともと文法書の役割ではないとも言えます。それは文法を教える「教員」の仕事です。教員は文法書に書かれていることがらをただそのまま伝えるのが仕事ではありません。そんなもの読めば出ているのですから。

 読みやすくすっきりと整理して書かれた箇条書きのような文法項目に「解説を加え、説明し、その文法をどう実践力に生かしていけばいいのか、どうやって訓練すればいいのか」を手取り足取り教えることが教員の役割です。

 もちろん数ある文法事項の中には「説明のつかない」ことがら、「理由までつきつめきれない」内容もあります。それを聞かれたときは「ごめん、わからない」と答えればよいのです。そういうときに「こう決まっているんだから、そう覚えるしかない」は最悪の回答です。
 教員は生徒・学生から見れば「偉大なる先輩学習者」です。あくまでも「学習者」なのです。誰しもがそうです。お互い終わりのない学習の道のりを進んでおり、教員はその先輩として先を進んでいるから、あとから来る学習者に様々なアドバイスができるのです。決して「すべてを知っている」必要はありませんし、そんなこと不可能です。

 「形容詞の多くは、限定用法にも叙述用法にも同じ形で同じ意味として用いられるが、中にはどちらか片方の用法にしか用いられないものや、両方の用法を持つけれど意味が違ってしまうものもある。この使い分けは長い英語の歴史の中で習慣的に形作られたものなので、なぜそうなのかを説明することは困難(英語史や意味論などを研究すればそれなりに可能かも知れませんが)だ」

 これが逃げもごまかしも嘘もない、現実的な回答となるでしょう。

 文法事項の中には、たとえ中学生でも言葉をかみくだいて説明すれば理解・納得に導けることがらもあります。しかし今回の「限定用法のみに用いる形容詞」、「叙述用法のみに用いる形容詞」の区別」については、「なぜ」を説明することは私には無理です。ご容赦ください。

 またそういう形容詞の具体例をここに列記するのも、手元の書籍や他の文法サイトからの書き写しにしかなりませんので、それもやりません。多くの人が知っている平易な例をいくつかあげて、「これがその例だよ」と示すにとどめたいと思います。

(1)限定用法にしか用いられない形容詞の例

I am an only child. (私は一人っ子だ)
この「only」は「唯一の」という意味ですが、「*He is only.」という文は用いられません。

That is the very thing I've wanted to say.(それこそまさに私がずっと言いたかったことなんだ)
この「very」は「まさにその」の意味ですが、「*That is very.」という文は用いられません。

We have no chance to see a live dinosaur.(生きた恐竜を見る機会はない)
この「live」は [ laiv ] と発音され「生きる(live [ liv ])」と語形は同じですが、動詞ではなく形容詞です。そして「That fish is live」とはいえません。「生きている」を意味する「叙述形容詞」としては、「alive」か「living」が用いられます。(livingは、限定用法にも使えます。)

 このようなものが「限定用法」にしか使えない例です。中には意味から考えてみて「なるほど叙述用法には向かないな」と理解の容易なものもありますが、そうでないものも多いのでやっぱり逐一確認する手間を惜しまないようにしましょう。(辞書には必ずその注意書きが出ていますので)


(2)叙述用法にしか用いられない形容詞の例

 「限定用法、叙述用法にのみ用いられる形容詞」について「なぜ」は説明困難と申し上げましたが、中にはその説明が容易なものもないわけではありません。

 alone, alive, awake, asleep, alikeなどa-」の接頭辞を持つ叙述形容詞については、語源的にそれらが叙述用法にしか向いていないことが説明されます。

 ここでの「a-」は前置詞「on」に由来するのです。すなわち「aleep(眠っている)」なら<on + sleep(眠り)>という成り立ちを持っており、「前置詞+名詞」という組み合わせは通常の英語表現でも、名詞を前から修飾する使い方はありません。

(1) This dictionary is of great help.(この辞書は大いに役に立つ
(2) *This of great help dictionary is mine.→This very helpful dictionary is mine.なら正しい

 これを考えると語源的にではあっても、英語を母国語とする人であれば「asleep」など「a-(=on)」を接頭辞として持つ形容詞には「前置詞+名詞」のフレーズをそこに感じるため、名詞の前には置きたくないと感じるわけです。

 「alone」はよく「ひとりで」という訳語で覚えている人がいますが、それは危険です。次の例を見てください。

We are not alone.

 主語が「we」という複数でも「alone」は使えます。この英文の意味はそれが使われる前後関係によって1つとは限りません。

1、「私たちはみな孤独ではない」=一人ひとり、きっと誰か心の通じ合える人がいるものだ
2、「宇宙にいるのは我々だけではない」=映画「未知との遭遇」のタイトルの下に書かれたいた言葉

 1は「We」を構成する「一人ひとり」のことを述べている文で、普通この英文を見たらこの解釈がぱっと浮かぶことでしょう。
 2は大変面白い用例です。映画「未知との遭遇」は「第3種接近遭遇」という「人類が直接宇宙人と出会う状態」を意味する言葉を流行させたSF映画で、「宇宙人は存在するのだ」がテーマ。この「we」は「地球人」を指します。そして「地球人だけが唯一の存在ではない。(宇宙人もいるのだ)」という意味を持たせています。

 このように「alone」を「1人きり、一人で」という狭い意味で覚えず、「他者をまじえない」という意味で理解してください。

We made it alone.(=by ourselves) (私たちはそれを他の人たちの手助けなしに作った)

 のように「alone」が「自分たちだけ」という複数の人間で構成されるグループについて用いられることもあるのです。

 なお「叙述用法しか持たない形容詞」をどうしても名詞を修飾する限定用法に使いたいときは、「限定用法」のための形が別にありますから、それを使います。

alone - lonely
alive - live [ laiv ]/living
worth - worthy
content - contented
例:I am content with the result.<私は結果に満足だ
/He showed a contened face.<満足そうな表情を浮かべた>

 「worth」は叙述形容詞ですが、さらに「worth 名詞(相当語)」という組み合わせまで必要です。
That is worth trying. (それはやってみる価値がある。<tryingは動名詞>)
 「叙述用法のみの形容詞」も辞書には必ず注意書きが出ています。常々こまめに辞書で確認する習慣をつけてください。



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203. 分詞形容詞---形容詞なのか動詞なのか?

 「形容詞と動詞」の区別なんて単純な話題ではありません。紛れようもないほど全然違う品詞ですからね。
 ここで取り上げようとしているのは、「動詞の現在分詞、過去分詞」が形容詞的に用いられている場合、それを「純粋な形容詞」と見なすべきか、「あくまでも動詞の変化形が形容詞用法に用いられているだけ」と見なすかの線引きをどこに置けばいいのかです。

 動詞の現在分詞「be+〜ing」の形式で述語動詞となれば「進行相」を表しますし、過去分詞は「be+過去分詞」で「受動態」を表します。しかし、それとまったく見かけが同じでも、辞書にさえ「形容詞」という品詞を与え独立しているものもあります。

(a) I was surprised at the news. (私はその知らせに驚いた
(b) It was a surprising news. (それは驚くべき知らせだった)

(c) I am bored.(私は退屈している)
(d) I am a boring person.(私はつまらない人間だ)

 「surprise」は「(人を)驚かせる」という意味の他動詞、それを使った「受動態」表現(be surprised)」の「驚かされる」から (a) の表現があります。英語では「驚く」というのは「自ら自発的にできることではなく、他人から、あるいは何かの原因で『驚かされる』」と考えるため、このように受動態表現となるわけです。
 しかし「surprised」は、「驚いた状態にある」という形容詞として確立しており辞書にもその項目が独立して収録されています。

 一方、「surprise」の現在分詞である「surprising」は「人を驚かせるような」という意味の形容詞。こちらも独立した形容詞として確立しています。

 注意してほしいのは、「驚いている」という語尾(〜ている)からつい「進行形」を連想して「私はその知らせに驚いています」を「I am surprising」としてしまうと「私は驚くべき人間だ」の意味になってしまうということ。

 なお「be surprised」が「受動態」つまり「be(助動詞として)+surprised(本動詞の過去分詞)』ではもうないのか、というと、そんなことはありません。特に「驚かす」という具体的行為について述べている場合は、「surprised」を形容詞と見るのではなく、「他動詞の過去分詞」と見なします

I was surprised by him. (彼に驚かされた)

 ただ「形容詞」なのか「動詞の過去分詞」なのかの区別は文法整理上の問題だけであり、字面はまったく同じですし、英語話者はこの2つを区別していません。ですからあまり深く悩みこんでしまう必要もないのです。

 (c)と(d)も日本人が非常によく言い間違える典型の1つです。
 「私は退屈『している』」という語尾がいかにも「〜ing」形を使いたくなるんですね、これが。しかしそれはやはり「日本語の言い回し」に引っ張られている状態であり、こんなシンプルな英語表現でさえ「和文英訳」でしゃべっている状態にあることを意味します。

 あくまでも「bore」は「(人を)退屈させる」という他動詞であることを感覚にしみつかせてしまえば、「I am bored」が「(何かの理由によって)退屈させられている状態にある」の意味だと納得した上で、言い間違えなくなります。「surprising」が「(人を)驚かせるような=驚くべき」の意味であるように「boring」も「(それ自体が)退屈な、人を退屈させるような」の意味です。

It was such a boring game.(それは実につまらない試合だった)

 これらは日常的に使う機会の非常に多い語と言えますので、失敗して反省するチャンス、練習の機会も豊富にあることでしょう。最初のうちはついうっかり、分かってはいるけどいい間違えたりするでしょうが、その度に上記解説の内容を思い起こして徐々に理屈ではない感覚にしていけばよいと思います。

 つまらないTV番組を誰かと一緒に見ていて、「I am bored.」と言うべき場面で「I am boring」と言えばそれは言い間違いだとすぐ気づいてもらえます。それでも「Oh, you're a boring person? Then I am not your friend any more.(おや、君ってつまらないやつだったのかい。じゃあ友達やめるぞ)」なんてジョークを浴びせられるのも、あとになって笑えるエピソードです。そういう経験を通じて上達していくものですから。

 分詞を形容詞といつでも見なせるのか?
 基本的にそうです。例えば:

He is running in the park.

 これすら「running」を「走っている状態にある」という意味の形容詞なんだと言うことができないわけではありません。ただそうする意味がないんです。話を余計ややこしくするだけで利益がないんです。
 この英文は「be(助動詞)+running(現在分詞」でひとまとまりの「述語動詞(V)」と見なしてしまった方が、構造がシンプルに見えて実利的です。

She is cooking dinner in the kitchen.

 この「cooking」を同じ理屈で「形容詞だ」としてしまと「じゃあ、その後のdinnerはなんだ?」となります。数ある形容詞の中には「like(似ている)」や「worth(〜の価値がある)」のように名詞を目的語にする風変わりなものもあるにはありますが、現在分詞をかたっぱしから形容詞と見なすことにメリットはありません。この英文は「is cooking」で「V(述語動詞)」と見なした方が、「dinner」が目的語としてそこあることがすんなりと受け入れられます。


 このように動詞の現在分詞や過去分詞は、確かにそれで「形容詞」の働きをしていると言えますが、それを何もかも「形容詞だ」と極端に走るのもよくありません。動詞本来が持つ機能があってこそ成り立っている構文なのかも知れませんし、そんなときまで分詞を形容詞と見なし切ってしまうと構文の把握が複雑になるだけです。
 あくまでも意味優先とし、構文把握がシンプルに感じられる解釈を優先してください。

 なお教員の方は次のような出題を避けるべきです:

(1) I was surprised.の文型はなにか?意味はなにか?
(2) He was bored./He is boringの文型は何か?意味は何か?

 悪問の例です。

 (1)は、「surprised」を形容詞とすれば「SVC」で「私は驚いた」ですが、「純粋な受身」と考えれば「SV」で「私は驚かされた」です。
 このあとに「at the news」や「by him」があればどちらかの区別がつきますが、これだけではどちらにも解釈できます。  さらにたとえ「at the news」や「by him」があっても、どちらの解釈を間違いとすることもできないのです。
 複数の正解がある、いたずらに学習者を戸惑わせるだけの「出すべきではない」問題の1つです。

 (2)も同様。「彼は、何もない部屋に1人で長時間放置され、『退屈させられた』」という受身の文脈であることもあり得るわけですので、「boredはもう純粋な形容詞だ」と決め付けるのも正しくありません。「boring」にしても「彼はつまらない人間だ」の意味に限ったとしても「SVC, SV」どちらの解釈も可能です。

 「学校では『進行形、完了形、完了進行形、受身』はそれで1つのV(熟語動詞)と扱うと教えた」というだけでは上記のような設問の正解を1つにしぼる根拠にはならないのです。このあたり、充分に配慮していただければと思います。  「正しいことを正確に教えつつ、いたずらに文法を複雑化させない。しかし学習者の状態に応じてときに一歩突っ込んだ解説をして、中途半端な文法理解では迷うことの解決方法も教え、探求学習へといざなう」。このあたりのバランスを臨機応変にできることも「教える」という技術の重要な一側面です。
 少なくとも学習者の側から「『I am running』の『running』って形容詞だと見なせませんか?」などの深い質問が来たら、それは個別に納得のいく対応をして、充分に解説してよいでしょう。


 分詞形容詞は、「過去分詞の場合、受身の意味」、「現在分詞の場合は進行や能動の意味」を持つことが圧倒的に多いと言えますが、「自動詞の過去分詞」に由来する形容詞だけは「受身」の意味がありません。受動態は他動詞しかそれを作りませんから当然なのですが、

(1) fallen leaves (落ち葉)
(2) retired soldier(退役軍人)
(3) learned man(学識のある人)

 (1)と(2)は「自動詞の過去分詞」が「完了」の意味として形容詞となっています。
 つまり「落ちてしまった葉」と「引退してしまった軍人」です。
 (3)はもう「過去分詞」とすら呼べないほど形容詞としての確立が進みきったもので、発音さえ「learn」の過去分詞( )とは違う )という「形容詞専用」の発音をします。(自動詞の過去分詞由来であることには変わりありませんが)



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204. 形容詞のその他の用法

205.(the 形容詞)

1、「〜な人々」を意味する総称として:

 「the」の項の中で軽く触れましたが、「the 形容詞」によって「その形容詞の性質を持った人々」の意味を表すことができます。これは「the」を伴ってはいますが「総称的」な用法です。つまり、この the は「ある範囲のすべての」を意味するためのものではなく、形容詞を名詞化していることの符号のような機能を果たしているといえます。決して「peopleが省略されたもの」ではありません。

the rich = rich people (the rich peopleではない)<「金持ち」全般
the old = old people (the old peopleではない)<「老人」全般

 「the 形容詞」が「〜な人々」の意味の場合、それは「総称」ですので、そういう人たち全般を指しますが、すべてを指しているわけではありません。一部の例外の存在があっても構わないわけです。

2、形容詞を抽象名詞化:

 1は「〜な人々」の意味でしたが、こちらは「the 形容詞」が「〜なもの」の意味として、その形容詞が表す性質を帯びた物を集合名詞的に表現します。口語的には「無冠詞+形容詞+things」が普通であり、それに対してこの表現法は文語的になります。

He makes the impossible possible.
(彼は不可能なことを可能にする)
The impossible are what you do not even challenge to do.
不可能なこととは、人がそれをやろうと挑戦さえしないことだ。
 =やってみようと挑まないから不可能に思えるのだ)

Sometimes, little children cannot tell the right from the wrong.
(小さな子供は時として、正しいこと間違ったことの区別がつかないことがある)

 2つ目の例では述語動詞が「are」という複数の形をとっています。
 これは「the 形容詞」が集合名詞的な意味を表す(=Things impossible)ためです。


3、何かの部分を意味して:

 これは「the 形容詞 part of ....」の意味。それが何かの部分を指すことが明確であるように「of....」までが言葉に出ていることが多いです。そうでないと様々な「the 形容詞」のどの意味かわかりにくくなりますからね。また「the 形容詞 part of ....」までちゃんと言うことはまったく問題ありませんし、決まった表現に充分なれないうちは、その方が安全です。

the yellow of an egg (卵の黄身

 これなどは「形容詞の特別な用法」だというより「yellow」という単語そのものにすでに名詞として「卵黄」という意味が辞書にも出ていますので、「the 形容詞」の用法の1つに由来しているというだけです。yellowはもう名詞と考えてしまった方が簡単です。

in the thick of night(真夜中)
the thick of the palm(手のひらの一番分厚い部分)

 これも辞書で引いてみると「thick」の説明の中に(うしろの方になりますが)「名詞(通例 the を伴って)」という項目が設けられていると思います。
 上の「thick」は「(群衆・物などの)最も密な部分;(やみなどの)最も深い部分;(活動などの)最も激しい場所[時, 段階など], 真っただ中, たけなわ;(物語などの)核心部」の意味。
 下の「thick」は「最も太い[厚い]部分の意味。

 形容詞でこのように特別な用法に用いられるものは限られており、どの形容詞でも自由にこういう使い方をしてよいというわけではありません。あくまでも実例を通じて、それを採用していくというスタンスで使ってください。(ルールから表現を作り出すのではない、と繰り返し述べてきましたよね。)


4、熟語的表現の中での「the 形容詞」:

 これは「熟語」なので深く考えず「決まった形」があると素直に受け入れてしまいましょう。

on the contrary (それとは対照的に)
on the whole (概して)
to the full (充分に、とことん)



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206.(名詞への転用)

1、無冠詞のまま形容詞が名詞に転用されることもあり、2つの対照的な意味の形容詞が「対」になって用いられているとき見られる用法です。

Young and old enjoyed the party.(老いも若きもパーティを楽しんだ)

 一見前述の「the 形容詞=〜な人々」と区別がつきにくいですが、「the young, the old」は「この世にいる若者(老人)全部とは言わないが概してそういう人たち」という漠然とした総称です。それに対してこちらは「具体的なその場の若者たちと老人」を指しています。同じではありません

2、形容詞を「単語の引用」として扱う場合

 He made the situation from bad to worse.(彼はただでさえ悪かった状況を一層悪いものにしてしまった)

 これは「"bad", "worse"」というふうに単語の引用のようなものとも考えられます。
 「badという言葉で表せたものを、worseという単語の方が適切になってしまった」と言うことであり、ただの単語ならどんな単語でも名詞扱いになります。(この表現も2つの語が対照的であるときに用いられます。)

 "Beautiful" is an adjective.(「beautiful」は形容詞だ)

 これなど当然といえば当然ですね。これに関連して次のなぞなぞのような英文も見てください。

 I think that that that that that writer used is wrong.

 「that」の5連発!あり得なさそうな英文ですが、これでも一応正しい英語です。意味は
 「あの作家が使ったあのthatは間違いだと思う」
 です。分かりやすく書き直すと

 I think (that) that "THAT" (which) that writer used is wrong.

 5つ並んでいた「that」は前から順番に「接続詞(省略可能)、指示形容詞(あの)、普通名詞(「that」という単語)、関係代名詞(目的格で省略可能)、指示形容詞(あの)」となります。


3、「前置詞+形容詞」の熟語表現

at first (最初のうちだけは)<これが出てくると、あとから別の事態へ展開したという流れが追いかけてくる
at last (ついに、やっと)
at least (少なくとも)
at most (せいぜい、多くとも)
at best (せいぜい、一番よくても)



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207.(目的語を取る形容詞)

 「目的語」といえば通常は「他動詞の目的語」として「他動詞の動作対象」を指したり、「前置詞の目的語」として「前置詞と直接的な結びつきを持つ名詞」を指して言いますが、形容詞のくせに目的語を取る例があります。これは「形容詞に由来する前置詞」と見なすことも可能です。(辞書に「前置詞」として収録されているものもあります。)

I want to fly like a bird.(のように空を飛びたい)
That is difficult but worth trying.(それは難しいが、やってみる価値はある

 「これが前置詞じゃない?」とむしろ不思議に思うかも知れません。前置詞だと解釈してもいいんですが、次の例を見てください。

She looks very like her mother.(彼女は母親にすごく似ている

 「like」を「very」が修飾しています。これは「like」の形容詞的性質を物語っています。純粋な前置詞は「very」で修飾できませんから。(*I go very to school.なんて変だと誰でも感じますよね?)

Please sit nearer the fire.(もっと火の近くに座りなさい)

 ここでは「near」が比較変化しています。比較変化できるのは「形容詞、副詞」だけであり、純粋な前置詞に比較変化はありません
 このように比較変化しているときでも、「nearer」を前置詞と呼んで構いません。(「near to the fire」の「to」が脱落したものと考えることもでき、その考えだとこの「near」は副詞由来となります。)

 ある程度以上に学習が進んできますとそれまでに習った基礎的な文法だけではすっきりと割り切れない例も出てきます。そんなとき「これは前置詞なのか、それとも形容詞なのか、いったい『どちら』なんだ?」と悩みすぎてもストレスのもとです。「前置詞」と「形容詞」それぞれの典型を基礎として理解した上で「その中間的な存在」もあることを事実のまま受け入れる柔軟な思考力もまた必要です。
 これは今回の例に限らず他の品詞に関してもそういう「複数の品詞の『渡り』的存在」が見受けられますので、「典型的なもの」もあればそうでないものもあることを知っておきましょう。



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208.(主語に注意しなければならない形容詞)

 英単語の意味を「和訳」だけ(特に1,2の少ない和訳例だけ)に頼って覚えていると危険なことがあります。

pleasant :楽しい
necessary :必要な
impossible:不可能な

 さてこれらの比較的よく知られている形容詞を使った次の英文をどう思いますか?

(1) I am very pleasant to be with you.
(「あなたと一緒にいられて楽しい」の意味か?)
(2) I am necessary to study English harder.
(「私はもっと懸命に英語を学ぶ必要がある」の意味か?)
(3) You are impossible to master English within one month.
(「一ヶ月以内に英語をマスターするなんて無理だ」の意味か?)
 (1)〜(3)を覚えちゃだめですよ。間違いの例ですからね!
 (1)の「pleasant」は語源的にいうと「please(人を喜ばせる)」という動詞の現在分詞だったんです(古い英語で-ingではない語尾の時代もあった)。つまりpleasant」の意味は「人を楽しくさせるような」であり、「主語自身が楽しいと感じる」意味には使いません
 これが「She is a pleaasant person.(彼女は愛想のいい人だ)」の意味なら正しいのです。

 (2)の「necessary」も「主語自体が必要とされる」の意味ですので、「I am necessary」は「私は必要とされる人間だ」の意味となります。

 (3)の「impossible」も同様に「To master English within one month is impossible./It is impossible to master English within one month.」なら正しい英文です。
 ちなみに「I am impossible.」は「私は手に負えない(いたずらもの、やんちゃ、きかん坊など)」という意味です。(映画「サウンド・オブ・ミュージック」である子供が自己紹介のときに言った台詞です。)

 英単語を覚えるときは、常に用例を通じてその単語の使われ方を正しく理解するようにしてください。面倒だからといって、薄っぺいポケット和英辞典(実はそういう辞書は基礎力が充分ある上級者用のもの)で、一番最初に書かれている和訳例だけ見てすぐ辞書を閉じてしまわないように。

 英語と日本語はまったく違う文化の中で生まれ育った言語ですので、「dog」のような身近な単語ですら「犬」という日本語と完全に意味が重なっているわけではありません。そこには必ず「意味の領域のずれ」が存在します。
 すなわちある英単語が表せる意味にも幅、広さがあり、日本語の単語もまた別の幅、広さを持っているのです。

dog vs inu

 「hot dog」を「熱い犬」と和訳したのではとても食べ物(ホットドッグ)とは思えませんね(笑)。つまり「犬」には「ホットドッグ(日本語にないからこそそのまま外来語として取り入れたわけです)」の意味は含まれていません。英語では「hot dog」を単に「dog」と略することもありますので、これは意味の領域のずれの現れの1つです。
 日本語で「犬死する」という表現がありますが、英語の「die like a dog/dead a dog's death」は言い回しこそ似ているもののニュアンス、使われ方が違います。「犬死」は「無駄に死ぬ」ことですが、「die like a dog/dead a dog's death」は「惨めな死に方をする」の意味、必ずしも互換性はありません。

 和英辞典を引くと1つの英単語に沢山の意味(訳語)が載っていて「とても全部覚えられない」と思うでしょう。
 なぜあんなに色々な意味があるのか?いえ、本当は意味は「1つ」なんです。和訳例なら沢山(辞書に出ていなくても)考えられるのです。1つの英単語が様々な文脈の中で使われると、それに対する適切な和訳も違ってきます。つまり「沢山の意味」が出ているように見えるのは、「文脈によってこうも訳せますよ、この訳も使えることがあるでしょう」ということを示しているのです。
 それは1人の人間の姿でも「正面から見たとき、横顔、上から見下ろしたとき、斜め下から見上げたとき」それぞれ見え方が違うように、単語という「立体的な存在」を様々な角度から見た図を示すことによって、学習者の想像の中で「1つの立体像、実体」をイメージしてもらうための手がかりなのです。
 建物や自動車の写真にしても、1つの角度から撮影された1枚の写真だけでは充分に実体をイメージしにくいですよね。設計図では常に「正面図、側面図、俯瞰図」など複数のアングルから見た図を描くのも同じ目的です。
 すなわち辞書に載っている「沢山の意味」に見える様々な訳語例は、「英単語の設計図」のようなものです。個別の存在(沢山の意味がある)ではないのです。

 一定以上の英語力が身についてきたら「英英辞典」の使用をお勧めします。最初のうちは単語の定義に含まれる単語をまた調べる必要があったりして大変な手間に感じるかも知れませんが、使いこなせるようになってくると和英辞典よりはるかに単語の実体を把握しやすいものです。さらに英単語の意味を英語で書かれているため、表現力のバリエーションもどんどん広がります。ある単語が思いつかないとき、それを別の言い回しで伝える力もつきますし、今回あげた例のように「和訳につられて失敗する」ということもなくなります。中学生や高校1年生程度では相当英語が得意な人でないと疲れるだけかも知れませんが、高校2年生くらいから英和辞典と併用するとよいでしょう。

 まして大学生で英語を専門に学ぶ人や現役の教員が、英単語の意味を調べるときまっさきに英和辞典を開くようでは困ります。まず英英辞典に自然に手が伸びて、その定義から「ああ、日本語でいうと、あれとか、あれとか、あんなふうに言ってもいいな」と文脈をあれこれ思い浮かべつつ様々な訳語の可能性を考えればよいのです。
 英和辞典は日本語という(英語側から見れば)外国語のフィルタを通して、その意味の本質を想像しなければならないという「手間」がかかるものなのです。それに比べて英英辞典は、ダイレクトにその単語のイメージを伝える記述が書かれており、使えば使うほど学習者の脳細胞に「英語文化」が築き上げられていくのです。

 さて「英語の形容詞」の中には和訳だけを頼りにしていると使い方を誤りやすいものも沢山あるというお話でした。  まだ英和辞典しか使えない段階にある学習者の方も、辞書に収録された様々な「訳例(これを「意味」とはあえて言わない)」や「用例」を必ず通読するようにしましょう

 加えて高校生用の英和中辞典くらいになると多くの単語に「語源説明」が(たいていは単語解説の末尾に)書かれていますので、「発音記号、代表的な(その単語の実体を把握するに充分な)訳語例、例文と合わせて、その語源説明(せいぜい1行以内です)も控えておくようにしましょう。これが後々語彙力を飛躍的に伸ばす重要な鍵になってきます。



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209.(副詞転用)

 まず次の英文を見てください:

If you speak Englsih good, you don't speak it well. (Norman Lewis)

 これは「Norman Lewis」というアメリカ人言語学者・英語教育者の言葉です。Norman Lewis は多くの著書を持ち、特にアメリカ人向けの「語彙力増強」の書物や「正しい英語を見につける」本が長年に渡りベストセラーになっています。  この1文は、「英語ネイティブが普段何気なく使っているが、実は正しくない表現」をユーモアたっぷりの表現で述べたものです。

 「私は英語がうまい。だってアメリカ人で英語ネイティブなんだから」と言う人がいます。それを「I speak English good.」と言っているとしたら、すでにその人は「You don't speak English well.」だとされるわけです。
 つまり「上手に」という副詞は「well」であり、「good」は「上手な」という形容詞としてのみ使うのが標準的で教養ある英語なんですよ、と著者は述べています。この1文を見ただけで「そうか、英語ネイティブもこういう間違いを普段しているんだな」と私たち日本人も興味深く、英語文化の実態の一側面を垣間見ることができるわけです。

 形容詞がそのままの形で「副詞」に転用されて用いられることがありますが、上記の例では「これはまだ標準的と認められていませんよ」の例です。(しかし現実としてアメリカ人の多くが使ってしまっているわけで「通じる」間違いの例とも言えますね。)

  形容詞から副詞が派生するとき「-ly」の語尾が追加される語形を取ることが多いというのを、ある程度英語を学んだ人なら経験的に知っていることでしょう。この「-ly」という副詞語尾接尾辞も1つの重要な「語源知識」です。ただし「friendlyelderly」のように「-ly」が名詞について形容詞を作る例もありますので、「-lyで終わっていたら常に副詞だ!」と固定的に考えてはいけません

(1) He was a hard worker.(彼は働きものだった。/彼は勉強家だった。)
(2) He studied hard.(彼は懸命に勉強した)
(3) He hardly studied.(彼はほとんど勉強しなかった)

 (1)の「hard」は「熱心な」の意味の形容詞。それを副詞「熱心に」として使おうと「hardly」にすると「ほとんどしない」という意味になってしまいます。hard」は「熱心な」の意味でもそのままの語形で副詞(「熱心に」)になります

(4) Go straight and you will find a post office.(まっすぐに行けば郵便局が見つかります)

 この「straight」も形容詞と語形は同じ。

(5) The sun was shining bright/brightly.(太陽が明るく輝いていた)

 これは「bright/brightly」のいずれでも構いません。

 どの語がそのままの語形で副詞となり、どの語が「-ly」語尾を取るのか。どの語がそのままでも、「-ly」語尾でもいいのか。残念ながらそこに規則はありません。習慣的に固定化されていったものなので、実例を通じて1つ1つ身に付けていく他ありません。
 ある形容詞を知り、それを副詞として使いたいとき「-lyを付けた形でいいのかな?それともそのままでも副詞になってたりするのかな?」と一度は疑ってかかってください。そして辞書で逐一確認する手間を惜しんではいけません


※形容詞にかかわる重要項目としては「比較構文」がありますが、これは副詞も含まれる文法事項であるため、「品詞」編から切り離して「構文」編の中で取り上げます。



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210.(数 詞)

211.<基数詞>

 その名の通り「数字」を示す言葉で、一応形容詞の項の中で取り上げておきますが、数詞」が形容詞の下位分類の1つだというわけではありません。「数詞」とは「数字を表す言葉の総称」であり、使い方によって形容詞にも名詞にもなります。

 次の数字を見た瞬間、読めますか?英語でも日本語でもいいですよ。

123,456,789,234,567

 私個人のことを言うなら、お金としてこんな大金には縁がない(笑)ので、日本語ではとても一瞬で読めません。天文学を日ごろから学んでいる人や銀行員なら、こういう大きな数字にも馴染みがあって、位取りのコンマからすかさず「123兆4567億8923万4567」と読めるのでしょうか。そもそも「兆」くらいは国家予算の単位などで耳にすることがそれなりにありますが、その上の「京(けい)」なんて日常的に馴染みのない単位ですよね。
 くわえてコンマの位置で参考になるのは「1000」と「100万」の位置くらいでしょうか。それさえ数字を読むときのスタートとせず1の位から「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、、、、」と数え上げていった人も少なくないのではないでしょうか。

 この「3桁ごと」に打たれているコンマは、日本人にとってあまり参考にならないものです。なぜならこのコンマは「英語で読みやすくする」ためのものだからです。ですから、日本語では読むのに大変時間がかかる人でも、英語なら、ほとんど人目見ただけで

one hundred twenty-three trillion,
four hundred fifty-six billion,
seven hundred eighty-nine thousand,
four hundred sixty-seven

 と読めてしまうんです。これを日本語に訳せと言われたらまた時間が要りますけどね、、、。

 英語を習いたての人が、1から20まで数えられるようになるには、20個の単語を覚えなければなりません。しかし100まで数えられるのに100個の単語を覚える必要なんてありませんね。20まではそれぞれ別個の単語なので覚えるのが大変ですが、その先になると、

twenty-one
twenty-two
twenty-three

とすでに覚えた「one, two, three...」を「twenty」のあとハイフンでつないでやるだけで29まではOKです。
以下、30、40、50、60、70、80、90、100という単語を覚えれば一気に100まで数えられるわけです。同様に、そこから先についても数字で書いたときコンマを打つ箇所だけ新しい単語を覚えれば、このような天文学的数字まで数えられるようになるのです。(誰も1からここまで数えた経験のある人はいないと思いますけどね、、。)

 考え方は簡単。「コンマに名前がある」と思えばよいのです。そしてコンマごとの名前を覚えたら、あとは1〜999までが言えさえすれば、どんな大きな数字も読めます。

 最初にあげた大きな数字を「一部数字のまま」で書き直してみましょう:

123 trillion,
456 billion,
789 million,
234 thousand,
567

 ほら、これなら読める!
 ここでは分かりやすくするためにコンマで行をかえてあります。実際にタイプするときは、行をかえる必要はありません。コンマのあとはスペース1つ打って、さらにそのままの行に書き続けてよいのです。でも大きな数字は通常わざわざ文字でべた書きはしません。(契約書など数字を書き換えられては困る公式書類ではします。)

 実は中学でちゃんと習ったはずなのに高校生以降になってすっかりおろそかになっている「規則」があります。文法に「規則」などないと常々書いてきましたが、「数字を書き表す」上では人為的に定められたルールがちゃんとありますので、それは覚えて守らなければなりません。
 私が大昔にまだ高等学校の英語科の教員をしていたころ、進学校と呼ばれる学力の高い生徒でも最初の授業で「1から20まで書いてみなさい」という簡単な(はずの)力試しをさせたものです。そして驚くことに(驚かないかな?)満点を取れる生徒はごくわずかなのです。この先を読む前に皆さんも「1から20」を書いてみてください。(あ、すでに重要なポイントを上で書いちゃったから書けちゃうかな、、。)

1 - one
2 - two
3 - three
4 - four
5 - five
6 - six
7 - seven
8 - eight
9- nine
10 - ten


 ここまででもうしくじった?今すぐその単語を10回書いて覚えてください。

11 - eleven
12 - twelve
13 - thirteen
14 - fourteen
15 - fifteen
16 - sixteen
17 - seventeen
18 - eighteen
19 - nineteen
20 - twenty


 「nineteen」で「ninteen」と「e」をつけなかった人、それは「ninth(9番目の)」とごっちゃになってます。
 さてここから先ですが、全部書いていくのも大変なので「21」だけ書いてみてください。

21 - twenty-one

 「twenty one」じゃだめですよ。英語ではどういうわけか「2桁数字」は1単語として書き表します。上の「11〜20」はまさに1単語ですが、それ以上となった場合でも、10の位を表す数字と1の位の数字を「ハイフン(-記号)」でつないで1語にしてやるという決まりごとがあります。こういうことは「英語がしゃべれる」人(アメリカ人などでさえ)でも「正書法」の知識を忘れていると失敗します。

 30、40、50、60、70、80、90、100 これらは、ここまでに出てきていない単語なので初心者の人は新たに覚える必要がありますが、「まったく初めての単語」というほどの負担は感じないでしょう。

30 - thirty
40 - forty
 ←注意!four, fourteen」では「OU」ですが、forty」に「U」は入りませんよ
50 - fifty
60 - sixty
70 - seventy
80 - eighty
90 - ninety
100 - hundred


 数字の英単語として特に注意すべきは「4,8,9」がからんだとき。ここでは「基数詞」といって一番基礎となる普通の数字の話をしていますが、他に「序数詞」といって「〜番目の」の意味を表す数詞(first, second, third, fourth...など)もあり、段々混乱してきます。
 「4」がらみで注意すべきは「4 (four), 14 (fourteen)」なのに「40 (forty)」だけは「Uがない」という変則性。
 「8」がらみで唯一注意しなければならないのが序数「8th=eighth」です。この発音は「eight」+「-th」であり、「eighth」に「t」は1回しか現れませんが、< eight th >と「eight」の語尾としての「t」と序数語尾の「-th」の両方発音します。このスペルと発音の関係はいたって例外的です。他に「th」を「 t と th 」の2回にわけて読む例はありません。
 実際にその発音を聞いてみると

eighth

 このように「エイツ」っぽく聞こえるのではないでしょうか。これは「発音」編の「t/d」で述べた「無破裂の t」を「th音」が追いかけたものです。「t」があるとは言ってもそれを「tip, top」の語頭のように強く破裂させる必要はないのです。「ツ」と語尾部分が聞こえるのは、「-th(無声音)」を発音するとき、「舌を上下の間から引っこ抜く音」がそう響いています。
 なかなか上手に真似るのが難しい発音ですが、「あくまでも1音節」ですから「エイトス」と4音節になるのだけは禁物です。現実の要領としては、[ ei ] と2重母音(「えい」という日本語は2音節ですが、2重母音は「エィ」のような感じで1音節)を発音したらすぐに舌先を上下の歯の間に少し挟み(その瞬間、無破裂「t」を発音したことになる)、それを引き抜きながら息を出す(これで [ th ] の音を出したことになる)という方法でよいのです。決して「破裂のt」を発音したあとで「th」の発音に移るなんてことはしません。(これをやると「エイトス」になってしまう。)

 「9」も油断禁物。唯一注意して欲しいのが「ninth」です。「nine, nineteen, ninety」と基数詞では至って法則的ですが、これが序数「9th」だけは「e」のない「ninth」と書くというのがひっかかりやすい。

 序数詞はまた別にまとめて取り上げることにしましょう。

 13、14、15、、、では「thirTEEN」だったのが、30、40、50、、、では「thirTY」と語尾が違うだけですね。
 英語で話すとき、「13」と「30」の区別が通じにくかったり、間違って伝わったりすることがあります。

 「13」と「30」の違いは?と聞かれて「-teen と -ty」、語尾の違いです、と答えた人。50点です。100点はあげられません。
 もっと大事なことがあるんです。

 それは、「13 = thir-TEEN」、「30 = THIR-ty」というアクセントの違いです。「ティ」と「ティーン」という音の長さだけで区別していた人はきっと英会話でうまく伝わらず聞き返された経験を持っていることでしょう。誤解なく数字を相手に伝える大きなコツは、13と30で、アクセントの違いを明確に発音することです。

 100まで数えられるようになったら、あとは「コンマの名称」を覚えるだけです。

1,000 = one thousand
1,000,000 = one million
1,000,000,000 = one billion
1,000,000,000,000 = one trillion


 まだまだありますが、もうこれくらいで充分すぎるくらいでしょう。「thousand(千)」は頑張って覚えてください。
 「millon」以降は「覚え方のコツ」があります。

 「1ミリ (milli-meter)」は「1,000」集まると「1メートル(meter)」ですね。この「1メートル」がメートル法では長さの基準です。その「1,000分の1」を「ミリメートル」と呼ぶのです。意義としては「ミリ=千分の1」ということですが、milli」という部品(単語の一部になるもの)それ自体が「thousand(千)」という意味を持っています。
 ですから「million」とは「thousandの千倍」という意味なんです。

 そして「million」を1番目とすると「billion」が2番目、「trillion」が3番目に位置しますね。
 「billion」の「bi-」、「trillion」の「tri-」ってどこかで見たことがありませんか?

bicycle (自転車)
bilingual (バイリンガル:2ヶ国語がどちらも母国語並に使える人)
binocular (双眼鏡)
bi-metal (バイメタル)<実は和製英語

triangle (三角形)
tricycle (三輪車)
trilingual (トリリンガル:3ヶ国語がすべて母国語のように使える人)
tripod (三脚)
trivial (些細な)

 このように「bi-」には「2」、「tri-」には「3」という意味があるのです。これを知っていれば「billion, trillion」もすぐ覚えられますね。

 「bicycle」は「bi-(=2) + cycle(=wheel 車輪)」から。
 「bilingual」は「bi-(=2) + lingue(=tongue 舌)」から。日本語で「2枚舌」は「嘘つき(1枚の舌で本当のことを言い、もう1枚で嘘を言うから)」ですが、英語で「舌」は「言語」を意味して用いられることもあり「母国語」のことを「the mother tongue(母親の舌)」といいます。ちなみに「double-tongued」という言い方をするとこれは「二枚舌、嘘つき」です。  「binocular」は「bi-(=2)」から派生した「bini(=double)」と「oculus(=eye目)」というラテン語の合体で「2つの目」の意味から。
 「bi-metal」は正しい英語としては「bi-metaic strip」というのですが、「bi-(=2) + metal(金属)+ -ic(形容詞語尾)」によります。
 「バイメタル」と日本語で通常呼ばれるものは、「サーモスタット(thermostat):温度自動調節器」つまり、熱を持つと自動的にスイッチが切れたりする装置の中に使われれている「熱くなると曲がる金属片」です。これは膨張率の違う「2」種類の金属を張り合わせてできており、熱を帯びると2枚のうち片方だけがより膨張するため膨張率の低い金属側に曲がるわけです。それを電気の接点に利用して自動温度調節に用いています。

 「triangle」は「tri-(=3) + angle (角度)」から。
 「tricycle」は「tri-(=3) + cycle(wheel 車輪)」から。一般に小さな子供が乗る三輪車のことを指しますが、私の住むフィリピンではそれ以外に「自動二輪の横に乗客が乗るゴンドラをつけたサイドカー・タクシー」の意味でも広く用いられています。これも「自動二輪+ゴンドラの車輪」で3つの車輪がありますからね。(ちなみにマニラ訛りでは「トライシケル」と発音されます)
 「trilingual」は、先ほどの「bilingual」の「bi-」が「tri-」に置き換わったものですから納得ですね?
 「tripod」は「tri-(=3) + pod(=foot 足)から。「pod」は「tetrapod(テトラポッド)」という「海岸によくある『4本足』の防波物」の名前にも見つかります。(「tetra」は「4」を意味します。)この「pod」は「ped」の形でも多くの単語の部品として見つかり、「pedal (足でこぐからペダル)」、「pedicure(ペディキュア:「手」に塗れば「manicure (mani, manu=hand)」で、「足」の手入れ(cure < care)だからpedicure)」など身近なすでに知っている語にも含まれています。
 「トリビア(=重要でない知識)」という言葉が外来語としてお馴染みになってきていますが、「trivial(些細な、重要でない」」という単語は「なぜ3と関係あるの?」と思うかも知れませんが、「tri-(=3) + via(=way道)+ -al(形容詞語尾)」の組み合わせから成り立っており「3本の道が交差するほど人通りが激しい中で話して人に聞かれても支障がないほど『些細な』」という随分まわりくどい(?)由来があるんです。(「via(=way)」は飛行機などで「〜経由」を意味して「via Hongkong」とか使われているのを知っている人もいることでしょう)

 この項のはじめ「1〜20」を英語で書いてみようなどと「随分この項は内容が簡単だな」と思った人いませんか。
 それがここに至って語源の話にまでなってきてラテン語だのギリシャ語だのの語形までちらほら現れて、ちょっと焦りましたか?

 さて、この機会にちょっぴりだけ「語源知識の活用」による語彙力増強の要領についても触れてみました。これについてより詳しくは独立した章を設けて今後解説する予定です。



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212.<序数詞>

 「序数詞」とは「〜番目(の)」の意味を表す数詞です。「1,2」の序数詞が特に変則的で「first, second」という「one, two」とはかけ離れたスペルの語が使われ、以下、third (これもthreeに-thをつけるというものではありませんね)、fourth, fifth...と後は比較的規則性のある語となっています。

1st - first
2nd - second
3rd - third

序数というと「数字th」と書けばいいと思い込んでいる人が結構いまして、「吹奏楽部、第21回発表会」の看板に「21th」なんていうのを見たことも1回や2回ではありません。

4th - fourth
5th - fifth
6th - sixth
7th - seventh
8th - eighth発音に注意!
9th - ninthスペルに注意!「e」が脱落する「9がらみ」の数字はこれだけ。
10th - tenth
11th - eleventh
12th - twelfth <見た目が2で終わっていても「12nd」じゃないですよ。単語として発音してみればわかりますね。
13th- thirteenth
14th - fourteenth
15th - fifteenth
16th - sixteenth
17th - seventeenth
18th - eighteenth
19th - nineteenth
20th - twentieth

 「13〜19」は至って機械的。基数詞に「-th」を付加するだけでいいわけです。
 20th」のスペルは「twenty + -th」が「twentieth」と「-y」を「-ie」にしてから「-th」を付加します。これは「study」に「-s」を付加するときと同じ理由からで「twentyth」と書いてしまうと「y」の箇所を [ ai ] と読みたくなるのが英語的スペルと発音の関係における習慣だからです。

 以下、21st以降は省略しても大丈夫ですね。基数詞の末尾だけ上記のいずれかになるわけですから。「hundred, thousand, million...」すべて「-th」を付けるだけです。(hundredth, thousandth, millionth...)

 一例だけあげておきましょう:

1,234,562
one million,
two hundred thirty-four thousand, <2桁数字の間にハイフンを入れるのは基数詞と同じ
five hundred sixty-second <末尾(その数字で一番小さな数)だけを序数にすればよいのです


<序数を問う疑問文はどうするか>

 「いくつ、いくら」などは
How many .... ? (数えられるものについて)
How much ....? (数えられないもの「量」を尋ねる言い方)
 ですが、日本語の「何番目?」という「序数」を問う言い方が英語にはありません

 「渋谷はここから何番目の駅ですか?」なんて言いたいとき困りますね?それは

How many stations are there between Shibuya and this station?
(渋谷駅と今いる駅の間に、いくつの駅がありますか?)

 のように尋ねるしかありません。それで「Five.」という答えが帰ってきたら、「OK, then, Shibuya is the 6th station, right?」と言えます。(間にある駅の数+1ですね)



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