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125.動詞

 さて、いよいよ「動詞」の章に入ります。英文を理解し、自ら使いこなす上で極めて重要なのが、この動詞です。動詞さえ克服すれば英文法の大半を克服したと言っても過言ではないほど重要な要素をたくさん含んでいます。

(1)動詞の種類(分類法)
(2)動詞の変化形
(3)時制
(4)相
(5)態
(6)法

 上記1~6については、このあと個別に詳しく解説しますが、まずは大雑把にどういう内容を含んでいるかを説明しておくことにします。

(1)動詞の種類(分類法)

 何に着目して分類するかにより動詞の種類をどう考えるかには色々あります。

---特別動詞と一般動詞
---助動詞と本動詞
---自動詞と他動詞
---規則動詞と不規則動詞
---その他の分類法

(2)動詞の変化形

 1つの動詞にも原形、現在形、過去形、現在分詞、過去分詞といった様々な形があります。

(3)時制

 英語には「現在、過去、未来」の3つの時制が存在します。

(4)相

 「時制」を拡張するものとして「基本相、完了相、進行相、完了進行相」の4つがあります。

(5)態

 動作を「する側」と「される側」、いずれを主語に取るかで「能動態」と「受動態」の2つに分かれます。

(6)法

 話者がその英文について「事実描写」として述べている(直説法)か、言葉の上だけで「想像」や「仮定」を述べている(仮定法)かなど「表現に対する姿勢・気分」が動詞の形に反映されるというものです。



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126.動詞の種類(分類法)

 「動詞とは何か?」と聞かれれば、具体例として「走る、歩く、食べる、飲む、立つ、座る」などいくらでも例は挙げられると思います。日本語では基本形が「う段」で終わるのが動詞の特徴ですが、英語の動詞にはそのような外見上の統一された特徴はありません。さらに日本語的感覚からはそれが動詞だと理解しにくいもの(be, will/shallなど)もあり、思ったほど簡単に「動詞とは」と定義できないところがあります。



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127.(1)---特別動詞と一般動詞

 「英文法総覧(安井 稔 著:開拓社)」によりますと
 「PalmerやHornbyによって『(24個の)変則定形動詞』(twenty-four anomalous finities)と呼ばれているもの」
 があり、それを一括して「特別動詞」と呼べば、他のすべてを「一般動詞」と区別することができます。

 「特別動詞」とは:
be動詞 ( am, is, are, was, were )
have動詞 ( have, has, had )
助動詞do ( do, does, did )
助動詞will ( will, would )
助動詞shall ( shall, should )
助動詞can ( can, could )
助動詞may ( may, might )
助動詞must
助動詞ought
助動詞need
助動詞dare
助動詞used
 の合計24個を指します。これらはすべて否定文、疑問文、強調文を作るときに重要な役割を果たすという共通した特徴があり、直後に「not」をつけるなど使い方も、これら以外の一般動詞とは異なるところがあります。

 「be動詞」や「have動詞」も広い意味の助動詞に分類することができ、その観点では、動詞全体を「助動詞本動詞」に2分することとなります。
 「be+~ing」で進行形を作ったり、「be+過去分詞」で受動態を構成したり、「have+過去分詞」で完了形を構成したりと、本動詞のなんらかの変化形と組み合わさるのが、他の多くの助動詞との違いです。普通「助動詞」と言えば「will, can, must」などを指し「動詞の原形と結びつく」とされていますが、助動詞というものを広くとらえると、「be, have」もそれに含めて考えることができますし、oughtやusedは「to do」といったto付きの不定詞と組み合わさります。

 さらに「do」は助動詞としての用法以外に「する」という普通の動詞としても用いられ、その用途では一般動詞に含まれます。同じく「have」も「持つ、持っている」の意味では一般動詞です。



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128.(2)---助動詞と本動詞

 英文の述語動詞部分が1つの動詞だけからなる
He goes to school every day.
 のような文もあれば、
He can speak English very well.
He doesn't know how to swim.
He is studying English in his room.
He is loved by everyone.
He has finished his homework.
 などのように2語で1つの述語部分を構成している例も多くあります。このような場合においては「述語動詞=助動詞+本動詞」という組み合わせとみなします。

注意:あとから解説する「基本5文型」で「V」という記号で示されるのは「述語動詞」といって、「主語」に対するものであり、「S, V, O, C」を「文の要素」といいますが、この「V」を指して略称の「動詞」とも言う人が多くいます。事実、学校でも「主語と動詞」というような言い方で「文の構造」を説明していると思いますが、品詞としての動詞」と「文の要素としての述語動詞」は区別して考えなければならず、両者を同じ「動詞」という名称で呼ぶのは混乱を招くため私は反対です。
 品詞としての名称が「動詞」であり、それは「名詞、代名詞、形容詞、、」などに対するもの。  S, V, O, CのVを指すときは、正式に「述語動詞」と呼ぶか、略称とするなら「述語」と呼ぶのが正しいと考えます。

 「本動詞」とは、「動作、状態」そのものを具体的に表す動詞のことで、それに対して「助動詞」とは「本動詞の意味に変化を与える働き」をするものです。

 中学段階では「助動詞」といえば「can, may, must」などのように「原形動詞」と結びつくもののみを指してそう呼びますが、それはそれで理解を簡単にしてくれますのでかまいません。しかし、より厳密に見ていくと、

進行形:助動詞としてのbe+本動詞の現在分詞
受動態:助動詞としてのbe+本動詞の過去分詞
完了形:助動詞としてのhave+本動詞の過去分詞

 といったように原形だけでなく、「現在分詞や過去分詞としか結びつかない助動詞」もあるということになります。
 ただあまりに細かい分類ばかりにとらわれすぎるのも、必要以上に話を複雑にしますので、通常「助動詞」といえば、学校で習ったように「can, may, will, must..」などを指すものと考えて差し支えありません。ただ、述語動詞の形式の中では、「進行形や完了形をつくるbeやhaveも、助動詞として機能している」とだけ覚えておきましょう。



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129.(3)---自動詞と他動詞

 これは「基本5文型」の根本となる動詞分類の考え方です。
 「自動詞」とは「自分」だけがいればできる動作・状態を指し、その「動作の対象(相手=目的語)」を必要としないものです。形式的に見れば「目的語(O)」を取らないのが自動詞となります。  「他動詞」とは「他人・他者」という「動作の対象(相手=目的語)」があってはじめてすることのできる動詞。相手が存在しなければその動作自体が成立しないというものです。形式的には「目的語(O)」を必ず取るタイプの動詞ということになります。
 「自動詞と他動詞」の区別については、この先「基本5文型」の章であらためて詳述します。

 自動詞と他動詞というのは、(1)の分類における「一般動詞」を2つに分けたもので、「特別動詞」はこのいずれにもあてはまりません。ですから助動詞すべてについても「自動詞か他動詞か」の区別は存在しません

 一般動詞全体をまず「自動詞、他動詞」の2種類に分けた後、「完全、不完全」という下位分類をすると
完全自動詞
不完全自動詞
完全他動詞
不完全他動詞

 という4つに分かれます。これも後々詳しく述べますが、「完全」とは「補語(C)を必要としない」、「不完全」とは「補語(C)を必要とする」という意味です。
 このうち「完全他動詞」の一部は、「授与動詞」と言う別の機能を持っており独自の文型を作ります。それを加えて「一般動詞」全体が5つに分かれるので、「基本5文型」が導き出されるわけです。

 ここでは「動詞について、着眼点によって、どのような分類方法があるのか」を大雑把に理解できればかまいませんので、あまり難しく考えないようにしてください。今この場ですべてを理解しようとする必要はありません。今後詳しく学ぶことがらの「紹介」をしているに過ぎないと思っていただいて結構です。

 辞書を引きますと、必ず「単語、発音、品詞」が最初に書かれています。そして品詞としては「8品詞」分類の名称だけでそれを記しても正しい使い方を伝えられないため、本動詞については「自動詞(vi.)」、「他動詞(vt.)」の区別でそれが書かれているはずです。それはすなわち「少なくとも自動詞と他動詞の区別ができていないと色々不便なことがある」ということであり、英文を理解する上でも、自らが英語を使う上でも、自動詞と他動詞の明確な判別は非常に重要なこととなります。
 それについては「基本5文型」の中でも改めて詳しく述べますが、ここでも一応の区別について少々解説しておくことにします。

I love you.
I go to school.

 「I love you.」では、「love(愛する)」という動詞の対象となる名詞(代名詞)が直接そのままあとに続きます。
 「I go to school.」では「to」という前置詞と一緒に「to school」があとに続いており、これを「I go school.」とは言えません。
 ごく簡単に区別を言うなら、「他動詞は動作の対象となる名詞(代名詞)をそのままあとに続けることができる」のに対して、「自動詞」は「前置詞をはさんで名詞(代名詞)をあとに続ける」ということになります。

 中学までの内容を一通り学んだことがある方ならば、自動詞と他動詞の区別が一応イメージされていることとは思いますが、英単語の和訳だけを頼りに動詞を覚えようとすると、いろいろ問題が生じてきます。

「私は彼と(映画に)行く」
「私は彼と結婚する」

 この日本語から見ると「結婚する」と「行く」は同じように使われており、どちらも同じタイプの動詞に思われますが、これらを英語にすると

I will go (to a movie) with him.
I will marry him. 
< I will marry with him.とは言わない

 とまるで違う形式になります。「go(行く)」は自動詞で「marry」は他動詞なのです。日本語の発想と英語のそれが必ずしも一致しないことも多くあるため、和訳だけを頼りに文法を理解しようとするのは大変危険です。
 日本語にも「娶る(めとる)」という動詞がありますが、marryはこれに近く、結婚相手を直接あとに取ります。
 言うなれば「~と結婚する」というふうに「~と」までをその意味に含んでいるのです。しかし「go」はそのなかに「~へ行く」の「~へ」を含んでいません。
 ですから英語の動詞を覚えるときは、「~を、~と」などの日本語の助詞までその意味に含めて覚えることで他動詞であることを意識しやすくなると言えます。



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130.(4)---規則動詞と不規則動詞

 英語の動詞には「原形」という辞書の見出し語として使われる基本の形のほか、「過去形、現在分詞、過去分詞」という変化形があり、たとえば

walk(原形)-walk(s) - walked - walking

 というふうに使われ方によって別々の形を取ります。多くの動詞は一定のパターンに従った規則的な変化をしますが、中には

go(原形)- go(es) - went - gone - going

 のように不規則な変化をするものがあります。一定のパターンに則らず独自の変化形を持つものを「不規則動詞」といいますが、数は限られており、中学3年までに主な不規則動詞は、一括して覚えさせられます。まだ覚えていない人は、辞書の巻末などに「不規則動詞変化表」がありますので、今から覚えるか、今後、英語の動詞に出会うたび、こまめに辞書をチェックして、その変化形を確認するようにしてください。一気に暗記しても普段あまり使わない不規則動詞は忘れてしまいますし、日ごろからよく使うものについては、特別意識しなくても正しい形を自然に覚えるものです。最終的には多くの経験を通じてなれていくのが唯一の解決法だと思います。

 本サイトでは、辞書や教科書・参考書を見ればそのまま出ていることがらは割愛しますので、不規則動詞の変化表も省きます。

 「名詞の複数形」でも規則的な変化をするものと不規則なものがありましたね。動詞の変化もそれと同じようなもので、まずは規則的な変化のパターンにしっかり習熟しましょう。なにが「規則的」なのかを知らなければ、なにが不規則なのかも区別がつきませんからね。

 規則動詞の変化形の作り方は至って簡単です。名詞の複数形の作り方を先にしっかり学んでください。そうすれば要領はまるで同じであることがわかります。違うのは、名詞の時「-(e)s」で終わらせたのが、動詞では
1、現在形で、3人称単数が主語となるときは「-(e)s」で終わる
2、現在形で、その他の主語の場合は原形と同形。
3、過去形・過去分詞は「-ed」が語尾となる。
4、現在分詞は、「-ing」が語尾となる。
 というだけです。
 動詞の語尾の子音を重ねたりする場合(scan - scanned - scanningなど)の要領にはちょっと注意が必要ですが、本サイトの「スピーキング」の章を読んでいただければ、発音とスペルの関係から、どういうとき語尾の子音文字を重ねるかが、根拠とともに理解できると思います。

 ここでは基本的なことを他で学ばれた上で、一部の注意事項だけを述べるにとどめます。

(注意1):「hit > hitting」、「visit > visiting」と一見、「あるときは語尾の子音を重ね、あるときは重ねない」という不統一な感じに見える例がありますが、「語尾の子音を重ねるとき」というのは

「(アクセントのある短母音)+子音文字

 で単語が終わっているときです。たとえ「短母音+子音文字」であっても、そこにアクセントがなければ末尾の子音を重ねる必要はありません。(「visit」は [ VIS-it ] と第1音節の方にアクセントがある)
 ただし「worship」は、アメリカ式で「 worshiped - worshiping 」でもイギリス式のスペルで「 worshipped - worshipping 」となりますので、英米で多少変化形のスペルが異なる場合があります。ですから常に辞書で確認することだけは怠らないようにしてください。

(注意2)語尾が-yで終わっている動詞については、「子音文字+y」となっている場合だけ、「-y を -i に変えてから、さらに -es/-ed をつける」。(例: study - studies/studied )
 たとえ語尾が-yで終わっていても、その前が母音のときは、このルールはあてはまらない。(例:enjoy - enjoys/enjoyed, play- plays/played など)

(注意3)語尾が -c で終わる単語は、三単現在の-s はそのままつけていいが、過去形・過去分詞形にするときは、-c の [ k ] という発音を示すため、k の文字を挟む。(-ck のスペルにしないと [ s ] の発音に見えてしまう)
例: picnic - picnics/picnicked - picnicking

 ポイントは「どんなに簡単で知っていると思っている単語でも、こまめに辞書で確認する」ことです。中途半端な思い込みで間違ったスペルを覚えこんでしまうと、それに気づかないまま何年(ときに何十年)も過ごすことになりかねません。1つしか許容のスペルがないこともあれば、英米でスペルのことなる例もしばしばありますので、なんでもルールをあてはめてすませようとしないことが大切です。常に確認を忘れずに!



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131.(5)---その他の分類法

 本動詞の分類として「動作動詞」と「状態動詞」という分け方があります。
 簡単に言えば「動作動詞」とは「する」と「している」の区別を「現在形」と「現在進行形」で言い分けるものです。

1、I watch TV.
2、I am watching TV.

 ここで「watch」は動作を表す動詞であり、1の「I watch TV.」は「日ごろ見る」のような習慣を表すか「さあ、これから見る」のような「目の前の動作」などを指しています。そして2は、「今見ている最中だ」という進行状態を表すものです。「動作」は、「今からはじめる」こともできれば「やめてしまう」こともできます。

I know him.

 これは普通の現在形「know」が使われていますが、日本語の「知っている」に相当し「知る」という訳語をあてはめたのではしっくり来ません。「know」という動詞の意味が、もともと「日常的な状態」を表すものなので、それを進行形「I am knowing」とすることがありません。また一度知り合いになった相手を「知ることやめる」というのもできません。

1、I live in Tokyo.
2、I am living in Tokyo.

 「live」という動詞も本来は「状態動詞」であり、進行形にしなくても「住んでいる」という意味を表しますが、あえてそれを進行形「I am living」にすると「今のところは住んでいる。今だけ住んでいる」という短期的なニュアンスを表現できます。これなど「状態動詞」を「動作動詞」に転用したものといえます。

1、I have a car.
2、I am having lunch.

 「have」は「持っている」の意味では状態動詞。その意味では進行形を取ることがありません。しかし「食べる(=eat)」の意味では動作動詞です。このように同じ単語であっても意味によって動作動詞と状態動詞との使い分けが行われるものもあります。

 ポイントは、日本語の「~している」という言い回しがいつでも進行を表しているのではなく、日常的な習慣や状態を意味していることもあると理解することです。決して安易な「言葉の置き換え」で英文の意味が理解できるとは思わないでください。ですから「どう訳す」にばかりこだわっていると英文本来の意味がかえって理解しにくくなることがよくあるのです。「和訳」は日本語の言語習慣に従った言葉づかいであり、習慣の違う英語表現から機械的に一定のパターンを使った和訳が導き出されるものではないと知る必要があります。



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132.---動詞の変化形

 動詞の語形が変化するのは、それが文の述語として用いられたとき
1、現在時制主語が3人称・単数のとき
2、時制が過去形のとき

 さらに述語とならない場合も、現在分詞過去分詞として用いられるとき、その語形が変化します。

 現在時制で述語動詞として用いられるとき、古くはほとんど主語ごとに独自の語形変化をしていました。動詞の語形を見れば主語がわかったため、今の英語のように主語と述語(SV)の両方が必須要素ではなく(動詞を見れば「誰が」行ったかがわかった)、加えて名詞も格による細かい語形を持っていたため、現代英語のように語順も固定していませんでした。たとえばSVOがOVSの語順になっていても、どれが主語でどれが目的語かを語形から判定できたわけです。日本語で「私は東京へ行った」を「東京へ私は行った」と言っても意味は同じように通じ、「彼は窓を開けた」を「窓を開けた、彼は」としてもやはり意味が通じますが、それと似たような状態が英語にもあったのです。

 やがて主語や目的語などの語順が固定されるようになり、語順によって「誰が、何を」が伝えられるようになると動詞の複雑な語形変化は必要なくなり、徐々に簡素化されていきました。

 現代英語にまだ残っているのは、「現在時制」のとき、主語が「3人称」で、かつ「単数」のときのみとなりました。学校で習う、いわゆる「3単現」というのは、このことです。もしかするともっと時代が進み、この3単現さえ消失してしまう可能性がないとは言えません(そうなると学習者にとっては楽でいいんですけどね)。過去形についてはもうすでに主語に関係なくすべて同じ語形です。

 順序として覚えていかなければならないのは
1、3単現の動詞語尾の作り方
2、現在分詞での -ing のつけ方
3、規則動詞についての過去形、過去分詞の作り方
4、不規則動詞の過去形、過去分詞
 となるでしょう。

1、3単現の動詞語尾の作り方

 一般動詞が文中で述語になるときは、「主語と時制」に応じて決まった形を用います。言い換えるならば、「動詞の形に、何が主語で、どんな時制なのか」が現れるということです。ただしすでに述べたように現代英語では、主語ごとすべてについて語形の違いがあるわけではなく、現在時制で主語が3人称のときだけ特別な語尾を取るほか、過去形は主語に関係なくすべて同じ語形となります。

 現代英語では語形変化が単純化したとはいえ、あくまで「主語ごと、時制ごと」に動詞は影響を受けて述語になると考えてください。たとえて言うならば、文章に組み込まれる前の動詞は「生卵」であり、文の述語にするためには調理して「ゆで卵」にする必要があるのです。生卵とゆで卵は見かけ上まったく同じ(同形)に見えても別物だということです。

 文に組み込まれる前の「生卵」に相当する動詞を「原形」といいます。原形のままでは述語になれないので、「主語と時制」に応じた調理を行い「現在形、過去形、未来形」にして、はじめて述語動詞となることができます。

 このあたりのイメージは非常に大切でありながら、なかなか明確につかむことが難しいかと思います。具体例を通じてのたとえ話が「文法解説サンプル」のページにあります。この先を読む前にまず「文法解説サンプル」のページを是非ご一読いただきたいと思います。


 それでは「文法解説サンプル」をご覧いただいたという前提で、実際の語形変化について解説していくことにしましょう。

 時制が「現在」で、主語が3人称単数のときだけ、述語となる動詞は -s で終わります。
 まず「3人称」というものを理解しましょう。非常に簡単です。
 「自分(話者)を含む主語」を「1人称」といいます。単数なら「私( I )」であり、複数なら「私たち( We )」です。簡単でしょう?
 「相手(聞き手)」を含む主語」を「2人称」といいます。要するに「あなた」と「あなたがた」のことであり、英語ではどちらも You が共通して用いられます。Youが単数の意味なのか複数なのかは前後関係から判断するしかありません。
 そして「それ以外全部」すなわち「私」も「あなた」も含まれない主語が「3人称」です。人ならば「彼(He)、彼女(She)、彼ら(They)」であり、物ならば This/That, These, Thoseといった代名詞、あるいはその代名詞で置き換えられる具体的な名詞も全部3人称ということです。

 要するに人称とは「名詞に対して与えられる『文法的な背番号』」のことです。

 ですから「3人称・単数」とは、「彼、彼女」、「これ、それ、あれ」、「父、母、先生、犬、猫、机、ボール、海、空、日本、アメリカ、愛情、親切、などなど」のことです。

 「これら、それら、あれら」、「2匹以上の動物、2つ以上のもの」は3人称であっても「複数」ですから現在時制の述語動詞は語尾を変えません。

英語として具体的な例をあげると:

I go to school by bus.
We go to shool by bicycle.
You go to school on foot.
They go to school by train.
などは主語が「3人称単数ではない」ので、述語動詞の「現在形」は「見かけ上原形と同じ」となります。

He and I
Bob and Jane
のように3人称単数の言葉が and でつながっているときは、「He and I =we(私を含むから)」と代名詞に置き換えて考えれば、その人称と数がわかるでしょう。

ちなみに and ではなく or でつながっているときは、「述語動詞に近い方の主語の人称・数」に合わせます。つまり、「He or I 」が主語になっていたら、「 I 」に合わせた述語動詞を取るということです。  

主語が3人称・単数のときは

He likes apples.
She reads a lot of books.

のように述語動詞の現在形は「 -s 」で終わる語形となります。しかし、いつでもただ「原形」に「-s」をつけるだけでいいというわけではないので、注意が必要です。パターンとしては次の3通り。

1、原形にただ-sをつけるだけ
[ know ] He knows me.
2、原形に「-es」をつける
[ catch ] He catches the ball.
3、原形動詞の語尾にある y を i に変えてから -es をつける
[ study ] He studies very hard.

 ただし「be動詞」は「I am, We are, You are, He/She/It is」というふうに「am, is, are」の3種類の特別な語形があります。また「have」は3単現で「has」という形になります。これらは例外として覚えましょう。(数は少ないので簡単です)

1の「原形にただ -s をつけるだけ」というのが原則です。ですから、2うや3に当てははまらない場合は全部これです。だから2と3をしっかり理解し、練習して慣れてしまえばよいわけです。

でも原形の語尾についた -s をどう発音するかは確認しておきましょう。
ルールは簡単。-sの前が「有声音なら -s も有声音 [z]」で「無声音なら -s も無声音 [s]」で発音するということです。これは人が決めたルールなのではなく、それが自然で読みやすいからです。振動している声帯は振動させたまま -s を発音する。振動していない声帯もそのままの状態で -s を発音すれば自然とそうなるわけです。これは名詞の複数形を作る「-s」の発音と全く同じ考え方です。


2の「原形に -es をつける」場合というのは、「ただ -s をつけただけだと直前の音と明確な区別ができず -s がついているのかいないのかが分かりにくい場合」です。この場合、「-es」と「e」を間に挟み [ -iz ] という発音を語尾とします。元の単語の末尾に最初から -e がある場合は「-s」だけを加えますが、語尾の「-es」部分の発音は [ -is ] です。(元の動詞の語尾の-eが発音されていなくても、そう発音する。)「-es」の「e」は母音すなわち有声音ですからそれに続く s も有声音 [ z ] で発音されるのは当然ですね。

どんなときがそれにあたるかといえば、要するに語尾が「サ行、ザ行、シャ行、ジャ(ヂャ)行」の子音のときです。(誰が発音しても、それらのあとにそのままつけた -s は音の区別がつきませんよね)
pass [ pæs ] 語尾が [ s ]-passes [ pǽsiz ]
push [ puʃ ] 語尾が [ ʃ ] - pushes [ púʃiz ]
catch [ kætʃ ] 語尾が [ tʃ ] - catches [ kǽtʃiz ]
close [ klouz ] 語尾が [ z ] - closes [ klóuziz ]
dodge [ dɑdʒ ] 語尾が [ dʒ ] - dodges  [ dɑ́dʒiz ]

3の「原形動詞の語尾にある y を i に変えてから -es をつける」というのはちょっと注意が必要です。決して「動詞の語尾が -y のとき」すべてを指すのではありません。

study - studies
play - plays

 「study」の語尾は「子音(d)+y」となっています。y を i に取り替えるのはこのときだけ
 「play」の語尾は「子音(l)+二重母音(ay)」なんです。

 なぜ語尾が「子音+y」だと y を i に取り替えてから -es をつけるのか?
これは「英単語のスペルと読み方の傾向性」による「読み間違えを防ぐため」です。英語に不慣れな人にはピンと来ませんが、日常的に英語(の文字)に多く接していると、「こう書かれていたら、こう読みたくなる」という一種の「読み癖」のような習慣が身につきます。英語文化の中で暮らしている人たちは、豊富な経験からそういう「ついこう読みたくなる」という感覚を持っています。その感覚に従って読んでしまうと読み間違えるから、ちょっとした工夫をしているわけです。

studyにただそのまま -s を加えて「studys 」と書いてあると、英語になじんだ人ほど、これを [ stʌ́diz ] とは読みづらく感じます。このスペルからは、どちらかというと [ stʌ́dàiz ] という読みを連想してしまうのです。-es にして「 studyes 」なんて書いてしまうとますます [ stʌ́dàiz ] としか読めなくなります。

 一方、play は、そのまま -s をつけた plays で何の問題もなく、適切な読み方につながります。

 「スペルと発音の関係性」については「発音」の章の項目「60~62」を参照してください。  このように「英語に慣れた人が自然に正しい読み方ができるように」という配慮から、このようなスペルの変化が定められるようになりました。  まったくの初心者の方にとっては「とりあえずルールとして覚えておく」しかありませんが、やがて英語について上達する中で、自分自身も英語ネイティブ同様の感覚が身についてきますので、そのときは「ああ、確かにこう書かないと読みにくいな」と実感できることでしょう。アメリカ人であっても小学校低学年など英語の読み書きに十分習熟していない段階では「studies」を「studys」と書くような失敗をするものなんです。まして英語に接してわずか数年の日本人の初学者がそういう失敗をすることは何の不思議もありません。


2、現在分詞での -ing のつけ方

 「I am watching TV now.」などの進行形を作るためには現在分詞が必要ですが、これは動詞語尾が -ing で終わります。同じ -ing で語尾が終わるものに動名詞というものもありますが、-ing のつけ方のルールは共通です。

 これもまた「正しい読み方がしやすい」ように考えられています。

1、原則はそのまま -ing をつける
2、そのまま -ing をつけたのでは読み間違えやすい場合に動詞語尾に手を加える
ということです。だからどういう場合は2に当たるのかを見ていきましょう。

2-1:動詞語尾に発音しない「 e 」があるときはそれを外してから -ingをつける

 動詞語尾に「発音しない e 」がある場合は、それを外して -ing をつけます。語尾の e を外さないでそのまま -ing をつけてしまうと、もともとその e にも音があったように見えるからです。(これもまた英語のスペルと発音の関係性になれた人の習慣によるものです。)
taketaking
dinedining
tunetuning
havehaving

2-2:動詞の末尾の発音が「アクセントのある短母音(1文字)+子音」の場合は子音文字を重ねてから -ing をつける

swim [ swím ] のように動詞末尾の発音が「短母音+子音」となっている場合、このまま -ing をつけると「 swiming 」となりますが、英語話者にとってこのスペルは「swime」という単語が先にあり、その語尾の -e をはずしてから -ing をつけたと見えます。

hiking は「ハイキング」ですね。これは「hike」を元にして語尾の e を外して -ingをつけたものです。 hiking を [ háikiŋ ] と発音するのであれば、「hit」にただ -ing をつけた「hiting」は [ háitiŋ ] と発音したくなってしまいます。だから「hitting」と末尾の子音文字をダブらせてから -ing をつけると自然に [ hítiŋ ] の発音に誘導されるというわけなんです。

heat ならば [ híːt ] と、末尾子音の前の母音が長母音ですから、heating でよいのです。末尾の子音文字を重ねるのはその前の「短母音」の発音を自然に保てるようにするためです。

cook [ kuk ] は発音としては「アクセントのある短母音+子音」ですが、[ u ] の音を 「 oo 」という2文字が表していますので「 cooking 」でよいのです。

2-3:一部の例外的末尾

die という単語に -ing をつけたい。でも dieing では「ie」の部分を[ ai ] と発音するようには見えない。そこで dying という変則的な変化をさせて -ing形とします。このスペルなら自然に [ dáiing ] と発音できます。

ちなみに dying は「 dye(染色する)」の -ing 形でもあります。つまり die(死ぬ)と dye(染色する)は元の単語のスペルが違うのに、-ing形になると同じ形になってしまうという特殊な例です。

2-4:発音上の注意

 元の単語の発音に -ing [ iŋ ] の音を加えればいいだけであり、何の変則性もないのですが、たとえば studying を [ stʌ́diŋ ] と読まないように。study + -ing ですから、[ stʌ́diiŋ ][ stʌ́diiŋ ] ですよ。[ i ] が連続していますがこれは [ iː ] とは違いますし、[ i ] を伸ばす音でもありません。ゆっくりと「 study - ing 」とそれぞれの発音をしっかり行ってみればわかると思います。

2-5:語尾が L の単語

 ルール2-2で、動詞語尾が「アクセントのある短母音+子音」で終わっている場合、末尾の子音を重ねてから -ing をつけると学びました。
 ということは「アクセントのない短母音+子音」なら末尾の子音は重ねなくてよいのでしょうか?

 これについてはアメリカ英語とイギリス英語で傾向性に違いがあります。
 アメリカ英語では、末尾の子音を重ねるのは、その前の母音にアクセントがある場合だけであり、travel [ trʌ́v-əl ] のように「アクセントのない短母音+子音」で終わっていても traveling とします。しかしイギリス英語では、この場合もやはり travelling と書くのが普通です。

 母音にアクセントがなければ、末尾子音を重ねなくても誤読への誘惑は(ほとんど)ないのですが、まあ念入りというか、少しでも誤読への誘惑を残さないためか、アクセントの有無に関わらず「短母音+子音」で動詞が終わる場合に子音を重ねるのがイギリス式です。(アメリカ人でもそう書く人が結構います。)

 ですから travel の -ing 形は「traveling, travelling」の両方認められていると考えてください。  さらに「子音 L の直前の母音が短母音でない」場合、つまり長母音であっても、どうも、この語尾のLというのは重ねて書きたくなるみたいなんですね。(なんとなく気持ちはわかります)
controlcontroling, controlling
patrolpatroling, patrolling

 このように末尾がLで終わっている単語には注意してください。成人の英語ネイティブですら「あれ?どうだったかな?」と迷うほどですので、ちょっとでも不安を感じたら辞書で確認するようにすることを強くお勧めします。

3、規則動詞についての過去形、過去分詞の作り方

 不規則動詞については、ここでは扱いません。辞書の巻末なり一覧表がありますので、それを逐次確認してください。
 この解説では規則動詞について「過去形、過去分詞」の作り方を確認することとしましょう。

 「規則動詞」なのですから一定のパターンに則って変化します。過去形と過去分詞は同じ形を用います。

(a) 規則動詞では過去形、過去分詞形ともに動詞の語尾を「-ed」とします。
 発音については、動詞原形末尾の音が有声音なら [ d ]、無声音なら [ t ] と発音されますが、「t/d 音との融合性の強い発音(つまり t/d )」で終わる場合は、[ id ] と発音します。
push [ púʃ ] - pushed [ púʃt ]
play [ pléi ] - played [ pléid ]
close [ klóuz ] - closed [ klóuzd ]
want [ wɑ́nt ] - wanted [ wɑ́ntid ]
hand [ hǽnd ] - handed [ hǽndid ]

(b) 最初から「発音しない e 」で動詞原形が終わっている場合は、-d のみを追加します。

like - liked

(c) 「アクセントのある短母音(1文字)+子音」で終わる動詞は、-ingのとき同様、末尾子音を重ねてから -ed をつけます。
やはり「スペルと読み方の関係性」についての習慣による読み間違えを防ぐためです。

nod - nodded

※cook は cooked でよい。(短母音を2文字「oo」で表しているから)


(d) 「短母音+y」で終わる語は、現在形同様、y を i に取り替えてから -ed をつけます。
理由は現在形のときと同じく「元の動詞の発音を自然に保つため」です。

study - studied

※play は played でよい。(ay が「二重母音」を表す文字だから)


(e) 末尾がLで終わる単語はやっぱり変則的なことがあり、travel の過去形・過去分詞形は「traveled, travelled」がアメリカ式、イギリス式で用いられています。
 それでいて patrol は、-ing形について patroling, patrolling の両方が認められているのに、過去形・過去分詞は「 patroled」だけであり、「patrolled」は認められていないという不統一さがあります。やはり「末尾Lの単語」は逐一辞書で確認ですね。


4、不規則動詞の過去形、過去分詞

 これについてはこの解説で取り上げません。go-went-gone、come-came-come, have-had-had から be -am/is/are - been などなど変化が「不規則」なので解説しても意味がありません。辞書の巻末などの資料を参照して、覚えていただくしかありません。

 不規則といっても、それなりのパターンがありますし、全部覚えても数が限られています。誰もが一度は通過する苦労ですが、不規則動詞の活用表にしっかり口を慣らし、ことあるごとに確認を繰り返し完全に習得していただきたいと思います。

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