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 ここでは今後展開される英文法解説のサンプルページとして、頻出質問である「現在形と原形の違い」についての解説を全体に先んじて解説します。これは英文を構成する基本中の基本となる理解であり、英文の要となる「述語動詞」の形についての深い理解を目指すものです。

 内容としては現役の中学生の方が十分理解できることを目指し、合わせてこの抽象的な問題について学校現場で指導されている方の参考となればと思います。


原形と現在形はどう違うの?

  1. I go to school by bus.
  2. I don't go to school by bus.
  3. She goes to school by bus.
  4. Does she go to school by bus?

 この4つの英文に含まれる「go/goes」原形なのか現在形なのか、すべて自信をもって区別がつくようなら立派なものです。形は同じ「go」であっても、時には原形であり、また別の時には現在形と、ちょっとややこしく感じますね?正解は次の通りです:

  1. 現在形
  2. 原形
  3. 現在形
  4. 原形

 3の「goes」は形が特別なので何か違うと気づくかも知れませんが、あとは全部「go」と同じ形なのに、1は現在形で2と3では原形だなんて、不思議に思うのも無理はありません。
 それに2の否定文では突然「don't」が現れましたが、これは一体どこから来たのでしょう?4の疑問文で使われている「Does」もいきなり現れたように見えますね?

 この解説では、非常に重要な基礎となる「原形」と「現在形」の違いを徹底的に理解してもらいます。さらにあわせて過去形や未来形についても、その理解を延長してしっかりと把握してしまいましょう。

 さて、皆さんは生卵とゆで卵を見ただけで区別できますか?まず無理でしょうね?私にもできません。
 生卵もゆで卵も「見た目はそっくり」ですが確かに違うものです。最初にあげた例文の「原形のgo」「現在形のgo」も、これとよく似ており、見た目には同じように見えるのですが、言うなれば「原形動詞」というのは「生の状態」であり、それに対して「現在形」というのは、文章に組み込んで使うため「調理されている」のです。
 ですからたとえ見かけは同じでも、「割って見ると中身は違う」ということなのです。もちろん、これはあくまでも言葉の上でのたとえですよ。今、最初に理解して欲しいのは「原形と現在形は見かけはそっくりでも、違うものだ」ということです。

 文法というのはどうしても話が抽象的になり、手にとって確かめることもできず、中学生の方などにはどうも理解しにくい話が多いと感じることがあるでしょう。しかし、今回はできる限り「具体的」で「目に見える」形で、この「原形と現在形」の問題について解説したいと思います。


 英語で文章を作るとき、必ず必要なのが主語述語動詞です。主語というのはその文章の主人公であり、その主人公がする動作などを表すのが述語動詞です。  そして動詞という言葉を述語に使うためには、そのままの状態では使えません。「そのままの状態」とは、さっきの例でいうと「生の状態」のことですが、ここではたとえを変えて「むき出しの状態=何にも包まれていない状態」と考えます。すなわち、英文を作るときは「主語が何か包み紙を持参してやって来て」、その包み紙で「動詞を包んでから使う」のです。

 左の図は「主語」がこれから英文を作ろうとしているところです。
 主語はあらかじめ引き出しからその場に合わせた包み紙を取り出してきて持参します。これからその包み紙で動詞を包むことで「主語+述語」の関係となり英文ができるというわけです。
 なお、「その場の状況に合わせた包み紙」というのは、「どんな主語(人称と数)」が「どんな時制(現在、過去、未来)」の文を作ろうとするかによって、包み紙を取ってくる引き出しが違うのです。

 ここではもっとも基本的となる「I(私)」という主語が「go(行く)」という動詞を使って英文を作るとしましょう。
 「I(私)」という主語が今から作ろうとしているのは「現在時制」という「今について述べる」文章です。そのとき主語は「透明のフィルム(サランラップのようなもの)」を使うことになっています。

 さて左の図は、主語が持参した透明フィルムで動詞を包んだところです。これで「主語」と「包まれた動詞」がそろったので「I go」という文章の一番大事な部分ができました。左側には主語(I)があり、その右側には透明フィルムで包まれた「go」という動詞が置かれています。
 包まれる前のむき出しの状態だった動詞のことを「原形」、そして動詞を包むために使われる紙(ここではフィルム)のことを「助動詞」と文法用語では呼びますが、今は「むき出し動詞」と「包まれた動詞」と呼んでもかまいません。

 最初、むき出しだった「go」が、透明フィルムに包まれました。包んでいるのが透明なので、中身が完全に透けて見えます。サランラップなどのように中身にぴたりと張り付いていると、それが何かで包まれているとは見えず、むき出し動詞は、まったく同じ形に見えているのです。しかし、確かにそれは透明フィルムで包まれており、だからこそ英文を作れるようになったのです。

 この包み紙は、いつでもはがして中身と分離することができます。はがした透明フィルムは、「do」というフィルムの形が見えるようになります。お分かりですか?つまり、「go(むき出し動詞)」を「do」という透明フィルムで包んでいたのです。
 ところで「主語はその場に応じた包み紙を持参する」と言いましたよね?
 もしも主語が「She(彼女)」だったらどんな包み紙を持参するのでしょうか?主語が「He, She, Itなど」の三人称単数形と呼ばれるものの場合、そして現在時制の英文を作ろうとするときは、「色セロファン」を持参するということになっています。

 左の図は、透明フィルムの代わりに色セロファンを使って「go」を包んだところです。
 包み紙には「赤い色」がついてますが、セロファンですから中身も透けて見えます。でも、見えている中身は、セロファンの赤い色がついてちょっとだけ見え方が違っています。つまり「赤い色」とは「-s/-es」のことであり、「go」に「色(-es)」がついて見えるため「goes」という形になっているのです。
 言い換えると「goes」とは「go(むき出し動詞)」に「-(e)s(赤)」という色がついたセロファンで包んだ状態なのです。
 
 この色セロファンも自由にはがして、よこに並べることができます。はがしたセロファンを単独で見ると「does」という姿になります。(透明フィルムがdoでしたから、それに色がついてdoesなんですね)


 さて、普通に英文を作るときは、必ず「包まれた動詞」を使うのが英語の習慣ですが、特に何か強く訴えたいことがあるときは、わざと包み紙と中身を分けて置くことができます。わざわざ包み紙をはがし、見えるようにして横に並べるのです。必ず先に「包み紙」を置き、それからそのあとに「むき出し動詞」を置きます。

 左の図は、「主語+包み紙+むき出し動詞」が並べて置かれているところです。
 このようにわざと包み紙とむき出し動詞を分離して並べる表現のことを「強調構文」といい、「本当に~する」などという強い意味を表すのに使われます。

 ですから、「I go」という基本の形は「I do go」となり、「She goes」は、「She does go」と変形できるわけです。

(1) I go (基本形)=「I(主語)+go(現在形:go(原形をdoで包んだもの))」
→→I do go(強調形)=(doとgoを分離して横にならべたもの)

(2)She goes(基本形)=「She(主語)+goes(現在形:go(原形をdoesで包んだもの))」
→→She does go(強調形)=(doesとgoを分離して横にならべたもの)


否定文と疑問文

 さてここで、「否定文」の作り方について考えてみましょう。

 実は「否定文」というのも「普通の文ではない特殊な文」であり、これもまた強調構文の一種なのです。
 ということは、普通の文から一旦、「包み紙+むき出し動詞」という分離した形にする必要があります。それから包み紙に直接×印を記入することで否定文が作られます。
 左の図は、分離された包み紙に「×」が書かれていますね。この×印を英単語では「not」と言います
do×印をつければ「don't」になり、does×印をつければ「doesn't」になるということです。

 このように「包み紙」と「中身」という関係が理解できれば「She goes」の否定が「She doesn't go」であり「She doesn't goes」とはならないことがお分かりいただけるでしょう。1つのむき出し動詞を包むのには1枚の包み紙が使われおり、後者の間違った英文では「包み紙の枚数が合わない」ことになってしまいますからね。

 否定文の作り方が理解できると、自動的に「疑問文」の作り方も納得できるようになります。

 疑問文というのもやはり「普通の文ではない特殊な文」ですから、これもまた強調構文の一種なのです。
 そして「疑問(=相手にものを尋ねる)」という気持ちをちょっと変わった語順で伝えます。普通なら「最初に主語が来る」のが英語の習慣であり、聞く側もそれを期待して耳を傾けているのですが、意表をついていきなり「Do」や「Does」が聞こえてくると「おや?普通に物を言う文章じゃないぞ」とまず感じます。その戸惑いが「ああ、私にYesかNoかで答えて欲しいのか」として理解され、疑問文になるのです。
 ですから疑問文は、強調構文を経て、さらに「主語と包み紙(助動詞do/does)の語順を入れ替える」ことで作られます

 ここでも使われている包み紙の枚数は動詞1個につき1枚ですから、包み紙をはがされたむき出し動詞には、当然、もう「-(e)s」はつきません。


 さて、そろそろ皆さんも「包み紙」と「むき出し動詞」というたとえに慣れて来たことと思いますので、そろそろちゃんとした文法用語である「助動詞」と「原形」という言葉も使うようにしていきましょう。

念のため、もう一度確認します:

  1. 英文を作るときは「主語」が「原形動詞(むき出し動詞)」を「助動詞(包み紙)」で包んで「述語」にする。
  2. 原形動詞が「do/does」で包まれているとき、それを「現在形(包まれた動詞)」という。
  3. 現在形はいつでも「助動詞原形」に分離することができ、そうして強調構文が作られる。
  4. 否定文疑問文は強調構文の一種であり、現在形を「助動詞+原形」に一旦分離してから作る。


過去形の作り方の考え方

 さて、これまでの理解をさらに進めると、過去形未来形の作り方も理解できます。
 
 過去形には2種類あり、「規則動詞」と「不規則動詞」と呼ばれるグループに分かれます。
 規則動詞というのは、原形動詞を「-ed」で終わる形にすることによって、ほぼ機械的に過去形を作れるタイプの動詞のことで「play→played」のような変化をします。つまりこれは「色セロファン」で「むき出し動詞」を包むのと同じ要領であり、違うのはセロファンの色ということですね。
 それともう1つ「不規則動詞」というものがあり、これは「go」が「went」になるように、原形動詞と過去形とで、まったく違う姿に変化してしまう動詞のことです。

 これを理解するのも簡単なことで、「包み紙として中身の透けて見えない厚紙(did)が使われる」とイメージしてください。

 左の図は「goという原形をdidという厚紙で包んだ」様子を表したものです。didは、中身が透けて見えない厚紙なので、それでgoを包むと、もとの姿とはまったく違う「went」という形になって見えますが、それはあくまで「didによって包まれたgo」の姿なのです。
 だから強調構文を作るために「包み紙と中身を分離」すると「did+go」になるのです。

 それが分かれば「I went.」や「She went.」をもとに否定文や疑問文を作ることも簡単ですね。

普通の文:I went. wentは「did+go
強調構文:I did go. ← 包み紙と中身を分離
否定文:I didn't go. ← 包み紙に×印を書き込んだ
疑問文:Did I go ? ← 包み紙と主語を入れ替えた

 不規則動詞の過去形は、簡単なことに「主語が何であっても使う包み紙は常にdidのみ」です。だから She wentをもとに否定文と疑問文を作る要領は上と全く同じになります。

普通の文:She went. wentは「did+go
強調構文:She did go. ← 包み紙と中身を分離
否定文:She didn't go. ← 包み紙に×印を書き込んだ
疑問文:Did she go ? ← 包み紙と主語を入れ替えた


未来形の作り方の考え方

 さあ、ここまで理解できたら、もうあと一息。動詞の未来形までやってしまいましょう。実は未来形の作り方が一番簡単なのです。なにしろ主語がなんであれ使う包み紙(助動詞)は1種類だけですし、おまけに包んだあとでどう変化するかも考えなくていいのです。

 実を言いますと、英語に「未来形」という形はありません。意外に思うかも知れませんが、その理由はここから先を読めば分かります。

 今まで「現在形」と「過去形」をやってきました。それぞれ「むき出し動詞(原形)」を「包み紙(助動詞)」で包みことによって、なんらかの形になりました。(見かけは原形と同じ姿である場合も含む)
 しかし未来を表すために使うのは包み紙ではなく、なんと固いなのです!板だからむき出し動詞を包んでやることができません。じゃあ、どうするかというと、仕方ないので、最初から分離して並べ、強調構文の形にしてしまいます。

 すなわち「包まれた動詞」という形が存在せず、だから「英語の動詞に未来形はない」と申し上げたのです。未来形はなくとも、「未来時制」は存在しますから、そこは誤解なく。

普通の文:I will go. willgoを包めない
強調構文:I will go. ← 「未来」について述べること自体が一種の強調とも言える
否定文:I won't go. ← 板(will)に×印を書き込むとwon'tというつづりになる
疑問文Will I go ? ← 板と主語を入れ替えた


 さて、いかがでしたでしょうか?抽象的で目に見えない文法の世界を具体的でイメージしやすいように「包み紙」と「むき出し動詞」というたとえとして解説しました。これまで「He doesn't goes」とか「Does she goes?」あるいは「Did he went?」のような間違いをしたことのある方は、「どれがむき出し動詞で、どこに今包み紙があるのか?」を具体的に想像してみることで、何が正しく何が間違った文章なのかを理解することができます。

 また現役で英語を教えていらっしゃる方は、実際に小道具を用意して、これまでの解説を「実演」して説明することができます。実際にサランラップのような透明フィルム、何色かの色セロファン、あと新聞紙のように中身が透けて見えない紙などを用意し、それで黒板消しのようなものを包んだり、包み紙と黒板消しを分けて並べて置いて見せたりすることで、助動詞=包み紙、原形=むき出しの黒板消し、という具体的なイメージによって、この問題を理解させることができます。未来時制のwillは、出席簿の固い表紙などが使えるでしょう。主語には生徒の誰かに前に出てきてもらい、その役を務めてもらってもよいでしょう。否定文の「×印」はマジックペンで実際に書き込みます。
 そして「生徒(主語)+包み紙(助動詞)+むき出し黒板消し」を横に並べ、その真後ろの黒板に文法用語として「主語、助動詞、原形動詞」と板書すれば、何を何にたとえているのかが分かりやすくなります。

 「抽象的な概念」を「具体的なもの」によって理解させる、という1つのアプローチの例としてご参考になれば幸いです。

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