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283. 準動詞(Verbid)

 「準動詞」という品詞が存在するわけではありません。これは8品詞の中の動詞が「不定詞、分詞、動名詞」という形になったものの総称です。不定詞には「原形不定詞」と「to不定詞」があり、分詞には「現在分詞」と「過去分詞」があります。動名詞だけは下位分類がありません。

準動詞」という名称は「動詞に準ずる」と書きますが、文法的な意味としては「品詞としては動詞でありながら、それ以外の品詞の役割を同時に兼ねるもの」ということです。

 基本文型でV(述語動詞)になれるのは動詞だけですが、述語動詞として用いられるとき、動詞は主語の人称や数により、また時制・相によって形を変えました。しかし準動詞はいずれもそのような語形変化をしません。というより、動詞が語形変化をするのは「述語」として主語や時制がどういうものかを形に示しているからであり、述語として用いられているのでなければそういう語形変化を起こす理由がありません。

 「不定詞」というと「to do」の形のことだけを指していると思い込んでいる人がかなりいます(またそういう乱暴な説明をする教員もいる)が、実はそうではなく、動詞が原形のままで文中に用いられているものすべてを不定詞というのです。そしてその原形がそのまま使われるときと、前置詞 to と結びついた形で使われるときがあるというのが正しい理解です。

 「分詞」の下位分類名称である「現在分詞」とか「過去分詞」の「現在、過去」には時制的な意味はまったくありません。「分詞1」、「分詞2」と呼んでも別に構わないほどであり、それぞれの語形に対する単なる名称に過ぎないと理解してください。

 「現在分詞」と「動名詞」はどちらも「-ing」で終わる同じ形を取りますが、古くは別々の語形だったものが長い歴史の中で混同され同じ語形になってしまった結果です。ですから本来文法的な機能はまったく別物でした。ただ現代英語では見かけ上なんの区別もなくなってしまったため、この両者をまとめて「-ing形(-ing form)」と呼んでしまうこともよくあります。



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284. 不定詞

 古い英語では動詞を名詞化して文中に用いたのが不定詞でした。その際名詞として格変化もあり、その中の1つとして方向を表す前置詞 to と結びつくものもありました。しかし長い歴史の中で用法が混乱し、語形変化も失われてしまった結果、一時期は to不定詞原形不定詞さえごっちゃに使われていたことさえあります。その頃には toが前置詞として本来持っていた「~へ、~に向かって」という方向を示す意味が意識されなくなり、不定詞を示す単なるシンボルのように感じられていました。そのため、「to do」で名詞という扱いがなされ、「for to do」などと他の前置詞がさらに前に置かれる使い方もひところありましたが、それも完全に廃れてしまいました。

 現代英語では、原形不定詞が用いられる場合はかなり限られており、多くは to不定詞として現れます。そのため不定詞といえば「to do」の形のことだと思い込まれていることもあるわけです。

 しかしあくまで不定詞とは「動詞が原形のまま文中に用いられる」場合を指すものであり、「to do」の形だけを不定詞だと思わないようにしてください。

 「不定詞」という言葉があるからにはその反対語である「定詞」というものが当然あるわけです。ほとんど「定詞」という用語が用いられることはありませんが、「主語の人称や数、時制・相の影響によって定まった形を取る動詞」のことを定詞といい、それに対して、そういう影響による語形変化をしない言葉という意味で「不定詞」といいます。つまり不定詞の「不定」とは「定まっていない」のではなく「何かによって定められない=形がいつでも変わらない」とうい意味なのです。

 原形不定詞は用途がかなり限られますので、先に「to不定詞」についての基本を学ぶことにしましょう。



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285. to不定詞の基本用法

 文の形式として基本5文型がありましたが、すべてがこの5種類にかならず収まるわけではないということも学びました。to不定詞にも3種の基本用法がありますが、だからといって、あらゆるto不定詞がもれなく、この3つの用法に当てはまるわけではありません。to不定詞に3種の基本用法があるというのは事実ですが、to不定詞を見るたび必ずどの用法かを判断しなければならないのではありません。このあたりは基本を押さえつつも柔軟に構えていただく必要があります。

 to不定詞の基本用法としては「名詞、形容詞、副詞」の3つがあります。

1、名詞的用法

I want apples.
I want to eat apples.

 どちらも完全他動詞の want が使われており、その目的語として上は「apples」という名詞が、下は「to eat apples」という名詞句があります。eat それ自体は動詞ですからそのあとに applesという目的語を取れるわけですが、「to eat」としては「want」の目的語になっています。直訳的には「りんごを食べることを欲する」という言い方であり、日本語の「~したい」という意味を英語ではこう表します。
 目的語には名詞相当語句しかなれませんので、「to eat apples」は名詞の働きをしています。このような使われ方をしているとき、このto不定詞は「名詞的用法」だといいます。

To see is to believe. (百聞は一見にしかず)

 直訳すれば「見ること信じることだ」です。後で出てくる動名詞によって「Seeing is believing」という言い方もありますが、ここではto不定詞を使った表現を見てみましょう。この英文で「to see」は主語になっており、「to believe」は主格補語です。つまり「John is a student.」と同じ形式であり、John の働きを「to see」が、a student の働きを「to believe」がそれぞれしています。

 名詞的用法は「~すること」という日本語で解釈できる特徴がありますので理解は容易かと思います。動詞としての機能を持ったまま、名詞扱いもできるわけですから、名詞が持つ機能である「主語になる」、「目的語になる」、「補語になる」という役割を to不定詞名詞的用法も果たすことができます。

 ただし「to do」という2語形式で1つの名詞になることから、前置詞の目的語としては(わずかな例外的パターンを除いて)用いられません。古い英語では一時期だけ許された「for to do」は現代英語ではまったく用いられません。

例外:There was nothing I could do but to watch silently.
ただ静かに見守ること以外は何もできなかった。

 to不定詞が主語になった場合、時として主語が長く、述語以下が短いバランスの悪い文章になってしまうことがあります。それでも文としては一応正しいものなのですが、仮主語として内容保留の人称代名詞「it」を先行させておき、あとでその内容としての「to不定詞」以下を出すという形式がよく用いられます。

To play baseball is fun.
野球をするのは楽しい。

この程度ならそれほどバランスが極端に悪いとも感じられませんが、さらに主語が拡大するとどうでしょう。

To play baseball with my friends on a sunny day like today is fun.
今日みたいに天気のいい日に友人たちと野球するのは楽しいことだ。

 これでも間違った英文ではないのですが、仮主語を使うとずっと分かりやすくなります。

It is fun to play baseball with my friends on a sunny day like today.

 このように「具体的な意味はあとから言うからね」と「It」で文を始めて述部まで先に片付けてしまったあとで、ゆっくりと「it」の具体的な内容を言えば文全体としてのバランスもよくなりますし、聞いている側も先に結論を理解して、あとからじっくり主語の内容に耳を傾けられます。話す側としても「It is fun」という結論を先に口にしつつ、その間に主語の内容を考える時間的な余裕が持てるという面もあります。

 内容保留の「it」は主語としてだけでなく「SVOC」のOにも使われます。つまり仮目的語としても使われます。こちらの場合、to do」のままSVOCのOになることはなく必ず仮目的語として it 1語を使ったのち、あとで to不定詞によってその具体的内容を明かします

I think it impossible to finish my homework within today.
今日中に宿題を終わらせるなんて無理だと思う。

 この英文で「it」の位置に to以下を置くことはできません。形が悪い上に意味がつかみにくいからです。

 なおto不定詞には名詞的用法がありますが、だからといって常に他動詞の目的語になれるとは限りません。これは用いられる他動詞側の性質によるもので、目的語としてto不定詞を取るものとそうでないものがあります。

 他動詞によっては目的語として動名詞(-ing形)だけを取るものがあり、それらのあとに「to do」が置かれていてもそれは名詞用法ではないので注意が必要です。

He stopped talking. 彼は話すのをやめた。(talking動名詞が stop の目的語)
He stopped to talk. 彼は話をするために立ち止まった。(SV+副詞句)

 これについては動名詞の項目の中で改めて述べます。

 またto不定詞と動名詞のどちらも目的語としても、意味が異なる場合があります。

He forgot to post the letter. 彼はその手紙を投函するのを忘れた。(=投函しなかった)
He forgot posting the letter. 彼はその手紙を投函したことを忘れていた。(=投函した)

I tried to jump into the sea. 私は海に飛び込もうとした。(しかしできなかった)
I tried jumping into the sea. 私は海に飛び込んでみた。(実際にやった)

 このような違いは「to不定詞」が本来持っている「方向の前置詞+動詞の名詞化」の意味が今でも言葉の背景として生きていることをうかがわせるものです。

 またto不定詞動名詞をほぼ同様に目的語にできる他動詞の場合でも基本的なニュアンスは異なります。

I like to play baseball.
I like playing baseball.

 どちらも「野球をすることが好き」と考えてよいのですが、「like to do」の方は「want to do」のやや控えめな言い方でもあり、「今野球をしていない状態にある人」が「(好きだから)やりたい」と感じている言葉です。「like doing」の方は「今すでに野球をしている最中の人」が「このまま野球をし続けたい」という意味から「野球って楽しいよね」と述べている意味があり、そこから今実際に野球をしていなくても「普段している」という経験を踏まえて「できることなら今この瞬間にもしている最中でありたい」という心理をうかがわせます。

 このニュアンス差もまた「to不定詞」が本来持つ「することに向かって」の意味が心理的背景になっているといえます。

2、形容詞的用法

 これは形容詞の中の名詞を修飾する使い方です。一般の形容詞は名詞の前に置くことが多くありますが、to不定詞は最低2語から成り立っており、動詞としてさらにあとが続けばもっと語数の多い句を作ることになりますので、必ず修飾する名詞の後に置きます。

 文法書によってはto不定詞の形容詞用法にも、通常の形容詞同様に「限定用法(名詞を修飾する使い方)」と「叙述用法(文の要素として補語になる使い方)」を解説しているものがありますが、後者についてto不定詞を形容詞と見なすべきかについては意見が分かれている上、それを議論する意味自体があまりないと感じますので、この解説では「その他の使い方」にまわすことにして to不定詞の形容詞用法としては「限定用法」だけにしぼることにします。

Do you have something to eat/drink?
何か食べる/飲むものはありますか?

Kaguyahime is the first woman to go to the moon.
かぐや姫は最初に月に行った女性である。

 かぐや姫は月に「行った」というよりもともと「月の人だった」という話はおいておきましょう(笑)。このように直前の名詞を後から修飾する働きがto不定詞の形容詞的用法です。

 もう少し掘り下げてこの用法を見てみると、修飾される名詞と修飾しているto不定詞の動詞部分との関係にも色々あることがわかります。

 上のかぐや姫の例文では「the first woman to go」となっており、woman go は意味上の主語述語の関係(「女性」が「行った」)です。

 一方その前の「something to eat/drink」では somethingeat/drink 目的語の関係です。
 特に名詞がto不定詞の目的語になっている場合は注意が必要で、to不定詞の動詞部分が他動詞ならば素直に名詞を目的語とできますが、自動詞の場合は目的語を取れませんのでto不定詞部分のあとにさらに前置詞が置かれます。

He has no house to live in. 彼には住むがない。

 これは「He lives in the house.」を元にして「live in」という「自動詞+前置詞」を他動詞句と扱ったものです。自動詞であっても前置詞を伴って他動詞句となっていれば名詞を目的語とできます。またどのような前置詞を伴うかで細かい意味の違いを表現することもできます。

Do you have something to write on?
(紙など)何か書く物がありますか?

Do you have something to write with?
(ペンなど)何か書く物がありますか?

Do you think of something to write about?
何かそれについて書く話題を思いつきますか?

 この write は「文を書く」という意味の自動詞です。write には他動詞の用法もありますが、ただ
Do you have something to write?
では「何か書く文字など」の意味になるため、この表現が自然となる前後関係は極めて限られてしまいます。(絶対使われないとは言いませんが、いきなりこんなことを言われても意味不明に感じます。)

 to不定詞が自動詞であっても意味が明白である場合、前置詞を伴わずに使われることもあります。

Tokyo is not a good place to live. 東京は住むにはよい場所ではない。
I have no place to go. 私には行くべきところがない。

 live, go 自動詞なので placeを修飾するには「live in」や「go to」とするのが本来です(もちろん、そうして間違いではない)が、placeという名詞はあととのつながりにおいて自然と「その場所で、その場所へ」という関連を理解させるため、このように自動詞のto不定詞が修飾していても不自然には感じさせません。

 修飾される名詞がto不定詞の動詞の目的語ではなく、さらにあとに続く部分まで含めて前置詞の目的語になっていることも珍しくありません。

There was no window to see the scenery outside through.
=There was no window through which to see the scenery outside.

部屋には(それを通して)外の景色を見られる窓がなかった。

3、副詞的用法

 to不定詞が「動詞、形容詞、副詞」を修飾する形で使われていれば副詞的用法となります。
 動詞を修飾する使い方の最も基本となるのは「~するために」という目的を表す意味でしょう。

He went to the station to meet his friend.
友人を出迎えるために彼は駅に行った

 to不定詞の意味をより明確にするため、「in order to(~することを目的として)」や「so as to(結果的に~であるようにと)」という形で現れることもあります。単にto不定詞だけのときより意味に紛れがなくなりますが、その分堅い表現になってきます。

He studied hard in order to pass the exam.
試験に合格するために熱心に勉強した。

He took a taxi so as to be in time for the appointiment.
約束に間に合うようにタクシーに乗った。

 to不定詞は直前に not を置くことで否定にできます。

I will go to bed early tonight (in order) not to oversleep tomorrow.
明日寝坊しないために今夜は早く寝る。

He spoke carefully (so as) not to hurt her feelings.
彼女の感情を傷つけてしまわないようにと彼は慎重に話した。

 語順として先に修飾される相手の語が現れ、あとからto不定詞が追う形になるわけですので、被修飾語とto不定詞の間にどういう意味のつながりがあるかは前後関係から自然に判断します。ですから次のような場合「目的」と考えると不自然だとわかるでしょう。

He lived to be ninety.

 目的の用法で解釈してしまうと「90歳になるために生きた」であり、彼が生きた目的が90歳になることだったと聞こえてしまいますが、語順を追って自然に読み取れば

He lived 彼は生きた
to be ninety. その結果として90歳になった

 であることは容易に理解されます。文法的に「目的を表す不定詞」などという用語を振りかざすまでもなく、語順に従って情報を吸収し、前と後の情報の「自然なつながり方」を考えさえすればよいのです。
目的を表していることをより明確にするため「in order to」や「so as to」という単語が追加された形がありましたが、「only to」の形になっているときは「結果として結局~しただけだった」の意味であることが多くあります。

He studied very hard only to fail in the exam.
非常に熱心に勉強したのだが、結局試験には落ちてしまった

 これも決して機械的に「only to があれば『結果の不定詞』だ」と決め付けないようにしましょう。

I am here only to talk to you.
君と話がしたいというだけで私はここに来たんだ。
=君と話をするためだけに(目的)

 もともと不定詞の副詞的用法に「目的」とか「結果」という区別はありません。上の例文にしても直訳的には「ただ試験に落ちるためだけに熱心に勉強したということになってしまった」と言えなくもないのです。日本語表現でも意味的には「結果」を表すのに「~するために」と言いまわすことがあります。特に現実を否定的に嘆く言い方にそれが見られます。

例:事故を起こすために車を買ったわけじゃない。
(せっかく車を買ったのに事故を起こしただけの結果になったことを嘆く場合)

 ですから、この不定詞は目的、こっちは結果と狭く縛られない方がよいと思います。「語順に従って情報を汲み取っていき、前後関係から自然な意味のつながりを考える」という原則さえ守っていればよいのです。

I am glad to meet you. 初めまして。(あなたに会えて嬉しく思います)

 これは初対面で使われる挨拶ですが、これを「あなたに会うために」とか「結果的にあなたに会えた」と解釈する方が無理がありますよね。「嬉しい<その理由はあなたに会えたから」と解釈しない方が不思議なくらいです。

 ちなみに初対面ではなく、「また会えて嬉しい」場合は、

I am glad to see you (again).

 と「meet」が「see」になります。これは人と人が対面したときのことですから

I was very happy to see Mt. Fuji for the first time in my life.
生まれて初めて富士山を見られてとても嬉しかった。

 のような表現で meet を使うのはおかしいですよね。人間に会うわけじゃありませんから。

 to不定詞を「目的」とか「結果」などと1つの用法に決め付けて理解する必要は必ずしもありません。「come/go to do」の形を口語では「come/go and do」と言うことがよくありますが、目的の不定詞としてなら「~するために来る/行く」ですが、結果として解釈すれば「来て/行って~する」であり意味的には差がありません。(さらに口語になると and まで脱落して「come/go do」と並ぶ表現もあります。)

Go and get some food. 何か食べ物を取ってこい。
Come and help me right now. いますぐ助けに来てくれ。

 これまで「目的」、「結果」、「理由」という意味のto不定詞が出てきましたが他にはどんな場合があるでしょうか。

He must be insane to say such a thing.
そんなことを言うなんて彼は正気ではないに違いない。

How kind you are to come all the way to help me!
私を助けるためはるばる来てくれるなんて、なんとあなたは親切なのだ。

 これらの例では前半部分の「判断」についての「根拠」をto不定詞が表していると言えます。

To hear him speak English, you will take him for an American.
彼が英語を話すのを聞いたら、君は彼をアメリカ人だと思うだろうよ。

 特に文頭で用いられることが多いのですが、こういうto不定詞は、「If you hear him speak English」の意味ですから「条件」を表していると言ってよいでしょう。

 他にも用例はありますが、日常的に先ず使われない文語表現は割愛することにします。

 to不定詞の副詞的用法は動詞だけでなく、形容詞や副詞を修飾することももちろんあります。

I am always ready to help you.
直訳:私はあなたを助ける準備が常にできている。
意訳:困ったことがあったら、いつでも呼んでくれ。

This bag is too heavy to carry alone.
このバッグは一人で運ぶには重過ぎる。

He walked too fast for me to catch up with.
私が彼に追いつくにはあまりに速く彼は歩いた。
=彼があまりに速く歩いたので私は彼に追いつけなかった。
=He walked so fast that I could not catch up with him.




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