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042.有声音と無声音

 ここからは子音の解説に入る。

 英語の子音を理解し、正しく練習するためには、まず「有声音」と「無声音」について知っておく必要がある。その名称を見ると「声の有る音」と「声の無い音」と読める。「」とは「声帯の振動」のこと。たとえば喉に手をあてながら「アー」と言ってみると、手に喉の振動を感じるが、これは喉の中で声帯が震えているから。次に声を出さないようにして息だけを出して「はー」と言ってみると、今度は喉にあてた手に振動を感じない。

 このように声帯の振動を伴って発音される音を「有声音」、声帯の振動を伴わずに発音される音を「無声音」という

 英語の子音の多くは、まったく同じ口の形で「有声音」と「無声音」がペアになっている。日本語には「濁音」と呼ばれるものがあり、たとえば「ぱ(pa)」に対する「ば(ba)」の子音部分「p/b」は無声音/有声音の対応である。しかし日本語の濁音というのは音声学的名称ではなく、文字表記として「(濁点)〃」をカナの右上に添えて書くものを濁音と呼んでいるに過ぎず、すべてについて「無声音・有声音」の対応とはなっていない。

 母音はすべて有声音であるが、ひそひそ話やささやき声では、すべての音が無声音になる。
 子音について言うと、「無声音」と「有声音」のペアを持つ音と、有声音しかない音もある。

 有声音と無声音についての理解は特別難しいものではないだろう。声帯は目で見て確認することはできない(鏡でも見ることができないほど喉の奥にある)が、声帯の振動は、喉に触れた手に感触として確かめることができる。少なくとも自分が出している音が有声音なのか無声音なのかを正しく理解できていればよいだろう。

 なお有声音と無声音の区別は、文法にも関係してくる。詳しくは当該の項目の中で述べるが、たとえば pen の複数形 pens の「 -s 」を [ z ] と有声音で発音するのに対して「 book 」の複数形 books の語尾の -s[ s ] と無声音となる。

これは「そう決められたルール」なのではなく、 pen の語尾「 n 」の音が有声音であり、その声帯の振動を保ったまま s が発音されるため、自然と有声音が保たれ、book の語尾 k は無声音だからそのまま無声音で s が発音されるというだけのこと。声帯の振動の有無は、「そのままの状態を継続する」ことが容易であるからだ。

 それでは次から具体的に「無声音・有声音」をペアにして、子音の発音解説・練習に入っていこう。



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043. [ p ] [ b ]

 上下の唇を閉じ、それを「息で破れば無声音 p」になり、「声で破れば有声音 b 」となる。[ p/b ] は閉じた唇を息または声により開いた一瞬に発音され、このような音を破裂音と呼ぶ。破裂は一瞬、一回しか起きないため、継続的な音にはならない

 別にどうっていうことのない簡単な発音に思えるかも知れないが、英語の [ p ]音節の最初に現れるものは意識的に強く破裂を起こし、はっきりと発音させないと英語話者の耳には [ b ] に聞こえてしまうことがよくある。そのような強い破裂を伴う [ p ] 音を h の文字を小さく右肩にそえた [ ph ] という記号で表現することもあるが、本サイトでは一般の辞書表記にあわせ、すべて同じ [ p ] の記号で統一することにした。

(音節のはじめに [ p ] がある例)----意識的に強い息ではっきりと破裂を起こさせること
pet ペット [ pét ]
pit 落とし穴 [ pít ]
put 置く [ pút ]
pick 突く [ pík ]
pocket ポケット [ pɑ́k-it / pɔ́k-it ]
push 押す [ púʃ ]

<無破裂の p

 またp 音が音節末尾に来る場合は、まったく破裂が起こらず、ただ唇を閉じて終わるのが基本となる。そこで息による破裂を起こしても(その後に余計な母音さえ発音しなければ)ちゃんと通じるが、英語ネイティブの発音の多くでは、音節末尾の p では破裂がほとんど(あるいはまったく)起きないのが普通であり、自分でもその練習をしておかないと聞き取りの力がつかない。上記の例について、それぞれonline辞書の発音実例を丁寧に観察すること。それから「自分で出せる音は聞き取れる」という原則にのっとり、ここでは無破裂の p もちゃんと練習しておこう。

 無破裂の p は、日本人の耳にとって「何の音も聞こえてこない」ように感じるかも知れないが、直前の母音の音が急にストップする感じがそこにある。
 実は音節末尾の t(あとの項目で解説する)も同じ現象を起こし、なれない人には「hit」と「hip」が聞き取りで区別できなかったりする。しかし自ら発音の練習をつむに従い、「舌先で音を止める t の音」と「両唇で音を止める p の音」が聞き分けられるようになってくる。まずはみっちりと自らの発音練習をつみ、自分自身の発音に対して注意深く耳を傾けること。

 なお無破裂の [ p ] を  [ p- ] という [ p ] の右肩にマイナス符号(-)をつけたもので表すこともあるが、本サイトでは [ p ] の記号で統一する。

(音節末尾に [ p ] がある例)-----上下の唇を閉じた状態で終了し破裂を起こさない
keep 保つ [ kíːp ]
top 頂上 [ tɑ́p / tɔ́p ]
soup スープ [ súːp ]
soap 石鹸 [ sóup ]
shop [ ʃɑ́p / ʃɔ́p ]
sheep [ ʃíːp ]

[ b ] の練習----[ b ] は音節のどこにあっても破裂を起こす(が音節末尾での破裂はやや弱い)
bed ベッド [ béd ]
bell [ bél ]
boat ボート [ bóut ]
rob 強奪する [ rɑ́b / rɔ́b ]
sob すすり泣く [ sɑ́b / sɔ́b ]
knob ドアの握り [ nɑ́b / nɔ́b ]

※母音の発音記号について記憶が曖昧だと感じたら、前に戻って確認すること。



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044. [ t ] [ d ]

 日本語の「タ行」と「ダ行」の子音に相当する発音。ただし音節のはじめに現れる [ t ] 音は先の [ p ] と同様、破裂の際、日本語よりも強い息を用いる。それを [ th ] という記号で表現することもある。このときの息の破裂が弱いと、これも [ d ] 音に聞こえてしまうことがあるので注意。

 英語は日本語と別言語であり、厳密には一切共通の音はない。中には多少近い音や似通った音、日本語に用いている音で代用しても大きな支障のない(多少日本語訛に聞こえる程度)音もあるにはあるが、できるだけ「英語本来の音」を出すように練習したい。だから日本語のタ行子音でそのまま代用できる場合が多い「t 音」であっても、英語の t として気持ちを白紙にして取り組んでいただきたい。

 決してアメリカ人のように発音できるようになろうなどと考える必要はない。もっとも大切なこころがけは、日本語の発音をそのまま持ち込もうとせず、どこの国の人にも素直に通じる綺麗な発音による「国際英語(internatinal English)」の発音を習得することだ。英語としての t 音の発音練習をしっかりすることにより、破裂、無破裂の両方の場合について、その音が正しく聞き取れるようになる。

(音節の最初に t/d が来る例)
tip 先端 [ típ ]
ten 10 [ tén ]
top 頂上 [ tɑ́p / tɔ́p ]
trip [ tríp ]
do する [ duː ]
done doの過去分詞 [ dʌ́n ]
dive 飛び込む [ dáiv ]
drive 運転する [ dráiv ]
deal 分ける [ díːl ]

 [ p ] と同様に [ t ] も音節末尾に来るときの発音の要領が少し違う。音節末尾の [ t ] は破裂をほとんど(あるいはまったく)起こさず、その直前の発音を「舌先を上歯茎に押し付けてさえぎる」ことで急速にとめてしまうことで発音される。ここで[ t ] そのものの音を出そうとしたり聞き取ろうとしても、うまくできない気がすることだろう。それは当然であり、そこに「音はない」のである。ない音を出そうとしたり聞き取ろうとしても、それはできない。つまり音節末尾の「t 音」というのは、「直前の音を舌先と上歯茎で急速にとめてしまう」ときの「さえぎり方」であり、そのときの「聞こえ」具合である。

 たとえば「ヒ」という音をただそのまま発音した場合、「ヒッ」という風に(喉の奥で)急にとめた場合、さらに「hit」の要領で「 t 」によりとめた場合、「 hip 」の要領で「 p 」でとめた場合を比べてみよう。注意深く発音を比較してみると確かに微妙な聞こえ具合の違いがあることに気づくと思う。そのような区別に不慣れな日本人は、最初のうちうまく聞き分けができないものだが、その国の言語として生まれてからずっとその違いを聞き分けてきたものにとっては「なぜ同じに聞こえるのか理解できない」ほどはっきりと違う音なのである。日本人であっても、要は練習によってその感覚は身につく。すぐにはうまくいかないかも知れないが、「今まで出したことのない音」を習得しようというのだから、当然最初は苦労する。しかし誰にでもできる。舌、歯茎など人が共通して持っている口の部品さえそろっていれば、その使い方を新たに習得するだけのことなのである。英語の発音では、「日本人はそんな(口の部品の)使い方をしないよ」というようなことをする。(逆もまた同様。)

(音節末尾にt/dが来る例)
hot 熱い [ hɑ́t / hɔ́t ]
pot つぼ [ pɑ́t / pɔ́t ]
not ~でない [ nɑ́t / nɔ́t ]
cut 切る [ kʌ́t ]
meet 出会う [ míːt ]
mitt (指なし)手袋 [ mít ]
met meetの過去形 [ mét ]
bad 悪い [ bǽd ]
glad 嬉しい [ glǽd ]
bed ベッド [ béd ]
had haveの過去形、過去分詞形 [ hǽd ]
hold 握る [ hóuld ]

 発音の練習はリハビリテーションのようなものである。本当は誰にでもできる動作を白紙の状態から訓練して身につけるプロセスが必要だ。最初は頭で理解し、口のどの部品をどう使えばその音になるかを知り、それから実際にその音を繰り返し出して訓練を積むことで習得される。
 それが母国語なら物心つく前から、その音にたえず触れており、ほとんどの発音は意識せずとも自然に習得される。しかし一定の年齢に達してから外国語の発音を習う場合、やみくもにネイティブの発音に耳を傾けているだけでは、いつまでたっても正しい発音は身につかない。



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045. [ f ] [ v ]

 日本人が特に意識的に練習すべき音の1つ。
 それは日本語にはまったく含まれておらず近似的な音素も存在しない音であるからだ。
  [ f/v ] を発音するには、下唇の内側に上の歯をあてた状態で息または声を出す。
 日本人は [ f ] を「ふぁ」行で、[ v ] を「ば行」で代用しがちだが、「fu」と「hu」、「vu」と「bu」を交互に発音してみると、かなり違う音であることが認識できると思う。

 これはどこの国の人でもそうなのだが、自分の母語に含まれない音素を耳にすると、無意識にその音を母語に含まれるなんらかの音に置き換えて聞き取ってしまう。これは「自分の発音できる音は聞き取れる」の原則を裏返しにした現象であり、「自分の聞き取れない音は、自分の発音できる音に変換して聞き取っている」ということだ。

 日本語の発音で「下唇と上の歯を使って出す音」などない。そのような口の部品を使って音を出すことが日本語の常識には含まれておらず、 [ fu ] の発音を「(ろうそくを吹き消すように唇を丸くすぼめた音)」でつい代用してしまう。
 外来語として使われる「フィッシュ」や「フィーリング」の「フィ」の部分は、もともと日本語になかった発音の仕方を日本人にも比較的無理なく発音できる形として「外来語用」に追加されたものだ。しかし「外来語」というのは「外国語由来の日本語」であり、あくまでも日本語だということ。そのままの発音では英語としては通じないか、非常に訛の強い音に聞こえてしまう。

[ f/v ] を発音する要領として大切なのは、「下唇に上の歯をあてがった状態」を作り、息/声によって摩擦を起こす。この音は息が続く限り継続的に出すことができる。すでに練習した [ p/b ]破裂音であり、一瞬したその音を出せないが、 [ f/v ]摩擦音といって同じ音を長く発音することができる。そして意識的に「長めに音を出す」のがコツである。

 たとえば「fish」を発音しようとするとき、 [ f ] の摩擦音が自分の耳にはっきり入ってくるまで「f 音」を維持し、それから -ishを発音するといった感じ。[ v ] の場合も同様。f を瞬間的にしか発音しないと「p 音」に聞こえてしまうことがある。(なお、f 音と p 音は音声学的には親戚関係にあり、言語によっては f / p の入れ替えや代用が起きるものもあり、違う音ではあっても、この間違いは「通じる範囲内」であるともいえる)

 「f / v 」は音節の最初にあっても、最後にあっても発音の要領は変わらない。どちらの場合も、息または声による摩擦音である。
feel 感じる [ fíːl ]
fit 適合する [ fít ]
fish [ fíʃ ]
fight 戦う [ fáit ]
foul 汚れた [ fául ]
fine 立派な [ fáin ]
find 見つける [ fáind ]

vine (植物の)つる [ váin ]
vest チョッキ [ vést ]
vast 広大な [ vǽst ]
view 眺める [ vjuː ]
vivid 鮮やかな [ vív-id ]
visit 訪問する [ víz-it ]
violin バイオリン [ vài-ə-líːn ]

注意:

  1. visitvivid は2音節の語。それぞれ「vis-viv- 」までを一気に発音してから、「-it-id 」を発音する。音の切れ目は「vis-itviv-id であることに注意。それを「vi-sit, vi-vid 」と発音しないように注意する。英語の発音の上達を目指すのであれば、「最初はごくゆっくり、音節単位でしっかり発音する」練習を行うことが重要である。
  2. violin は、vi-o-lin という3音節の語。長い単語にはしばしば2箇所にアクセントがある。この violin も頭に第2音節、最後に第1音節がある。第1音節(右上がりのアクセント符号)が最も強く発音され、第2音節(左上がりのアクセント符号 )は、それよりもやや弱めに発音される。
     第2音節は、第1音節ほどではないが、やはり強く発音されていることに注意。なお、アメリカ式発音では第1音節と第2音節の強さの差がほとんどないことがある。
roof 屋根 [ rúːf ]
wife [ wáif ]
knife ナイフ [ náif ]
cough [ kɔ́ːf ]
rough 粗い [ rʌ́f ]
tough 丈夫な [ tʌ́f ]
enough 十分な [ i-nʌ́f ]

have 持っている [ hǽv ]
love 愛する [ lʌ́v ]
dove ハト [ dʌ́v ]
wives wife(妻)の複数形 [ wáivz ]
knives knife(ナイフ)の複数形 [ náivz ]
curve 曲がり、カーブ [ kə́ːrv ]
carve 彫刻する [ kɑ́ːrv ]

注意:

  1. wife の複数形 wivesknife の複数形 knivesの語尾「-s」の発音にも注意。直前の [ v ] が有声音なので、そのまま有声音が継続し、[ z ] で発音されている。
  2. curvecarve の母音の発音の違いにも注意。これらなどカタカナで書き表してしまうと、どちらも「カーブ」となり区別がつかないが英語ではまったく違う発音である。英語の発音をカナで表現できないことがよくわかる。



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046. [ k ] [ g ]

 この音は幸いに日本語にも含まれる音素なので簡単だ。「k」は「カ行」の子音であり、「g」は「ガ行」の子音。
 あえて説明するとすれば、「後舌部が隆起して軟口蓋と接触し、一時的に呼気の通過を妨げる。それを息で破れば [ k ]、声で破れば [ g ] の音となる」。

 音素としての発音要領自体は、簡単であるが、特に単語の末尾に来るとき、余計な母音を発音して日本語の「ク(ku)」や「グ(gu)」になってしまわないよう十分注意しよう

cool 涼しい [ kúːl ]
kite 凧(たこ) [ káit ]
kick 蹴る [ kík ]
cute かわいい [ kjúːt ]
get 得る [ gét ]
good よい [ gúd ]
ground 地面 [ gráund ]
hug 抱きしめる [ hʌ́g ]
leg 脚、すね [ lég ]

ground1音節語であることに注意。カタカナで書いてしまうと「グラウンド(gu-ra-u-n-do)」と、なんと5音節にもなってしまい、これでは通じるはずもない。英語では [ au ] という二重母音の前後にそれぞれ [ gr ][ nd ] と2つずつの子音がついている。複数の子音を(間に母音を挟まずに)連続的に発音できるかどうかが英語発音上達のポイントでもある。



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047. [ s ] [ z ]

 日本語の「サ行/ザ行」は変則的な音の配列になっており、「sa, shi, su, se, so」、「za, ji, zdu, ze, zo」と、本来その行の音ではない発音が入り混じっている。

 [ s ] は「サ、ス、セ、ソ」の子音(「シ」の子音ではない)。それらを発音してみると舌の両側が歯の内側に触れ、先端はどこにも触れていないことがわかる。「シ」だけは本来「シャ行」の子音であり「シャ、シ、シュ、シェ、ショ」の中に含まれる。
 現代の日本人にとっては、もう she, see の区別は難しいものではないだろう。she は日本語にもともと含まれている音素だけなので特に難しいものではないが、see は外来語として「シィ(あるいは「スィ」)」と表記されたりもするが、やはりカタカナでこの英語の音は表せないと考えるべきだ。

 [ z ][ s ] を有声化した音であり、口の構え自体はまったく同じ。「z +母音」で特に注意してほしいのは「zu」。  「z音」は舌の先端がどこにも触れない音だが、日本語の「ズ」はしばしば「ダ行ウ段」の音が使われているからだ。つまり「ダヂデド」の「ヅ(dzu)」とは別の音であるということ。(「ヅ」音は [ d ] 音を含んでおり、舌の先端が上歯茎に触れる)

 例えば簡単そうに思える zoo(動物園)という単語はカタカナ音の「ズー」ではない。実は日本語でも古来は「ず [ zu ]」と「づ [ dzu ]」の発音上の区別があった。それが現代語では同じ音に融合してしまっている。それでも注意深く観察してみると「すずり」の「ず」と「つづり」の「づ」では微妙に違った発音が行われている。

 このように [ s/z ] は、なまじ日本語にも一部その音がありながら、まったく同じではないため、安易に日本語的な音で置き換えてよしと思い込まれがちなのが落とし穴と言える。まずは [ s/z ] の子音だけを単独で発音してみて、それに母音をつなげるという初心にかえった練習をしよう。なお、[ s/z ]摩擦音であり、継続的に発音することができる。

see 見る [ síː ]
sit 座る [ sít ]
suit 適合する [ s(j)úːt ]
south [ sáuθ ]
say 言う [ séi ]
mess 散らかす [ més ]
loss 損失 [ lɔ́ːs ]
loose ほどけた [ lúːs ]
zoo 動物園 [ zúː ]
zone 区域 [ zóun ]
zinc 亜鉛 [ zíŋk ]
be・cause なぜならば...だから [ bi-kɔ́ːz ]
lose 失う [ lúːz ]
buzz・er ブザー [ bʌ́z-ər ]

looseloseloss などの違いに注意。「loose」は外来語で「時間にルーズ」などと使われているが、英語の発音は「ズ」が濁らずに [ s ] であることに注目。
※「ブザー」の発音にも注意。第1音節の母音は「ウ」ではなく cut に含まれるのと同じ [ ʌ́ ] である。また語尾の [ r ] はイギリス式で発音されない。



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048. [ ʃ ] [ ʒ ]

 S の文字を縦に引き伸ばしたような形をしている [ ʃ ] は「シャ行」の子音で、それを有声化したのが [ ʒ ] 音で、こちらは Z の文字を元に作られている記号。
 

[ ʃ ] 音は日本語にもあるが、おもしろいことにそれをそのまま有声化した [ ʒ ] 音は日本語にない
 「シャ」に濁点をつけた日本語の「ジャ」は決して「シャの有声化」ではないことに注意。日本語の「ジャ」は、 [ d ] [ ʒ ] を連続的に発音した [ dʒ ] という記号で表される。発音に [ d ] 音が含まれるのは、舌先が上歯茎に接触して発音されるからである。

 先の [ s/z ] と右の口の構え(舌の位置)が同じに見えるかも知れないが、[ s/z ] では舌の前部と上歯茎あたりの間が狭くなり、その狭い空間を息や声が摩擦を伴って発せられる音だが、[ ʃ / ʒ ] では舌のもう少し後の部分と硬口蓋の空間が狭まる(右図参照)。

[ ʒ ] 音を練習するには、まず無声音 [ ʃ ] を出してみて、そのときの口の構えのまま声帯の振動をさせる(=声を出す)。これも日本語には含まれない発音の1つであり、これを「ジャ行」子音で代用している日本人を実に多く見かける。しっかり練習して、ひと皮向けた英語の発音を身につけよう。

shoe [ ʃúː ]
shut 閉じる [ ʃʌ́t ]
she 彼女 [ ʃíː ]
push 押す [ púʃ ]
wish 願望する [ wíʃ ]
pleas・ure 楽しみ、喜び [ pléʒ-ər ]
con・fu・sion 混乱、混同 [ kən-fjúː-ʒ(ə)n ]
tel・e・vi・sion テレビ [ tél-ə-vi-ʒən ]
mas・sa・ge マッサージ [ məs-ɑ́ːʒ ]

※長い単語は、まずゆっくりと音節の切れ目に十分な注意を払って練習する。音節を指で数えながら、1音節ずつ発音してみるとよい。「ゆっくりと正確に発音できる」ことこそが美しい発音習得の重要な基礎である。(非常にゆっくり発音したときほど、ごまかしのきかない正確な発音が要求される)
※音節の切れ目がスペルでどうなっているかもよく観察しよう。長い単語で行の最後に書ききれないときは、この音節の切れ目にハイフン(-)をつけて次の行にまわしたりもするので、正しく音節を理解していないと困ることもある。なによりも自然な発音ができるためには、音節を正しく意識することが不可欠である。
※「テレビジョン」などという、あまりにも日常的でわかりきっていたつもりの単語でも、果たして正しく発音できたいただろうか。第1音節にアクセントがあるため、その直後は曖昧母音になっている。これは音声的な山の直後に谷が来る現象と言える。最後の音節の曖昧母音が括弧に入っているのは、その母音がほとんど(あるいは完全に)脱落して発音されてもよい、ということ。(それでも音節数に変化はない)



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049. [ tʃ ] [ dʒ ]

[ tʃ ] は「チャ行」の子音で、それを有声化したのが [ dʒ ]
 発音記号で見ると [ tʃ ] には2つの子音が連続的に発音されているのがわかる。実際 [ t ] の直後に(間に母音を挟まず) [ ʃ ] を出しているのだが、あえてこれを「2つの子音」と意識する必要はなく、日本語の「チャ行」の子音だと理解してしまって差し支えない。
 ちなみに [ t ] 音の「破裂」の直後に [ ʃ ] 音の「摩擦」に移行することから [ tʃ ] [ dʒ ] を「破擦音」と呼ぶ。

[ dʒ ] も日本語の「ジャ行」子音そのままである。 [ tʃ ] [ dʒ ] ともに [ t ] [ d ] を含む音なので、舌の先端が上歯茎に触れる(触れなくてはならない)。日本語にもある子音なので、先に048で練習した [ ʒ ] 音よりもずっと楽に発音できるだろう。

  [ ʒ ] を含む語と、 [ dʒ ] を含む語のスペルを注意深く比較してみよう。後者では、スペルにが使われているほか、-dge「 d 」を含んでいるのが特徴である。( [ ʒ ] のスペルには決して JD は含まれない)

chip 切れ端、かけら [ tʃíp ]
cheek 頬(ほお) [ tʃíːk ]
chest [ tʃést ]
kitchen 台所 [ kítʃ-ən ]
peach [ píːtʃ ]
edge 端、へり [ édʒ ]
bridge [ brídʒ ]
judge 判断する [ dʒʌ́dʒ ]
jeep ジープ [ dʒíːp ]

※子音で終わる単語について、余計な母音を最後に添えてしまわないよう十分注意
kitchen は2音節語だが、1音節目で「kit-」までを発音し、舌先を上歯茎につけて [ ʃ ] 音を出す構えまでを作り、2音節目の「-en」を発音するときはじめて ch [ tʃ ] 音が現れる要領となる。つまり実際に音として [ tʃ ] が聞こえてくるのは2音節目が発音された時点であるが、音節の区切りとしてはあくまでも第1音節のアクセントのある母音に前後から子音が吸着するため kitch-en である。
※「jeep」は本来、特定の自動車に与えられた商品名(商標名)であり、もともと固有名詞なのでJeep と大文字で書いたし、今でもその商標を意味する場合は固有名詞である。それが同類の車種全般を指す普通名詞としても使われるようになったため、その場合は小文字で始めて jeep と書いて用いられる。



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050. [ θ ] [ ð ]

 さてこの発音も日本語にはまったく含まれていない音である。だから日本語のカタカナ書きの発音で代用することができず、この発音を含む英単語をカタカナで表記することはできない。

 この発音は単語のスペルに「th」を含むのが特徴で、上下の歯の間から舌先を出した状態で、息または声による摩擦音を出す。(それに続く母音を発音する直前、上下の歯の間に挟んだ舌は引き抜かれる)

 日本人はこの音を [ s / z ] で代用しがちだが、これは英語話者の耳にとって本来の thから非常にかけ離れた(つまり通じない)音に聞こえてしまう。thは、先に述べたように「摩擦音」に属するものであるが、「上下の歯の間に舌先を軽く挟む」という形を作ったとき、いったん息や声を「せき止める」ような形となり、舌を引き抜きながら次の母音を発音するとき、やや破裂音に近い音色となることもよくある。この現象は英語ネイティブの間にも頻繁に見られるものであるが、破裂音気味に発音されたときのth音は、 [ t / d] 音と「聞こえ」が極めて似てくる。そして、英語話者の中にさえ、th を完全な [ t / d ] 音で代用する人がいて、こちらは通じる。
 すなわち英語音声学の観点から言うとthは、t/d音と性質が近い」とも言える。th音を(同じ摩擦音に属する)s/z音で代用することはできないが、t/d 音で代用しても通じる許容内であるのは、そういう理由による。

 つまりthree」を「スリー」と発音したら通じないが「tree」と読む文には通じるということだ。(もちろん、それは訛であり、標準的な発音ではないが)
 その意味から言うと、「Thank you.」は「サンキュー」よりも「タンキュー」がより英語的で通じやすく、there は「ゼア」よりも「デア」の方が通じるといえる。

 日本人はどうも「人前で舌を出す」というのが礼儀に反するように感じるのか、恥ずかしいのか、このthを正しく発音しようとしない傾向があるかに思える。しかし正しい音を出そうとすれば、正しい口の構えをしなければならず、「唇を閉じないまま pa を言うことができない」のと同様に、舌先を上下の歯に挟まなければ thにならないのである。

 もちろんここでは標準的な「上下の歯の間に舌先を挟んだ標準的な発音(摩擦音)」で練習する。

thick 厚い;太い [ θík ]
three [ θríː ]
thief 泥棒 [ θíːf ]
path 通り道 [ pǽθ/ pɑ́ːθ]
month 一ヶ月 [ mʌ́nθ]
fourth 第4 [ fɔ́ːrθ]
that あれ;それ [ ðǽt ]
then それから;そのとき [ ðén ]
those あれら [ ðóuz ]
smooth なめらかな [ smúːð ]
mother [ mʌ́ð-ər ]
father [ fɑ́ː-ðər ]

 加えて注意しておきたいことがある。
 month を複数にすると「months」であり、thS も無声音だ。thS で代用する悪い癖のついてしまった人は、「kiss」の複数形が「kisses」となることから間違った類推をして、複数形を「monthes [mʌ́nθiz ] と思い込んでいることがある。そうではなく、hat の複数形が hats になることの延長として month の複数形 months [mʌ́nθs ] の発音要領を身につけていただきたい。

 months の正しい発音を練習する要領としては、最初わざと [mʌ́nt ] と語尾を [ t ] 音にして発音してみて、それに [ s ] をつけて [mʌ́nts ] といってみる。すると「hat→hats」と同じパターンで複数形が発音されることが実感できるので、それから [ t ] [ θ ] 音に戻して、months を練習するとよいだろう。

 あと1つ。cloth(布) [ klɔ́ːθ ] の複数形は、上記と同じ要領で「cloths [ klɔ́ːθs ] 」だが、「衣服」を意味する「clothes」では th を有声音 [ ð ] で発音し、語尾の「-es」も [ z ] 音となり、単語としての発音は [ klóuðz ] だ。ただし、この単語についてはth部分の発音を脱落させた [ klóuz ] (=close と同じ発音)でもよいとされているので、うまく発音できない人は close と同じ発音にしてまったくかまわない。



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051. [ l ]

 051までは「無声音と有声音がペアになっている音素」を練習してきたが、ここからは有声音しかない子音に入る。

 さて英語の発音というと、「日本人は rl の区別が苦手」とよく言われる。そして学習者からも特にr が苦手」という声を聞くが、じゃあ「 l 」は簡単に正しく発音されているのかというと、それも違う。英語の音声について詳しく知らない人は、「日本語のラ行はLの音」だと思い込んでいるようだが、実を言うと日本語には「 rl もない」のである。日本語の「ラ行」子音は日本語特有の音であり、英語の R でもなければ L でもない。しかし音声学的に言うと、 r の方がやや近いため、ローマ字では L ではなく R が用いられている。

 日本語の「ラ行」子音は舌先が上歯茎に接触するが、それは一瞬のことであり、軽くはねるような音になっている。しかし英語の「L」は舌先を上歯茎に「しっかりと押し当てた状態のまま、やや長めに声を出して発音される」。口の中央には舌があり、その両脇を声が通り抜けることからこの[ L]を「側音」と呼ぶ。
 「 L 音」が「 L 音」として綺麗に聞こえるコツは、この子音をやや長めに発音すること。その時間が短いと、たとえ舌の先端が上歯茎に触れていても「 d 音や r 音」に聞こえてしまう。
love 愛;愛する [ lʌ́v ]
lucky 幸運な [ lʌ́k-i ]
leave 置いていく [ líːv ]
alive 生きている [ ə-láiv ]
clock 置時計・掛時計 [ klɑ́k / klɔ́k ]
black 黒;黒い [ blǽk ]

DARK-L について)

 さてこれまで解説してきたのは、「 L」が音節の最初に現れる場合についてである。
 この「 L」もまた音節の最初に出てくるときと、最後に出てくるときとで発音の要領が異なる。
 音節の最初に現れる Lは、「明るくはっきりした音」ということで「clear-L」と呼ばれるのに対して、音節の最後に現れるL音を「dark-L」と呼ぶ。

 「dark-L」は日本人の耳には「ラ行」の子音にさえ聞こえず、事実そういう音ではない。
 はっきりいうと、音節最後のL音は舌先の位置を考えず、単に唇を丸めるだけで発音される。

 だから「 people 」は「ピーポー」、「 apple 」は「アポー」と聞こえるはずだ。それでいい。そのとき無理やり( L だから)舌先を上歯茎にしっかりつけようとする必要はない。聞こえたまま真似て大丈夫。 dark-L を上手に発音するには、L であることを意識せず、とにかく「聞こえにしたがって真似る」のがよいと思う。
 この「 dark-L 」の発音は「発音・聞き取り」ともにとても重要なので、次の例についてどうかもれなく online 辞書の発音サンプルをちゃんと聴いて、よく練習してほしい。

salt [ sɔ́ːlt ]
meal 食事 [ míːl ]
fail 失敗する [ féil ]
male 男性;男性の [ méil ]
snail かたつむり [ snéil ]
people 人々 [ píː-pl ]
ap・ple りんご [ ǽpl ]
table テーブル [ téi-bl ]
beautiful 美しい [ bjúː-tə-fl ]

 [ l ] 音が音節末尾に来る場合、そして、 の直前に別の子音がある場合(上の例で people, apple, table, beautiful )は、「 が子音であるにもかかわらず1つの音節を作る」。
 本来、音節というのは母音にしか作れないものであるが、dark-L は「半母音」としての性格を持つ。これは現実として [ l ] 音と直前の子音の間に曖昧母音 [ ə ] が発音されているともいえる。



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052. [ r ]

 日本人が英語の発音で非常に苦手と言われる「 r」だが、実はどうっていうことのない簡単な音だ。誰にでもすぐ習得できる。

 ポイントは「日本語のラ行で置き換えない」という意識をはっきり持ち、まずは自分なりでいいから「 L R 」の発音を明確に区別しようとすること。自らの意識の中で「自分は LR を別の音として扱い、発音し分けているのだ」と考え、実行することが、なによりも大切である。それを実践していれば、単語のスペルの LR で迷うこともなくなる。

 「r 音」は舌の先端をやや巻き上げ気味に持ち上げ、上の歯茎に接触させないようにして発音する。しかし歯茎との接触は最重要な問題ではなく、イギリス人など巻き舌の R を使う人も多くいて、そのときなど激しく舌の先端が上歯茎との接触を繰り返している。だからといってそのイギリス訛を真似る必要はないが、それで通じるということは知っておこう。

 一般に R の発音というと上記の要領だけが伝えられているが、実は特にアメリカ発音で別の発音要領も用いられている。
 これは右図のように「舌の先端は特に巻き上げることなく、むしろ舌の後部分全体が持ち上がって口蓋との間隔を狭めて発せられる音」である。随分要領が異なるが聴感上は同じような音に聞こえるから面白い。日本人にとってこちらの発音の仕方は難しいかも知れないが、どちらも用いても全く構わない。

 「LR の聞き分け」は、まず"自分がこの2つの子音を区別して発音しようと意識することから上達する。
 「r 音」は子音の一種だが、舌先が持ち上がっている以外に、声の通り道を大きく妨げるものがなく、母音のようにも聞こえることから「半母音」に分類されることもある。しかしあくまでも子音である。(「半母音」とは「半分母音のような子音」という意味)

run 走る [ rʌ́n ]
read 読む [ ríːd ]
rude 無作法な [ rúːd ]
rock 岩石 [ rɑ́k ] [ rɔ́k ]
trip [ tríp ]
strike 打つ [ stráik ]

(次のそれぞれのペアについて発音の違いに注意して練習しよう)
love 愛;愛する [ lʌ́v ]
rub こする [ rʌ́b ]
 
live 住む [ lív ]
rib あばら骨 [ ríb ]
 
load (荷を)積む [ lóud ]
road 道路 [ róud ]



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053. [ h ]

 ローマ字で「ハ行」の子音に使われるのが h の文字であるが、決して日本語のハ行そのままではないので注意。
 [ h ] は口を軽くあけ、そのまま強く息を出し舌の付け根付近で摩擦が発生する音である。つまり無声音だ。音の発生するポイントは喉の奥あたりであり、これは「ha, hi, hu, he, ho」に共通しなければならない。すなわち日本語の「フ」が「唇を通過するときの摩擦音」であるのに対して、[ hu ]喉の奥を息が通過するときの摩擦音という違いがある。英語の「 hu 音」の要領は「ホ」をまず出してみて、そのまま唇の形だけをやや丸める。そのとき聞こえる音は「フ」より「ホ」に近い。

 日本語の「ハヒフヘホ」は子音が共通していない。こういう変則性は「サ行」で「 s, sh 」2種類の子音が入り混じっていたり、「タ行」でも「 t, ch 」の音が混じっているなど現代日本語の1つの音声学的特徴でもあるのだが、"英語の「 h 音」は常に同じ音として発音されなければならない。

 日本語の「ヒ」や「フ」で現実に発音されている子音は [ h ] ではなく発音記号としても英語用には含まれていない、さらに特殊な記号で表されるものである。

 日本語の「」を発音記号で表すと、 [ çi ] となるが、この子音はドイツ語の Ich (イッヒ:英語の「 I(私)」に相当する語)に含まれるのと同じ子音である。
 また日本語の「」の子音は、音声学的には「ハ行子音」ではなく「ファ行子音」だ。つまり「ファ、フィ、、フェ、フォ」に共通した子音であり、これは発音記号で [ ɸu ] と書かれる。

 このように日本語の「」と「」は hi, hu ではないので特に注意が必要。中でも「」が「丸めた唇を通過する息」によって口の前方で発音される音であるのに対して、 [ h ]舌の付け根と口蓋の隙間による摩擦という口の奥で発せられる音という大きな違いがあり、後で練習する hook, hood を「フック、フード」と読んでもまるでかけはなれた(=通じない)音になってしまう。[ h ] 音は口の奥で発生する摩擦音である。これをくれぐれも忘れないように。

 ちなみにこの子音については舌の位置を示す図をつけていない。
 その理由は、h が発音される際の舌の位置はそれに続く母音を発音するための準備位置となり、どんな母音が後に続くかによって一定ではないためである。

hat (ふちのある)帽子 [ hǽt ]
hut 小屋 [ hʌ́t ]
hot 熱い [ hɑ́t / hɔ́t ]
hit 打つ [ hít ]
heat [ híːt ]
hear 聞こえる [ híər ]
head [ héd ]
hook 留め金;ホック [ húk ]
hood ずきん [ húːd ]

 最初の3つ(hat, hut, hot)の区別がちゃんとできる日本人は少ない。聞こえた英語の音を無意識にカタカナに直す癖のある人にとってはすべて「ハット」になってしまうからだ。実際の発音を注意深く観察し、しっかりと練習しよう。
 最後の2つ(hook, hood)も日本人が苦手な発音。hook を「フック」と読まないこと。hood を「フード」のようにならないように、こちらも「ホード」に近く発音した方がよい。



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054. [ m ]

 上下の唇をしっかり閉じたまま声を出す。唇が閉じられているので声は口から出ることができず、鼻から出てくる。これが [ m ] の音。ハミングで「ムー」という、あの音である。日本語の「マ行」子音であるが、それよりも子音をやや長めに発音するとよい。つまり唇を閉じたまま声を出し、そのときの響きを自分の耳でしっかりと聞くくらいの時間をかける。(これはあらゆる英語の子音に共通したコツとも言える)

 音の種類としてはもちろん有声音だが、上下の唇を閉じた状態で鼻から発せられる音なので「両唇鼻音」と呼ばれる(用語はあまり重要ではないので気にしなくても構わない)。

moon [ múːn ]
mood 気分 [ múːd ]
meet 出会う [ míːt ]
man 人間;男 [ mǽn ]
room 部屋 [ rúːm ]
tomb [ túːm ]
comb くし [ kóum ]

 moonman語尾の n を日本語の「」にしないように注意。必ず舌先を上歯茎に押し当てた状態で終わること。日本語のカナ発音で「ムーン」「マン」と読むと「moong, mang」に聞こえてしまう。
 tombcomb はスペルと発音の関係が変則的。語尾の「 b 」は文字にあっても発音しない(「黙字」という)。またそれぞれの母音文字は「 o 」1文字であるが、tomb では [ uː ] という長母音comb では [ ou ] という二重母音であることにも注意してほしい。



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055. [ n ]

 ローマ字で「ナ行」子音として、さらに「」を表して用いられるのが n であるが、英語の n を常に日本語の「ん」で発音するものではない。たとえば「 pen 」という単語は誰でも簡単に発音できると思い込まれているが、「ペン」という日本語発音の「」で、舌の先端はどこにも触れていないのに対して、英語の pen の「n 」では舌先がしっかりと上歯茎に押し当てられている。すなわち英語の「 n 」は常に舌先を上歯茎に押し付けた状態で発音されるものであり、それが子音単独で現れても発音の要領は変わらない。決して日本語の「ん」と同じだと思わないように

 「an apple」が「アポー」と聞こえるのは、「 an 」の「 n 」で舌先が上歯茎に押し当てられた状態から「 apple 」の「 a 」が連続するため、「 n + a」という連結を起こし「ナ」が聞こえてくるからだ。その際、日本語的に「 an」を「アン(=ang)」と発音していては、その連結が起きないため、平気で「アンアップル」と読めてしまう。

 日本人は r の発音が苦手とよく言われるが、それ以上に(気づかないまま)苦手なのが実は、この英語の「 n 」なのである。発音自体はまったく難しくない。ただ単にn =ん」という間違った思い込みがあるため、間違いに気づかずにいることが多いのである。

 繰り返して言うが、英語の「 n 」は常に舌先が上歯茎にしっかりと押し当てられた状態で発音される。「n+母音」となっているときだけナ行の音が現れるのではない。「nで終わる単語」を発音するときは、くれぐれも注意すること。
 pen, pin, in などの簡単な単語で、n を舌先を上歯茎に押し当てて発音する習慣を身につけよう。「 n 」は「ヌ」を言うつもりで、最後の母音を発音しないという感じになる。(舌先を上歯茎から離さないままで「ぬ」と言えば、それが英語の「 n 」単独の発音となっている。)

 正しい n の発音が習得されれば、「in it」なども無意識のまま正しく「イニット」のように「 n +母音」の連結が起こせるようになるし、「an apple」をわざわざ「アン・アップル」と区切って読む理由がないことも理解できる。(pineapple がつながった pineapple は、日本語でも「パイン・アップル」というより「パイップル」と、ちゃんと「-na-部分」の音が連結されているのが面白い)

need 必要とする [ níːd ]
net 網;ネット [ nét ]
knot 結び目 [ nɑ́t / nɔ́t ]
pin ピン [ pín ]
pen ペン [ pén ]
ten 10;10の [ tén ]
one 1;1つの [ wʌ́n ]

[ n ] で終わる語を母音で始まる語が追いかける例の練習)
an apple [ ənǽpl ]
in it [ ínit ]
on it [ ɔ́nit ]
when I was young [ w(h)enài wəz jʌ́ŋ ]



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056.参考:日本語の「ん」について

 ここで参考までに、日本語の「ん」について、もう少し詳しく見ておくことにしよう。

 「ん」というカナが実は4通りに発音されているという事実を知らない日本人は多い。日本人は「同じ文字は常に同じ音」で発音していると思い込んでいるが、この「ん」については4種類の音を無意識に使い分けているのだ。

1、英語の「m」になっている例

 半端( hanpa )→ hampa
 現場( genba )→ gemba

 「ん」の次に「上下の唇を閉じなければ発音できない音( p / b, m )」が続く場合、「ん」は「 m 音」として発音されている。

2、英語の「 n 」になっている例

 慣例( kanrei )
 本体( hontai )
 案内( annai )

 「ん」の次に「舌先を上歯茎につけて発音する音( t / r / n )が続く場合、「ん」は英語の「 n 」音になっている。

 (ここでの r は日本語特有の r であり英語とは違う発音)

3、英語の「 ng 」になっている例

 半額( hangaku )→ hang-gaku
 今回( konkai )→ kong-kai

 「ん」の次に [ k / g ] が来る場合、「ん」は「ng音」で発音されている。
 地名の「香港」は英語で「 Hongkong 」とつづるが、これをわざわざ「ホングコング」と読む必要はなく、普通に日本語で「ほんこん」と言えば、この Hongkong の発音になっているのだ。
 大猿の King Kong も、実は「キングコング」ではなく、普通に日本語で「きんこん」と発音するのが、英語の King Kong の発音となる。

4、日本語特有の「 n' 音」が用いられる例(英語にない音

 範囲( han'i )
 山陽( san'yo )
 善悪( zen'aku )
 婚約( kon'yaku )

この4の「ん」は英語にない音で、だから英語話者が日本語を学ぶとき大変苦労する。このような「ん」を英語の「 ( n(舌先を上歯茎につける音)」で読んでしまうと「範囲」は「ハニ」、「山陽」は「サニョー」となってしまう。
 「日本語特有の [ n' ] 音は、舌の後ろの方が持ち上がり、軟口蓋に近づいた状態で発音される。次に続く母音(や半母音)と連結を起こさないため、「はんい」の「い」が「 ni 」や「 ngi 」になることもない。

 特に日本人が英語の「 n 」を発音する際、この日本語特有の「 n' 」を使ってしまう傾向があり、だから「 an apple 」を平気で「アンアップル」と読めてしまうわけである。
 このように日本語の「ん」は同じ文字について場合によって4通りの別々の音を使っている。それに比べれば英語の「 n 」は常に1種類の音で統一されていると言えるのだ。

※なお厳密には、この「日本語特有の『ん』をさらに細かく分類することもできるが、専門的知識を持たない人にとっては日本人ですら、その聞き分けが困難であることから、ここでは「日本語特有の『ん』」として1つにまとめることにした。



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057. [ ŋ ]

 「ん」について解説した中の「3番目(「半額」、「今回」の「ん」)がこの [ ŋ ] 音である。英単語のスペルに「g」が含まれるが、決して「グ」と発音するものではない。  舌の後ろの部分を持ち上げ、軟口蓋に押し当て、声を鼻から出すのが [ ŋ ] 音。

  [ ŋ ] 音を母音が追いかけても「ガ行」にはならない。日本語にも古くは「ガ」という音があり、今でも年配の方は「、しかし」というときの「が」をその音で発音している。
 sing-ing をつけた「 singing」を「シン」としないように注意しよう。

sing 歌う [ síŋ ]
ring (鈴などが)鳴る [ ríŋ ]
sing・er 歌手 [ síŋ-ər ]

 sing を元の単語として、それに「-ing」や「-er」をつけた単語は、「ng」の部分の発音が [ ŋ ] であるが、下の例のように元から「-nger」までを含んだ単語の場合は、「 ng 」のスペルを [ ŋg ] と発音する。

 つまり、これらの単語では、[ g ] の直前であるために [ n ][ ŋ ] に臨時音声変化をしているといえる。

hun・ger 空腹 [ hʌ́ŋ-gər ]
hun・gry 空腹な [ hʌ́ŋ-gri ]
Eng・lish 英語;イングランドの [ íŋg-liʃ ]



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058. [ j ]

  この発音記号は「」の小文字ではない。「 i 」の文字の下を引っ張って伸ばしたものであり、ヤ行の子音(ローマ字の y)を意味するものである。発音記号での  [ j ]  はローマ字の「ya」にあたるものであり「ジャ」ではないということに注意。

 日本語の五十音では「や、ゆ、よ」の3つしかなく「 ya, (yi), yu, (ye), yo 」の「 yi, ye 」が現代の日本語では脱落しているが、英語では「 yi,ye 」も用いられるので、それらもちゃんと発音できるようにしておく必要がある。まずはローマ字としての「 ya, yi, yu, ye, yo 」を発音してみよう。

 この [ j ]  音も [ i ]  に近いため「半母音」と呼ばれるが、あくまでも子音である。

 Y= [ j ]  が子音であることを理解すれば「 yes 」が「イエス(3音節)」でなく1音節で発音されることもわかる。
 下記練習に含まれる中で特に yeast のような例は east [ íːst ] との発音の違いに注意しよう。

yard 中庭;ヤード(単位) [ jɑ́ːrd ]
yield 譲渡する [ jíːld ]
yeast こうじ酵母、イースト菌 [ jíːst ]
yes はい [ jés ]
you あなた [ júː ]
young 若い [ jʌ́ŋ ]
yet まだ [ jét ]



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059. [ w ]

 発音記号解説もこれで最後の1つとなった。今後、辞書を引く際、そこに示されている発音記号に十分注意を払い、英単語にカタカナを振らず英語本来の音で把握するようにしよう。発音記号の意味に不安を感じたら、またその記号の項目を見直して理解と実技を深めていただきたい。

 [ w ]ワ行の子音。とはいえ、日本語の五十音ではすでにア段の「わ」しか残っておらず、[ wi, wu, we, wo ] は「い、う、え、お」と同じ発音になってしまっている。しかし英語では「 wa, wi, wu, we, wo 」すべてがある。外来語を表記するために日本語のカナにも「ゐ、ゑ」の平仮名と「ヰ、ヱ」のカタカナが一応存在するが現代語ではほとんど使用されることがなくなった。また「を」はローマ字変換のタイピングでは wo と打つものの、その発音自体は「お」との区別がない。

 「w 音」は「u(母音)」の口の形で唇をさらに細く丸めて発音される子音である。日本語の「ワ」の子音よりも意識して、非常に小さく口をすぼめるのがよい。
 wood など「ウッド」と発音しないように。ちゃんと子音 [ w ] を先頭において [ wud ] と発音できるようになろう。

wood 木材 [ wúd ]
wool 羊毛 [ wúl ]
wear 身につけている [ wɛ́ər ]
win 勝つ [ wín ]
way 道;方法 [ wéi ]
wall [ wɔ́ːl ]

 wool は外来語として「ウール」と表記されているが、英語の発音では出だしが [ w ] の子音であることと、母音が短母音であり、「ウー」という長母音ではないことに注意。


 以上で個々の発音記号の読み方についてはすべて終了となる。今後は辞書で単語を調べる際にも、カタカナを使わず、その単語の正しい読み方を発音記号によって学ぶことができる。
 単語単位で正しく発音することがすべてではないが、それができなくてはフレーズや文章を正しく読めるはずもない。言葉の実体は「音声」にあるという現実にしっかり目を向けて、常に音を大切にする姿勢を守り続けていただきたい。



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060.つづりと発音の関係(1)--母音文字についての原則

 英単語を覚えるというのは学習者にとって大きな負担であり、誰でもそこで苦労する。特に初歩の段階ほど「類推」も利かず、ほとんど白紙の状態からこつこつと覚えていくことになるが、一定期間そういう状態をを耐え抜かないことにはどうにも前に進めない。

 特に正しいスペルを覚えることとは英文を「書く」上で書かせない。また書かれた英文を読みあげるときも、そこに含まれる単語をどう発音すればいいかが正しくわかっていなければ実用性のある実力は身につかない。

 英語のスペルは色々不規則な点が多く、書いてある通りに読めばいいというものでないのがやっかいなところだ。しかし、それでも英語話者なら、あるスペルを見たとき、思わずこう発音したくなるという(大まかな)傾向性というものがある。それはもちろん、日本人のような「ローマ字読み」ではなく、英語ネイティブたちが、沢山の英単語に触れる中から自然と培われた感覚である。

 英単語のスペルと発音の関係をすべて網羅できるような万能の法則はないが、英単語の読み方にも一応の原則のようなものがあり、それを知っておくことはためになると思う。原則を知っていれば「例外」もわかり、注意すべきポイントも見えてくるだろう。

 ここでは、そういった英単語のスペルと発音の関係性についておおまかに見てみることにしよう。

(1)母音文字の読み方の原則

 1文字で母音を表す文字として「a,i,u,e,o」があるが、pat, pit, put, pet, pot などと使われたとき、英語話者なら、その母音文字を「短母音」で発音したくなる。すなわち:
pat [ pǽt ]
pit [ pít ]
put [ pút ]
pet [ pét ]
pot [ pɑ́t / pɔ́t ]

という読みである。
 ただし、u だけはちょっと変則的(英語ネイティブにはそう感じられないが)であり、ローマ字的な「ウ [ u ] 」の発音で現れるよりも「 cut 」のように [ ʌ ] の音で用いられることの方が多い。

 この [ æ, i, u/ʌ, e, ɑ/ɔ ] という短い母音としての読みの他、次のような単語では「長母音」として現れてくる。
cake [ kéik ]
line [ láin ]
cute [ kjúːt ]
hole [ hóul ]

 「 e 」の文字だけは1文字で長母音となることがほとんどなく、「 ee, ie, ea」などと2つの母音文字で [ iː ] を表すのが普通だ。

 さて、e を例外として他の「 a,i,u,o 」が長母音として現れている例に共通していることがある。
 それは単語の末尾が「母音文字 + 子音 + 発音しない eという組み合わせになっているということ。末尾の「読まない e 」の存在が、これら母音文字を「長母音」として発音したくさせていると言える。

 「長母音」として発音されたとき
a」の文字は [ ei ]
i」の文字は [ ai ]
u」の文字は [ juː ]
o」の文字は [ ou ]

と、それぞれ文字を「アルファベットの名称」として読み上げていることに気づいていただきたい。

すなわち、母音文字「 a,i,u,e,o 」は、ローマ字的に短母音として読まれるときと、アルファベットの名称の長母音として読まれるときがある、と言える。( u や e の扱いに少々変則性はあるが)


(2)-ing をつけるとき、語尾の子音を重ねる理由

次の動詞に-ingをつけてみよう。

bat → batting
hit → hitting
put → putting
cut → cutting

このように元になる単語の末尾の子音文字を重ねてから -ing をつけることになっている。なぜだろう。
もし、最後の子音文字を重ねないまま -ing をつけると次のようになる。

bating
hiting
puting
cuting

このスペルを見たとき英語話者なら
bating [ béiting ]
hiting [ háiting ]
puting [ pjúːting ]
cuting [ kjúːting ]

 と読みたくなってしまうのだ。それはたとえば「 bate 」の語尾の -e をはずしてから -ing をつけたものに見えてしまうためであり、そのため、母音部分の発音が短母音のまま保たれなくなってしまう。
 そこで元の単語の発音を維持するために語尾の子音をダブらせてから -ing をつけるということだ。bating では [ béiting ] と読めてしまうが、「 batting 」なら [ bǽting ] と自然に読めるということである。

 このように英語話者(多くの英単語に触れてきた者)が、スペルから自然に連想する発音というものがあり、単語の変化形を作るとき、ちょっと末尾のスペルを変えなければならないのは、そういう都合によるものである。



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061.つづりと発音の関係(2)--英語ネイティブの「読み癖」

 例として「 study 」という単語の変化形を見てみよう。 study は動詞として「勉強する」、名詞として「勉強」の意味があり、動詞の場合は主語が he / she などのとき、studies と、いわゆる「三単現の-s」で終わらせなければならず、名詞としての複数形もその形となる。
 しかし「 study 」にただそのまま -s を追加して「 studys 」とはしない。

 その理由は「 y 」という文字が母音字として、「 i 」の音を表すために使われるほか、 [ ai ] という音を表すこともあり、「 -dys 」のスペルから英語話者は [ daiz ] の発音に誘導されてしまうからだ。だから語尾を「子音-ie」にいったん変え、それから s を加えることで「 studies 」を素直に(直感的に) [ stʌ́diz ]  と発音できるということになる。

 このあたりの話は、そもそも英単語に数多く接してきていない英語初学者にとってはピンとこないことだろう。しかし英語ネイティブだけでなく、日本人であっても、経験を積み、沢山の英単語を知るようになってくると、徐々に「あるスペルから自然と連想される読み方」というものが見えてくる。そういう感覚を早く得るためには次の3点を心がけるとよい。

  1. ローマ字を捨てる。(英語をローマ字扱いしない
  2. 常日頃から、手間を惜しまず辞書を引き、単語の発音記号を調べる。
  3. 発音記号とスペルをよく比較して、どの部分をどう発音しているかを観察する。

 日本人は実際の英単語のスペルより先にローマ字を通じてアルファベットに親しんでいるのが普通だ。それはそれで日本人の人名などの固有名詞を英文にまぜて書く必要もあるので、ローマ字自体は必要なものだと思うが、ローマ字を習ったことによる弊害もある。
 すでに学校教育を通じて「ローマ字→英語」という順序でアルファベットに触れてしまったことを、いまさらさかのぼってどうにかすることもできないが、せめて「英語には英語特有の読み癖」のようなものがあることを知り、英単語はローマ字のようには読めないものだと認識する必要がある。

 ところで単語力をつけたくて苦労するのは、英語を外国語として学ぶ者だけではなく、英語ネイティブであるアメリカ人なども「正しいスペルや発音」の習得でそれなりの苦労をしているのである。そして、英語ネイティブ向けに書かれた語彙力増強を目指す書籍が大変よく売れている。

 さらに発展的学習を目指す上級者には、洋書で「 Instant Word Power 」や「 Word Power Made Easy 」ををお勧めする。これらの書物はもともとアメリカ人向けに書かれたもので、英語ネイティブであるアメリカ人を対象に語彙の増強や正しい文法を「"プログラム学習法」により自習できるようになっている。

 アメリカ人がはじめて目にする英単語の発音を正しく知るにはどうしているか?アメリカ人が日本人と同じように「国際表音文字(すなわち発音記号)」をいまさら1から学ぶのは面倒だ。そこでこういう書物の中では、これまで述べてきたような「英語ネイティブなら思わずこう発音したくなる」という「スペルと発音の原則」を利用した phonetic alphabet というシステムを利用している。これは正式なものではなく、書物の著者が独自に工夫したものであり、本の冒頭部分で、「本書では、発音を表すとき、こんな方法を使いますよ」と凡例を添えて、解説されている。

 日本人が普段使う辞書の発音記号は、1つ音に1つの記号を当ててあるので合理的であり、正確に単語の発音を表現できるメリットがあるが、一方、普通のアルファベットには含まれない特殊記号も多く混じっており、発音記号の習得そのものに結構な負担を感じることがある。事実、そういう事情があるから、本サイトで多くのページを割いて発音記号を解説してきたわけだ。

 先ほどの書物で英語ネイティブ用に、どのような発音表記が用いられているのか、ちょっと見てみよう。

  1. 原則として普段使われている英語のアルファベット文字だけで発音を表現する。
  2. 唯一、特殊記号として用いられているのは曖昧母音 [ ə ] だけである。
  3. その他として文字の上に横線が引かれている(ここではそれを表現できないのでアンダーラインで代用する)ことがあり、それにより、「 i 」を「 i 」とした場合は [ ai ](二重母音)」を表すなどとして使っている。(普通に「 i 」とあれば、それは it における i の発音)

 では実際にそういう英語ネイティブ向けの書物で英語の発音をどう表現しているか、いくつか例を見てみることにしよう:

単語 一般的発音記号 Phonetic Alphabet
different [ dífərənt ] DIFˈ-ər-ənt
idea [ aidíə ] i-DEEˈ-ə
mother [ mʌ́ðər ] MUˈ-thər
previous [ príːviəs ] PREEˈ-vee-əs
aloud [ əláud ] ə-LOWDˈ
conversational [ kɑ̀nvərséiʃənəl ] konˈ-vər-SAYˈ-shən-əl

 こんな具合だ。
 折角、発音記号を覚えたばかりの人に、また別の記号を覚える苦労を押し付けるものではないのだが、ちょっとだけつきあっていただきたい。

  1. アクセントを示すのに「大文字」と「’記号」が併用されている。大文字というのは視覚的に目立つので、確かに「この音節にアクセントがあるぞ」というふうに感じる。それに加えて、長い単語では第2音節も示さなければならないことがあるので「」をつけた小文字による音節でそれを示している。
  2. u のスペルが mother の第1母音を表すために使われているが、このことから「 u は、cutu」というスペルと発音の関係が了解されていることがわかる。
  3. th のスペルは発音記号では [ ð / θ ] が有声音と無声音を表すシンボルとなっているが、 ここでは th というスペルにアンダーラインがあれば有声音、なければ無声音という約束になっている。
  4. ee というスペルに [ iː ] を対応させている。
  5. o というスペル1文字だけだと短母音の [ ɑ ] を対応させており、二重母音の [ au ] 音には「OW 」のスペルを対応させている。これは allow, cow などを通じて関連付けられている。
  6. conversation[ sei ] を[say]で表現。これは say という単語に日常的ななじみのあるものには素直にそう読めるはず。

 その他次のような凡例が出ている(一部日本人になじみのある単語に私が差し替えている)
A, a   cat (KAT)
E,e   wet (WET)
I, i   sit (SIT)
U, u   cut (KUT)
AH, ah   father (FAH-thər)
AW, aw   call (KAWL)

 などなど。

 これを見てわかることとして、a, e, i, u が短母音 [ æ, e, i, ʌ ] を連想させ、ah [ ɑː ] という長母音で読みたくなり、aw は、awful という単語にあるように [ ɔː ] の発音として読みたくなるのが英語ネイティブというものだ、という事実が伝わってくる。

 ここで取り上げるのは、ほんのわずかな例にすぎないが、これらを通じて理解していただきたいと思うのは、英語ネイティブにとって、思わずこう読みたくなる発音というのがそれなりにあり、日本人であっても学習が進み、地道に経験を重ねていけば、ほとんどの英単語は、直感的に正しく読めるようになるものだ、ということ。同時に、アメリカ人とっても直感的に読んだのでは誤読するような例が結構あるものだということ。

 英単語のスペルと発音の関係は、一筋縄ではいかないながらも、あせらず地味に語彙を増やしていくなかで、自然とそれが見えてくる。



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062.つづりと発音の関係(3)--基礎活用の「類推」

 「つづりと発音の関係」については、あまり深く悩まないことだ。少なくとも英語においては、あらゆるスペルを通じて一環したルールというものはない。しかし、色々な着眼点はある。今お読みになっているこの項目も「ふうん、そういうもんなんだな」と気軽に読み流していただいて結構である。ただ、何も語らず、学習者の経験に一方的にまかせてしまうよりは、多少なりとも「ヒント」となるものをつかんでいただければと思い、様々な例をあげている。

 ある単語の発音を習得したら、それを基礎にして「同じ要領」で発音できる単語も練習してみると効果的だ。
 また対照的に練習する課題を設けるのもいい。

hat, mat, cat, rat, bat..
 これらは「-at」の部分の発音が共通しており、語頭の子音だけの違いである。つまりすべて同じリズムで発音できる例ということ。

cut, hut, but, ...
hit, mit, kit, ...
hot, not, lot, ...
all, hall, call ...
 このように「共通の音」を含む様々な単語で練習することにより、共通部分の発音が定着してくる。

 また微妙に違うが、互いの発音を参考にできる組み合わせを使うのもいい。
top - stop (子音が追加されているが同じ1音節)
cop - crop

meet - mit (母音だけが違う)
set - seat
hit - heat
ship - sheep

 これらの練習を通じて、発音記号と文字(スペル)を対照させ、どのスペルにどの発音記号が対応しているかをよく観察する。そういう観察を沢山することにより、原則が理解され、それと同時に「例外」というものがわかってくる。

 未知の単語に出会ったとき、それをどう発音すればよいか、ただちに辞書を引く前に、自分の経験から発音を類推してみよう。それから辞書の発音記号を確認する。これにより「あ、思った通りだ」と感じることが多ければ原則にのっとっており、「え?このスペルでそんな発音?」と意外に感じれば、その意外性が刺激となり記憶を強化する。
 辞書をこまめに引くことは非常に大切であるが、「まず自分なりに考えてみる」というワンステップをはさむことで、辞書の効用がさらに増す。



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