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028. [ i ] [ iː]

 この2つの記号は一見すると「長音記号」があるかないかだけの違いに見える。しかし、この2種類の記号によって表される音は、長さだけでなく「音の質」そのものが大きく異なる。決して[i]音をそのまま伸ばせば[i:]になるのではないということに注意して欲しい。

 調音点の表でも [ i ] [ iː] の2つは同じ位置ではないことがわかる。 [ iː] は表の最も左上に位置している。つまり「口の開きが狭く、唇の左右をしっかり横に引いた構えにより口の最前部で発音される」のに対して [ i ] は日本語の「イ」寄りの位置であり、口の開きとしても [ e ] 寄りになっている。

 [ i ] [ iː] の2つが音質としても異なる別の母音であるため辞書によっては [ i ] を [ ɪ ] という文字で区別しているものも多い。ただ日本国内で市販されている多くの中高生用学習英和辞典では表記上の区別をしていないものが多いので、この解説でも学習者の環境に合わせてどちらも i の記号を用いることにする。

 [ i ] [ iː] は 、日本語の「イ」よりも柔らかい(舌に緊張がない)音である。まず日本語で「イ」と「エ」を言い比べてみると、「イ」では唇の両脇がやや左右に引かれ、舌に力が入っているのが分かる。それに対して「エ」を言うときは口の開きがもう少し大きくなり、唇の両脇も「イ」に比べると強く引かれていない。英語の [ i ] の音は、日本語の「イとエの中間」の音であり、「力を抜いて『イ』と言う」感じ。「イだと思えばイに聞こえ、エだと思えばエにも聞こえる」という(日本人にとっては)中途半端な響きを持つのが英語の [ i ] である。

日本語の「エ」と比べると口の開きが狭いが、英語の [ i ] は、日本人の耳にはしばしば「エ」に聞こえることがある。

[ iː] の音は、日本語の「イ」よりも更に舌の緊張が強く、唇の両脇もはっきりと左右に引っ張られて発音される。子供が嫌いな人に向かって「イーだ!」というときの「イー」の音がこれに当たる。とにかく、ただ日本語の「イ」を伸ばせばいいのではないとよく覚えておこう。

itそれ [ ít ]
eat食べる [ íːt ]
 
mittミット [ mít ]
meet会う [ míːt ]
 
sit座る [ sít ]
seat座席 [ síːt ]
 
hit打つ [ hít ]
heat [ híːt ]
 
ship [ ʃíp ]
sheep [ ʃíːp ]
 左の表の上下のペアは単なる母音の長さの違いではなく、音の硬さが大きく異なることをよく確認しよう。

 ブラウザの別ウインドウにオンライン辞書を表示させ逐一、音声サンプルで確認、比較をしていただきたい。



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029. [ e ]

 この音も日本人には簡単な部類。日本語の「エ」とほとんど同じだが、口をもっとはっきり左右に引く。右図の調音点で日本語の「エ」より左上に位置していることからもそれが分かる。

 どの音素についてもあてはまることだが、外国語の発音を練習する際には、それぞれの「口の形」をしっかりと作ることが大切。日本語のカタカナ読みを離れて、独自の口の構えというものを覚えていく。そのとき日本語におけるなんらかの発音と比較して、口の形がどう違うかを意識することは目安になる。単語で発音練習する際は、唇の動きをはっきりとさせること。
 この音については、すでに練習した [ i ] の音と対象させて練習することにする。例によってオンライン辞書を別ウインドウで表示させながら音声サンプルで逐一確認しよう。
pit [ pít ]
petペット [ pét ]
 
sit座る [ sít ]
set据え付ける [ sét ]
 
mittミット [ mít ]
met会った [ mét ]
 
pinピン [ pín ]
penペン [ pén ]
 
disc円盤 [ dísk ]
desk [ désk ]



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030. [ u ] [ uː]

 この2つの音も単に長さの違いではなく、音の質が違う。すなわち唇の形自体が違う音である。

[ u ] を発音する際は、唇を心持ち丸め、口は半開き、舌の後ろの部分が高くなる。日本語の「ウ」の調音点と比べるとやや右下に位置していることから分かるように、日本語の「ウ」より口の丸め方が強く、舌の位置は「オ」に近くなる。
 初心者の方は [ u ]を日本語の「ウ」で代用しても差し支えない。この2つは調音点も同じではないがかなり近いので [ u ]を「ウ」で代用しても通じないことはまったくない。

 唇の形の表を再度表示する。
 [ uː ] は母音の中でもっとも口の丸め方が狭い。(これが更にせまくなりもはや母音ではなくなったのが、子音[ w ] であり、これを「半母音」と呼ぶこともあるが、半母音は「母音的性質を帯びた子音」であり、あくまでも子音である。)
 
book [ búk ]
look見る [ lúk ]
cook料理人 [ kúk ] u が「オ」に近く響くため「耳から入った外来語」として「コック」がある
goodよい [ gúd ]
 
youあなた [ júː ] 発音記号での j は「y」の音
who [ húː ]
doする [ dúː ]
use使用 [ júːs ]
 
pull引く [ púl ]
pool水たまり [ púːl ]
 
full満ちた [ fúl ]
fool愚か者 [ fúːl ]



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031. [ ə ]

 この「e」をひっくり返したような記号は「曖昧母音」といって、その名が示すとおり、「アイウエオ」のどれにも聞こえる(あるいは聞こえない)ような曖昧な音である。間単に言うと、どんな母音でもアクセントがなくなり弱くいい加減に発音されるとこの音になる。すべての母音が弱形化したとき、この発音になるということだ。

 下の調音点や口の開きの図で [ ə ]は真ん中にある。つまり「どっちつかずの中途半端(=曖昧)な位置」ということである。

 
 はじめはっきりと「アイウエオ」と発音し、それを繰り返しながら徐々に口の力を抜いて「だらしなくいい加減」に発音していくと、やがて口がまったく動かないまま全部の母音を同じような音で発音するようになっていく。その結果として出される音がこの曖昧母音である。だから「アだと思い込んで聞けばアにも聞こえ、エだと思えばそうも聞こえる」という実に中途半端な音となる。
 「だらしなくいい加減に」発音された母音だと述べたが、これは実にその通りであり、現実に英単語の中に現れるこの発音は、必ず「アクセントのない弱い母音」となる。言い換えると、別の母音にアクセントを取られた結果、発音の谷間にような存在となった音節ではこの曖昧母音となるということ。
 従って曖昧母音を発音する際は「口の開きは小さめ」にし、顎や舌の力を抜き、唇も意識して特別な形を作らない

i
e
æ
a
u
ɔ
ɒ
ʌ
これらすべての母音が弱く発音されると ə になる

Japan日本 [ dʒə-pǽn ]
bananaバナナ [ bə-nǽn-ə ]
woman女性 [ wúm-ən ]
common共通の [ kɑ́m-ən / kɔ́m-ən]
today今日 [ tə-déi ]
tomorrow明日 [ tə-mɑ́r-ou / tə-mɔ́r-ou ]
Americaアメリカ [ ə-mér-i-kə ]
butterfly [ bʌ́t-ər-flài ]

注)butterfulyの「-ter-」の「」音はイギリス式発音では、発音されない。(これを斜自体の [ r ] で表す)



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032. [ əːr ] r は米式発音。英式では発音されない)

 この音も発音記号での表記がしばしば誤解を招きやすい例の1つといえる。
 この項目の中で[ əːr ]という斜字体の [ r ] まで含めているのは、これ全体で1つの記号という扱いとなるからだ。
 留意すべき点としては[ əː ]という曖昧母音をただ伸ばしただけの音を発音「し終わってから」子音の [ r ]を付け足すという意味ではない。だとしたら「全体で1つの音」ではなくなる。

 この発音は文字で表記するのが困難なため、辞書によってもかなりその書き方にはばらつきが認められる。上述の通り、曖昧母音を伸ばした音を発音したあとに [ r ] を付け足すのではなく、全体で1つの母音として認識されることをなんとか伝えようと、[ ɚ ]という特殊記号のあとに長音符号をつけるなどの工夫も見られる。(この記号は「rの音色を帯びた曖昧母音r-colored schwa)」と呼ばれる。)これは/r/を発音する口の構えのままその音を伸ばしたもので本来子音である/r/が母音化したものと解釈することができる。実際、辞書によっては /rː/という記号でこの発音を示しているものさえある。
 イギリス式では「あとに母音が続かないときはスペルに r があってもそれが発音されない」ため、そのことを斜字体の r で表していたりもする。

 この記号によって表される発音を米式と英式に分けて書き直したのが下の図である。発音要領も英米で異なる。

[ ɚːr / əːr ]の練習
bird [ bə́ːrd ]
girl少女 [ ɡə́ːrl ]
heard聞いた [ hə́ːrd ]
word単語 [ wə́ːrd ]
work仕事 [ wə́ːrk ]

※ただし米式において/ə+r/の発音要領がまったくの間違いかというと、そこまでではない。Wikipedia(https://en.wikipedia.org/wiki/R-colored_vowel)には次の補足説明がある。

In singing:
Dropping or weakening of r-colored vowels when singing has traditionally been nearly universal and a standard part of vocal training, but there are now numerous exceptions, including many Irish singers and many performers of country music; though this is not universal. In certain particular cases, a vowel + r is pronounced as two syllables instead, a non-rhotic vowel followed by a syllabic r.

【参考和訳】
 同じ r-colored(rの音色を帯びた)母音であっても、歌の場合はそのrの音色を帯びさせないまま/ə/の音が伸ばされるのが、ほとんどどこの国にも共通した発声法となっている。しかし最近ではこれにも多くの例外が認められ、アイルランドの歌手たちやカントリー音楽の歌手などはr-coloredの母音のままで歌っている。さらに場合によっては「最初にr音色を帯びない/ə/の発音を行い、その末尾に/r/の発音をするという英式と同じ発音の仕方も行われており、この要領では/ə/だけで1音節、その後「子音音節」を構成する/r/がそれを追う」ように発音されるが、通常の会話でこの要領が用いられることはない。


 発音記号の/ɚ//ə//r/の音をある程度の比率で混ぜた音色ではあるが、「北米の訛り」の一種でもある。Youtubeなどで色々なアメリカ人の発音を聞いてみると、「rの音色を帯びた/ə/をそのまま伸ばしている」発音もしているし、ときには長母音の発音の最中(特に後半部分)で舌の位置が上に変化して末尾の/r/がより強くなって終わる発音をしていることもある。同じ人物が同じビデオの中で両方の発音をしていることさえ観察される。
 /ɚ/の音だけを発音してもらうと、例外なく「固定的な同じ音をそのまま伸ばす」発音がなされるが、単語の中で発音されると後に続く子音によっては、その発音がしやすいように/ɚ/の発音の最中に舌がすでに移動を始めるため、/ɚ/の発音の後半から末尾にかけて/r/の音が一層強まるように聞こえる場合もある。

[ ər ] と長音記号のない形は単語の語尾に現れ、イギリス式では、やはりつづりに r があっても発音されない。ただし、母音で始まる単語が追いかける場合だけは、イギリス式でも [r] の発音が現れる。

[ ər ][ ɚ ] という1記号で表している辞書もある。
brother兄弟 [ brʌ́ð-ər ]
eraser消しゴム [ i-réis-ər ]
father父親 [ fɑ́ː-ðər ]
paper [ péi-pər ]
picture写真 [ pík-tʃər ]
teacher先生 [ tíː-tʃər ]



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033. [ ɑːr ] r は米式発音。英式では発音されない)

027で解説した [ ɑ ] は「あくびするほど大きな口をあけるア」であったが、その音を伸ばしたものがこれ。米式ではつづりに従って [r] が発音されるが、英式ではつづりに r があっても発音されない。(ただし語尾の r だけは母音が追いかけるときに発音となって現れる。)father(父親)の a の部分はつづりに r がないのでアメリカ式でも当然 [r] は発音されない。
garden [ ɡɑ́ːr-dn ]
car自動車 [ kɑ́ːr ]
park公園 [ pɑ́ːrk ]
heart心臓 [ hɑ́ːrt ]
markしるし [ mɑ́ːrk ]
far遠い [ fɑ́ːr ]
gar-den (garden) の第2音節には母音の発音記号がないが、これは第1音節に強いアクセントがあるためもともとあった母音が極端に弱形化し、ついには脱落したもの。記号では示さないが現実の発音としては [ ɡɑ́ː-dən ] と曖昧母音が残った音になることも多い。


(註)上記 garden, car, park, heart, mark, far の発音記号の表示が閲覧者によっては適切に表示されていないという報告を受けました。たとえば「mark」の発音表記 [ mɑ́ːrk ] が 〔ma●:k〕のように見えている場合、本来は「a」の母音にアクセント符号のついた音を表しています。
 http://rishida.net/scripts/pickers/ipa/ のサイトでタイピングした記号を用いていますが、必ずしもすべての発音記号が完全に再現されてないようです。現在完全な対応方法が見つかっておりません。お手数ですが、万一「おかしな記号」が表示されている場合は、online辞書などで発音記号を確認してください。


続いて [ ɑ́ːr ] と「032」の [ ə́ːr ] をそれぞれ含む語を比較しながら練習してみよう。
非常に大切な区別であり、このあたりの区別がしっかりできるようになってくると英語の発音に自信が持てるようになる。自分自身の発音によく耳を傾けて、その違いを聞き分けることにも十分注意を払うこと。

hard固い [ hɑ́ːrd ]
heard聞いた [ hə́ːrd ]
 
heart心臓 [ hɑ́ːrt ]
hurt傷つける [ hə́ːrt ]
 
far遠い [ fɑ́ːr ]
fur毛皮 [ fə́ːr ]



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034. [ ɔː ] [ ɔːr ] r は米式発音。英式では発音されない)

この母音は日本語の「オ」よりも意識的に口を丸くして発音する。短母音の [ ɔ ] よりも長母音となったときの方が、口の開きはやや小さめで、舌の位置が少し高くなるが、「口を丸める」ということを強く意識することが大切。
また後に学ぶ二重母音の [ ou ] としっかり区別するように、長母音の [ ɔː ] では [ ɔ ] の口の形を保ったまま、その音を伸ばし、途中で口の形を [ u ] に変えて「オウ」とならないように注意する。発音でしっかり区別できることにより単語のつづりで迷うこともなくなる。
ballボール [ bɔ́ːl ]
tall背が高い [ tɔ́ːl ]
wallかべ [ wɔ́ːl ]
fall落ちる [ fɔ́ːl ]
call呼ぶ [ kɔ́ːl ]
small小さい [ smɔ́ːl ]

horse [ hɔ́ːrs ]
course進行 [ kɔ́ːrs ]
chord [ kɔ́ːrd ]
pork豚肉 [ pɔ́ːrk ]
war戦争 [ wɔ́ːr ]
north [ nɔ́ːrθ ]



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035. [ ai ] (二重母音)

まず念頭において頂きたいのは「二重母音」というのは、これで「1つの母音なのであり、音節上も1音節を構成する。決して [ a ][ i ] を並べて発音するのではない。 [ ai ]という記号の表記から、そういう誤解を招きやすいため、辞書によっては [ ai ] というふうに a の右肩に小さく i の文字を乗せるという表記の工夫しているものもあるが、本サイトでは一般的な辞書に合わせて [ ai ] の表記とした。従って、発音記号上は [ ai ] で1文字扱いだと理解していただきたい。

二重母音には何種類かあるが、いずれも最初の記号で表される発音が主体であり、2文字目の発音はその直後に軽く添えられるといった感じで発音される。この [ ai ] においても、まず [ a ] をはっきりと強く発音し、その後口の形を [ i ] に変化させ、弱めにその音を添える。これを「1拍」の中で行うことが大切。決して「アイ」と2つの音を並べるのではない。
fine元気な [ fáin ]
nine [ náin ]
five [ fáiv ]
right正しい [ ráit ]
like好む [ láik ]
kind親切な [ káind ]
knifeナイフ [ náif ]
mine私のもの [ máin ]



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036. [ ei ] (二重母音)

035の [ ai ] と同じく、こちらも二重母音。すなわち「1つの母音」である。カタカナで書いてしまうと「エイ」は「エ+イ」という2音節になってしまうが、 [ ei ] はあくまでも1音節を構成する一拍の音であることを念頭に置くこと。無理やりカナで書くなら「エィ」とでもなるだろうか。

この発音記号についても二重母音という1つの音であることを示すため [ e ] の右肩に小さな [ i ] を添えた形 [ ei ] があるが、先の [ ai ] 同様、このサイトでは日本で市販されている一般的な辞書表記に合わせて [ ei ] の記号を用いることとする。

二重母音では最初の母音が中心的な音であり、それをはっきりと発音してから、後ろの母音を添えるように発音する。くどいようだが必ず [ ei ] を一拍として一気に発音するように。
day [ déi ]
say言う [ séi ]
late遅い [ léit ]
fate運命 [ féit ]
trade取引 [ tréid ]



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037. [ ɔi ] (二重母音)

これもまた二重母音、一拍の音だ。 [ ɔ́ ] の発音の直後に [ i ] を添える。
[ ɔ ][ i ] が並んでいるのではなく、「二重母音」という1つの母音だと認識してほしい。2つの母音ではないことを視覚的に理解しやすくするため、[ ɔi ] というふうに[ ɔ ] の右肩に小さく[ i ]を添える書き方をしている辞書もある。

 音の中心は[ ɔ́ ]にあり、その音をはっきり発音した直後に、すかさず[ i ]を添えるという感じで発音するとよい。
boy少年 [ bɔ́i ]
toyおもちゃ [ tɔ́i ]
boil沸騰する・させる [ bɔ́il ]
soil [ sɔ́il ]



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038. [ au ] [ ou ] (二重母音)

二重母音というものの要領は、これまでの解説・練習ですでにつかめるようになったことと思う。
ここでは [ a ] または [ o ] の音の直後に [ u ] を添える例をまとめて練習しよう。 [ a/o ] を発音した直後、ただちに唇を丸くすぼめ [ u ] へと一気に移行する。これも1音であることを明確にするため [ au ], [ ou ]という表記が用いられることがある。

すでに述べたが二重母音の中心の音は前の母音である。だからもし何かの都合で二重母音を長く伸ばして発音するときは、前の母音を伸ばして最後に後ろの母音を添える。このときもし、すぐに後ろの母音へと移行してしまい、後ろの母音を伸ばした発音をすると [ au ] [ a-u ] という2音節に分かれてしまうので注意。たとえば ouch を伸ばして読むとすれば「アーゥチ」のようになる。これを「アウーチ」と読まないということ。

ouch痛い! [ áutʃ ]
loud音の大きい [ láud ]
cloud [ kláud ]
shout叫ぶ [ ʃáut ]
house [ háus ]

boatボート [ bóut ]
hold握る [ hóuld ]
show見せる [ ʃóu ]
hope希望する [ hóup ]
go行く [ góu ]



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039. [ iər ] [ ɛər ] (二重母音)r は米式発音。英式では発音されない)

これらを英米の違いによって、より厳密に表記しなおすと:
米式 [ iɚ ], [ ɛɚ ] [ ɚ ]は通常の[ə]と異なる「rの音色を帯びた音」)
英式 [ iər ], [ ɛər ] ( r は後に母音が続くときのみ発音される)
と書き分けた方がよいとも言えるが、 [ ɚ ]の記号を用いている辞書があまり多くないことから、この解説ではアメリカ式の発音でも [ iər ]の表記を用いるが、アメリカ式、イギリス式の発音を自分の基準として学ぶ人は、記号の解釈を立て分けていただきたい。(記号の問題より、実際の音に耳を傾けて、その音と記号をイメージとして一致させればよい。)

 発音要領としては[ i ]あるいは[ e ]の音をまずはっきり出し、その直後に舌の緊張をふっと緩めてやればよい。その際、舌を[ r ]に構えてしまえばアメリカ式の音となり、r の音色を帯びさせなければイギリス式の音となる。
 二重母音や三重母音では短母音に使われなかった[ ɛ ]の記号が含まれているが、これは[ e ]のまま発音しようとして問題ない。音としてはわずかに違うものではあるが、二重、三重母音として直後に曖昧母音へと移行しようとすればその音の違いが自然に現れる(無意識に調音点が変わる)ので、[ ɛ ]の記号が表す音だけを単独で習おうとするまでもない。

イギリス式発音では音節の語尾に r が来る場合、たとえスペルに r があってもそれを発音しない。ただしイギリス式であっても、 r の直後に母音が追いかけるときに限り、リンクという現象を起こし、単語単独では発音されなかった r が「 r +母音」の形で音になって現れる。「mother」をイギリス式で発音すると語尾の「 r 」は発音されないが、「My mother is..」となったとき、「mother」の r を母音「 i」が追いかけ、その部分の音がつながり [ iz ] [ riz ] と発音されることとなる。

イギリス式発音の特徴:語末の r は通常発音されないが、母音とリンクするときは発音される)

1, My mother has a good piano.----- r を子音( h )が追いかけている> r は発音されない
2, My mother is a good pianist. ----- r を母音( i )が追いかけている> r は発音される

アメリカ式発音では、スペルに r があれば、単語単独のときから発音される。(そもそもアメリカ式の発音では母音自体がrの音色を帯びているので r を母音が追いかけたときはもちろん発音のリンクも起きる)

なおアメリカ式とイギリス式の発音については、どちらを用いてもかまわないのだが、いずれか一方を首尾一貫して用いるべきであり、部分部分で発音が混じるのは避けるべきである。アメリカ人にもイギリス式発音は通じるし、その逆も同様。あまり神経質になりすぎる必要はないが、統一性は保った方がよい。もし将来の予定としてアメリカ式かイギリス式を使う国を訪問したり住む予定や希望があれば、それを優先して練習しておけばよいが、特に決まった予定がないのであれば、アメリカ式で覚えておくのがスペルとの一致が簡単で合理的とも言えるのでよいかも知れない。
ear [ íər ]
year [ jíər ]
fear 恐れ [ fíər ]
near 近い [ níər ]

earyear の違いに注意。ear は母音で始まるが、year の方は「ヤ行の子音(ローマ字の y の音」が先頭にある。
現代日本語の「や行」には「や、ゆ、よ」しかないが、英語的には「ya, yi, yu, ye, yo」がある。

bear [ bɜ́ər ]
care 心配 [ kɜ́ər ]
fair 公正な [ fɜ́ər ]
share 分かち合う [ ʃɜ́ər ]



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040. [ uər ] (二重母音)r は米式発音。英式では発音されない)

 英米を厳密に書き分けるとすれば:
米式:[ uɚ ]---[ u ]の母音が中心でそれに「r音色を帯びた曖昧母音」が添えられる発音
英式:[ uər ]---[ u ]の母音が中心でそれに通常の曖昧母音が添えられる発音。ただし後に母音が続くとスペルのrが発音にも現れる。

 これも二重母音なので、[ u ] を明確に発音し、その直後に曖昧母音を直ちに添える感じ。添えられる曖昧母音は、アメリカ式では「Rを発音する舌の位置」となり、イギリス式なら普通の曖昧母音。
your あなたの [ júər ]
sure 確かな [ ʃúər ]
cure 治療する [ kjúər ]
pure 純粋な [ pjúər ]



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041. [ aiər ] [ auər ] (三重母音)r は米式発音。英式では発音されない)

これは二重母音のさらに直後にまたもう1つの母音を添えるもの。
要領としては、まず二重母音を発音し、即座に口の力を抜き曖昧母音までを発音するのが三重母音となる。

 三重母音も最初の母音が「音の中心」であり、それをはっきり明確に発音した直後に次の母音をすばやく添える感じ。そしてさらにふっと舌の緊張を抜くと自然に曖昧母音が添えられる。アメリカ式では最後に添える曖昧母音で舌は[ r ]の発音の位置に構えられる。
 これらも音のイメージを視覚的に文字にも反映させようとすれば [ a ][ a ]のように書きたいところ。発音記号での表記はともかく、ポイントは「ア-イ-ア」や「ア-ウ-ア」のような3拍として発音しないこと。2重母音も3重母音も、「それで1拍」として発音するようにしよう。

音節末尾の [r ] については先の039~040と同じ。
三重母音もまた「1音節(=一拍)」を構成する1つの母音であることを忘れないように。これはしっかり練習しておこう。「 hour」をカタカナ的に「アウアー」などと発音すると、それは4音節になってしまい、hour 本来の1音節の発音からは大きくかけ離れてしまい、通じないほど間違った音となる。

fire [ fáiər ]
wire 針金 [ wáiər ]
tire 疲れさせる [ táiər ]

(注意)上記の例は1音節の中に3つの母音が連続しているので3重母音であるが、「liar」は「lie /lai/ 」+「-er」による2音節語なので、「2重母音の音節」を「1音節」が追いかけているだけであり、3重母音ではない。
li-ar 嘘つき [ lái.ər ]

our 私たちの [ áuər ]
hour 1時間 [ áuər ]

(注意)上記例は1音節なので3重母音。しかし次の例は「2重母音+-er」なので3重母音ではない。実際の発音も微妙だが違う。3重母音は「1拍の中に3つの母音が納まる」感じで発音されるが、下の例では「2重母音」をまとめて発音したあと、次の音節が発音されるので、比較してみるとやや長く感じられる。
power [ páu.ər ]
tower 塔・タワー [ táu.ər ]

 「3重母音を含む音節」と「2重母音音節+母音で始まる次の音節」の違いを実際の音声サンプルでよく聞き比べてみてください。
Oxford Advance Learner's Dictionary
 上記辞書は英米両方の発音が聞けますので、例としてあげた単語を検索して音声サンプルをよく聞き比べてみてください。



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