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316. 比較級比較

 形容詞・副詞の比較級は基本的に2つのものの間で優劣を表現するもので比較対象を接続詞thanで導きます。
 形容詞や副詞が比較級になっていることで「もっと~」を表し、それが何と比べてかを than が「~よりも」で伝えます。つまり比較級とthanはセットになっていると考えてください。

 日本語では「~よりも、、、」の語順で情報が現れますので「もっと」は必ずしも言葉に表れませんが、英語では比較級が先に現れるため「もっと」に相当する比較級語尾は必須です。これを省いて後に than以下が続くことはありません。



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317. 優等比較と劣等比較

優等比較

 あるものを比べて他者より程度が高い、勝っていることを表す構文が「優等比較(または優勢比較ともいう)」です。比較級構文としてはこの意味を表すものが基本であり、形容詞・副詞が比較級になっているということはその語が表す程度が「より高い、勝っている」意味となります。

He is taller than I (am). 彼は私より背が高い。
This is heavier than that (is). これはあれよりも重い。
He ran faster than I (did). 彼は私より速く走った。

 使われる形容詞や副詞が「負の意味」である場合はその「負の程度」がより大きいことを表しますが、これも優等比較に含まれます。「程度がより大きい」という発想としては同じだからです。

He is shorter than I (am). 彼は私より背が低い。
This is lighter than that (is). これはあれよりも軽い。
He walked more slowly than I (did). 彼は私よりもゆっくり歩いた。

劣等比較

 形容詞や副詞を原形のままで、その前にlessを置くと「より少なく~」の意味となるため、文意としては「優勢比較の否定」に近くなります。この表現方法を「劣等比較(または劣勢比較ともいいます)」と呼びますが、しばしば、やや古めかしく堅い表現に聞こえることがあります。カジュアルな場面で同じ意味を伝えるならより口語的な別の言い方があります。

He is less tall than I am.
= He is not so tall as I am.
(= He is shorter than I am.)
<常に上の文と同じニュアンスとは限らない

 この劣等比較は響きとしては堅いものになりますが、現代英語でこれを使ってはならないわけでもなく、意図的にこの形式を用いた方が論理性が伝わりやすかったり、場に合った表現と感じられることもあります。

(a) This expression sounds less formal than that.
この表現は、あの言い方に比べるとフォーマル差において劣る。

 これを

(b) This expression sounds more informal than that.

 と優等比較で表現したのではニュアンスがかなり違って感じられます。this that の2つの expression で「どちらがよりフォーマルか」という優劣の関係は(a), (b) で同じであっても、この2つの文から伝わってくる内容は同じではありません。

 2つの表現方法について「どちらがフォーマルか」を比較しているものの言い方は(a)です。それに対して(b)の言い方をしてしますと「どちらもフォーマルでない」という前提の上で、「こっちがもっとインフォーマルだ」という意味となります。
 (a)は「これ」と「あれ」の2つの表現が「どちらもフォーマル」であるという前提の上で「これは程度が劣る、及ばない」と述べていると聞こえるのに対して、(b)の言い方だと「どちらもフォーマルでない」ことが出発点になっていると感じられます。

 なお、もともと「意味が下に向いている」形容詞、副詞は「less原形」の形では用いません。これは意味から考えても非常に不自然であることが分かると思います。これは「less」を使った表現が「あることを競い合って負けている」ニュアンスを持つため、「競う価値や意味を感じない形容詞や副詞」と同時に使う必然性がないからです。(よほど特殊な文脈において、その性質が価値的であるという発想なら、絶対に less原形が使われないとも言えませんが。)

(x) He is less short than I am.
⇒He is not so/as short as I am.

(x) This bag is less light than that.
⇒This bag is not so/as light as that.

(x) My room is less dark than yours.
⇒My room is not so/as dark as yours.



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318. than使用上の注意

 比較表現で比較される2つのものは同じ種類でなければなりません。これは日本語からの直訳にとらわれているとしばしばつまづく注意点です。
 たとえば「東京の人口は大阪よりも多い」という日本語はまったく自然なものですが、ここで比較されているのは「東京の人口」と「大阪の人口」です。「東京の人口」と「大阪(という都市)」は比較対象になれません。

The population of Tokyo is larger than that of Osaka.

 このように英語で表現するときは「than」のあとに「Osaka」だけを置くのは不適切となり、日本語的にいうと「東京の人口は大阪の『それ』よりも大きい」というふうに population 同士の比較であることを代名詞によって示すことになります。

 「than」は接続詞ですからその後には「主語+述語」をそろえた節が本来続いており、前後関係から同じ言葉の繰り返しになっている部分が省略された結果、まるで単語だけがthanに導かれているように見えることがありますが、比較構文において than が前置詞として使われることはありません。

 上記例文は次の2つの事実を比較しています。

(1) The population of Tokyo is large.
(2) The population of Osaka is large.

 この2つの事実について「(1) > (2) 」の関係を示したのが

[ the population of Tokyo is larg(ER) ] than [ the population of Osaka is large ]

 であり、言葉の繰り返しとなっている「the population」は代名詞「that」に置き換わり、「is large」は省略されて最初の例文になるわけです。

 このようにthan は接続詞として「比較される『事実』」を導くのですが、節の省略の結果、単語しかあとに置かれない場合は感覚的に前置詞のようにも思えてしまうため、口語では「主語の形(主格)」が来なければならないときに「目的語の形(目的格)」が使われてしまうことがあります。

He is taller than me. (「me」は文法的に「I am (tall)」の省略結果として「I」が正しい)

 このような表現方法は厳密には間違いなのですが、口語ではごく普通に用いられており、ここで「文法に忠実」に「than I」というと、「文法に妙にこだわりすぎている」とか「気取った言葉遣い」などの印象を感じる人もいるようです。ただしそれは「英語ネイティブ同士」の会話での場合であり、外国語として英語を学ぶ人が、「基礎文法に忠実」に「than I」と言ったからといって悪い印象を持たれることはありません。せいぜい「学校で習ったとおりに話しているんだな」と思われる程度です。

 なお勘違いしないでいただきたいのですが、「学校で習ったまま」や「教科書通り」の英語はまったく正しいものであり、口語的でないからといってなんら恥じるものではなく、「than me」といわず「than I」と言う人を「現実の英語を知らない」などとさげすむのはまるで見当違いです。「than me」という口語を口にした程度で「英語が達者」なことにはまったくなりませんし、それが英語がうまい証明になどこれっぽっちもならないということです。まれにそういう口語、俗語表現を使うことが英語のうまさだと履き違えている人を見かけますので一言添えておきたいと思います。

 日本人の話す英語であっても、全体的に自然な発音ができて、抑揚なども意味に応じて上手にコントロールされていると、その分「外国人のかたこと」と感じられなくなってきますので、英語ネイティブ同士の会話から感じ取られる印象と同様のものを与えるようにもなってきます。

 もっとも無難なのは、この英文の場合なら「than I am」まで言うことです。これは十分丁寧であり、完璧に文法的であり、それでいて古めかしい表現や教科書的という堅苦しい印象も与えません。次のような表現を参考にしてください。

1, He runs faster than I do. 彼の方が私より速く走る。
2, He can run faster than I can. 彼の方が私より速く走れる。
3, He is more familiar with it than I am. 彼の方が私よりそれについて詳しい。

 このように「I」のあとに何を補うかは対象される内容に応じて代わります。
 1は「he runs」に対して「I run」。「I run」のままでもよいのですが、一般動詞は通常代動詞(do/does)に置き換えます。過去形なら「did」1語で済ませますが、未来を表すときは「will」だけで構いません。
 2は「he can run」の形式と対応させているため「I can run」の「主語+助動詞」を残しています。これは機械的な対応というわけではなくあくまでも意味に応じて判断してください。
 3は「He is 形容詞」に対応して「I am 形容詞」ですから「主語+be」となります。
 パターン自体はいたって簡単かと思いますので、thanのあとに主格代名詞を使うときはこの言い方を優先的に用いるようにすることをお勧めします。



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319. 比較級の強調

 2つの対象について何らかの程度の優劣を表現するとき、どちらが上であるこことに加えて「どれくらいの差」があるのかも意味として添えることができます。通常の原級なら「very」で形容詞や副詞を強めることができますが、比較級を強めるときにveryは用いません

 これは日本語でも同じような発想があり、「とても」という言葉は比較級相当の言葉を強調するのに用いられていないことに気づいてください。例えば「Aは大きい」だけなら「Aはとても大きい」といいますが、「Aの方がBより『とても』大きい」は不自然ですね。それを言うなら「Aの方がBより『ずっと、遥かに』大きい」などと言いますね。これと同様の違いが英語にもあるというわけなのです。

 そのように比較級を強めるのに使われる副詞としては much, far がよく使われます。またそのバリエーションとして「by far」や「far and away」などという言い回しもあります。

Bob runs much faster than John (does).
ボブはジョンよりずっと速く走る。
Jane is far more beautiful than Mary.
ジェインはメアリーより遥かに美人だ。

 程度の差を漠然と強調するだけでなく、具体的にその差を述べることもできますし、その他の副詞で色々と細かく「差」についての説明を加えることもできます。

Jane is a little more beautiful than Mary.
ジェーンの方がメアリーより少しだけ美人だ。
Jane is somewhat more beautiful than Mary.
ジェーンの方がメアリーより、やや(幾分、ちょっと)美しい。
Jane is rather more beautiful than Mary.
ジェーンとメアリーだと、どちらかと言えばジェーンの方が美人だ。
(差は微妙だが、敢えてどちらと言うならば)
Jane is definitely more beautiful than Mary.
ジェーンの方がメアリーより断然美人だ。(明確に、きっぱりと)
Jane is considerably more beautiful than Mary.
ジェーンの方がメアリーよりかなり(相当)美しい。(その差を十分考慮できるくらい)

 これらの副詞は比較級に限らず原級と共に用いても自然なものです。それは比較級になれる形容詞や副詞がもともと「常識的な暗黙の基準」との比較の意味を含んでいるからです。

 「still(さらに、一層)」という副詞は、1つの比較を踏まえて「その差よりもさらに」のように2段階的に使われます。

Jane is beautiful, but Mary is still more beautiful.
ジェーンは美人だ。しかしメアリーはさらにもっと美人だ。
Jane is more beautiful than Mary, but Sophia is still more beautiful.
ジェーンはメアリーより美人だ。しかしソフィアはさらにそれ以上の美人だ。

 数量の多さを比較するとき、まず具体的な差を数量詞で表現できます。

He bought three more books than I did.
彼は私が買った本より3冊多くの本を買った。

My brother is 2 inches taller than I am.
私の兄は私より2インチ背が高い。

This bag is 500 grams heavier than that one.
このバッグはあのバッグより500グラム余計に重い。

 これら具体的な数量詞は、数えられる場合 many に、数えられない場合は much に置き換えて強調できます。

He bought many more books than I did.
This bag is much heavier than that one.

 many, muchとも「a lot」に置き換えることもできます。

He boght a lot more books than I did.
This bag is a lot heavier than that one.



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320. ラテン語由来の比較級

 ある元になる原級に語尾を加えて比較級にしたのではなく、もともと比較級の形のまま英語に取り込まれた単語があります。特にラテン語の比較級がそのまま英語に入った語は、語尾が -or となっており、さらに比較対象を示すとき than ではなく to を用いるという特徴があります。このtoは前置詞ですからthanのように節は導きません。

 またこれらの語は英語に取り込まれた時点で比較級を元にしているため、英単語としての原級や最上級を持ちません。比較級としての意味を表した使い方のほか、そのままの形で原級扱いされることもあります。

senior ⇔ junior

 基本としては年齢の上下を表しますが、older/youngerにはないニュアンスや意味も持っており「学年、役職などの上下」の意味を表します。このような場合のseniorは「先輩」や「上役」に相当する言葉であり、必ずしも年齢の上下関係とは一致しません。

 さらに英語文化ではしばしばあることとして、父親と同じ名前を息子につけたとき、父と子を senior, junior で区別したりもします。

 またこれらの語は名詞としても用いられます。

He is five years senior/junior to me.
= He is five years my senior/junior.

She was his senior in rank. 彼女は彼より役職が上だった。

 またスポーツの大会の出場者年齢区分として18歳未満を対象とするものを junior, 18歳以上を対象とするものを senior と呼び分けるなど older/yongerとは大きく異なる独自の使われ方が色々とあります。

 またアメリカの大学で1,2,3,4年生を順に
freshmen, sophomore, junior, senior
と呼びます。高校の3学年については1年のことを「freshman」または「sophomore」のいずれでも呼ぶことがあり、2年が junior、3年がseniorになります。つまり senior はどちらも「最高学年」であり、その1つ下が junior ということです。

 

superior ⇔ inferior

 地位、品質、重要性などにおける上下を意味します。
 superior の部品である「super」は Supermansupermarket など目にすることも多いので「上、超」に相当する意味であることを知っている人も多いでしょう。
 「super」に対して「infra」という部品を含むのが「inferior」です。「インフラ」といえば「infrastructure」の略であり単語の意味としては「下部構造」であり、「道路、河川、鉄道、通信施設、下水道、さらには学校、病院などまでを含む社会経済基盤を作るものの総称」として使われます。つまり「infra」という部分はそれ自体が「」の意味を持っています。

 かなり昔のパニック映画で「タワーリング・インフェルノ(1974年・アメリカ)」というものがありましたが、これは超高層ビルが火事になる「地獄」の様を描いたものでした。この「インフェルノ(地獄)」も「inferno」であり、「下」を意味するラテン語からイタリア語に入ったものが英語に外来語として取り込まれたものです。(infernoの反対語はparadisehellheavenの反対語)

 

major ⇔ minor

 日本語(外来語)として「メジャーリーグ」、「マイナーリーグ」で耳に馴染んでいるかと思います。音楽を趣味とする人なら「D major(ニ長調)」や「A minor(イ短調)」などの使われ方でも知っているかと思います。

 基本として「大きさ、量、程度などが(より)大きい、小さい」意味を表しますが、1つにはまとめられない多くの意味に用いられますので辞書などで色々な用例に触れてください。

prior ⇔ posterior

 語源的に「pri-」は「before」、「post-」は「after」に相当します。
 時間的前後順序の意味から展開して、優先順位の上下の意味も持ち、そこから「重要度」の上下の意味にもなります。

 「prior to」、「posterior to」で前置詞「before」、「after」の意味に用いられますが、before/afterに比べると堅い表現です。

 ラテン語源の動詞に「prefer」というものがありますが、これは1語で「like better」という比較の意味を含んでいます。上記ラテン語比較級に由来する形容詞と同じく比較対象を than ではなく to で導く性質も同様です。

I prefer tea to coffee.
= I like tea better than coffee.

 prefer から派生した形容詞「preferable」もラテン語源としての比較の意味をそのまま持っていますので、同様の性質を引き継ぎます。

Doing any job is preferable to doing nothing.
どんな仕事であっても、何もしないより好ましい。
<比較対象を than ではなく、to で導きます。
<「preferable」自体が比較の意味を含んでいるので moreはつけません。



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321. 数式的表現

 数学や物理などの数式に用いられる様々なシンボルを英語でどう読むかについては、実に多くの表現を網羅したサイトがありますので、まずはこちらを参考にしてください。

http://www.uefap.com/speaking/symbols/symbols.htm

 これらの中で、比較表現の関係したものとしては次の4つがあります:

> greater than
< smaller than
greater than or equal to
smaller than or equal to

A > B なら「A is greater than B」と読めばよいわけですね。

 このように比較級だけの場合は、その数字を含まないでそれより大きい、小さいことを表しますので、日本語で言う「~以上、以下」を表現したい場合は、一工夫必要になります。

 「greater/smaller than or equal to」は数式表現に用いられますが、日常会話などではこれに限らず色々な表現方法が考えられます。

He reads ten books or more per week.
彼は一週間につき10冊以上の本を読む。

It costs 1000 yen or less from here to the station by taxi.
ここから駅までタクシーで1000円以下しかかからない。

 口語的には「 more than 」を「 over 」や「 above 」1語で置き換えることもあります。その逆に「less than」は「under」や「below」で置き換えられます。

I have been speaking English for over 30 years.
=.... for more than 30 years.

私は30年以上に渡り英語を話してきている。
<大雑把な表現として「30年以上」と日本語では言うが、厳密には「over=more than」なので「30年」を含まない。(しかしこれをわざわざ「31年以上」とか「30年より多く」と和訳にこだわるのはかえって不恰好だといえます。)

Persons under 20 years old are now allowed.
20歳未満の人には許可されない。
<こちらの表現では「20歳を含むのか含まないのか」が重要ですから厳密に捉えるべきです。

 「以上、以下」というその数字を含むことを明確にする場合は
10 or over/above
10 or under/below

と「数字(+名詞)」のあとに「or over/above」、「or under/below」をおくことで表現できます。これは「10 or over 10」などの省略と考えればよいでしょう。



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322. the 比較級

 一般に比較表現といえば、「theは最上級につくもの」と固定的に考えがちですが、最上級でさえ副詞の場合にはtheがつきませんし、theがつく場合とつかない場合を形容詞が何級かという基準だけで判断するべきではありません。

 そもそも形容詞が原級であっても「the 形容詞+名詞」となっていれば、特定の名詞に対してtheがつくのは何の不思議もありませんね。

 最上級については次の項目で解説しますのでそちらを参照していただきたいと思いますが、形容詞の比較級にtheがつく場合もあることを知っておいていただきたいと思います。

 theは本来名詞に対して付けられるものであることは十分ご承知のことかと思います。それが「the 形容詞」となっているときは

1、形容詞のあとに名詞が省略されていると考える
2、形容詞が臨時に名詞の働きを兼ねていると考える

 かのいずれかです。どちらの考え方をしても構わないのですが、私個人としては2の理解の方が、細かいところではより適切かと感じています。ただ説明の便宜から言うと1の「名詞省略」の考え方の方が簡単であることが多くあります。

Bob is taller than Jim. ボブはジムより背が高い。

 このような場合、形容詞比較級のtaller the をつけることはないのですが、次の場合は the が必ずつきます。

Bob is the taller of the two. ボブはその2人のうち背の高い方(の人物)だ。

 意味から見ても「the taller」は「the taller boy」とか「the taller one」のように名詞的であることがわかります。その名詞的である意味に対してtheが必要となります。比較級のあとも「than」が来るのではなく、最上級構文のように「of」が来ていることに注目してください。つまり「~のうちで」という「of」があるため比較級形容詞が「より~な『方』」という名詞的意味になるのです。

 「the 比較級形容詞 of the two」

 これを決まり文句的な構文だとおさえておけばよいでしょう。
 もちろん、「of the two」は前後関係から明白であれば省略されることがあります。

A: They are Bob and Jim. 彼らがボブとジムだ。
B: Which boy is Bob? どっちがボブだい?
A: The taller one. 背の高い方さ。

 
 もう1つ、「the」がつくことにより「それだけもっと、それだけ一層」という意味を表す場合があります。

I was surprised when she suddenly got angry.
I was the more surprised when she went out the room, slamming the door.

彼女が突然怒り出して私は驚いた。
さらに彼女が部屋を出て行くとき大きな音を立ててドアを乱暴にしめたので、(その分)一層驚いた

 これは「彼女が乱暴にドアを閉めた」ことに対して「その分だけ」という対応する分量のようなものを「the」が示しています。その意味関係から考えると、この用法のtheは、対応する事実が描写されている箇所と相関的に用いられているものであり、「それだけ、その分だけ」という副詞的な働きをしているとも言えます。

 このような「the」の「その分だけ」という意味を表す用法からさらに進んで次のような構文が生まれます。

The higher we climbed, the colder the air got.
高く登れば登るほど、空気は冷たくなっていった。

The larger vocabulary you have got, the easier it will be for you to learn more words.
語彙が増えれば増えるほど、さらに多くの単語をより覚えやすくなる。

 前後関係から「SV」部分が明確な場合、それが省かれた結果非常にシンプルな形が残される場合もあります。

The sooner, the better. 早ければ早いほどよい。

 この「the 比較級, the 比較級」の構文について、もう一歩踏み込んで考察してみましょう。この構文はかなり特殊なものといえます。それは一般の複文のように「主節」と「従属節」という関係がなく、コンマを挟んで存在する2つの節がどちらも主節のような状態でつながっているという点にあります。ですからこの構文について「どちらが主節でどちらが従属節か?」と悩んではいけません。

 またさらに言うと、コンマを挟んで2つあるのは「大きな名詞」だということもできます。それはつまり「『ある分量』そしてまた『ある分量』」というふうに「2つの分量」がただ並べて置かれているだけなのです。

 先のこの例文をもう1度見てみます。

The higher we climbed, the colder the air got.

 これを上記解釈に基づいて、より構造に忠実な直訳をしてみるとどうなるでしょうか?

「私たちがより高く登った分量。(それに応じて)空気がより冷たくなる分量。」

 あるいは

「私たちがより高く登った分量があります。それに伴ってあるのが、空気がより冷たくなる分量です。」

「はい、これだけ余分に高く登りましたよ。はい、するとこれだけ余分に空気が冷たくなりました。」

 このように「the比較級」が「ある変化分量」を意味する名詞として機能しており、2つの分量がただ並べてあることにより「一方の分量が変化すると、それに伴ってもう1つの分量も変化する」という意味を伝えているわけです。

 この構文で2つの「分量」の中心にあるコンマは、まるで天秤ばかりの支点のようなもので、左側に「追加の重り」を乗せると、バランスを取るために右側にも「それに応じた重り」を乗せるという感覚的なイメージがあります。

 この構文の例文を口にするとき、左右にある「the 比較級」の箇所で「はい、これだけ上乗せしますよ」、「はい、こっちもこれだけ上乗せしまう」という感覚を抱いてください。和訳して「~するほど、、、」と覚えることよりも、文章表現からダイレクトに意味を「感じ取る」ことが大切です。原文の意味を正しく感じ取れたあとは、「さて日本人なら、こういうことをどう言い回すかな?」と頭のチャンネルを英語から日本語に切り替えて考えればいいだけのことなのです。

 

 比較級に関係するさらに多くの重要表現がありますが、それらについては最上級まで一通りの内容を把握してからの方が理解しやすくなりますので、そこまでの解説のあと、他の「原級、最上級」とあわせた重要構文として解説することにします。




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