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306. 動名詞

 動詞が「-ing」の語尾を取り、「~すること」という名詞の意味を表すものを動名詞と呼びます。この場合の「-ing」は動詞に名詞的性質を与える機能をしているといえますが、基本的に「動名詞」とは「名詞の機能を同時に果たせる動詞」のことですから、例えば他動詞の動名詞であれば目的語を取るなど動詞本来の機能も持っています。

 ただし動名詞の「動詞的性質」と「名詞的性質」のブレンド具合には様々な場合があり、名詞的性質が特に強くなるに伴い、動詞としての機能が弱まったり喪失し、完全な名詞になってしまうこともあります。

 一般的に動名詞といえば「名詞的機能を兼ね備えた『動詞』」のことを指し、動詞的機能を喪失してしまった場合は形は「-ing形」でも純粋な名詞として扱うことになります。名詞としての純度が高くなりますと「-ings」という複数形も取るようになり、こうなるともう他動詞として目的語を取るというような動詞的機能はなくなります

1, My hobby is collecting stamps.
私の趣味は切手を集めることだ。
2, His liking for music is very well-known.
彼の音楽好きはとてもよく知られていることだ。
3, I spent all my savings.
私は貯金を全部使った。

 1の「collecting」は「集めること」という名詞の意味によりSVCの名詞補語として機能しつつ、同時に「stamps」を目的語にも取っています。つまり名詞の扱いを受けながらも動詞機能を強く残しているということです。

 2は like の動名詞「liking」が「好むこと」という「動詞+名詞」の意味からさらに進んで「嗜好」という、名詞的純度の高いものになったため、music を目的語に取れなくなり、前置詞 for が必要になっています

 3の「savings」は「save(貯める)」の動名詞ですが、完全に名詞化しており、だからこそ複数形語尾-s まで取っています。ここまで名詞純度が高くなりますと動名詞というより語形が-ingであるだけの単なる名詞と考えた方がよくなります。

 名詞的純度が高いものについては多くの場合、辞書にも「-ing形」のまま見出し語となっており、品詞としても名詞として収録されています。

 なおこれ以前に解説した「現在分詞」も「-ing」の形であり、現代英語では現在分詞と同形になっていますが、歴史的にはそれぞれ別の語尾だったものが混同されて同じ形になったものです。語形も機能も動名詞と現在分詞とでは異なるのですが、今は同じ語形になっているため、これらをまとめて「-ing形」と総称することがあります。



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307. 動名詞の機能

動名詞の用途

 動名詞というその名が示す通り、動詞名詞の機能を併せ持つことがポイントとなります。名詞としての純度が高くなり動詞機能を失ったものについては一般的な動名詞には含めないでよいでしょう。問題となるのはあくまでも動詞としての機能を残しながら同時に名詞扱いもされているものに限ります。

 文法編では最初に「品詞」を学びましたが、英語の8品詞における名詞という品詞の役割が十分理解されていることが動名詞の理解の前提となります。

 名詞であれば
1、文の主語になれる
2、他動詞や前置詞の目的語になれる
3、文の補語になれる

という機能を持っており、動名詞にもこれらの機能があります。

Seeing is believing. 「百聞は一見に如かず(見ることは信じることだ)」
seeing が主語、believing が補語

He stopped smoking. 彼は禁煙した。
smoking が他動詞 stop の目的語

I am looking forward to seeing you.
会えるのを楽しみにしています。
seeing が前置詞toの目的語 (これを「to see」としないように


動名詞の相と態

 動名詞それ自体に時制はありませんが、その動詞部分が表す時間については基本的に主節動詞との関係で判断されます。単純動名詞では適切に時間関係を表現できないとき、完了形を動名詞にすることで主節動詞との時間的ずれが表現できます。

1, He is proud of being rich. 彼は金持ちであることを誇りにしている。
2, He was proud of being rich. 彼は金持ちであることを誇りにしていた。
3, He is proud of having been rich. 彼は金持ちだったことを誇りにしている。
4, He was proud of having been rich. 彼は金持ちだったことを誇りにしていた。

 つまり動名詞部分が表す時間というのは時制ではなく「」のみということです。主節述語動詞の時制が変われば動名詞の基準時間軸が移動するということです。
 1と2の単純動名詞(being)は、主節述語動詞と同じ時間を表しており、3と4の完了形動名詞は主節述語動詞以前であることを表します。要するに「過去形に-ingをつけることができない」ため、完了の形式を借りてそれを表現すると理解してよいでしょう。
 もちろん完了形動名詞完了経験などを表すこともあります。

He is proud of having climbed Mt. Fuji 20 times.
彼は富士山に20回も登ったことがあるということを誇りにしている。

 受動態も動名詞表現が可能です。そして完了受動態が同時に現れることももちろんあります。

He is proud of having been officially commended for life saving.
彼は人命救助で表彰されたことを誇りにしている。
=He is proud that he has been officially commended for life saving.


動名詞の意味上の主語

 このように動名詞は相や態を表現できますが、動詞的意味がある限り、その意味上の主語が存在するのは不定詞や分詞と同様です。

 動名詞で特に意味上の主語を明示しなければならないとき、その方法には2種類あります。

(a) Do you mind my opening the window?
(b) Do you mind me opening the window?

 私が窓を開けてもいいですか?

 (a)は所有格「my」によって動名詞「opening」の意味上の主語を示しています。動名詞が持つ名詞的性格により、このように所有格で「私の行為」と表現しており、この場合、他動詞の直接目的語は opening です。
 (b)はmindの目的語という位置として me(目的格)が使われていますが、この形式の場合、mind の目的語が me だけと考えるより「me opening the window(私が窓を開けるということ)」全体と捉えた方が文意に沿ったものとなるでしょう。

 上の(a)(b)は意味的な違いはありませんが、動名詞の意味上の主語が所有格であるか目的格であるかによって微妙な意味的違いが生じることもあります。

(c) My wife is angry at my having lost the wedding ring.
(d) My wife is angry at me having lost the wedding ring.

私が結婚指輪を失くしたことに妻は腹を立てている。

 (c)は前置詞atの目的語が「having lost」という動名詞部分です。それに対して(d)の形式では「me」がatの目的語になっており、この違いから前者は「行為に対する怒り」、後者は「」が直接の対象として表現されています。

(e) Father was angry at Jane's going out alone at night.
(f) Father was angry at Jane going out alone at night.

 あくまでも文脈によりますが、上の2つの文で (e) における「父親の怒り」の対象は「ジェインが夜ひとりで外出した」という事実であるのに対して、(f) ではそういうことをした「ジェイン」という人物に向けられているといえます。ただしこの違いは絶対的なものではなく、そこまで意識されていないこともあります。




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