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298. 分詞構文

分詞構文とは

 現在分詞過去分詞によって導かれた句が、主節に対して副詞句として機能する形式を指して「分詞構文」と呼びます。
 基礎的な理解のために、ごく普通に接続詞に導かれる副詞節を元に分詞構文に変形してみることにしましょう。最も基本的な例として副詞節と主節の主語が同じ例文を使います。

When I walked along the street, I happened to meet an old friend of mine.
通りを歩いていたら、偶然にも一人の旧友とばったり出会った。

 前半の「when」によって導かれている部分が副詞節で、後半が主節です。どちらの節も主語は「I」が共通して用いられていますね。分詞構文の理解の基礎としては副詞節と主節で同じ主語が用いられている文を使うことから始める必要があります。

 前半部分を分詞構文に変形してみましょう。

1、まず接続詞を外します。

<when> I walked along the street,

2、次に主語も消してしまいます

< I > walked along the street,

3、述語動詞を分詞に変えます。能動態の場合は述語動詞を現在分詞に変えます。

Walking along the street,

 これで接続詞に導かれた副詞節が分詞構文になりました。文全体を書いてみましょう。

Walking along the street, I happened to meet an old friend of mine.

 意味は変形前の文と同じです。

 このように基本的な変形手順としては「接続詞を外す」>「主語も消す」>「述語動詞部分を分詞にする」という流れになります。現実には、複文(接続詞に導かれた節を含む文)を先に考えて、そこから変形しているというわけではないのですが、基礎的理解としてこの手順によって複文からの変形を練習することで「分詞構文」とはどういうものかが理解できると思います。

 接続詞によって導かれる節の内容が受動態になっている場合も基本的に手順は同じです。

Because he was loved by his parents, he felt very happy.
両親から愛されていたので、彼は大変幸福に感じた。

1、接続詞を外す。

<Because> he was loved by his parents,

2、主語を消す。

<he> was loved by his parents,

3、述語動詞を分詞に変える。

 さてさきほどの能動態の文では述語動詞を現在分詞に変えました。
今回は受動態が元になっていますが、実はどんな場合でも述語動詞の先頭になる動詞を現在分詞に変えるところまでは同じなのです。つまり

being loved by his parents,

 と「was」が現在分詞になるわけです。これで終わりにしてもよいのですが、受動態の場合は常に「be+過去分詞」なので出だしの being を省略することができます。その結果として

Loved by his parents, he felt very happy.

 という最終結果に至ります。

 ではここまでの理解を踏まえて次の例文を分詞構文に書き換えてみてください。

1, Because he was very rich, he could buy anything he wanted.
彼は大変金持ちだったので、何でも欲しい物が買えた。
2, Even though he was very rich, he spent a very modest life.
彼は大変な金持ちではあったが、非常につつましい生活を送った。

1, Because he was very rich, he could buy anything he wanted.
彼は大変金持ちだったので、何でも欲しい物が買えた。

Being very rich, he could buy anything he wanted.

 接続詞と主語を外す手順は同じ。能動態を元にしているので述語動詞の「was」を現在分詞にして「being」とする。このbeingは受動態を作る助動詞のbeではないので省いてはいけません。

2, Even though he was very rich, he spent a very modest life.
彼は大変な金持ちではあったが、非常につつましい生活を送った。

Being very rich, he spent a very modest life.

 接続詞と主語を外して、述語動詞の「was」を現在分詞にする手順は1と同じです。だから結果として1と同じ分詞構文ができあがるわけですが、もともとあった接続詞が1は「because(~だから」であるのに対して、2で使われていた接続詞は「even though(~であるのに)」ですから、主節との意味的つながり方は正反対ですね。なのに分詞構文にしたら同じになってしまう。これでいいのでしょうか?

 これでもよいのです。
 分詞構文というのは「接続詞」がないため、主節との意味的つながり方がどうしても曖昧になりがちな特徴があり、その曖昧さは前後の内容から自然に察して埋め合わせられます。つまり分詞構文というのはもともと曖昧なものなのです。

 その曖昧さがあっても多くの場合なんら支障を来たさないのは副詞句部分の意味と主節の意味を聞き手が最終的に照らし合わせて「つながりが自然になるように」想像で補うからです。

 そういう自然な推察ができる場合には問題は生じませんが、もともと持っている曖昧さのために聞き手の理解がスムーズに進まないこともありえます。そういう問題が起きないようにあえて一度は省いた接続詞を文頭に補ってやることもあります。

Though being very rich,

 と「though」を含んだ分詞構文があれば、その時点で聞き手はすばやく、主節が逆接的な意味で現れる予測を持つことができます。接続詞の補充は文法的な義務ではありませんが、意味の曖昧さを回避するためしばしば行われます。

 以上で分詞構文のもっとも基本的な理解は得られたかと思います。
 次はもう少し詳しく様々な例について見ていくことにしましょう。



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299. 分詞構文の意味上の主語

 一般的に「主語」と言えば文型の中で「S」で表される文の要素、つまり「V(述語動詞)」に対する「構造上の主語」を指しますが、文中に動詞が現れたとき、そこには例外なく「意味上の主語」が存在します。意味上の主語は、構造上の主語がそのまま引き継がれることもありますし、構造的には主語以外の名詞がなっていることも、またどこにも明示されていないこともあります。

 分詞構文は「接続詞によって導かれる副詞節」と同等の働きをするものですから、聞き手(読者)の感覚としてはかなり明確に分詞の意味上の主語が意識されます。接続詞も構造上の主語も示されていないにも関わらず、それが理解できるのはあとに続く主節の構造上の主語が、分詞の意味上の主語と一致することを原則としているためです。

 すなわち文頭で主語が明示されない分詞を目にしたとき、読者は当然のことながら「主語は何だろう?」という疑問を抱くことになります。その疑問はあとの主節を目にしたとき解消されます。

Working so hard every day, he has finally saved enough money to buy the car.
毎日懸命に働いて彼はついにその車を買えるだけのお金をためた。

 分詞構文が主節とどういう接続関係にあるかは前後の内容に応じて自然に推察されます。上の例文の場合なら「懸命に働いた」という事実と「車を買えるだけのお金をためた」という事実を考えれば「because」などの理由でつながっていると考えることができますので

Because he worked so hard every day, he has finally saved enough money to buy the car.

 と表現することができます。副詞節で「he」が補われるのは、それが主節でも構造上の主語だかです。つまり分詞構文で示されない意味上の主語は、主節に入った時点でそれが何であるかが分かる流れになるのが原則です。

 分詞構文の意味上の主語が主節の構造上の主語と一致するというのが原則ではありますが、主節の構造上の主語と異なる意味上の主語を分詞が取っている場合は、その主語が主格の形で補われます。

The bag being too heavy, he could not carry that by himself.
=Because the bag was too heavy, he could not carry that by himself.

そのカバンが重すぎたため、彼は一人でそれを持ち運ぶことができなかった。

 このように主節の構造上の主語と食い違っている分詞の意味上の主語を明示する形式を「独立分詞構文」と呼びますが、通常の会話なら接続詞を使って表現するのが普通であり、あえて分詞構文を用いるのは非常に文語的な言い回しです。自然に口をつくタイプの英文ではなく、いかにも頭で考えてつじつまを合わせている印象の強いことからも理解できると思います。

 分詞構文がすべて文語的なわけではありません。むしろ接続詞が省かれ主節との接続関係に曖昧さを伴うという点においては簡略的文体でもあり、分詞構文を含む口語的決まり文句も多く存在します。

 分詞の意味上の主語が主節と一致していなくても、それを示さずに済ませることがあります。
 それは分詞の意味上の主語が「一般主語」であり、特定の人物に主語を絞らず、we, you, they のように漠然とした理解で構わないときです。

Judging from the appearance, he seemed to be an office worker.
外見から判断すると彼は会社員のようであった。

 この例文で「judge」しているのは話者や主節の内容についての判断を下している人物ですが、主節の構造上の主語は「he」であり一致していません。それでも抵抗なく文全体の意味が理解されるのは、分詞構文がもともと持っている曖昧さのため、読者側が無意識にでも積極的なつじつま合わせをしながら想像で補い、内容を汲み取っているからです。
 ただしこのような主節の構造上の主語と分詞の意味上の主語が不一致のままそれを補わない表現は慣用的に頻繁に用いられる一部のものに限られています。

 どんな文章でも文脈、前後関係を適切に踏まえて初めて文意が明確になりますが、特に分詞構文は接続詞主語が明示されないため、その部分だけを捕まえて正しい解釈をすることは困難です。必ず主節の内容までをからめて分詞部分の最終的な解釈をしなければなりません。



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300. 様々な述語動詞を元にした分詞構文

 接続詞によって導かれる副詞節から分詞構文への変形を最初に見てきましたが、その節の中で単純に分詞に転換できない述語形式の場合もあります。

Because he could not understand French, he needed an interpreter.
彼はフランス語を理解できなかったので通訳が必要だった。

 この文で副詞節の述語動詞は「could not understand」となっており「could」は「~ing形」にできませんので一旦「can」に相当する「be able to」に置き換えてから分詞構文にします。また否定のnotは分詞より前に置きます。

Not being able to understand Frensh, he needed an interpreter.

 他の助動詞 must, mayなども「~ing形」を持ちませんので、同等の意味を表す他の表現に転換する工夫が必要となります。

Because he must finish his homework within today, he asked me for help.
彼は今日中に宿題をやり終えなければならないため、私に助けを求めてきた。
→Because he had to finish his homework within today, he asked me for help.
Having to finish his homework within today, he asked me for help.


If she may leave home today, she will come to the party.
もし今日家を開けてもよいのであれば、彼女はパーティに来るだろう。
→If she is allowed to leave home today, she will come to the party.
(Being) allowed to leave home today, she will come to the party.

 副詞節の述語形式が完了形の場合は「have」を現在分詞にすれば済みます。

Because I have finished my homework, I can now go out to play baseball.
もう宿題をやり終えてしまったから、私は野球をしに出かけていくことができる。
Having finished my homework, I can now go out to play baseball.

 節で表現したとき完了形を含んでいなくても、分詞構文では完了にした方が意味が分かりやすいこともあります。機械的な書き換えではなく、それぞれの形式による表現をあくまで独自に考える方が、こういう臨機応変な対応がうまくできます。

When I fnished my homework, I went out to play baseball.
宿題をやり終えると、私は野球をしに出て行った。
Having finished my homework, I went out to play baseball.

 ここでは基本理解のためにあえて接続詞で導かれる節を先に示し、それを元に書き換える形で分詞構文を説明していますが、決してそのような書き換えによって分詞構文が作り出されているわけではありません。節による表現と分詞構文は別個に存在しており、意味的に比較したとき、このような書き換えで理解することができるという参考として捉えてください。
 接続詞の種類によってはこういう単純な書き換えでは済まないこともあり、常に文意全体を踏まえて、別形式でいかに同じ内容を表現するかを考える必要があります。

As soon as I finished my homework, I went out to play baseball.

 この文と同じ内容を分詞構文で表現しようとしたとき、単なるwhenではなく、as soon as という「1つの行為と次の行為が間をおかず連続して行われた」という意味を踏まえて考えればよいわけですから、

Having finished my homework, I immediately went out to play baseball.

のように主節に「immediately(直ちに)」を補うことで同様の意味にすることができます。こういう工夫は機械的な書き換えによっては生まれないものであり、1つの事実を複数の表現形式で別個に考える柔軟性を持たなければなりません。

 受動態の分詞構文では「being 過去分詞」の「being」がよく省かれます。主節の時制が過去で、更にさかのぼった過去を分詞構文側で表す場合、大過去(had been 過去分詞)を元にすれば「having been 過去分詞」となるわけですが、このまますべてを表してもよいし、having beenまでを省略して過去分詞だけを示しても構いません。

Because he had been born and bred in the US, he was fluent in English.
彼はアメリカで生まれ育っていたので、英語が流暢だった。
Having been born and bred in the US, he was fluent in English.
Born and bred in the US, he was fluent in English.

 上記で「having been」を省かない言い方は、主節の過去時制と比較して「さらにそれ以前であった」という時間的前後関係を強く意識したものと言えます。描かれている事実はどちらの言い方でも同じです。



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301. 分詞構文の表す意味

 分詞構文は接続詞を用いずに、あとの主節との接続関係を読者(聞き手)の想像にゆだねるため、常に曖昧さが伴います。しかし同時にその曖昧さがあるからこそ、特定の接続詞に縛られず柔軟に前後関係を捉える自由さも与えられます。(そこが分詞構文の便利さでもあるわけです。)

 次に挙げる分詞構文と主節の接続関係は1つの目安であり、この中のどれか1つだけで接続されていると狭く考える必要はありません。これらの意味の中で複数に渡っていると感じ取れる場合もありますし、そもそも分詞構文の持つ「曖昧さ」が大切なポイントでもあるので、特定の接続詞での書き換えに縛られない方が、分詞構文の特質をより適切に理解することになるでしょう。

1, because(主節の理由:「~なので」)

Having played tennis all day, he got really tired.
Because he had played tennis all day, he got really tired.

一日中テニスをしたので彼はすっかり疲れてしまった。

2, when(主節の時の設定:「~すると、~したとき」)

(Being) left alone, she suddenly felt sad.
When she was left alone, she suddenly felt sad.

一人取り残されて、彼女は急に悲しくなった。

 この例を「when」で解釈しなければならないわけではなく、「一人取り残されたので」という理由の意味を同時に汲み取ることもできるわけです。日本語の「取り残されて」という言い方でも「取り残されたときに」の意味と「取り残されたので」の意味を感じることができますね。分詞構文というは、「分詞部分+主節」で、ただ単に2つの事実が並んでいるだけの表現なのです。その2つの事実の間にどういう「つながり」を見出すかは多分に読者(聞き手)の自由な推察にゆだねられているのが分詞構文です。

3, if(条件:「~ならば」)

Studying very hard from now, you will still be able to pass the exam.
If you study very hard from now, you will still be able to pass the exam.

今から熱心に勉強すれば、これからでも試験に合格できるだろう。

4, though(譲歩:「~なのに」)

(Though) studying very hard for six months, he failed in the exam.
Though he studied very hard for six months, he failed in the exam.

6ヶ月間熱心に勉強したのだが、彼は試験に落ちた。

 分詞が主節と逆接的な意味である場合は、接続詞 though を残した形にすると他の用法を考慮しなくて済むため、曖昧さが回避されます。

5, while(付帯状況:「~しながら」)

Using a dictionary, I read the English book till the end.
辞書を使いながら、私はその英語の本を最後まで読みきった。

 これも「しながら」の意味に限定せず、「~したので」と考えることもできます。繰り返しますが分詞構文の曖昧さは特定の接続関係1つだけで解釈しようとしないことが大切なポイントです。

 なお付帯状況の意味で用いられる分詞構文は主節の後に現れることもよくあります。

I read the English book till the end, using a dictionary.

 この場合のコンマは文法的な義務はありませんが、文全体の長さや意味の区切れなど読みやすさ、意味の理解のしやすさから打った方がよいかを判断します。会話ならコンマの有無は、その場所での言葉の間に対応すると考えてください。

6, and then (主節が先でコンマで区切って分詞が続く形式:「そして~した」)

 これはもっぱら主節のあと、コンマで区切った形で分詞構文が追いかけるパターンです。
 特に主節が過去時制の場合は、「, ~ing」の部分を「, and 過去形」と読み替えて構いません。

He went into the house, walking into the kitchen.
=He went into the house, and walked into the kitchen.

彼は家に入り、台所に歩いて入って行った。




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