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272. 第3文型(S+V+O)

 ここからは「他動詞」の文型になります。軽く復習しておきますと英語の「基本文型」というのは「述語動詞」のタイプによって分類されたものであり、第1段階として「動詞」全体を「自動詞」と「他動詞」に分けるんでしたね。その区別は「目的語」という要素を取るか取らないかによるもので、他動詞であればすべて目的語を取り、目的語を取っていればその動詞は他動詞と呼ぶということまではすでにお話しました。
 「C(補語)」という文の要素を含むかどうかにより、自動詞が「完全自動詞」と「不完全自動詞」に分かれるように他動詞も「完全他動詞」と「不完全他動詞」に分かれていきますが、第3文型はそのうちの「完全他動詞」による文型です。

第3文型:S+V+O

1、他動詞なので「O(目的語)」を取る
2、完全他動詞なので「C(補語)」を取らない

 この第3文型というのは英語表現の中で最も使われる頻度の高いパターンだと言われています。代表的な例文といえる「 I love you.」は誰でも知っているのではないでしょうか。

 さて他動詞という動詞についての理解をまず確認する必要があります。文法書によって様々な解説がなされているようですが、私なりの解説としては「『する側』と『される側』がそろっていてできる動詞」のことを他動詞という、と定義します。

 つまり「 S+V+O 」で「 S 」が「する側」、「 O 」が「される側」を表す言葉であり、「 V 」が「何をするのか」を示しているわけです。
 日本人向けの簡単な説明の1つに「~を」を表すのが「O(目的語)」だというものがありますが、多くの場合それが当てはまるとはいえ、「和訳したらどうなるか」を英語の文法理解の基準にするべきではありません

I watch TV. なら「私はテレビを見る」で「~を」が目的語を表してはいますが、
I love you. は「私はあなたを愛する」以外に「あなた大好きだ」と「が」でも目的語が示されます。
 また「道路歩く」で「道路」は「を」で導かれますが、英語にすれば「 walk on the road 」であり、道路は動詞の目的語ではありませんし、「 walk 」は自動詞です。

 このように「和訳との対応」を基準にするのはごく初歩的な限られた例文による入門段階の理解のためには有効ですが、「目的語」という文の要素の本質的な理解のためには「和訳結果」をもって判定基準とすることはお勧めできません。

 SVO 型の文型では「V(完全他動詞)」を挟んで主語と目的語が「する側」と「される側」という立場の違いを表していると覚えておいた方が和訳結果に左右されず、より他動詞の理解を深められると思われます。

I speak English.

述語動詞「speak」
主 語I = 「speak」する側
目的語English = 「speak」される側

 事実関係として「私が英語を話す」のであり「英語が私によって話される」のです。
 この文では「英語」という「話す対象」があるからこそ「speak」という行為も可能であり、動作の対象物が存在しなければ「話す」という行為それ自体が行えないと考えます。

He wrote a letter.

述語動詞「wrote < write」
主 語He = 「write」をした側
目的語a letter = 「write」をされた側

 事実関係としては「彼が手紙を書いた」=「手紙が彼によって書かれた」です。
 「手紙(a letter)」という対象物があってはじめて「write」という行為が可能と考えてください。

 自動詞の第1文型には「目的語」が含まれていませんでした。それは第1文型には「する側」はあっても「される側」がないからです。

Birds sing. では「歌う」側の鳥だけいればよく、「歌われる側」を表す言葉がなくても文が成立しました。

 しかし「 He sings a song. 」と「歌う対象」まで示した場合、sing は他動詞となります。今度は「歌う側」の「 he 」と「歌われる側」の「 a song 」が共に示されているので「 SVO 型」の第3文型になります。

 1つの動詞が1種類の文型にだけ使われるのはむしろまれであり「どう使われているか」によって、その動詞が自動詞か他動詞かが決まります。動詞の中には自動詞、他動詞のいずれか一方の使い道しかないものもありますが、複数の使い道を持つ動詞も沢山ありますので、「どの動詞が自動詞で、どれが他動詞」という覚え方や見分け方は危険です。常に文章の中での使われ方を踏まえて判断してください。

 他動詞は「する側」と「される側」の間で何が行われるかを示しますので、「叩く(hit)、かみつく(bite)、ひっかく(scratch)、蹴飛ばす(kick)」などの暴力行為を表すような動詞が例としては理解しやすいでしょう。これらは「する側」と「される側」の両方がそろっていないとできないイメージが持ちやすいからです。

 文の主語(S)になれるのは名詞か代名詞に限られますが、目的語になれる品詞も同様に名詞か代名詞だけです。形容詞も副詞もその他の品詞も目的語になることはありません。これは考えてみれば当然のことであり、「その物語は主人公の『悲しみ』を描く」は自然ですが「『悲しい』を描く」や「『悲しく』を描く」が不適切なことはすぐわかりますし、「彼の『やさしさ』が好き」とはいえますが、「『やさしい』が好き」や「『やさしく』が好き」とも言いませんからね。

 逆に言えば「目的語になっていればそれは名詞扱いであり、名詞になれば目的語にもなれる」ということです。

(○) I like watching TV. テレビを「見ること」が好き<「watching」は名詞(動名詞)
(×) I like watch TV. は成り立たない<「テレビを見る」が好き、は不自然。

 目的語として用いる必要性があるため他の品詞の語が名詞化されることはよくあります。上の例文で「watch」のままでは目的語になれないところが、「 watching 」と動名詞になったことで「見ること」の意味となり like の目的語になることができています。動名詞は「動詞の性質を持ったまま同時に名詞の役割も果たせる」ため watching TVwatch(見る)の意味に対する目的語をさらに従えることができるわけです。

 他動詞は名詞(相当語句)を目的語としますので、単語としての名詞だけでなく名詞句、名詞節を取ることもあります。

I want apples. 「りんご」が欲しい。
< apples(語としての名詞)が目的語
I want to eat apples. 「りんごを食べること」を欲する(=りんごが食べたい)
<「to eat apples(りんごを食べること)」という名詞句が目的語

I know him. 私は「彼」を知っている
< him (代名詞)1語が目的語
I know that he was born in Germany. 「彼がドイツで生まれたということ」を知っている
<「that he was born in Germany」全体が目的語

 つまり他動詞の目的語には「もの」だけでなく「こと」も来るということです。他の品詞を元にして「~なこと」という日本語に相当する意味を表せるようにすれば名詞化したことになりますので他動詞の目的語として用いることができるようになります。(<この文にも「こと」が2回使われていますが、「こと」を外して読めばおかしな日本語になってしまいます。つまり「~こと」という名詞にしているからこそ成り立っているわけです。)



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273. 目的語の理解

 初歩的な段階では「~を」という日本語との対応で目的語のイメージをつかむことは構いませんが、英語という日本語とはまったくの別言語の文法を正しく理解するためには「和訳結果との対応」に縛られてはいけません

 文法的な観点から言うと和訳したときの意味がどうであれ「目的語を取る動詞」のことを他動詞というのであり、自動詞か他動詞かの最終的な判別方法は、文構造として目的語を取っているかいないかだけによります。

 日本語的発想から見ると他動詞らしくない他動詞もありますし、日本語では他動詞に思えても英語では自動詞だったり、その逆だったり、同じ日本語が自動詞と他動詞の両方で表されることさえあります。

I saw him. は「 SVO 」であり saw (<see)は他動詞です。しかし
I looked at him. は「I(S)+looked(V)」に「at him(副詞句)」が加わったものですから第1文型であり、look自動詞です。

 和訳だけに頼っていると「 see 」も「 look 」も「見る」で区別がつかなくなります。
 同じ「見る」でも「 see 」は「見える、見えている」という意味で特に何かに注意を払わなくても目を開けていれば勝手に見えてしまう様子を主に伝える動詞です。
 一方「 look 」は「(意識的に)視線を向ける」の意味が中心であり、「 at him(彼に対して)」と「 at(~に対して、~めがけて)」との組み合わせで「~を見る」となります。

I saw him. は「あ、あそこに彼がいる」と、たまたま目を開けてある方向を見ていたら彼があなたの視界に入ったことを意味しますが、
I looked at him. は、自ら積極的に「彼めがけて視線を向けた」のであり、彼のことを自分の意思で見ようとして見たことを表します。

I heard the song.
I listened to the song.

 これも和訳だけに頼って理解しようとすると、どちらも「私はその歌を聞いた」となってしまい区別がつきませんが、「 see / look 」と同じように「 hear 」は特に注意を払っていなくても自然と音や声が耳に入ってくる意味であり「聞こえる」に近い動詞です。
 それに対して「 listen 」は「耳を傾ける」の意味であり「 to him (彼に対して)」と「耳を傾ける対象」を明確に意識しています。そういう違いを踏まえれば

I heard the song.
その歌が聞こえてきた。
その歌が耳に入った。

I listened to the song.
その歌に聴き入った。
その歌をじっくり聴いた。

 のようなニュアンスの違いも理解できますし、場面に応じた使い分けもできるようになります。

 さて「 see 」や「 hear 」はそのあとに名詞(相当語句)をずばり置くことができましたので他動詞です。
 一方「 look 」や「 listen 」は「副詞句(前置詞によって名詞が導かれているもの)」としかつながれません。いきなり名詞を置くことができないわけです。(前置詞によって導かれている名詞のことを「前置詞の目的語」といいますが、文型判定に関係するのは「他動詞の目的語」だけです。いずれも目的語と呼ばれるのは代名詞が来た場合、「目的格(me, him, her, themなど)」の形を取るからです。(<より正確に言うと「目的語」だから目的格の形となるのですが)

 和訳だけから動詞が自動詞なのか他動詞なのかの判断がつかないことがよくあります。日本語と英語では言葉の表現方法、習慣がまるで違うのですから機械的な対応が必ずしも成り立たないことは言うまでもありません。

 「結婚する」という日本語は「彼と結婚する」のように「~と」によって結婚相手を示しますが、英語では

She married him.

 と前置詞なしに「 marry 」が他動詞として him を目的語に取ります。(世界の一部地域では marry with him のように日本語発想に近い言い回しを方言的に用いていますが、標準的ではありません。)

 日本語にも男性が女性を嫁にする意味で「娶る(めとる)」という言葉がありますが、英語の「 marry 」は「する側、される側」の性別に関わらず用いられます。

 つまり「marry」は「love」と文法的には同じ働きをする動詞なのです。だから「 Love me!(私を愛して!)」と言えるように「 Marry me!(私と結婚して!)」と言えるのです。

 自動詞と他動詞の違いをイメージとしてどう区別すればよいかについては「する側、される側」の両方が必要かどうかが判断基準としては適切だと思います。そして最終的には「文構造」として目的語を取るか取らないかが決めてとなります。

自動詞
初歩的イメージの区別:「する側」だけが存在すればできる動詞。
構文上の区別:目的語を取らない動詞。

他動詞
初歩的イメージの区別:「する側、される側」がそろっていてできる動詞。
構文上の区別:目的語を取る動詞


 繰り返しますが、英語の他動詞とは「和訳した意味がどうであれ」文構造として目的語を取る動詞のことです。そして自動詞とは目的語を取らない動詞のことをそう呼ぶのです。




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