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269. 第2文型(S+V+C)

 自動詞が作る文型の2つ目が「 S+V+C 」型です。
 自動詞ですから「 O(目的語)」はありませんが、V だけで文章を打ち切ることができないという「自動詞としての機能が不完全」な動詞があります。その不完全さを補ってくれるのがあとに続く「 C(Complement:補語)」です。

 中学1年段階でまず習うのが

I am a boy.
This is a pen.

 のような英文かと思いますが、このような「~は、、、である」のパターンが第2文型です。初歩的な段階では「 be 動詞」しか第2文型に使う動詞としては習わないかと思います。そして「 be 動詞」の意味を「だ、である、です」のように習うのではないでしょうか。全くの初歩の段階でそう習うことは悪いことではないのですが、「です」って「動詞」に思えますか?これは私自身が中学生のころ強く疑問に思ったことなのですが、「動詞」といえば「何かをする」意味を表すのが普通なのに「です」という言葉はちっともそういう「動詞らしさ」を感じません。

 これは和訳結果を通じて英語を理解するしかない、極めて初歩的な段階での「仮の教え」に過ぎません。

 「 be 動詞」の本当の意味は「存在する」です。
 「存在する、居る、有る」ならばいかにも「動詞らしい」と素直に感じられますね?実際、先の第1文型(S+V)にも「 be 動詞」は用いられ、

Mother is in the kitchen. 母は台所に居ます

 と「居る」の意味で使われます。この場合「どこに」を意味する「 in the kitchen 」は動詞を修飾する副詞なので文型判定の材料にはならないため、この英文は「 S+V 」型と判定されることは理解されるかと思います。

 日本語で「お母さんはどこ?」と聞かれたのに対して「母は台所です」というのは自然な日本語ですが、これを「 Mother is kitchen. 」とはできません。お母さんは人間であり台所じゃありませんからね(笑)。「母は台所です」という言い方は「台所にいます」の省略形として日本語では自然ですが、日本語の言い方をそのまま英語に置き換えるわけにはいきません。あくまでも「台所の中に存在する」と表現する必要があります。

 さて「 I am a boy. 」や「 This is a pen. 」はなぜ「私は少年です」や「これはペンです」という意味となるのでしょうか?

 英語では常に「主語」が先ず現れ、次に結論的意味を伝える「述語動詞」が来るんでしたね?

I (私は)と主語を示した次に来る動詞は「 be (存在する)」なのですが、be 動詞は主語によって形を変えますので「 I am ...」となります。ここまでの意味は確かに「私は存在する」が直訳としては正しいのです。

 しかしそこで言葉を打ち切られてしまうと聞いている側は「何がいいたいの?」と消化不良な気持ちになってしまいます。少なくとも「どこに」が続くとか、もう一言欲しいと思います。
 第1文型では修飾語として副詞があとに続くことで「どこに」を伝えてくれましたが、修飾語は文の要素ではないため、文型としてはあくまでも「S+V」型と判定されました。

 さて今回は「主語+ be 動詞」のあとに「場所」を表す副詞ではなく、名詞か形容詞が続くパターンです。

I am a boy.
This is a pen.

これらは「主語+ be 動詞」に名詞が続いています。それにより「主語が『どのような具体的な姿形で存在しているのか」を示しているのです。だから上記英文を単語の意味に忠実に直訳すると

I am a boy.  私は一人の少年として存在しています
This is a pen.  これは一本のペンという姿で存在しています

 のようになるわけなんです。それを「日常的な簡単な日本語」に直したのが「私は少年です」や「これはペンです」なのです。

 「主語+ be 動詞」を形容詞が追いかける場合はどうでしょう?

She is beautiful. 彼女は美しい状態で存在している。(彼女は美しい)
I am happy. 私は幸福な状態で存在している。(私は幸福だ)

 というふうに「どのような状態」で存在しているのかを形容詞が表します。

1、主語+ be 動詞+名詞(名詞)という具体的な姿で存在している。
2、主語+ be 動詞+形容詞(形容詞)という状態で存在している。

 このように名詞形容詞が「主語の存在の仕方」を述べる働きをしているのです。この形式では「存在の仕方」まで伝えきらないと「 be 動詞」は最低限の仕事をやり終えたことになりません。あとに続く名詞や形容詞は「 be 動詞」を修飾するものではなく「 be 動詞」の「やりかけの仕事を最後まで終わらせる」働きをしています。

 つまり修飾語という「飾り言葉」なのではなく、立派な文の要素なんです。
 自動詞が単独では完全に仕事をやり終えられないとき、そのあとに続いて仕事をしっかり終わりにさせてくれる名詞や形容詞のことを「補語」と言います。

 「補語=補う語」ですから、「自動詞の不完全な仕事ぶりを補ってくれる語」です。

 第2文型(S+V+C) の述語になれる動詞は「 be 動詞」だけではないのですが、最も初歩的な理解としては「 be 動詞」を使った例文だけで十分です。同じ be 動詞であっても後に続く言葉と、be 動詞が表す意味の微妙な違いにより「S+V」を作ったり「S+V+C」を作ったりするのです。

S+V: 主語+ be 動詞+(場所を表す副詞)
S+V+C: 主語+ be 動詞+<名詞か形容詞>

 いずれの場合も「 be 動詞」の本来の意味は「存在する」ですが、第2文型を作っているときは「~として存在する」であり、そこから「~である、~だ」という日本語にも置き換えができるようになるわけです。(「である」もあえて漢字にすれば「で有る、で在る」なので「有る=存在する」という発想の共通点が深いところにはあります。)

 ところで「 This is a pen. 」の否定文は「 This is not a pen. 」ですね。
 日本語で「これはペンです」を否定にすると「これはペンでは『ない』」と言います。つまり「ある(有る)」の否定を「ない(無い)」で表します。しかし英語に「無い」という動詞はありません。だから「在らない(ありはしない)」というふうに「ある」を not で打ち消すことで否定とします。

 今上で述べたことは教える側に立つ人は日本語、英語の言語文化の差としてしっかり理解しておいて欲しいことですが、中学生などにここまで教えなくても構いません。「 be の意味は『です、である』だ」でとどめておいてもよいでしょう。ただ何かの機会に、あるいは生徒の方から疑問が出たら、ここまで踏み込んで深い理解に導いてあげられるようにはしておいて欲しいと思います。



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270. 第2文型に使われる動詞

 be 動詞を使った最も基本的な第2文型の理解が得られたら、その他の動詞が第2文型を作る場合も見ていきましょう。

 よくある説明として「 S+V+C 」では「 S=C 」の関係が成り立つというものがあります。確かに「 I am a boy. 」で「 I = a boy 」、「 I am happy. 」で「 I = happy 」という図式が成り立ちますが、イコールの関係だけではまだ足りないところがあります。

 より応用範囲を広げる意味で「 SVC型」の「 SとCの関係」については次の2種類があると理解することをお勧めします。

1、S=C (SがCである
2、S→C (SがCになる

 1の意味に用いられる動詞はすべて「 be タイプ」と呼ぶことができ、2の意味に用いられる動詞は「 become タイプ」と呼べます。


( 「 be タイプ」の動詞)

This looks delicious. これはおいしそうに見える
This smells delicious. これはおいしそうな匂いがする
This tastes delicious. これはおいしい味がする
That sounds interesting. それは面白そうに聞こえる
This cloth feels smooth. この布は滑らかな手触りがする

 これらの文に使われている述語動詞は「 be 動詞」に置き換えても意味が通じますが、「 be 動詞」では表せない細かい違いが出ています。つまり「特定の感覚を通じて~だと感じる」、「ある感覚で感じる限りにおいては~だ」の意味を持つ動詞です。これらは「 be 動詞」のバリエーションであり、特定感覚に絞った言い方ができる便利さがあります。このような動詞は補語に形容詞のみを取り、名詞をいきなり取ることはしません。名詞をつなげるときは「like(~のように)」を挟んでやれば自然になります。

She looks like a movie star. 彼女は映画スターのようだ。(見た目が~だ)
That sounds like a good idea. それは名案に聞こえる。(聞いた印象が~だ)
This feels like real fur.これは本物の毛皮のように感じる。(感触が~だ)

 このような場合は「like 名詞」で「形容詞句」となり「 C(補語)」の機能をしていると考えて構いません。

 感覚別に「~だ、~のようだ」と表現する動詞の他にも第2文型を作る動詞は沢山あります。 be 動詞を使った場合と意味を比較してみましょう。

He is silent. 彼は沈黙している。
He stayed silent. 彼は沈黙したままでいた。(相変わらず黙ったままだった)
He kept silent. 彼は沈黙したままでいた。(声を出さないようにし続けた)

stay, keep のどちらも「~のままでいる」を表せます。まったく自由に交換できる場合も多くありますが、stay は今ある状態から積極的な努力で変化しようとせず、結果的にそのままの状態が続く意味で、keep はその状態が変化してしまわないように積極的な努力でそのままの状態を続けるというニュアンスの違いがあります。(特にその違いが意識されず同じように使われることも多くあります。)
 また stay と同じですが、やや改まった言い方として「 remain 」という動詞もあります。


  ( 「 become タイプ」の動詞)

 「 become 」は「~になる 」の意味で状態の変化を表しますが、become のあとには名詞も形容詞も続きます

He became a doctor. 彼は医者になった。
He became famous. 彼は有名になった。

 未来を表す場合、「 will be 」でも「 will become 」と同じ意味を表せますが、become を使った場合の方が「変化」について強い意味を感じます。

That girl will be beautiful when she grows up.
あの子は大人になったら美人になるぞ。

これを「 will become 」で表現すると「今は美人じゃないが、この先それが変化して美人になる」という意味が強く感じられてしまいます。もし誰か女の赤ちゃんをほめるのであればこの言い方は不適切です。また「 will be 」でさえ敏感な人は「今はどうなの?」と思うかも知れません。そんな場合は、

That girl will be (still) more beautiful she grows up.
大人になったらより一層美人になる。

 のように「今すで美人」というところからスタートする言い方にすれば無難でしょう。

It is getting dark. 暗くなってきた。
They were growing excited. 彼らはだんだん興奮してきた。
He went mad. 彼は怒った。
My dream came true. 夢が現実になった。
She fell asleep. 彼女は眠ってしまった。
The leaves turned red. 葉が赤くなった。

 これらの述語動詞も状態の変化を表すもので become に置き換えても意味は通じます。
 get は明暗、温度などの変化に使われることが多くありますが、中心の意味は「たどり着く」なので途中経過よりも「最終結果」に話者の意識が行っていることが多いといえます。また口語的な響きの強い言葉です。
 結果に意識が強く行く get に対して「 grow 」は「成長する」がもともとの意味なので途中経過の方により強い意識が働いており、徐々に様子が移り変わっていく様を表すときによく使われます。

 go はなぜか「悪い方向に変化」する意味に用いられ、それでいてその変化がまた元に戻ったりという一時的な意味に使われることが多くあります。
 その逆に come は「よい方向に変化」する意味に使われますが、「 come true 」など使用例は限られており、一種の熟語表現にだけ現れます。  

 fall asleep は日本語でも「眠りに落ちる」と似通った言い方をしますね。
 「 turn 」は「曲がる」の意味が基本ですから「まっすぐ行かずに方向が変わる」ニュアンスを背景にしています。特にあるときを境に急に変わるときなど予想や期待を裏切った変化に使われることも多くあります。

 このように「 become 」のような意味に用いられる動詞は多くあり、それらの「本来の意味」を踏まえてニュアンスの差を理解することは可能ですが、最初から単語ごとのニュアンスに強くこだわりすぎるよりも「 become 」の意味を多くの動詞でも表すということを覚えておき、具体例を通じて徐々に慣れていくのが一番よい方法かと思います。先にルールを覚えてそれに従って多くの事例をしばりつけようとすると思考が硬くなり勝ちです。言葉というのは生き物なので現実の事例を柔軟に受け入れながらそこに感じ取られる共通点や傾向性を吸収していくというのが一番適切な構えかと思います。



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271. 擬似補語

 通常は補語を取らない完全自動詞が、不完全自動詞に臨時転用されることがあります。このときの補語はこれまでの基本通り「名詞」か「形容詞」が来ますが、一見副詞のような働きをしているかにも見えます。述語動詞を「 be 動詞」に置き換えても文が成立する点において副詞とは異なります

1, He died young. (SVC) 彼は若くして死んだ。
< He was young when he died.と言い換えることが可能。

2, He smiled happily. (SV+副詞)
<He was happily when he smiled. とは言い換えられない。( was happilyが不適切)

 1のパターンの書き換えがきく SVC に使われる述語動詞(V)は本来補語なしでも文を成立させることができる完全自動詞です。もともと完全自動詞なので「補語が後にないと文が成り立たないから補語を取っている」のではなく、「補語なしでも一応の意味が完結しているところに、さらに補語を取ることで述語動詞が行われた時点での主語の様子を描写している」と言えます。

He looks young. (SVC) 彼は若く見える(見た目が若い)。

 この「looks(~に見える)」は純粋な不完全自動詞であるため、上記1のような書き換えが成り立ちません。

He is young when he looks.<成り立たない

 これにより「look」が「補語を必要とする」不完全自動詞であることがわかります。

 本来完全自動詞であり補語を必要としない動詞が、臨時に不完全自動詞に転用されることにより、SVC型は非常に豊富な表現力を持つことになります。

She was born rich but died poor. (「be born」で「生まれる」という自動詞句)
彼女は裕福な身に生まれたが貧しい身で死んでいった。
この文は次の2つの文を等位接続詞 but でつないだ重文です。
She was rich when she was born.
She was poor when she died.

 このように「 SVC 」から「 S is C when S V 」の書き換えが成り立つときの補語は述語動詞の転用に伴って用いられるものであり、そういう補語を「擬似補語」と呼ぶこともあります。

逆の書き換えも見てみましょう。

She was poor when she died. と同じような構造で
She was running when she came. という文も書けますね。

She was poor when she died. = She died poor. であるならば
She was running when she came. = She came running. とできることがわかります。

 よって「 She came running. 」 もまた擬似補語を取る SVC だと分かります。
 come も「来る」の意味では補語を必要としない完全自動詞です。(「~になる」の意味は別。)それが臨時に不完全自動詞に転用され、あとに現在分詞を補語とすることで「~しながら」の意味が追加されます。これは非常に応用範囲の広いSVCです。

He stood there laughing. 彼は笑いながらそこに立っていた。
=He was laughing when he stood there.

She sat there smiling. 彼女は微笑みながらそこに座っていた。
=She was smiling when she sat there.

 このように現在分詞擬似補語にすることで「~しながら」の意味を自由に追加できるわけです。

 擬似補語はSVの後にコンマで区切りつつ、「 being 」で導く形でも成り立ちます。

She was born, being rich. 裕福な状態にありながら生まれた。
She came, being running. 彼女は走った状態でやってきた。

 しかし純粋な補語(もとから不完全自動詞が必要とする補語)でこの書き換えをすることはできません。

She is beautiful.
--She is, being beautiful.
(成り立たない)

This tastes delicious.
--This tastes, being delicious..
(成り立たない)

 もとから不完全動詞である場合、上記のようにコンマで区切ってしまうと「最低限必要な要素」が欠けたままになるため意味が成立しなくなるわけです。
 それに対して「もともとは完全自動詞だった動詞」を臨時に不完全自動詞に転用した場合は、コンマで切られるともとの完全自動詞の機能が復活しますので自然に成り立つというわけです。




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