前の項目へ もくじに戻る 次の項目へ

247. 述語動詞は何に合わせるか

 英語の述語動詞は主語の「人称、数」によって形が変わるのは十分理解されていると思います。
 問題となるのは主部の単語が and, or, but という等位接続詞でつながっているとき、述語動詞をどの単語に合わせればよいかということです。

and の場合:たとえば「 Tom and Betty 」が主語であれば、それは「They」に置き換えられますので、それに対応する述語動詞は当然複数に合わせます。

Tom and Betty (=They) go to school by bus.

or の場合:主語が or でつながっているときは、述語動詞に近い側の主語に合わせます。理屈から言えば、A or B のAに合わせればBが無視されたことになり、Bに合わせればAの立場がないということになりますが、動詞の直前の語と次の動詞で形が一致している方が、口にしてしっくりくるからです。

Tom or Betty has a camera. (トムかベティのどちらかがカメラを持っている)

この場合、Tom, Bettyのいずれを主語にしても has ですから悩むことはありません。

Tom or I am wrong. (トムか私のどちらかが間違っている)
これを「Tom or I is wrong.」にすると「 I is 」の連続がいかにも「非文法的」な印象で口にして抵抗を感じるわけです。

A and B 」が主語なら「A, B 全体」が1つのまとまりとしての主語ですから当然複数ですね。
A or B 」が主語の場合は、「AかBの片方だけ」が個別に主語なので「A or B」をまとまりとして扱うわけにはいきません。A、B それぞれが主語のときをイメージするのですが、A と B の人称が異なるときは、どうしても述語動詞を A、B 共用の形にできないため、口にしたときの抵抗感のない述語動詞側の主語に合わせるわけです。

しかし、but で結び付けられているときは違います。

All the students but Tom know the answer. (トム以外の生徒全員が答えを知っている)

「Tom know 」という「三人称単数」と「-sのない動詞」の連続ではあるのですが、これは意味的に抵抗を感じません。なぜなら know の主語はあくまでも「All the students」という複数名詞だけだからです。butが前置詞であるならばなおさら「 but Tom 」は修飾語になってしまうので主語になれる理由はなく、あとの know の主語はAll the students でしかあり得ません。

All the students but he know the answer.

 このように but を堅い表現の接続詞のまま用いて、he という主格を置いた場合であっても、

All the student know the answer, <but he [ does not ]>

の「but he」が「know」の前に割り込んだに過ぎませんから、he は know の主語ではないのです。

All the students <but him> know the answer.

前置詞としての but が him と結びついている場合は、him が know の主語である理由はまったくありません。「but him」は「all the students」という名詞句にかかる単なる形容詞句になってしまいますからね。


 以上を概念的に図で表現するとこうなります:



前の項目へ もくじに戻る 次の項目へ

248. nor 

 「 nor 」の使い方としては「 neither A nor B(AでもBでもない)」を先ず押さえておきましょう。これは「 either A or B(AかBのいずれか)」と対照的に覚えておくとよいでしょう。nor の前後の名詞で人称・数が異なる場合、述語動詞の形は近い方に合わせるという点で or と同じです。

Neither you nor I am wrong. 君も私も(どちらも)間違っていない。
Either you or I am wrong. 君か私のどちらかが間違っている。

 否定文に続いて現れる nor は、最近では or で代用する傾向が進んでいます。

I don't speak French nor/or Spanish. フランス語もスペイン語も話せない。

注意:「両方、、、ではない」を「否定+both」では表しません。こちらは「両方、、というわけではない」の意味になります。

I don't speak (both) French and Spanish. 両方話せるわけではない。

 「 nor 」の非常に特異な点として、節を導く場合、導かれる節は語順が倒置します

I don't speak French, nor does he. 私はフランス語を話せない。彼も話せない。

注意: nor はその語それ自体に「not」を含んでいますので、「nor he doen't」や「nor doesn't he」のような使い方はありません。


 よくある質問として「norの使いどころがよくわからない」という声を聞きますが、ポイントは3つ。
1、neither A nor B の形で。
2、否定文に続く「A nor B」で、「AもBも、、、、ない」
3、否定文に続く「nor 倒置節」で「~もまた、、、ない」

 このうち2番は or での代用が進んでいるため、「あれ?ここは nor じゃなかったっけ?」と混乱するのだと思います。「本来は nor であり、or の代用が広く行われている」と銘記してください。



前の項目へ もくじに戻る 次の項目へ

249. for 

 和訳だけに頼って英語を理解しようとしていると「 for 」と「 because 」の区別が難しく感じるかも知れません。「 節 A for 節 B 」となっているとき、どちらの語でも「 節 A 」の理由を「 節 B 」が表す関係にあるからです。

 しかし根本的な違いがあります。それは「for等位接続詞であり、because従属接続詞」だということです。まだ従属接続詞については述べていませんが、for と because の違いについて軽く説明しておきます。

(a) I was late for school because there was a heavy traffic.
渋滞のため私は学校に遅刻した。
(b) I was late for school, for there was a heavy traffic.
私は学校に遅刻した。というのは渋滞だったので。

(a)は because 以下を前に出して次のようにも言えます。

(a)' Because there was a heavy traffic, I was late for school.

 もともと「主節+従属節」の語順が基本であるところに、従属節を前に出したときは「語順変更」が行われているので従属節の終わりにコンマを打ち、その区切りを明確にします。

 しかし for は等位接続詞なので because節のように前には出せません。これは同じ等位接続詞である and や or によって導かれる節を前に出せないのと同じです。

(○) There was a heavy traffic, and I was late for school.(節 A and 節 B
(×) And I was late for school, there was a heavy traffic. (この言い方はできない)

(○) I have to wake up at 5 am tomorrow, or I will miss the first train.(節 A or 節 B )
(×) Or I will miss the first train, I have to wake up at 5 am tomorrow.(この言い方はできない)

上の2つの例で下の英文は成り立ちません。この and や or と for は全く同じ性質の語だと理解できれば、For...で節を導いて前に出すことができないのは理解できるでしょう。

 つまり等位接続詞の for というのは 前後の節を対等の関係で結び付けているものであり、後の節が前の節を修飾しているのではないということです。 for に続く節は前の節に補足する程度の働きはありますが、それはあくまでも「今述べたこと」に対してしか使われません。

 ちなみに and, or, but のいずれも等位接続詞なので、これらで文章を書き始めることは本来間違いとされます。たとえば

I am poor. But I am happy.
I am poor, but (I am) happy. と1文につなぐのが文章作法としては適切です。

 しかし現実の会話やカジュアルな文章では普通に and, but など等位接続詞で言葉を始める場面があります。

A: I am very poor. (僕はとても貧しいんだ)
B: But you always look happy.(でも君はいつも幸せそうだね)

 このような例は、相手の言葉の内容を受けて、その繰り返しを省略した結果、接続詞から言葉が始まっているものです。

B: (You are very poor,) but you always look happy.

 レポートや論文など書き言葉としての正しい作法を求められる文体では、等位接続詞で文章を書き始めてはいけません。会話体の軽い文章から習う中学の教科書などは平気で、But ... と始まる文章が書かれていますので、この点についてはよく覚えておいて欲しいと思います。

 等位接続詞の一覧を見ると and, but, or, nor は単語同士をつないでも使われますが、for は「節と節」をつなぐ使い方しかされないと書かれていますね。for が単語しか導いていないと単なる前置詞でしかないからです。

  語と語 句と句 節と節
and
but
or
nor
for × ×



前の項目へ もくじに戻る 次の項目へ

inserted by FC2 system