前の項目へ | もくじに戻る | 次の項目へ |
副詞という品詞を定義することはさほど難しくありません。英語の「品詞」についての解説の冒頭で、8種類の最上位分類として「名詞、代名詞、動詞、形容詞、副詞、前置詞、接続詞、間投詞」の順序でまずは覚えていただきたいと述べました。これは大雑把な考え方として
名 詞、代名詞 | :文の主語になる働きを持つ |
動 詞 | :文の述語になる働きを持つ |
形容詞 | :名詞(か代名詞)を修飾する働きを持つ |
副 詞 | :名詞(か代名詞)以外を修飾する働きを持つ |
前置詞、接続詞、間投詞 | :上記以外を一括して1グループにして覚える |
というものです。
つまり修飾語として「形容詞の担当外」の相手を修飾する働きのことを副詞というと考えていただいて構いません。
大雑把な理解として「副詞とは何か」を知るのは簡単なのですが、あらゆる副詞を個別に見ていくとなかなか十把ひとからげにまとめきれない複雑なものがあります。
文法というのは「頭の中に知識の整理ダンスを作り、多種多様な言葉の有様をすっきりと把握する」ことが目的なのですが、この副詞についてさまざまな場合を列記していくとものすごい種類になってしまい、どこか文法のための文法のような方向になり兼ねないと感じました。
このサイトの主眼は「文法を学ぶ」というより「文法の学び方を学ぶ」ことにありますし、「市販の解説書を読めば出ていることはそちらに譲る」という方針があります。一般の書籍を通じてはなかなか学べない着眼点や感覚の訓練方法にこそ文字数を費やしたいと考えています。
かといってこのサイトを通じて英語の基礎的なところから学んでいらっしゃる方もいることと思われ、サイトの中で網羅しておくべき情報量と本来の趣旨とのバランスでかなり悩みました。そこで単語ごとに特に突っ込んだ解説を必要とすると思われる副詞については数をしぼりつつ、それらの解説の中で副詞理解の本質的な部分に触れられるよう努めようと考えています。
副詞は「修飾語として形容詞の担当外を相手に修飾する」というのが基本的な機能なのですが、たとえば相手の質問に答えるときに使う「Yes/No」は副詞に分類されながらも、何かを修飾しているとは考えにくいところがあります。またいわゆる「文修飾の副詞」は特定の単語だけにかかるものではありません。
これまで解説してきた他の品詞に比べ、あらゆる副詞について一貫して共通の性質というものが捕らえにくいところがあります。しかしまた、その捕らえにくさこそが副詞の副詞らしさとも言えます。
ちなみに副詞のことを英語では adverb といい、この adverb という単語は「~へ」という方向を表す接頭辞「 ad- 」と「動詞」を意味する「verb」の組み合わせから成り立っています。つまり「 adverb 」は単語の成り立ちからして「動詞に向かう=動詞を修飾する」という意味を持っているわけです。確かに「動詞を修飾する」というのは副詞の主な役割の1つですが、実際には、形容詞や他の副詞も修飾しますし、特定の語を修飾しない使い方さえあります。
日本語の「副詞」という名称は「副(そ)える詞(ことば)」を意味しており、機能的には「動詞修飾」より幅広いものを示唆する名称であり、その点において英語名称の「 adverb 」以上に実体に即した名称であるとも感じます。
前の項目へ | もくじに戻る | 次の項目へ |
最も基本的な理解としては「形容詞が修飾する相手以外を修飾する働き」と考えてください。 つまり「名詞(や代名詞)以外を修飾するものを副詞という」と覚えるところからスタートすればよいでしょう。「名詞(や代名詞)以外」といっても実際には「動詞、形容詞、副詞」の3品詞を修飾するものとなります。
形容詞は修飾語としての機能だけでなく、自らが「文の要素」になる働きも持っていましたが、副詞は自ら文の要素になることはありません。常に「副える言葉」としての脇役に徹します。文法書によっては「副詞が補語になる例」などを取り上げ、あえて話を複雑にしている(笑)ものもありますが、このような例は副詞が一時的に形容詞に転化されたと考えた方が自然であり、あえて例外を作り出す必要もありません。(ですからあえて今ここでそのような例を具体的に示すこともしません。)
繰り返しますが、「副詞」とは「名詞(や代名詞)以外を修飾する働き」のことだとまずは理解してください。
前の項目へ | もくじに戻る | 次の項目へ |
品詞というのは「文中における単語の働きの名称」ですが、複数の単語がグループとなり1単語のようなまとまった働きをすることが多くあります。そのグループに主語と述語の組み合わせが含まれていないものを「句 ( phrase )」、含まれているものを「節( clause )」と文法用語では区別します。
複数の語を1グループとして見なす考え方は非常に重要で、かつ実践的です。語数が多く、一見複雑そうで長い英文も、この見方ができると実にすっきりシンプルに捕らえることができるからです。
He studies [ hard ]. (1語で studies を修飾)
He studies [ to be a doctor ].(4語がまとまって studies を修飾。主語・述語が含まれていない)
He studies [ because he wants to be docotor ].(副詞を作るグループに he wants という SV がある)
上の3つの例文は[ ] の部分がいずれも studies を修飾しており、働きは共通しています。つまりどれも「副詞」です。そして上から順に「語」としての副詞、「副詞句」、「副詞節」ということになります。
句や節は、語数は複数であってもその働きは1語と同等です。そしてそれは単に文法的な分析の問題だけではなく、「文章に接したときの印象」としても、そのグループを1語のように感じることが重要なポイントです。すなわち、まるで「 because he wants to be a doctor 」という「単語」を口にしているかのように感じながらこの文を読む感覚が大切です。
上の3つの例文を軽い練習として暗誦してください。
そして何も見ないで、3つの例文を上から順番に口にしてみましょう。そのとき「hard」という1語と「さしかえて」句や節を口にする気持ちを持ってください。繰り返すうちに、上記3つの英文が同じくらいシンプルな構造だと実感できてきます。そこまでの感覚が自分の中に湧き上がってくるまで何度も復唱してみていただきたいと思います。この基礎訓練が「副詞」というものを「文法知識」から「実践感覚」へと昇華するのです。
前の項目へ | もくじに戻る | 次の項目へ |
文法学習が「知識の整理ダンスを頭の中に作る」という意味があることは何度も述べていますが、この副詞についてはあまり種類の名称にこだわる必要はありません。
名詞などは「可算名詞と不可算名詞」の大別や「普通名詞、集合名詞、物質名詞、抽象名詞、固有名詞」という分類観点は、実践的にも重要な意味を持つ理解なので、分類名称も是非知っておきたいところですが、副詞については分類名称を暗記してもそれほど実践的価値は高くありません。それにどう分類するかについての考え方も解説書によってまちまちであり、標準的に副詞はこのように下位分類するべきだという指針も特にありません。
例えば「頻度の副詞」といわれれば、「always, often, sometimes, rarely」など「どれくらい頻繁に何かを行うか」を意味する副詞のことだなと分かるだけで十分です。
一般の文法解説書によく現れる名称としては
疑問副詞 | (when, where, how, why) |
前置詞的副詞 | (about, across, by, down, in, on, off, out, up, down, over など) |
強意副詞 | (very, quite, most, really など) |
場所の副詞 | (here, there, above, below など) |
時の副詞 | (then, now, later など) |
否定の副詞 | (not, never など) |
関係副詞 | (when, why, how など) |
その他 |
がありますが、機能(働き)を主眼に分類するか、意味を中心に分類するかによりいろいろな名称で呼ばれますし、何種類に分けて考えるかも様々です。疑問副詞や関係副詞は構文としての理解に関係しますので名称としても是非知っておくべきものといえますが、あとの名称については、名詞や動詞の下位分類ほど名称の理解や暗記にこだわる必要はありません。その点は気楽に構えていてください。
前の項目へ | もくじに戻る | 次の項目へ |
どんな品詞でもそうですが、ある品詞に一貫して共通した語形というものは決してありません。
しかし副詞は他の品詞から機械的に派生したものも多くあり、たとえば beautiful(美しい) の語尾に「-ly」を追加すると beautifully (美しく)になります。この「-ly」は派生副詞の語尾としては非常によく知られていますが、かといってどんな形容詞にもただ機械的に -ly をつければ常に副詞にできるわけでもありません。また「 friendly 」など -ly が形容詞語尾として用いられる場合もあります。ですから最終的にはあくまでも単語ごとに個別に覚えていくほかはないといえます。
前の項目へ | もくじに戻る | 次の項目へ |
219---(1)もともと副詞である語
これは他品詞からの派生ではなく、まず最初に副詞として存在する語です。共通の語尾などは特になく語形的な統一性はまったくありません。この中には同じ形のまま形容詞としても用いられるものも多く含まれています。(形容詞として使われると意味が異なるものもある)
Thank you very much. (直訳:とても多く感謝しています。)
very, much ともに副詞
I would often fish here. (よくここで釣りをしたものだ)
often, here が副詞
He plays piano well. (彼はピアノを上手に弾く)
I am well.<wellは形容詞(私は元気だ)
同じ語形のまま文中の使われ方によっては副詞だったり、前置詞や接続詞だったりするものもあります。品詞というのは単語について固定的なものではなく、あくまでも「文中の単語の働き」に対する名称だと再認識してください。
He came in. (彼は中に入ってきた)<副詞
He was in the room. (彼は部屋の中にいた)<前置詞
He was so late. (彼は非常に遅れてきた)<副詞
He was late, so we all missed the first train.(彼は遅れてきた。それで私たち全員始発列車に乗れなかった)<接続詞
前の項目へ | もくじに戻る | 次の項目へ |
220---(2)副詞語尾の -ly と注意点
さてややこしいのが、ある形容詞がそのまま副詞になることもあれば、-ly が接辞されて副詞が派生することもある例です。このような例のなかには「そのままの形でも -ly が接辞されても同じように使える」ものと「同形が副詞になったときと、-ly接辞の派生副詞では意味が違う」ものがあるから面倒です。ただ、これらも実例を通じて慣れてしまえば紛らわしいと感じることはまったくありません。要するに -ly のついた語は「別物」だと独立して見なしてしまえばよいのです。
He is a hard worker. 彼は熱心な労働者だ。彼はよく働く/勉強する。(hard は形容詞)
He studies hard. 彼は熱心に勉強する。(形容詞と同形で副詞)
He hardly studies.彼はほとんど勉強しない。(hardly ほとんどしない、なかなかしない)
I wrongly guessed it. 私はその推測を誤った。(間違えて推測した)
I guessed it wrong(ly). (同じ意味)
<-ly語尾なしの副詞は動詞の前に置かれないことに注意。この例では文末に置かれた wrong は本来形容詞であり、それがそのまま副詞に臨時転用されたと考える。この使い方は -ly をつけるより口語的あるいは俗語的なくだけた印象を与えます。動詞の前に置かれる場合は、形容詞の語形のままでは「副詞の意味を感じにくい」ため -ly 語尾の語形のみが用いられます。
本来、形容詞が同形のまま副詞の意味に使われるのは非常に俗語的な印象を与え、中には明確に「間違い」と見なされるものもあります。ですからその言い方がどれほどすでに確立しているかについては辞書で確認することが望ましいでしょう。面白い例文があります:
If you speak English good, you don't speak it well.
これはアメリカ人を対象に書かれた英文法の本にあった1文です。英語ネイティブである読者に向かって著者が「もしあなたが英語を good に話しているとすると、あなたは英語を well に話してはいない」と述べています。
これまつまり、現実には「I speak English good.(俺は英語うまいぜ)」というような good の使い方を平然としている人が多いという現実を踏まえ、「ここは本来、副詞である well を使って『 I speak English well.』と言わなければならないところだから、それを good というのであれば、あなたの英語は実はうまくないのだ」とジョーク的に指摘しているわけです。
-lyをつけない語形を副詞にすると「俗語的だったり無教養な英語になる」と思い込みすぎるのもまた困ったことであり、
He studies hard.を
He studies hardly. とは言いません。
これは hard のまま副詞としなければ「熱心に」の意味にならないのです。ですからパターンで楽に覚えようとはくれぐれも考えないように。
とにかく慣れるまでは面倒でも逐一辞書で確認して、形容詞の意味、同じ語形が副詞になった場合の意味、-ly接辞の副詞の意味などを丁寧に確認するようにしてください。
前の項目へ | もくじに戻る | 次の項目へ |
221---(3)形容詞以外から派生した副詞
副詞は形容詞以外からも派生します。古い英語では名詞の所有格が副詞の意味に使われたことがあり、その名残として語尾に -s のついた副詞が多く見受けられます。以下の例について「どうして『複数形』なの?」という疑問を持った人はいませんか?実は複数形の -s ではなく、名詞所有格の「's」の名残なんですね。
forwards(前へ)
backwards(後へ)
upstairs(階上へ)
downstairs(階下へ)
nowadays(こんにちでは)
always(いつも)
once (かつて、一度:スペル的には -s ではないが同じ語源を持つ)
twice(2回、2度)
前の項目へ | もくじに戻る | 次の項目へ |
222---(4)派生語尾 -ly についてのルール
機械的に形容詞語尾に-lyを追加して副詞が作られる場合でも、常にただ-lyを追加すればいいとは限りません。名詞の複数形や動詞の規則変化語尾でさえ、ちょっとした注意が必要であったのと同様、副詞語尾 -ly を接辞するときにも注意すべき場合がいくつかあります。
1、形容詞語尾が 子音文字-y のとき、それを -i にしてから -ly をつける
heavy - heavily
happy - happily
これには例外もあり、dry は dryly, drily 両方が認められていたり、gay(陽気な)は、-yの前が母音文字なのに gayly, gaily 両方の形があったりもします。派生語のスペル変化というのはこれまでも述べたように原則は「単語の読み方を間違わないようにする配慮」からの工夫ですが、習慣的に定着したものはそのまま認められているということですね。
friendly は副詞として上記パターンによる派生形「 friendlily」のほか、そのまま friendly でも副詞として用いられます。
また daily, monthly, yearly は上記の派生を行わず、同形のままで副詞ですので類推による失敗をしないように注意してください。
2、語尾が -le の場合はそれを -ly に交換するだけ
gentle - gently
これもやはり例外があり、sole はそのまま-ly をつけ solely になり発音も [ soulli ] とl を二度発音しても正しいとされます。([ souli ] でもよい)
またwhole はスペルが wholly となり、発音も [ hóulli ], [ hóuli ] のどちらでも構いません。
3、語尾が -ll の場合は、-y だけを接辞する
語尾の -l が1つだけなら単純に -ly 接辞でよい(beautiful - beautifully)のですが、さすがに l の文字が3つも並ぶと見た目にも違和感が強いためでしょうか、full なら fully とつづります。
4、語尾が -ue のときは -uly に
語尾が-e であってもその前が u でなければ原則通りに -ly をただ接辞する( extreme - extremely など)のですが、true のように「-ue」語尾のときは truly と語尾の -e が脱落したところに-lyがつきます。このあたりは「正しいスペルに目をなじませる」ことで感覚的になれてください。間違ったスペル(たとえばtruely)を見てとっさに違和感を感じればよいのです。ただし、このあたりになりますと英語ネイティブでもスペルに自信がないという人がかなりいるようで、英語ネイティブ向けの「正しい英語を話そう、書こう」という趣旨の書物には決まって取り上げられています。
前の項目へ | もくじに戻る | 次の項目へ |
223---(5)副詞的対格
「対格」というのは他動詞の直接目的語になるときの名詞の格。それが人称代名詞なら me や him のように他の格とは明確な区別のつく独自の形もありますが、一般の名詞たとえば a book だとそれが主語になったときと目的語になったときでは形の上では区別がありません。しかし文法的な位置づけとしては主語と同形であっても「格」としては目的格です。
基本構文の第4文型には直接目的語と間接目的語が並んで用いられますが、間接目的語については第3文型で 「to 名詞」の形などで表現されます。この to と結びつく形のことを特に「与格」と呼び、直接目的語になる「対格」と区別することがあります。
名詞がそのままで副詞的に用いられるとき文法的には、その名詞は「対格」とされています。他動詞の直接目的語になっているわけではないのですが、数量を表す名詞がそのまま副詞的に用いられるもののことを「副詞的対格」あるは「副詞的目的格」と呼びます。
I am [ twenty years ] old.
この [ twenty years ] は「20年分だけ、20歳だけ」という具体的な数を意味として添えるもので品詞的機能が副詞であることは容易に理解できると思います。位置や働きとしては「very」に代わるものであり、形容詞の意味に具体性を持たせる働きをしています。
That bridge is [ 300 meters ] long.
This building is [ 250 meters ] tall.
Mr. Fuji is [ 3,776 meters ] high.
文章の変形として上記例文の具体的な数を疑問詞にした場合、疑問代名詞の what ではなく、疑問副詞の how になることからも [ 300 meters ] などの句が副詞であることが理解されます。
[ How ] long is that bridge?
[ How ] tall is this buiding.
[ How ] high is Mt. Fuji?
なお他者と比較した場合の「差分」については副詞的対格によって表現する以外に「by」によって差分を示すこともできます。「by 数量」は差分を表すのみに用い、他者と比較しないときの数量を具体的に示す用途には用いません。
This bridge is [ 100 meters ] longer than that one.
=This bridge is longer than that one [ by 100 meters ].
This bridge is long [ by 300 meters ].* とは言わない。
前の項目へ | もくじに戻る | 次の項目へ |