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この章の
冒頭で述べたとおり「the」のこと。もともと指示代名詞のthatを意味する語に由来し、「その」という意味が含まれているが、「指示性」が 弱まり冠詞となった。
176.1-3-1 theの発音
「a, an」の現代英語での使い分けとして「次に続く発音」が母音のとき「an」が用いられることはすでに述べました。
「the」
は
(1)
[ ðə ]
(子
音の前)
(2)
[ ði ]
(母
音の前)
が使い分けられます。
「the」も「単語としての発音(文
章に組み込まれず単独で読んだときの発音)」は、
[ ðíː ]
です。それが文章の中では、「子音の前」か「母音の前」で(1)か(2)が使い分けられます。
これはルールというより英語話者にとっての読みやすさのため「自然にそうなる」ものです。(「自然に」と言われても英語話者でない日本人は覚えることか ら入らざるを得ませんが。)
「a」と「an」の使い分けで「次の母音と an の -n が連結するため、母音の前の an が生き残った」というお話をしました。「the」の発音が母音の前で [ ði ] となるのにもやはり理由があります。「読みやすさ」のためと言いましたが、英語の音声に馴染みの浅い日本人にとってはピンと来ないことでしょう。
英語では原則と
して「母音の衝突(連続して母音が現れること)」を嫌う傾向があります。
しかし「the apple」
のような場合、どうしてもそれが避けられません。そんなとき、theの母音は「曖昧母音
[ ə ]
」
より、むしろ開き直って、より明確な音である
[ i ]
となります。この方がかえって次に続
く母音との「音の区別」が明確となるからです。曖昧母音のままだと次に続く母音と融合して聞こえてしまうため、the
があまりに聞き取りにくくなってしまうということです。
ちなみにこれは冠詞と関係ない余談になりますが、「to」 という前置詞の発音も実は「3種類」 あり、状況に応じて使い分けられています。
1, 「to」
の次が子音 →
[ tə ]
例:
I went to
Tokyo.(Tが子音)
2, 「to」の次が母音 →
[ tu ]
例:
I went to
Osaka. (Oが母音)
3, 「to」で文末に来る場合→
[ tuː ]
例:
Who did you sent the letter
to?
「a, an, the」にしても「to」にしても「誰でも知っている簡単な単語」と思われがちで、高校生や大学生になってからあえて辞書で発音を調べてみようなどと思わ ないかも知れません。しかしそういう基本的な単語だからこそ日常的に極めて頻繁に使われ、重要度も高いわけですから、意味や用法も含めて「簡単な単語」を じっくり調べなおすのも大切なことです。
さて「the」の発音については、ここでは「母音と子音の前で使い分ける」という程度にとどめ、より詳しくは後で述べることにします。
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177.1-3-2 theの基本用法
「the」は「that」の弱まったものですので、意味の根底には「その」という指示性がやっぱりあります。しかし多くの場合、冠詞 を訳出(和訳として言葉に出す)ことはあまりしません。だからこそ冠詞なんですね。
「the」の「意味(単なる「和訳」ではない)」をここではしっかり理解しましょう。
中学の初歩段階では「とりあえず」theの意味を「その」と覚えることは構いません。何か訳語がないとどう覚えて良いのか迷うでしょうからね。
しかしもっと大切なことは「theの使われ方」をよく理解することです。それが理解できたら、あとは自由に和訳していいんです。
「the」という言葉の特徴としては:
中学などでは、
「初めて話の中に登場した名詞は『a ~』となり、2回目から『the ~』となる」
と習うのでしょうか。それだけで済めばいいのですが、実際の英語ではいきなり「the」付きの名詞が現れたりもします。
大切なのは「文脈、前後関係、話の流れ」です。どんな言葉も文脈なしに正しく意味を解釈することはできません。
特に「the」は文脈が極めて重要です。
「the students」という表現が意味できるのは
1、世界中の学生全員、ひとりのこらず
2、今話題にしている中で理解される、「その範囲内の学生全員」
のいずれかです。
「the students you see over
there」といえば「向こうに見える」というのが「範囲」であり、その範囲内の学生全員を指します。この「ある範囲内のすべての」という意味がtheの
理解では大変重要です。「その」なんて訳語の100倍重要なんです。
(1) I like cats.
(2) I like the cats.
普通「私は猫が好き」という場合、「猫全般」、「猫という動物」のことが好きだいう意味ですね。しかし「この世に存在する猫全部例外
なくすべて」と言い切れるかというと、中には「どうしても好きになれない猫」も例外的に存在するかも知れません。だから(1)のように「the」をつけず複数に
します。これは「猫たち全般」ではあっても「すべての猫たちではない」ということです。
「the」のつかない複数形というのは、「一部の例外の存在を許す」隙間を残した表現なのです。
それに対して(2)は「ある範囲内の猫全部、例外なく、一匹残らず」を指します。
この「ある範囲」がどういう範囲なのかは文脈次第であり、「今目の前にいる」という範囲かも知れませんし、「今話題に出た」ことで範囲が了解されるのかも知れません。ですから「the cats」が「どの範囲の猫たち」であるかを前後関係から正しく把握し、「うちで飼っている猫たち」とか、「このペットショップで売られている猫たち」など単なる「the cats」であっても時としては言葉を補ってその範囲を明確にした和訳をするのが「自然で正確な和訳」となるのです。機械的に「その猫たち」として満足してはいけません。
それがまったく何の前後関係もなしに、目の前に猫もおらず、唐突にこの(2)の表現を口にしたとすると、そこに設定される「範囲」は「この世すべて」と
なります。
実際、「この世すべて」を範囲として用いられる「the」は非常に多くあります。
(1) the eath
(2) the sea
「the earth(地球)」、「the moon(月)」、「the sun(太陽)」などは何の前後関係なしに突然文章の冒頭から the を伴って現れます。範囲は「この世」であり、数は1つだけでも「それ全部」。 (この世に1つしかないのであれば固有名詞ではないのかと思うかも知れませんが、実際、これらは「Earth, Moon, Sun」と固有名詞としても使われます。)
たとえこの世に1つと一般に考えられていても、別の惑星にいけば、「その惑星にとっての月(にあたる存在)」があるので、全宇宙的規模から見るとやっぱ
り moon は普通名詞なんです。sun, moon
も同様に全宇宙的規模から見ると「まだ他にもあるかも知れない」という余地を残しているので普通名詞といえます。
文脈がなくても「the earth」といえば誰しも共通して「同じ地球」を「ああ、あれか」と思い浮かべられます。
同様の例としては「the
universe(宇宙)」、「the
sky(空)」などがあります。
なお「a full
moon(満月)」のように「様々な月の形態のうちの1つ(一口に「月」といっても色々(な姿が)あるという発想)」という意味を表すときは「多くの中の1つ」ですから「a」をつけます。(文脈上、「今夜の満月」や「その夜の満月」と特定の満月ならもちろん「the full moon」です)
(2)の「the sea」 はこの地球上には1つしかありません。全部つながっていますから。だから通例「the sea」とtheを伴います。一度「a sea」として登場する必要はありません。これもまた「the sea」と聞けば誰しも同じ「海」を思い浮かべられるからです。「どこの海」は別問題です。広い海を「地域に区切って」名称をつけていますが、それは人名 同様固有名詞となり、それぞれにつけられた名前をそのまま使うしかありません。
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178.冠詞の理解を深めるために(1)
(1) I am an only
child.
(2) I am the only child.
(1)は「私は一人っ子」という意味。「only」は「唯一の」という形容詞ですが、「家族の中で唯一の子供」すなわち「一人っ子」はあちこちの家族にいてその中の1人という意味ですから「an」がつき「多くいる一人っ子の中の1例」となります。
(2)は「その範囲内での唯一の子供」。こちらは文脈がないと何のことか分かりません。何かスポーツチームに所属していて、周りは皆
大人ばかりで自分だけがまだ子供ということを意味しているのかも知れません。
冠詞の用法として区別を明確にするため、この(1)(2)を上げましたが、ついでにonlyを使った
(3) I am only a child.
も含めて理解しておきましょう。こちらの「only」は副詞(「~なだけ」)です(上の1,2の例のonlyは形容詞)。つまり「私はまだほんの子供です」という意味。
(1)、(2)、(3)そ
れぞれの意味と「only」の位置にも注意してください。
今こうして説明したから理解できたと思いますが、この(1)(2)(3)の英文をいきなり並べて見せられてとっさにどう違うかをすっきり説明できたら、
その人は冠詞を非常に深く理解していると言えます。
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179.冠詞の理解を深めるために(2)
次にこの文法解説のあちこちで同じことを説明していますが、ここでも冠 詞の理解を深めるという観点から次の4つの組み合わせについて 考えましょう。
(A) one
- another
(B) one - the other
(C) some - others
(D) some - the others
A1: I have some pencils here. One is black. Another is
red.
(ここに数本の鉛筆がある。黒いのもあれば、赤いのもある。<さらに他の色もまだある>)
B1: I have two pencils here. One is black. The other is
red.
(ここに2本の鉛筆がある。そのうち1本は黒で、もう一本は赤だ)
C1: There are 40 students in my
class. Some
go to school
by bus. Others
(go to school) by bicycle.
(うちのクラスには40人の生徒がいる。何人かはバスで通学しているが、自転車で通学している生徒たちもいる。<さらに他の通学手段の生徒もさらにい
る>)
D1: I have a lot of pencils here.
Some are
black. The others
are red.
(ここに沢山の鉛筆がある。そのうち数本は黒だが、残りは全部赤だ)
沢山の中から最初任意に「1つ」取り出すとき、それは「one」という
不定代名詞で表現します。最初に取り出すのが複数で特に数を明
確にしないのなら
「some」です。(具体的にTwo, Three, ... と言うことももちろんできます)
2回目、さらに「1回目に取り出したものとは『別の』もの」を取り出すとき、
1、取り出すものが1つで、まださらに残りがあるなら、other に「an」がついた「another」
2、最後の1つなら「the other」
3、取り出すものが複数(特に数を明言しない)で、さらにまだ残りがあるなら「others」
4、最後に残った2つ以上を全部指すなら「the others」
これまで不定冠詞、定冠詞の説明をしてきましたが、そこで述べた通り「otherと呼べるものが2つ以上ある中の1つ」だから
「another
(an+other)」であり、他にはもう other と呼べるものがないときは「the other」や「the
others」と「the」がつくわけです。
(A),(B),(C),(D)の組み合わせは「分かりやすい典型」というだけであり、固定的にこの4通りに限るわけではありません。
「one」のあとに「the others」がおいかければ「沢山の中の1つ(だけ)は~であり、残り全部は~だ」の意味。
沢山散らばった鉛筆から「1本」見つけて「One is
..」と言った次に「同じ色の数本」を見つけて「Some」が追いかけることだってあります。
最初に複数取り上げるときも「Some」と言わなければならないわけではなく、具体的に「Three (of
them)」と数を言うことだってもちろんあります。
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180..冠詞の理解を深めるために(3)
次の違いは何でしょう?
(1) Be quiet. A baby is sleeping.
(2) Be quiet. The baby is sleeping.
(3) Be quiet. Baby is sleeping.
解説を読む前にこれまでの理解を踏まえて自分で考えてください。
考えてみましたか?では解説しましょう。
(1)は「どこの赤ん坊かは知らないけど」という含みがあります。「この世に沢山いる baby
と呼ばれるもの(人)の1人」ですね。たとえばホテルのロビーで若者たちがちょっと騒いだとき、誰かが「静かにして。向こうで(誰かの)赤ん坊が寝てるから」と言うような場合です。その場に1人しか赤ん坊がいなくてもこの言い方です。
(2)は話者が話者も聞き手も即座に「同一の赤ん坊」を指すことが理解できる場合です。話者と聞き手がその場に赤ん坊が1人いることをすでに知っている必要があります。
(3)は本来普通名詞の「baby」を「Father, Mother, Brother, Sister,
Teacher」など身内や職分を表す言葉が人名代わりに固有名詞的に用いられるのと同じ例。騒ぐお兄ちゃんに「赤ちゃん(1人だけ)が寝てるでしょ」と
赤ちゃんの名前の代わりに無冠詞で固有名詞扱いして使われることがあります。
ちなみに外で騒ぐ若者たちに、「ちょっとあなたたち静かにして。うちの子が寝てるから」という意味でも使えます。つまり「Baby=My
baby」です。
どうでしたか、自分の思った通りでしたでしょうか。
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これまでの基礎理解が充分できたら、発展的な用法も学んでいきましょう。
182.(名詞を抽象化する用法)
その名詞に備わっている特質などに焦点を当てた文語的な表現です。
The father
in him overcame the judge.
「彼の中の父親としての愛情が裁判官としての公正さに勝ってしまった。(それで被告の息子を適切に裁けず不当に軽い刑で済ませてしまった、など)」
この「the father」は「話に出てきたその父親」という具体的な誰かを指すのではなく、日本語で「父性」というような抽象概念を意味します。上記和訳例では「父 親としての愛情」と言葉を補っているのがわかりますね。
From the cradle
to the grave.
「ゆりかごから墓場まで」=「生まれてから死ぬまで」
これはイギリスの社会福祉政策のスローガンとなった言葉です。
「the cradle」が「birth(人の誕生)」を意味し、「the grave」が「death(死)」を意味しています。
The pen
is mightier than the
sword.
「ペンは剣よりも強し」=「ジャーナリズム(文筆活動)は暴力に勝る」
このように「theの抽象用法」はどれも文語的だったり詩的だったりします。「the 単数名詞」は常に「何かの喩え」であるわけです。(本当にペンと剣で戦ったら、まずペンに勝ち目はないでしょう(笑)。)
The dog
is a faithful animal.
(犬というのは忠実な動物だ)
不定冠詞の中(1-2-4 総称用法)でも少し触れましたが、「the 単数名詞」が総称を表すことがあります。
この文語的な用法を特に「代表単数」と言
いますが、これも「the」の抽象用法の一種と考えることができます。
ただし自分が使おうとするときはそれまでの口調に合わない唐突な文語表現になりがちなので注意が必要です。もともと固い表現で通している書き言葉の中な
ら自然になじみますが、日本語でも現代語の会話の最中に突然「ござる」調の時代劇のような言葉をまぜたら非常に違和感があるのと同じです。
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183.(楽器のthe)
I play the piano.
She plays the violin.
He plays the guitar.
この「the」はこれまでのど の説明に当てはまらない至って特殊なもの。なぜそこにtheがあるのか、はっきりしたことは分かっていません。この the も上記「代表単数」に含まれると考える説もあるし、「古い英語における『道具を表す指標(もともと今のtheと形は違った)の名残り」だとする説もあるの です。
文脈から「特定の楽器」を指す場合はもちろんその用法でのtheがそこにあってよいわけですが、「楽器のthe」と呼ばれるものは、 ほとんど機械的につ けられます。そして英語ネイティブでも「なぜここにtheをつけるのか」を自覚していません。そして「theをつける理由を感じない」ことから、最近の英 語では、アメリカのジャズミュージシャンから始まったといわれていますが、この「楽器のthe」をつけない傾向が高まっており、その傾向はすでにイギリスにも広まっています。
「yahoo」の検索で「アメリカ国内の英語サイトのみ」を対象にして検索をかけてみますと(2009年4月現在):
「play the guitar」-----約4,100,000件
「play guitar」--------約14,900,000件
「play a guitar」---------約436,000件
「play the piano」------約3,900,000件
「play piano」---------約3,990,000件
「play a piano」---------約120,000件
このようにすでに「theなし」の方がヒット数が高くなっています。
本来「piano, guitar,
violinなど」は普通名詞ですから、「無冠詞単数」で文章に現れるのは「原則外(熟語の中など何か特別な理由がある)」なのですが、「楽器の演奏」という意味の「熟語」を作っている場合
は、まさに「原則外」といえ、日本の中学、高校でも「play
guitar」の言い方はすでに「正しい英語」と見なさなければならない時代になっています。
それが「演奏」という熟語の
中ではなく、楽器をごく一般的な普通名詞の1つとして用いる場合、冠詞のつけ方や複数形の扱いは「pen, book,
deskなど」他の普通名詞と何ら変わるところがありません。
He made a guitar.
(彼はギターを作った)<不定冠詞の中で述べた「種別用法」
He made the guitar.
(彼がそのギターを作ったのだ)
He makes guitars.
(彼はギターを作る仕事をしている)=日常的に沢山のギターを作っている
She tunes pianos.
(彼女はピアノの調律師だ)=日常的に沢山のピアノの調律をしている
She bought a piano.
(彼女はピアノを買った)
これらの英文で「無冠詞単数(piano,
guitar)」だけを用いることはできません。楽器が無冠詞単数で現れるのは「演奏」を意味する熟語表現の中だけです。
そして「演奏」を意味するときでも楽器を普通名詞として使うことはまったく間違いではありません。
(1) This is a
famous, expensive guitar, and he played the guitar (=it)
last night.
(これは大変有名で高価なギターであり、彼はそのギターを昨夜弾いた)
(2) She played a
very old piano.
(彼女は大変古いピアノを弾いた)
(1)の場合は人称代名詞「it」で受けてしまうのが普通ですが、その指示内容を具体気に言葉にして「the guitar」と言うことももちろんでき、この「the」は基本用法そのままのものです。ここでこの the がないと「彼が昨夜弾いた」というギターが前半の「有名で高価なギター」とは別物のように聞こえてしまいます。
(2)では「piano」に「old」という形容詞もついており、これ により「色々あるピアノの中で」の意味が添えられますから、不定冠詞「a」をどう しても要求する心理が働くのです。(この「a」がなければ違いです)
上記検索結果の中には「形容詞なし」の「play a guitar」、「play a
piano」も含めていますが、他と比べると格段に少ないヒット数とはいえ、それなりの数のヒットが見受けられます。
これは「数ある中の1台のピアノを弾いた」という文脈自体がまれであるためと思われます。
「played an old
piano」など同じ条件で検索してみると、わずか約43件しかヒットしません。この数字の低さは通常「使われない言い回し=標準的英語ではない」と見なされる低さですが、これも単にこの表現を必要とした場面が極めて少なかったというだけであり、正しい英語であることは間違いありません。
一方、「played old
piano」と「不定冠詞なし」の検索結果は「8件」でしたが、たった8件なので逐一その用例を見てみたところ、
Mary Lowe played old piano tunes(メアリーは古いピアノの曲を<数曲>弾いた)
one well-played old piano ballad(見事なピアノ演奏による或るバラード)
など「古いピアノを弾いた」の意味ではない別の(正しい)英語表現が混じっており、「古いピアノを弾いた」の意味で「played old
piano」が使われていたのは、わずか2件でした。その2件のいずれも「I(私)」を「i」と小文字でタイプする書き方をしており、うち1件はアメリカ
の英語サイトではあっても書いた本人は日本人でした。つまり「play old
piano」と不定冠詞(an)なしに「古いピアノの演奏をする」という言い方は標準的ではないと言えます。
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ある英語表現がどれほど標準的に受け入れられているかを知る上で、「検索」はしばしば大いに参考になります。
「I love
you」などは「アメリカ国内の英語サイトのみ」で「約197,000,000件」ものヒットがあり、(言われるまでもありませんが)明らかに「標準的英
語」であることが誰の目にもわかります。
ただし検索を活用する上でいつくか注意しなければならないこともあります。
1、検索対象が少しでも信頼の置ける範囲とすること。英語表現の頻度を調べるのに「日本国内だけ」を対象としても意味がありません。検 索オプションを使って英語を母国語とする国の英語サイトのみを対象に設定することで結果の信頼度があがります。(アメリカ、イギリスなど複数の英語圏を調べれることはより望ましいといえます。)
2、上でも、正しい英語である「played an old piano」がわずか43件という低いヒット数になったりすることもあり、ヒット数の低さがそのまま「間違いである」ことを意味しないケースもあります。 逆にかなりのヒット数がっても、それが正しいことの証明には必ずしもなりません。
ある言い回しが使われる文脈自体が極めて限られていればたとえ正しい表現でもヒット数は少なくなりますし、難解な専門用語を含んだ特
定の構文となるとやはりヒット数は低いでしょう。
一方、「雰囲気(ふんいき)」の読み間違いとして知られる「ふいんき」をキーワードに検索(日本国内のみの日本語サイト対象)すると「約546,000
件」もヒットします。これは用例の中に「ふいんきという間違いがある」やジョークとしてわざと間違えた文章までヒットしてしまうからです。(「50万人以上の日本語ネイティブが「雰囲気」を「ふいんき」と読んでいるのだから、これはもう正しい」とは言えません。)
ですから良くも悪くも検索ヒット数を単純に鵜呑みにはできず、できる限り出てきた用例も逐一チェックしながら、本当に求めている意味でそれ(キーワー ド)が使われているかを調べる必要もあります。
このように活用する上では注意することもある「検索」ですが、うまく使いこなせば「最新の英語」の傾向性を知る大きな手がかりにもなります。
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185.(the+形容詞)
「the」は本来名詞にしかつきませんが、それは「theがつくことで名詞以外の単語を臨時に名詞化できる」ということでもあります。
the rich(金持ち)=rich people
the poor(貧乏人)=poor people
the young(若者)=young people
the old(年寄り)=old people
と「the+形容詞」が「形容詞+people」の意味として使われることはよくあります。意味的には「people(人々)」ですから、いずれも
「the+形容詞」は複数扱いとなります。
これも広い意味で「抽象用法」の一種といえます。
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186.(その他)
英文法の学習参考書を開けば、おそらくまだまだ様々な用法、用例が載っていることでしょう。すでに述べた通り、このサイトは決して 「あらゆる文法事項を もれなく網羅する」ものではありません。あくまでも最重要基本項目を取り上げつつ、「英文法の学び方」を実践的技能の総合的向上を目指して解説するもので す。
従いまして、このサイトで取り上げていない事柄もまだまだありますので、学生の方などは必ず学校の教材で本サイトのもれている部分までしっかり学習しておいてください。少なくともただ文法事項が並んでいる一般の参考書を見るとき、その「読み方」、「理解の仕方」はこのサイトを通じてそれなりには身についていることと思います。(そう願います。)
これまで触れた事柄以外に「固有名詞」にtheが付く場合などもありますが、これなどはもう「theの用法」ではなく「固有名詞」の 問題であり、固有名 詞は「そう名づけられたらそれを守るしかない」ものです。名前なんですから。文法は人為的に定められたルールではありませんが、固有名詞は人為的に決められたものです。そう名づけた人がいるのですから、それに従うほかありません。
さらに現実に遭遇する様々な用例の中には、習った文法ではどうしてもすっきりと割り切れないものも数多く出てきます。基本はしっかり 押さえつつも(それ で大半の用例は納得がいくものです)、何もかもを文法で割り切ろうとしない柔軟性も大切なことです。言葉はその言語を日常用いる人々の習慣の中で生まれ育 ち変化するものです。すべてをルールで支配しようとは決して思わないでください。
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188.1-4-1 「内容語」と「機能語」
この項目は「077. 文強勢(3)--弱形と強形」を参照しつつお読みください。
ここでは定冠詞、不定冠詞の両方について発音(読み方)の問題を取り上げます。
これについては「(2)発音」の「063.様々な音声
学的現象」の中の「077.・
文強勢(3)---弱形と強形」でも詳しく触れています(発音につい
てはここよりも当然詳しく解説している)ので、「冠詞」についての文法的理解と合わせて必ず参照するようにしてください。
どんな場合であっても「単語をどう発音するか」は文章の中で決まります。すべての単語は「単語単体としての読み」を持っていますが、 文章に組み込まれた ときは、その文の意味に応じて、あるときは強く、あるときは弱く、あるときは高く、あるときは低く読まれます。言い換えると、1つの英文を適切に読めるた めには、その文の意味を把握していなければなりません。
授業では英文を読んで和訳させるスタイルが旧態依然として多くの学校で取り入れられていると思いますが、和訳などさせなくても「英文 を音読」させただけで、その生徒が意味を正しく把握しているのかが分かってしまうものなのです。そして、学習者は英文を音読する際、「文字を発音する」という感覚ではなく 「意味を読み上げている」という自覚を持つことが重要です。英文を読み上げながらリアルタイムに意味を感じ取り、「自分の言葉」としてその英文を人に聞か せていれば、自然と適切な読み方になるものです。
英文では意味上特に「しっかりと相手に伝えたい単語」は明確に、大きく、ゆっくり目に発音され、「分かりきっていること」、「あまり
重要でない情報」は
発音も弱まり、速めに流した読み方となる傾向があります。
文章を構成する単語は、「内容語」
と「機能語」に分けることが
できます。
「内容語」とは名詞や
動詞、形容詞のように「具体的な意味」を持ち、文章を伝える上で「重要な情報」を含む単語のことです。
それに対して「機能語」とは「文法的な働
き」を主な任務とする単語のことで、細かい品詞分類(最上位の「8品詞」ではなく、もっと細かく個別に分けた名称)として「代名詞」、「代形容詞」、「代副詞」、「冠詞」、「数詞」、「接続詞」、「前置詞」、「副詞」、「間投詞」があります。
「代名詞」がすでに述べた名詞の繰り返しを避ける用途に用いられる場合、聞き手はそれが何であるかをすでに了解していますので、特別
な理由がなければそれを強く発音する必要がありません。
「代形容詞」と「代副詞」は本サイトの品詞では取り上げない名称なのですが、この場に限り軽く触れておきます。
「名詞」の繰り返しを避けて「代名詞」があるようにすでに使った形容詞や副詞と同じ内容を単語の繰り返しを避けて用いるのが代形容詞、代副詞です。先に
「beautiful」という形容詞があって、そのすぐ後に「So is she
.(彼女もそうだ)」というときの「so」を代形容詞、先に具体的な時間を示す副詞(this morningやat AM
9:00など)が出たあとの「then(そのとき)」を代副詞と呼ぶことができます。
「冠詞」は今この章で説明したもの。
「数詞」は「one, two, three, four, ...」などの言葉。
「接続詞」は「and, but」など語句や節をつなぐ言葉。
「前置詞」は「in, at, on, to, for」など名詞に結びついて句を作る言葉。
「副詞」は「名詞以外を修飾」する言葉。
「間投詞」は「Oh, Wow, Hey」など感情を表す言葉。
(ここまでの範囲で出てきていない品詞は今後の項目で解説します)
「内容語」は、具体的
な重要情報を持つ言葉ですから、これを弱く小さく発音したのでは相手にこちらの言いたいことが伝わりません。当然、はっきり強く、
大きな声で発音される語となります。
「機能語」は他の内容語同士が文法的にど
ういう関係でそこにあるかを伝える働きをするもので、それ自体が具体的重要情報も持つわけではないため、通常は
弱く、軽く、速く読まれます。ただし、特に具体的な数字をはじめて相手に伝える際には、当然そこは明確に伝える必要がありますし、副詞といっても
「very beautiful」の「very」は「beautiful」に比べて重要度が低く、beautiful
より弱めに読むのが通常ですが、「He ran very
fast.」の「fast」は「どう走ったか」を初めて相手に伝える比較的重要情報を含みますので、発音も強く明確になります。
さて「冠詞」は「特別な理由がない限り」(どういうときが特別かは後述)、文法的には縁の下の力持ちであり、脇役であり、芝居の黒子
です。黒子が役者よ
り目立っては芝居がぶちこわしになりますね(笑)。
冠詞の冒頭でも説明したとおり、そもそも冠詞というのは「one」や「that」の意味的重要性が低くなったところから生まれた「弱形」です。ナチュラ
ルスピードで発音される英語ネイティブの声からはその存在さえも聞き取れないほど弱く発音されることすらあります。
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189.1-4-2 冠詞の弱形発音
この項目は「077.文強勢(3)--弱形と強形」を参照しつつお読みください。
This is a pen.
There is an apple on the table.
He gave me the book.
もしこれらの英文で冠詞の意味を強く訴えたいのであれば
This is a certain pen./This is just an ordinary pen, nothing
special.
(これは或るペンです。/これは何の変哲もないどこにでもあるペンです)
There is (only) one apple on the table./There is a single apple on the
table, not two or more.
(テーブルの上に(たった)1個のりんごがある。/テーブルの上にあるのは2個以上ではなく、1つのりんごだ)
He gave me that book.
(彼がくれたのはその本なのだ)
などと単語が変わったり追加されてより具体性のある言い方も用意されています。 それが単なる冠詞だけで済ませられているというのは、「多くの中の1つ」とか「2つ以上ではな」、「今話題に出たその」という意味を特別強く訴える必要がないからです。 ですから通常は、
語としての発音 | 強 形 | 弱 形 | |
「a」 | |||
「an」 | |||
「the」 |
と弱形発音がなされます。
誤解して欲しくないのは、弱形発音は「特別文章のどこかを強調しない普通の読み方をしたとき」の発音であり、あくまでの「文章に組み込まれたとき」の読み方の1つだということです。ある語を強く読むとき、そこに理由があるように、弱く読むことにも理由があるのです。
「a」、「an」、「the」という「単語の読み」(文章に組み込まれていないとき)は、あえて弱形にする理由もないので、上の表の「語としての発音」と
なります。
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190.1-4-3 冠詞の強形発音
この項目は「077.
文強勢(3)--弱形と強形」を参照しつつお読みください。
「特別な理由」がないとき冠詞は弱形で発音されますが、「特別な理由があるとき」は冠詞も強く発音されることがあります。では、その特別な理由とはどう
いうものがあるのでしょうか。
(1)相手の部分的聞き間違えを訂正したいとき
I said "a book", not "the book".
(私は「a book」と言ったのであり「the book」と言ったのではない)
I said "a book", not "books"
(私は「一冊の本」と言ったのであり、「複数の本」とは言っていない)
(2)冠詞が持つ「機能」や「意味」をより強調したいとき。
I am talking about "a dog", not "the dog".
(私はごく普通の一般的な犬の話をしているのであって、特定の犬のことを言っているのではない)
That is a cat, but not my cat.
(あれは確かに猫だけど、私の猫じゃない)
(3)文章の中の機能語としてではなく、「独立した単語」として伝えたいとき。
"The" should be used instead of
"a".
(そこでは「a」ではなく「the」を使うべきだ)
You should say "an", not "a", before a vowel.
(母音の前では「a」ではなく「an」と言うべきだ)
(1)は相手がこちらの言葉を聞き間違えたと感じたとき、それを単純に訂正するときのこと。
(2)は「a dog」が「この世にいる沢山の犬の中から任意に取り出した一例」という不定冠詞が文法的に意味すること、「the
dog」が「文脈から了解される特定の犬」を意味することを踏まえ、それを対照的に並べることで自分の意図することを明確に伝えようとするもの。
(3)「aという単語」、「anという単語」、「theという単語」の意味。
それほどしつこく解説しなくても、これらの例文に含まれる冠詞が「強調」されなければならない理由は納得がいくでしょう。このように現実の「人間の言 葉」としての英語は一定のルールにしばられるわけではなく、あくまでも話者の「思い」を音声に乗せて表現されるものです。すなわちあなたが英語を習得する ということは、あなたがその話者となり、自らの「心理状態」に応じた音声の使い方が適切にされなければならないということでもあります。
沢山の単語を覚え、文法事項を学び、色々な構文になれることも確かに大切であり、それなしに様々な英文を読みこなしたり、フォーマルな文章を書いたりす ることはできませんが、そこに至る以前に、平易な言い回し、同じ英文でも「読み方」1つ違うとこれほど伝わる内容も変えることができるということをよく理 解してください。
ここで焦点を当てた「冠詞」(中学1年で習う超基本語彙!)ですら、その読み方の工夫でこれほど「内容の濃い」表現ができるのです。
「私はごく普通の一般的な犬の話をしているのであって、特定の犬のことを言っているのではない」
この日本語を「英作文」して会話に使おうとすれば、さぞかし辞書と首っぴきになって、あれこれ難しい単語や構文を駆使しようとすることでしょう。
I am talking about "A DOG", not "THE DOG".
こんな誰でも知っている単語だけで上の日本文の意味が的確に、隅々まで見事に伝わるなんてすごいことだと思いませんか?「単語の置き換えで和英、英和を
しなければならない」という固定観念を捨てましょう。「音声には意味を伝える力がある」ことを忘れてはなりません。
そしてこれまで「単語の置き換え」で和訳してきた人も、もっと思考を柔軟にして「その英文の意味、言わんとすること」を、あるときは自由に言葉を補い、
またあるときは英文にあっても大胆に単語を切り捨て、「こういうことを日本人が日本語で言うとしたらどう言いまわすだろうか」という視点から「自然な日本
語による翻訳」をしてみましょう。 単なる「和訳」と「翻訳」の違いがそこにあります。英文を理解するのは英語の力ですが、英文を日本文に転換するのは他ならぬ「日本語の能力」なのです。
生徒、学生の中には「英文の意味はわかっていないのに和訳はできる」という奇妙なことを言う人がたまにいます。「意味がつかめていない英文を和訳できる
わけがない」のです。そんなことが言えるのは「自分が書いている日本語の意味すら理解していない」証拠といえます。
言葉を大切にしてください。英語を学ぶのは、英語話者とのコミュニケーション能力を身につけることだけでなく、外国語という鏡を得て、母国語である日本
語、そして日本、日本文化、日本人を客観的に見つめる能力を伸ばすことでもあるのです。そして英語の力を伸ばすために自らの日本語にも磨きをかけましょ
う。
平易な英文を様々に読み方を変えることで、その英文が伝える内容も実に豊富なバリエーションとなりうるのです。
英文を読むときも、筆者がその英文を声で伝えるとしたらどう読むのだろうかを考えてください。英文の意味が理解できるということは、筆者(話者)に成り代わりその英文を口で言えるということです。意味に応じた読み方ができるということなのです。逆を言えば「読み方がわからない」英文は「意味もちゃんと理
解できていない」ということです。
このサイトでは非常に多くのページを文法より先に「発音」の章に割いていますが、その理由がそこにあります。
「音声」こそが「言語」の本当の姿であり、文字で書かれた文章は「それを記録」するための手段です。音楽は現実に耳に入ってくるメロディこそが実体であ
り、楽譜がそうなのではありません。英文を読み理解することは、楽譜を見てそれがどんなメロディなのかを想像することに似ています。すなわち楽譜から
「音、旋律」がイメージできなければ音楽が理解できないのと同様、文字で書かれた文章から「音声で読み上げられた英語」がイメージされてこそ、英文が理解
できたと言えるのです。
今後いかなる英文も単語も先ず読んでください。発音してください。スペルを間違えても、忘れてもいいんです。読めもしない単語が書けても何の意味もない のですから。「自分の言葉」として抵抗なく口をつくようになるまで練習してから、「ちゃんと書けるか」を気にしてください。(「書けないままでいい」とは 言ってませんよ。そこを誤解なく) 発音などあまり気にせず「目先のテストの点数」だけを追いかけて単語のスペルを覚えた人と、今述べた「言語習得の自然なあり方」を踏まえて「書けるよう にまでなった人」と、英語運用の実力(読む、書く、話す、聞き取る)に歴然とした差がつくのは当然のことではありませんか。
長文読解など入試の重点とされる出題に対しても、「正しいアプローチ」で学習した人は、「面倒なことを避けたいばかりで『効率のいい勉強方法』といいつ つ実はとんでもない遠回りの学習方法をした人に比べて、最低でも4倍以上のスピードでより正確に長文を読みこなしてしまいます。学校の定期試験など「平均 的な生徒が最後まで問題に目を通せる」ことを基準に作られていますので、「本格的な学習法で実力を伸ばした人」はテストでも時間が余ってしょうがないで しょう。「え?もう問題ないの?もしかして裏側にも問題が印刷してあるのかな?」と感じるものです。 「ふるい落とすため」の「大学入試」ですら、正しく英語を学んだ人には簡単に感じ、時間のゆとりがあります。少なくともそういう人にとって大学入試の英 語の試験で「時間が足りない」と思うことはありません。
「やるべきことをきちんとやる」。これ以上に効率のよい学習方法は存在しないのです。そしてその要(かなめ)が「音声」なのです。いかなる文法事項も 「適切に読めて」こそ、その意味を持ちます。「読める人」にしか、どんな文法事項も理解はできないのです。そして文法を学ぶときにも、「ルールの羅列」を暗記するのではなく、話者の心理が言葉という形の「影」を落とした結果その表現があると考え、「表現の向こう側にある人間の心の動き」をさぐるためのヒントをつかむ参考として文法があると考えてください。
「英語が使えるようになりたい」。
その目標に到達するまでに「やるべきこと」は沢山あります。大変なことです。苦労します。
しかし出発点から100メートル先のゴールに到達する「最短コース(最も効率のよい勉強方法)」は、その100メートルを「直線コース」で進む以外にな
いのです。その途上には、発音記号の習得があり、基礎音声学の訓練があり、語彙力の増強があり、基礎文法の理解があります。そのすべてが100メートルを構成する1つ1つのメートルなのです。どれを抜かしても100メート
ルに満たなくなるのです。
100メートル向こうのゴールには行きたい。でもそれだけの距離を走るのは疲れるし面倒だ。なんとか10メートル走っただけで、100メートル走ったこ とにしてもらえないだろうか?という甘えが多くの人が言う「効率のいい勉強方法はないだろうか」なんです。そういう甘えを捨てられない人ほど、右にうろう ろ、左にうろうろしながら、「前に進まずに済む方法」を聞いて回り、時間を無駄にしています。なんと非効率的な勉強方法じゃありませんか。
勇気を持って迷いを捨て、ただ黙々とゴールに向かって100メートルを1cmの積み重ねとして進んでください。今まで知らなかった発音記号1つ読めるよ うになったら、また1cm進んだのです。ゴールは必ずやってきます。「楽する方法(実際には存在しない夢に過ぎない)」を探しながら時間を浪費する人を尻 目に思った以上に早くその日は来ます。完全にゴールに到達する前に、「ゴールがこんなに近づいてきた」と実感する日がすぐ来ます。
そして1つのゴールに到達したと思ったとき、そこを出発点としてまた新たなゴールも見えてきます。「英語が使えるようになる」というハードルを飛び越え られる人にとって、高校・大学入試など「足首の高さ」でまたいで通れます。本当です。その証拠に大学に合格しても英語が使えない人が大勢いるじゃないです か。正しいアプローチで実用性の高い英語を見につけた人から見れば「足首の高さ」でも、「辛うじて飛び越えられた人」も一応合格できますからね。
じゃあ「私は辛うじて飛び越えられるだけの『最低限の力』だけ欲しい。だったらやらずに済むことも多くて楽なんじゃない?」と思ってはいけません。1年も集中して取り組めば「足首の高さ」に思えるハードルを、なぜわざわざ高く感じるままにしておくのですか?そんな「効率の悪い」そいて「危険」なことをし なければならない道理はどこにも見当たりません。
なぜ危険か?大学入試は、それまでに学んできたことの中から「一部」が出題されます。当然のことながら「すべて」は出題できません。その「一部」が全体 の中の「どこ」なのかは受験するまでわかりません。「頻出問題集」などで「一部」となりそうなところを「理解しにくい素養のまま」無理に(=非効率的に) 勉強しても、そうして学んだところが運よく出題される保証はどこにもありません。運よく出題されれば「辛うじてハードルを飛び越えた」ことになるわけです が、そんなギャンブルをするより、「どこからでもかかってこい!」という準備を万端に整えた方がはるかに賢いと思いませんか?「大学に受かっただけで、 入ってからまた英語で苦労する」のと、「大学にも合格し、英会話も身けた。大学の英文テキストも余裕で読めて大学生活をより満喫できる」のとどちらがいいですか?
大変くどくどと書いてしまいましたが、このサイトの最大の主眼は文法事項を羅列することではなく、「学び方を知る」ことです。このサイトが不要になるこ とこそが何よりもの目標であり、このサイトの意義なのです。今たまたまこのサイトを訪れ、このつたない解説を読んでくださっている英語学習者の方には、ど うか自らの目標を達成していただきたいと切に願います。心からそう願うあまり冗長な話を展開してしまいました。
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