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150. 態

 原則として「文」には常に「主語」と「述語動詞」が含まれており、「述語動詞」は、次のことがらをその形に現します(しかし述語動詞の形を見れば、次のすべてが完全に分かるというわけではない)。

1、主語(人称、数)
2、時制(現在、過去、未来)
3、相(基本、完了、進行、完了進行)
4、態(能動態、受動態)
5、法(直説法、仮定法など)

 たとえば「He goes to school every day.」という文に含まれる「goes」には
1、主語3人称の単数である
2、時制現在である
3、基本相である
4、能動態である
5、直説法である
 ということが、その姿(goes)に現れているといえるのです。上記1〜5のどれかが違えば、動詞の形もまた変わります。

 これまで「時制」について見てきましたので、ここでは上記4の「」というものを解説します。



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151.---「態」とは?

 「」という漢字1文字からは、それがどのような文法事項を表しているのか想像がつきにくいですが、この文法的名称を英語で言うと「Voice」です。そう、「声」を意味するあの「voice」とまったく同じ単語なのです。そして「能動態、受動態」は、それぞれ「positive voice/passive voice」といいます。直訳すれば「積極的な声」と「消極的な声」ですね。

 ある出来事を表現するのに、「する側」を主語に取る言い方と「される側」を主語に取る言い方があります。同じ事実であっても表現方法が違うということです。

1, He loves her.
2, She is loved by him.

 1は、「彼が彼女を愛している」と「love」の動作主である「He」を主語にして「する側」を表現し、「彼女」は「愛される側(される側)」として「目的語」という位置に置かれています。
 2は、1で「される側」だった「彼女」を主語にして「彼に愛されている」という、「立場を変えた表現」になっています。まるで1では「僕は彼女を愛しているぞ!」と「彼の声」が、2では「私は彼に愛されているのよ!」という「彼女の声」が聞こえてくるようではありませんか。

 このようにする側」を主語に置いた表現を「能動態」、「される側」を主語に置いた表現を「受動態と言います。

 ということは、裏を返して考えてみると「する側・される側」がそろっていなければ、受動態にして表現できないということにもなります。確かにそれは基本の考え方として正しいことです。
 さらにもう一歩踏み込んで考えると、「される側」があれば主語が得られるため、「する側」が不明だったり、表現しにくくても、文章ができてしまうということが言えます。

He was killed in a car accident.(彼は自動車事故で亡くなった)

 日本語では「亡くなった=死んだ」という能動的な言い回しが用いられており、これを「殺された」とは普通言いませんが、英語的発想では、「彼は自ら死んだのではなく、他の原因があって、その原因によって『死なされた』」と言うわけです。
 上記英文では「by 〜」がありません。つまり「彼を死なせた人」が文章に表現されていません。ここが受動態の便利なところでもあります。

English is spoken in America.(アメリカでは英語が話されている)

 これも受動態の例ですが、言うなれば「by people」が省かれていると考えることもできます。しかし、あえて「by 〜」を言わないのは、情報として重要なのが「英語が話されている」であり、「誰が」の部分は「in America」から「アメリカにいる人たち一般」であることが明白です。

 「する側」と「される側」がそろっていることが受動態の基本条件ですので、同じ事実を表す能動態の文は、必ず「目的語(される側)」を含んだ英文ということになります。つまり「受動態で表現されるのは他動詞だけ」ということです。



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152. ---受動態の形式

 受動態で「〜される」を意味するには「be+他動詞の過去分詞」という形式を用います。
 この「be」が文の主語・時制・相などを形に現し「am/is/are, was/were, will be」あるいは「have been, has been, had been, will have been」の中から、意味にあったものとなります。(これらすべての形を単に「be」で代表して現します。)
 「他動詞の過去分詞」はその前の「be」がどんな形であろうと、過去分詞であること以上に形が変わることはありません。

He ( play ) the piano.
をもとに12通りの「述語動詞」のパターンをやりましたね。あれは「能動態の12通り」だったのです。
 ですから、この英文の「the piano」を主語に取り直し
The piano ( be played ) by him.
 として、またあらたな12通りが書けるのです。

 「え?!やっと12通り覚えたと思ったら、また新しい12通りを覚えるのか?!」

 と驚く必要はありません。あなたはすでにそれができるようになっているんです。つまり「be」だけをすでに学習した12通りにするだけであり、過去分詞の「played」はそのあとにそのまま続ければよいのです。「be」についてだけ、慎重に「相」に必要な部品をきっちり使ってください。次の英文の中にちゃんと「時制・相」の部品がそろっていることと、それがどう組み合わさって使われているかをまず観察してください。

01, 現在時制・基本相: The piano ( is played ) by him.
02, 過去時制・基本相: The piano ( was played ) by him.
03. 未来時制・基本相: The piano ( will be played ) by him.

04, 現在時制・完了相: The piano ( has been played ) by him.
05, 過去時制・完了相: The piano ( had been played ) by him.
06, 未来時制・完了相: The piano ( will have been played ) by him.

07, 現在時制・進行相: The piano ( is being played ) by him.
08, 過去時制・進行相: The piano ( was being played ) by him.
09, 未来時制・進行相: The piano ( will be being played ) by him.

10, 現在時制・完了進行相: The piano ( has been being played ) by him.
11, 過去時制・完了進行相: The piano ( had been being played ) by him.
12, 未来時制・完了進行相: The piano ( will have been being played ) by him.

 なお現実問題として言うなら、あまり複雑な述語動詞の形式(たとえば12の「未来時制・完了進行相」など述語動詞だけで5語です)は、実際の会話などで用いられることは、まずないと言えます。なにもそんなもってまわった言い回しをしなくても、もっとシンプルな表現ですませられますが、それはそれとして、ここでは、すべての形式について習熟だけはしておきましょう。

 上記12通りの英文は、あくまでも「述語動詞」の形式的パターンを示すものですから、時間を表す副詞がなく、なんとも漠然とした言葉足らずの英文です。
 それでも想像で文脈を考え、「I play the piano」の英文を「立場を変えて同じ事実」を言うのだと思えば、それぞれの英文の意味もわかってきます。もしここで、「おっとまだ基本12パターンの理解(と口慣らし)が甘いかも」と感じる人は、どうか先をいそがず前の内容に戻り、みっちりと「基本時制(過去、現在、未来)」×「相(基本、完了、進行、完了進行)」の12をもう一度復習してください。

 使い道がどれだけあるかは、とりあえず置いておくことにして、上記12種類の受動態+時制×相の意味の例を示すことにします。日本語の言葉づかいは、あくまでも参考にして、「そこに述べられる事実」をよく想像してくださいね。

01, 現在時制・基本相 The piano ( is played ) by him.
 事実としては「He plays the piano.」と同じとまず考えます。それを立場(する側とされる側)を変えて言いまわしたのがこの文です。
 直訳的に言えば「ピアノが彼によって弾かれます」ですが、現在時制ですから「日常的習慣」を述べているかも知れませんし、「眼前の事実」かも知れません。
 たとえ英文が受動態で書かれていても、日本語にする際「態の転換」を行い能動態として意味を述べてもかまいません。日本語と英語では「同じ事実」をどちら側から表現するかについても習慣の差がありますから、そのあたり柔軟に対応するとよいでしょう。

02, 過去時制・基本相 The piano ( was played ) by him.
 01をただ過去にずらしたもの。
 「ピアノが彼によって弾かれた(断片的過去の事実)」、「ピアノが彼によって弾かれていた(習慣)」が直訳。

03. 未来時制・基本相 The piano ( will be played ) by him.
 01を未来にずらしたもの。
 「(そのときがくれば)ピアノが彼によって弾かれる(こととなる)だろう」
 ポイントは英文に「時」を表す副詞がなくても「そのときがくれば」というイメージを必ず補うことです。

04, 現在時制・完了相 The piano ( has been played ) by him.
 「He has played the piano.」を立場を変えて表現したもの。
 「ピアノは(今はもう)彼によって弾かれてしまった」

05, 過去時制・完了相 The piano ( had been played ) by him.
 04を過去にずらしたもの。
 「(過去のその時点ですでに)ピアノは彼によって弾かれてしまっていた」

06, 未来時制・完了相 The piano ( will be played ) by him.
 04.を未来にずらしたもの。
 「(そのときがくればもう)ピアノは彼によって弾かれてしまっていることだろう」

07, 現在時制・進行相 The piano ( is being played ) by him.
 「He is playing the piano.」を立場を変えて言いまわしたもの。
 「ピアノは彼によって弾かれているところである」

08, 過去時制・進行相The piano ( was being played ) by him.
 07.を過去にずらしたもの。
 「(過去のそのときちょうど)ピアノが彼によって弾かれているところだった」

09, 未来時制・進行相 The piano ( will be being played ) by him.
 07.を未来にずらしたもの。
 「(そのときがくればちょうど)ピアノが彼によって弾かれているところだろう」

10, 現在時制・完了進行相 The piano ( has been being played ) by him.
 「He has been playing the piano.」を立場を変えて言いまわしたもの。
 「(今までずっと)ピアノが彼によって弾かれ続けてきた」

11, 過去時制・完了進行相 The piano ( had been beeing played ) by him.
 10.を過去にずらしたもの。
 「(過去のその時点まで)ピアノが彼によってずっと弾かれ続けてきていた」

12, 未来時制・完了進行相 The piano ( will have been being played ) by him.
 10.を未来にずらしたもの。
 「(そのときになれば)ピアノがずっと彼によって弾かれ続けたことになる」

 12などはかなり複雑な形式になっており、実際、日常的に使用される頻度はほとんどないと言ってよいくらいですが、だからといって「こういう言い方をしてはならない」わけでもなく、「ピアノと言う物を主体にどうしても表現したい」限られた場面では、必要になる形式です。日本語で「〜され続けたことになる」なんてもっちゃりした言葉づかいですよね。でも「される」「し続ける」「ことになる」という個別では普通に使われる表現を3つも組み合わせると「〜され続けたことになる」なんて長ったらしい言葉にならざるを得ません。
 「受動態・未来時制・完了進行相」などは「いかにも頭(大脳)で考え出した言い回し」の臭いがプンプンしますね。多くの言葉は大脳よりも間脳(運動神経と同じ)を活発に使って発せられますので、こういう複雑な表現形式は、それだけ「理屈っぽい」響きをともなうことになります。

 12の形式が現実に使われそうな場面を強引に考えてみましょうか。
 たとえば、もうガタが来ていて、今にも壊れそうな状態のピアノがあるとしましょう。押し込んだ鍵盤が引っ張り上げないとそのまま沈んだままになるほどの古いピアノです。でも先祖代々受け継がれてきた大切で貴重なピアノだとして、それをあるピアニストが極めて長時間演奏しっぱなしだと想像してください。
 ここで話者は長時間の演奏について「ピアニストの技術や体力」よりも「ピアノの耐久性」が心配になり、だからピアノを主語にした文章を言いたくなる心理が働きます。そして今時計を見ると、「彼」が演奏を始めて5時間50分が経過していることに気づきます。
 すると「あと10分で(=in ten minutes:未来の時間設定) そのピアノはちょうど6時間演奏され続けたことになる」わけです。

In ten minutes, the piano will have been being played for six hours (by him).

 このように、あまりありきたりではない特殊な状況、独特の心理状態のもとでは、あえてこの形式で述べたくなることがあっても不思議ではないのです。使用頻度的には「ごくまれ」ではあっても、れっきとした正しい英文ですので、あらゆる述語形式を有機的に理解し、習得するためにも、このような複雑なものも含めてしっかり口慣らしをして、使いこなせるようになりましょう。



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153. ---SVOでも受動態に転換されない例

 SVOの能動態が常に機械的にOを主語に取り直した受動態にできるというわけでもありません。「言葉」ですから、あくまでも「意味」を重視して考えなければならないのは言うまでもありません。

 SVOの形式で表現される文章でも「V(述語動詞)」に「誰かの意思が働いた動詞」が来ていないと「する・される」という2つの立場をいれかえた表現はできません(無理にそれをしても非常に不自然になってしまう)。

I have a book in my hand. (私は手に本を1冊持っている)
を「A book is had by me in my hand.」にはできません。<「持っている」の意味では受動態にできない

I lack the talent for singing.(歌の才能がない)
を「The talent for singing is lacked by me.」ともできません。

なお、1つの動詞であっても「意志動詞」と「無意思動詞」の両方に使われるものもあり、その場合「意思動詞」の意味に限って受動態にすることができます。

She met the guy at the party.(「meet」が「会う、出会う」の意味では「無意思動詞」なので受身にならない)
He was met by her at the airport.(彼は空港で彼女に出迎えられた。)<「meet」が「出迎える」の意味なら「意思動詞」

The hall holds 10,000 people in it.(「hold=収容する」は「無意思動詞」なので受身にできない)
The meeting was held last week. (「hold=開催する、抱く」の意味なら「意思動詞」なので受身にできる)

 このように、常に「意味」に応じて考える必要があります。決して「SVOならOを主語にしてbe+過去分詞により『機械的に』受動態が作れる」とは思い込まないようにしてください。

 「意味に応じて」ということから言えば、文法的には成立しても「そんな言い方はおかしい」というものもあります。

(1) Three thousand customers entered the supermarket yesterday.
→The supermarket was entered by three thousand customers yesterday.(スーパーが3000人の客に入られた)
 「ener」は確かに「意思動詞」ですから、こう表現するのは「文法的」には成立しますが、意味として極めて不自然になってしまい、実際に用いられることはありません。

(2) Three burglars entered the supermarket last night.
→The supermarket was entered by three burglars last night.
(スーパーが3人の強盗に入られた)
 こちらは意味的にも自然な英文です。1つの英文が正しい・正しくないは、「使われる・使われない」が優先するものであり、決して無機質な機械的操作から判断を導き出せません。あくまでも「意味」を考えるようにしましょう。



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154.---形式化した受動態

 もともとはれっきとした受動態だったのが、「過去分詞」の部分が完全な形容詞として確立してしまった例も多くあります。

I was surprised at the news.(その知らせに私はおどろいた)

 この「was surprised」の形式は見るからに受動態ですが、「surprised」が単独で形容詞の品詞を与えられ辞書に載るほどすっかり受動態として意識されなくなっています。もちろん発想の根幹は「受身(〜される)」がありますので、相変わらずこれを受動態の一種と見ることも間違いではありませんが、使用頻度が日常的に著しく高くなると「過去分詞由来の形容詞」としての認識が強くなるのです。

 過去分詞は「very」で修飾できず「I was much surprised..」のように「much」を使いますが、この例文はもう「I was very surprised..」が許容されています。

※「Thank you very much.」における修飾構造は、「muchがthank(動詞)を」、「veryがmuch(副詞)を」修飾するというつながりになっています。「very」は副詞なんですが、「動詞を修飾できない」という特徴を持ちます。上記「I was surprised」で、完全な受動態と見なしたとき「surprised」は「動詞の過去分詞」となるため、veryでの修飾が許されなくなるわけです。しかし純粋な形容詞と見なされることから「very beautiful」などと同様に「very surprised」が許容されるようになったわけです。

I was born in 1789.(私は1789年生まれだ)

 これも「was born」の部分が「be+過去分詞」で「born」は「bear(生ませる)」の過去分詞ですから、日本語で「生まれる」というのも英語的発想には「生まれさせられた」と表現しているわけです。日本語では受動態で表現しないものでも、英語の発想で「自分の意思でできるものではない、何かの原因があるからすること」は受動態の形式になるものが多くあります。
 「I was born..」を能動態に転換することはできません。完全に固定した形式となっており、常にこのまま用いられます。

 とろこでさきほどの「was surprised」も「驚いた」と日本語では能動的な言い回しをしています。もちろん「驚かされた」と言う意味で
I was surprised by him.(彼にびっくりさせられた)
 という言い方もありますが、英語の動詞表現の考え方からいうと「はい、驚いてください」と言われても(「ふり(演技)」ならできますが)、できないのが「驚く」です。だから「何かによって驚かされる」という発想で表現されるわけです。
 その発想が

He was killed in a car accident.(彼は自動車事故で亡くなった)

 にも見られます。「死ぬ」は「die」という自動詞がありますが、それは主に「自然死や病死」に用いられ「事故死」の場合は「事故という不慮の事態によって殺された(死なされた)」と表現するのです。

 通常の「受身」、つまり「する側とされる側」がそろっている表現では、「する側(行為者)」を「by〜」で表しますが、これまで見てきた表現では「at, in」などby以外の前置詞が使われていることに気づいたと思います。つまり「行為者」を表していないのです。



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155.---受動態による命令文

She is married.
(彼女は既婚者だ)

 「be married」は形式的に受動態ですが、「by〜」で行為者を示すということができません。結婚の相手を示す場合は「to〜」を使います。また「be」ではなく「get」を使えば「get married(結婚する)」という動作的な意味。

She is married to that guy. = Her husband is that guy.
She got married to that guy.
(彼女はあの男と結婚した)

 ここで「〜と」を「with」にするのは次のような場合。

She is married with three children.(彼女は結婚して3人の子持ちだ)
She got married with three children.(彼女は3人の子供を抱えて結婚した)

「marry」は他動詞ですから、能動態では直接目的語を取ります。

Marry me.(私と結婚してくれ)
She married him. (彼女は彼と結婚した)
 事実としては「She got married to him.」と同じ。しかし、違いとして言うなら「She married him.」は「彼を結婚相手に選んだ(そして結婚した)」というふうに「彼女の結婚相手」が重要な関心事として描かれているのに対して「She got married to him.」は「彼女は独身ではなくなった=既婚者になった」が情報の中心にあり「to him」は補足的に相手も示しているということです。「marry」を使えば「能動態」であり、それは主語の積極性を表しますが、「get married」は受動態のため、「結婚に向けて」そういう積極性は感じられません。逆に言えば、客観的に事実だけを伝えるなら「She got married to him.」は向いているとも言えます。

 ですから「私と結婚してください」は「Marry me.」が自然であり「Get married to me.」は、通常ならなぜそんな言い回しをするか理解に苦しむ不自然なものです。
 英語ネイティブにも意見を聞きましたが、ほとんどが「Marry me.が正しい」との声。その中で「あえてGet married to me.が使われるとするならば、愛情に基づく結婚ではなく、まるでビザの更新などの理由のため、消極的に結婚せざるをえないから」という響きを感じるという意見もありました。

 上記の発想を延長して考えると、

Sit down.
Be seated.

 の微妙なニュアンスの違いも判ってきます。基本的にどちらも同じ意味に使われ、互換性も非常に高いのですが、例えばお客さんに椅子を勧めるような場合なら「Be seated」(もちろんpleaseも使いますが)の方が、丁寧に感じられます。それに対して、授業中立ち歩く生徒に「座りなさい」と言う場合や、子供を叱るために「そこに座りなさい」などでは「Sit down」の方がしっくりきます。
 なぜならば「Sit down」は「(自分から)座れ」という能動的動作を要求する命令であり、一方「Be seated」は「(私が着席を勧めるから)座ってください」のように相手の行為が受動的要因でもたらされるという意味を持つからです。また受動態命令は、事務的な口調という響きも伴います。

 このように受動態の命令文は、「命令」という露骨さや直接さが軽減され、それが丁寧な命令となることがあります。そういう発想を背景にしつつ、実際には、畏まった堅い文体として掲示物などで、次のような「受動態命令」が見られます。

Please be advised that ...(〜であると忠告されてください=であることをご了解ください)
Please be informed that ..(〜だと知らされてください=〜であることをお伝えします)
Please be reminded that ...(〜だと思い出させられてください=〜だということをご確認ください)

Please be advised that the time schedule differs on weekdays, Saturdays, and Sundays.
(平日、土曜日、日曜日でスケジュールの時間帯が異なることをお伝えするものです)



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