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145. 現在時制・完了進行相

 「完了進行相」とは「完了相」と「進行相」が複合して現れるもののことです。したがって「完了」と「進行」が先に理解できていなければなりません。

 形式としては「完了」の「have+過去分詞」と「進行」の「be+現在分詞」が重なることとなり 「have/has+been(beの過去分詞)+現在分詞」
 という形になります。

時制が「現在」だから「今」を表し
完了相が「~してきた」を表し
進行相が「~している最中だ」を表し、
それらが同時に現れて「今までずっと~し続けてきた」という意味になります。(現在に至るまでの動作の継続的進行)

進行相が含まれているため、「連続的、継続的」であることが強く表現されており、本来的には「絶え間なくずっと~し続けてきた」の意味ですが、これは文字通り「まったく休むことなく」であることもあれば「習慣的行為が今まで続いている」ことの強調の場合もあります。

(1) I have been watching TV since morning.(朝から今までずっとテレビを見続けてきた)
(2) I have been learning English for three years.(3年間ずっと英語の勉強を続けてきた)

 (1)は実際にその動作が休むことなる行われ続けてきたという意味ですが、(2)は、まさか不眠不休で3年間を過ごすことは考えられませんので「I have learned English」を強調的に「間にブランクなどがなく」という意味を込めて述べたものです。

1, I've been waiting for you.
(ずっと君のことを待ち続けていたよ)
2, I've been working since seven o'clock in the morning.
(朝の7時から今までずっと<休みなく>働きっぱなしだ)
3, I've been working for the company for 30 years.
(その会社に30年間ずっと勤め続けてきた)<「I have worked」の強調

 完了進行は2つの相が複合したものであるため、「have+been+現在分詞」と述語動詞が3語から構成される複雑なものですが、「have been」に完了を「been ~ing」に進行を敏感に感じ取ってください。基本的な例文を最初はゆっくりと「口にする語と意味・用法」がイメージとして連動するように自分の意識を感じ取りながら音読してください。なれてきたら徐々に読むスピードをあげ、半ば無意識にでも「have been ~ing」という正しい形が口をつくまで訓練することが大事です。現在時制ですから「have」は主語に応じて「has」にもしなければなりません。

 完了相は「助動詞としてのhave」と「本動詞の過去分詞」の組み合わせから成り立ちますが、その「本動詞」として「be」が過去分詞になって入っています。そして同時に「be」は「be+~ing」という進行相を作る上で助動詞の機能も同時に果たしています。つまり「have been ~ing」の「been」は「本動詞として完了相に」、「助動詞として進行相」に、同時に用いられているということになります。このように極めて特殊な機能を果たせることからも、他の様々な動詞と区別して「be動詞」という独立した名称で呼ばれているのです。



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146. 過去時制・完了進行相

 前の「現在時制・完了進行相」をそのまま過去にずらしたものです。
 つまり「過去のその時点まで、ずっと~し続けてきていた」という意味を表します。

I had been singing alone until my father came home.
(父が帰宅するまで、私はずっと一人で歌をうたいつづけていた)

 「完了進行」は形式的にはちょっと複雑に見えますが、その分、用法が1種類しかなく非常にシンプルです。逆に形式がシンプルな「基本相」は、用法が多岐に渡ったりするのです。形式のシンプルさは、用途の豊富さにつながり、形式が複雑になると複合している個々の相の「一部」の用法同士が組み合わさる結果、極めて絞られた狭い用法しかなくなるということです。
 ですから複合相(=完了進行相)は、見かけほど難しいものではなく、口さえなれてしまえば、日常会話などでも自在に使いこなせるようになるものです。

 複合相がいかに簡単なものであるかは、実際、今この項目にもう書くべきことがないほどです。(もちろん、それはここに至るまでの各「時制・相」の理解を前提にしているからですが)

 完了進行は、意味から考えてわかるとおり「<過去のある時点まで>ずっと~し続けてきていた」ですから、その動作の終着点となる時間を示す副詞がもっとも相性よく使われます。

The girl had been crying before/until her mother found her.
(少女は、母がその子を見つけるまでずっと泣きとおしだった)



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147. 未来時制・完了進行相

 基本時制×相=12通りについても、これで最後となります。この12通りの述語動詞のパターンをとにかく練習してください。表現すべき時間とそれに応じた適切な述語動詞が、深く考えなくてもとっさに口をつくまで例文を音読しましょう。固定的な和訳にとらわれることなく、あくまでも柔軟に「英語表現そのもの」をダイレクトにイメージしてください。「過去だから『~た』、未来だから『~だろう』などと固定的な和訳」をあてはめることで納得するのはもっとも危険です。最初の理解の参考として和訳は必要ですが、あくまでも「参考」にとどめ、「どう訳すか」に縛られないようにしてください。

 さて、未来時制・完了進行相の表す意味ですが「<未来のその時がくれば>ずっと~し続けたことになる」となります。

If I play the piano for ten more minutes, I will have been playing it for five hours.
(あと10分ピアノを弾けば、5時間引き続けたことになる)

 このように「今はまだその状態になっていない」が、未来のある時間が訪れたときには「~し続けたことになる」という意味を表します。
 形式としては「will have been ~ing」と4語からなる述語動詞ですが、他の複合相同様、見かけだけが複雑で意味・用法は1種類だけなので理解はいたって容易。口さえ慣れればすぐ使いこなせるようになるでしょう。
 ただ現実の会話などでは、それほど使う場面が多くあるものではありません。それはかなり限られた状況下でしかこの形式を必要としないからです。(しかし逆を言えば、そのような限られた状況下では、是非使いたい表現でもあります)

Next month, I will have been learning English for ten years.
(来月で、英語を学び始めてちょうど10年になる)
=(来月になれば、10年間のあいだずっと英語を勉強し続けたことになる)
このような複雑な述語動詞形式を使わなくても次のように言い表すこともできます。

Next month, it will be ten years since I started to learn English.

「it will be」は、まだそうなっていないから「未来時制・基本相」で、「I started」は、英語を学び始めたのが今から見れば過去だから「過去時制・基本相」になっています。



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148. 知識を知恵に昇華するまで練習すること

 さあ、これでもっとも基本となる12の述語動詞のパターンを学習し終えました。
 これに習熟すれば、1つの英文を見て「12通り」の時間表現ができますので、応用の利かない学習をしている人と比較して「12倍」のスピードで英語が上達するようになったと言えます。

 特に英語表現や解釈に自信のない方は、特にこの12パターンを徹底的に練習してください。それこそ「寝言でさえ正しい形が口をつく」ほど自分の意識の底にしみつくまで、時制と相を感覚に取り込んでください。
 ここまでに学んだ12パターンは、実をいうとまだほんの入り口に過ぎません。しかし極めて重要な感覚です。これに習熟してから、さらに別の12パターンが待っています。そして24になったパターンを最終的にはまた別の理解を加えて倍の48パターンまで拡張していきます。(直説法能動態>直説法受動態>仮定法と進む)
 苦労するのは、最初の12パターンだけです。それを24パターンに拡張するのは、ほんのちょっとの理解を加えるだけで済みます。そして最後の48パターンになるのも、ごくわずかの追加事項があるだけ。ですから12パターンに習熟さえすれば、あなたは、英語の動詞について7~8割をマスターしたことになるのです。

 練習の方法としては、できるだけ目に見えてわかりやすい具体的な「動作」を表す動詞で簡単な英文を作り(あるいは信頼できる書物から引用して)、その述語動詞の部分を12通りに変えて(必要があれば適切な副詞を添えて)表現してみます。
 主語にするのは「三単現」の「-(e)s」を付け忘れない練習を兼ねて「He/She」などがよいでしょう。
 何かを課題に練習するときは、課題となる事柄にできるだけ専念できるよう、それ以外の部分を複雑にしないようにしてください。たとえば

He ( watch ) TV.

 このようなもので十分なのです。これだけを目の前にして、一切筆記用具などはもたず、12通りのパターンを口で言ってください。副詞をまったく添えなくて構いません。( watch )の部分を「 watches, watched, will watch 」などの適切な形にしながら「文として」それを発音します。必ず「He watches TV. He watched TV. He will watch TV.」と文で言うことを守ってください。単なる暗記をするのではないので、述語動詞部分の変化だけをぶつぶつ唱えても効果は薄いものとなります。
 それぞれの英文を口にしながら、できる限り生々しく状況をイメージし、現在、過去、未来という時間の流れなどを身振り手振りで表しながら練習するのがよいでしょう。とにかく大事なのは「知識」にとどめず、それを自分自身に深く根ざす感性になるまで練習することです。「覚えた英文を思い出している」という感触がある限りそれは忘れます。まだ自分の言葉になっていません。まるで「最初から知っていた」当たり前のことであるような気がしてくるまで、根気よく自らを訓練してください。学習内容を「知識」にとどめることなく、自分自身の「知恵」になりきるまでひたすら繰り返し、12通りの時間表現になれてください。

 「英語が使えるようになりたい」と思ってこのサイトをここまで読み進められた方は、ここで上記の訓練に十分な時間をかけ、決して今先を急がないようにしてください。



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149. 「時制の一致」などルールではない

 時制の章の最初で「日本語と英語の時間表現の違い」について述べましたが、まったく違う習慣・システムにより時間を表す日本語と英語では、「英語の過去形=~た」、「英語の現在形=~する」という機械的な対応が常に成立するとは限らないのは、当たり前のことです。

 日本語の「~した」は、常に「今から見て過去」を意味するのではなく、「過去の時点における完了」、「現在の時点における完了」、「未来における完了」のすべてについて「完了」でさえあれば同じ「~した」が使われます。

彼が帰って「きた」ので、私はでかけた。
たった今、お父さんが帰って「きた」。
お父さんが帰って「きた」ら教えてください。

 また「~する(未完了)」が現在とも限りません。

お父さんが帰って「くる」前に私はでかけてしまった。
もうすぐお父さんが帰って「くる」。
お父さんが帰って「くる」前に宿題をやり終えよう。

 日本語は「文脈の中で柔軟に基準となる時間軸が移動します」。あるときは「過去のその時点から見た現在」であり、あるときは「未来のその時点から見た過去」でありと、「いつから見た」のかが一定ではありません。

 しかし英語では、述語動詞の時制が「常に現在を基準」に決められます一切の例外はありません。「過去」といえば「今から見た過去」であり、「現在」は「今から見た現在」、「未来」は「今から見た未来」なのです。

 このように「基準が常に今である英語」を「基準が絶えず移動する日本語」に訳そうとすれば、時間表現の言葉づかいがうまく機械的な対応をしないことがでてくるのは、想像に難くないでしょう。にも関わらず「came」とあれば「来た」と疑問なく置き換えて納得する人が実際には多いのです。

He told me that her mother was a famous pianist.

 この英文には「told, was」という2つの述語動詞が使われています。
told=彼が何かを「言った」のは今から見て過去のこと。
was=彼の母親が有名なピアニスト「だった」のは、今から見て過去のこと(=彼が何か言ったその時点でのこと)
 このようにいずれの述語動詞も「今から見て過去だから」過去形になっているだけのことです。何の不思議もありませんね。

 それを「彼は、自分の母親が有名なピアニストである言った」という時間表現習慣の異なる日本語訳と対照して、「『ある』と和訳されるべき箇所が『was』という過去形になっているのは、先に『told』という過去形があるから、それと『時制の一致』をさせているのだ」と説明するのは大きな間違いなのです。別に「toldにあわせて」いるのではなく、「今から見て過去だから当然過去形にしてある」だけのこと。これをよく理解してください。
 そして時制の一致」という学校で習う文法事項をきっぱり忘れてください。なんの役にも立たない知識であり、そんな「ルール」など実際存在しないからです。

 「え?どこの学校でも習うし、どんな文法参考書にも必ず書いてある『時制の一致』が存在しないなんて?!」

 と驚くかも知れませんが、本当に存在しないのです。そんなものはルールでもなんでもないのです。仮にそういうルールがあるとして、「非常に多くの例外」が参考書に書かれているのをご存知ですね?確かにどんなルールにも「若干の例外」はあるでしょう。しかし、「時制の一致の例外」と書かれている項目は1ページに書ききれないほどのたくさんの例文です。なぜそれほど常識外れの多さの例外が存在するかと言えば「ルールじゃないものをルールにした」からですよ!

 このサイトでは「英語の時制は常に現在を基準に決まる」という、たった1つの事実をルールとします。これだけです。そして「一切の例外はない」のです。参考書で「時制の一致の例外」として紹介されているすべての英文もこのサイトでは例外でなくなります。同じ考え方が完全にあらゆる英文に適用されるのです。
 それでは一般に「時制の一致の例外」とされている例を見てみましょう。  以下の例文は「英文法大全」から引用しました。
 なおここに引用した上記サイトの解説は、「時制の一致」をルールとする立場における「例外」として異論はありません。ただ「時制の一致」をルールとしなければ「例外自体がなくなる」という事実を述べるための素材とさせていただくものです。

(1)一般的真理を表す場合
Galileo maintained that the earth moves around the sun.
 (ガリレオは地球が太陽のまわりを動くのだと主張した)
 〔比較〕Ptolemy believed that the earth was flat.

一般の解説:
maintained と moves が一致していない。これは「地球が太陽のまわりを動く」が「一般的真理(=不変の真理)」だから。

真実:
Galileoが「maintaned(主張した)」のは今から見て過去。だから過去形。
現在時制の用法の1つである「不変の真理」は「過去未来永遠の幅」のある現在だから常に現在がその中心。従って当然のことながら現在時制で表現される。
Ptolemyが「believed」したのは過去の出来事。
「地球が平らだ」と信じられていたのは、今から見て過去。だから「was」。


(2)現在なお続く状態や習慣を表す場合
The station master told me that the first train starts at five.
 (駅長は始発電車は5時だと私に言った)
He said that he rises early every morning.
 (彼は毎朝早起きすると言った)
ただし習慣的な事柄でも現在どうなっているかを考慮しない場合には過去形にすることができます。
He said that he rose early every morning.

一般の解説:
 「現在なお続く状態や習慣を表している」から時制の一致を受けない。

真実:
 英語の時制の基準は常に現在。
 駅長が「told」したのは今から見て過去。
 始発電車が出発する(starts)のは、今を中心にした日常的現在だから、当然現在時制。これは今でもそのダイヤが変更されず同じ時間で電車が運行されていることを示すもので、この英文自体がほんの昨日の出来事など新しい過去を述べていることがうかがわれる。もし10年前のできごとを描写しているなら、「その当時の運行ダイヤ」に限った話になるので「started」でないと不自然。

(3)歴史上の事実を表す場合
We learned that the French Revolution broke out in 1789.
(私たちは1789年にフランス革命が起きたことを学んだ)

一般の解説:
 私たちが「学んだ(learned)」のと「フランス革命が起きた(broke out)」で前後関係があるから、本来、古い方を大過去(過去完了形)で表すべきだが、そうなっていないのは、「歴史的事実」だから。

真実:
 過去形と大過去で前後関係を示すのは義務ではない。近接した2つの出来事が文中にあるときは、その前後関係を示さないと誤解を招くが、そうでない場合は、個別に「今から見て過去だから過去形」で問題ない。つまり別に例外でもなんでもなく、普通に過去時制が適用されているだけ。ルール通りである。


(4)事実上の現在・未来を表す場合
Yesterday he told us that he is going overseas next week.
 (きのう彼は来週外国へ行くとわれわれに言った)

一般の解説:
 主節の「told」に対して、従属節の「is」が時制の一致をしていないから例外。

真実:
 例外でもなんでもない。「told」は「彼が述べた」のが今から見て過去だから。
 「is going to...」と現在時制なのは、今からみてこの先のことを述べているから。
 まったくの原則通りである。


(5)仮定法が用いられる場合
He said (that) if he were wealthier, he would assist them with funds.
 (もっと裕福だったら彼らに資金を援助するのだがと彼は言った)

一般の解説:
 主節の「said」が過去だから「過去の事実に反する仮定」を「had been」で言うべきなのに、そうなっていないのは例外。

真実:
 そもそも「仮定法」は現実の時制とは無関係。範疇の違う内容をルールに照らすこと自体がナンセンス。
 仮定法過去は「その時点における事実に反する仮定」であり、仮定法過去完了は、「その時点から見た過去の事実に反する仮定」を述べるもの。従って全くルール通りである。


(6)比較を表すasやthanに導かれる場合
At your age, I did not study as〔so〕hard as you do.
 (君の年頃には、私は君ほど熱心に勉強しなかった)
Japan was previously more mysterious than it is today.
 (日本はかつては今日よりもっと神秘的であった)

※この例文がなぜ「例外」として取り上げられているか自体まるで理解できません。
 「I did not..」は、今から見て過去において「勉強しなかった」から当然過去。
 「as you do」は「今あなたが勉強しているように」という現在を述べているから当然現在。

 「Japan was..」は、今から見て過去のことを述べているから当然過去。
 「than it is today」は、todayがあることからもわかるが「今の日本」を述べているから当然現在。

(7)must、ought (to)、need not、had betterが用いられる場合
I thought I must write to him at once.
 (私はすぐ彼に手紙を書かなければならないと思った)
He said that you ought to〔had better, need not〕go.
 (君が行くべきだ〔行ったほうがよい、行く必要はない〕と彼は言っていた)

※法助動詞は、元来「過去形」だった。それがそのままの形で現在形としても使われるようになった。
 従属節で過去を表すときは、今でも「本来過去形だった」ことが引き続きその用法で使われる。それだけ。

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 このように多くの参考書で「例外」として別に覚えなければならない多くの事柄をまったく特別に意識する必要はなく、「述語動詞はすべて現在を基準に形が決まる」というルールがすべてについて共通にあてはまっている。上記のどれ1つ例外ではない。「時制の一致」をルールにするから「それに当てはまらない」事例がどんどん出てくるだけであり、それをルールとしなければ、何の例外も存在しなくなる。

 繰り返し言います:

 「時制の一致」というルールなど存在しません。

 英語の直説法・述語動詞の時制はすべて現在を基準に決まります。例外はありません。


 もっと簡単で比較しやすい例文を通じて「時制の一致」がないことを理解していただきましょう。

1, She told me she was a teacher.
2, She told me she is a teacher.

3, He told me the meeting was on Sunday.
4, He told me the meeting is on Sunday.
5, He told me the meeting will be on Sunday.

 これらすべて正しい英文です。(もちろん意味が微妙に違います)
 もし「時制の一致」をルールだとすれば、この5つの例文の2,4,5が例外となってしまいます。それは5つのうち3つ(=60%)が例外というとんでもないことであり、ルールに当てはまる方が例外より少ないという奇妙なことになってしまうではありませんか。

 どんな英文も「それが使われた状況」つまり文脈・前後関係なしには存在しません。決して「書かれている文字」だけから内容を理解しようとしてはいけません。常にその英文が現れるに至る経緯を想像し、なんからの状況設定の中における意味を考える必要があります。

 1は、彼女が「述べた」のが今から見て過去。だから過去時制。彼女が「先生だった」のも今から見て過去のこと。現在とは切り離した「断片的過去の事実」として描かれている。ということは、今も彼女が先生かどうかをこの英文から知ることはできない。すなわち「今も先生かどうかわらかない」という気持ちを出すのが自然な状況下で使われるべき英文。5年も10年も昔のできごとを振り返っているなどが想像される。

 2は、彼女が「述べた」のが今から見て過去なのは1と同じ。しかし「she is a teacher.」とこちらが現在時制になっている。つまりこれだけから「今現在、確かに彼女が先生である」ことがわかる。たとえば昨日会った女性が、「私は教員です」と述べたのであれば、その翌日である今日も教員であると考えるのは自然なこと。

She told me that she is a teacher of our school !
(あの人、うちの学校の先生なんだってさ!)

 こうなるとますます、この英文を口にした人の意識の中心に「あの女性がうちの学校の先生だ」という現在の事実が重要な情報として扱われていることが納得できる。この英文を口にした人(生徒)が、自らの関心事として述べている主観性が濃厚に出ている。
 ほんの昨日のできごととして上記英文を使うのに「that she was..」とするのも、間違いではないが、こちらは「that she is ..」という場合より、もっと客観的で冷静な口調。あくまでも「昨日の時点で」という過去のできごととしてそれを扱っている。

3,4,5は、たとえば今電話がかかってきて「He」がmeetingの予定を伝えてきたのを、電話を切ってから背後にいる友人にそれを伝えている場面。

3, He told me the meeting was on Sunday.

 これは次のような意味である可能性がある:
(1)すでにミーティングが終わっており、それが日曜だった。
(2)てっきり土曜日だと思っていたが、彼に聞いたらそうではなく日曜だった。

 (1)は was が今から見て過去を指すもの。
 (2)は「自分の思い込みが間違っていた」ことを示し、自分がそう思い込む以前から別の日程だったという意味の過去形。

4, He told me the meeting is on Sunday.

 彼が電話をしてきたのは「ついさっき、たった今」という過去。だからtold.(これは3,4,5に共通)
 会合があるのは、次にやってくる日曜日。まだ終わっていないが、日程は決定している。(確定的未来)

5, He told me the meeting will be on Sunday.

 「will be」は単純未来。今から見てまだ先のことだから「will」。


 このように英語の時制を「常に現在を基準」だと理解できれば、上記1,2,3,4,5のすべてがあり得ることや、似た英文で微妙に時間表現が異なるときのニュアンスや事実の違いも明確に把握できるのです。
 ここに「時制の一致」などを持ち込むと、本来素直に理解できるはずのことまで、難解に見えてきます。



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