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139. 現在時制・完了相

 さて「基本相」の「現在、過去、未来」3時制を見てきましたので、次は各時制の中における「完了相」です。

形式: have/has(助動詞)+過去分詞(本動詞)

 となります。ここでの「have」は助動詞として機能するもので「持つ、持っている」という具体的な意味を持つ本動詞ではありません。(その意味の本動詞を完了相にするなら「have had」となります)
 完了相では、助動詞 have が「主語の人称や時制」を形に表し「have, has, had あるいは will have」となり、本動詞は常に過去分詞です。したがって「現在時制・完了相」では「have/has」のいずれかと本動詞の過去分詞の組み合わせとなります。

 さて中学で現在完了(=現在時制・完了相)を習うと、決まって「過去形との区別が分からない」という悩みの声が出てきます。それはこの形式の和訳として「~してしまった」という言葉を機械的に対応させてしまうからであり、「完了」という相そのものの意味・用法を正しく理解し、それがあくまでも「現在時制」に含まれる4つの相の1つであることが納得できれば解消する問題です。そしてそのような混乱を防止する意味からも「現在時制・完了相」というちょっと難しい名称をあえて使っているのです。

 さて完了相を理解する上で非常に分かりやすい例がありますので、それをまず見ていただきましょう。

I have my homework finished. <古い形式の完了形

 現代英語では「have/has +過去分詞」が1つにまとまった述語動詞を形成していますが、歴史的に見ると、それはもともと上記のような形式であり、「やり終えられた宿題を(今)持っている」と表現されました。この段階では「have」もちゃんと「持っている」の意味を表していたのです。そして、この形式では「have」だけが(現在時制・基本相の)述語動詞ですから、どう見ても現在について述べているのが分かりやすいですね?
 これが後に「have」と「finished(過去分詞)」が引き寄せあうように連続的に「have finished」という語順を取るようになったのが今日の「完了形」です。こうなって「have」は本来の「持っている」という本動詞の意味から「finished」の相を支える助動詞になりました。

I have finished my homework.<現代英語の完了形

 「have」はあくまでも現在形ですから、この英文が表しているのは「今のこと」です。さきほどの歴史的意味を踏まえて言うなら「すでにやり終えられた宿題を今持っている>だからもう遊びに行ける/もう寝ていい、など」のようにだから今」がこの英文がもっとも述べたいことなのです。

I finished my homework.<過去時制・基本相

 こちらは「断片的な過去の事実」を述べた英文。過去形「finished」は本動詞で基本相なので単独で用いられています。過去形ですから、そこから分かるのは「過去の事実だけ」であり、その結果としての今のことについては一切述べていません。言うなれば「宿題が終わった。だからどうした?」です。
 しかし、「I have finished my homework.」では、「すでに宿題をやり終えている自分が今ここにいる」という「」が重点であり、「もうやるべき宿題はない」とか「もうテレビを見てもいい」などの「過去の出来事の結果としてもたらされた今」を述べているのです。

 さて、それでは「現在時制・完了相」が表す意味について整理します:

1、完了・結果(<すでに>~してしまっている<だから今は、、、だ>)
2、継続(今まで~し続けてきた)
3、経験(今までに~したことがある)

 繰り返しますが「完了相」といえども、それが「現在時制」である限り、述べているのは「今」についてです。
 また十分な前後関係や、用法を絞り込める適切な副詞などがなければ、英文だけを見て上記のどの用法であるかを単純に断定できないことも多くあります。

I have played the piano.

 この英文は
1、私はもうピアノを弾いてしまった。(例えば発表会の順番が終わってしまった)
2、私は今日までピアノを弾いてきた。(以前から今日までその習慣が続いている)
3、私はピアノを弾いたことがある。
 のいずれの場合もあり得ます。

 しかし
(1) I have already played the piano. (already=すでに)
(2) I have played the piano for ten years.(for ten years=10年にわたり)
(3) I have played the piano only twice.(only twice=2度だけ)
 のように副詞が加わると、どの用法で完了形が用いられているかが、わかりやすくなります。

 現在時制・完了相とともに用いられる動詞は、その意味から考えても理解できますが、「過去から現在にまたがる時間」を表せるものです。決して「過去のある一点」だけを指す副詞と「現在時制」の一種である「現在完了」を同時に用いることはできません。

1, I have been to America before.
(私は以前アメリカに行ったことがある) before=今に至るまでの過去の中で
2, Have you ever been to America?
(あなたは今までにアメリカに行ったことがありますか?)ever=今に至るどの時間においても
3, I have never been to America.
(私はまだ一度もアメリカに行ったことがない)never = not ever
4, I have just been to America.
(私はたった今アメリカから帰ってきた・アメリカに行ってきたばかりだ)just=たった今
5, Where have you been all this while?
(今までずっとどこにいたんだ?) all this while=今までずっと(比較的短時間)
6, He has (already/now) gone to America.
(彼はもうアメリカに行ってしまった。<だからここにはもういない>) already=すでに, now=今はもう
7, I have finished my homework this morning.
(今朝はもう宿題を済ませている=これを述べているのがまだ午前中)

・「been to(行ったことがある/行ってきたところだ)」と「gone to(行ってしまった)」には注意。
・「before」は決して過去の1点を指すものではなく、「今から見て過去において」と「過去から今に至るまで」という幅を表す副詞。
・「just」は「たった今」と現在を表し、「now」ももちろん「今」であるが、この2つが並んでjust now」となると「ついさっき」という意味の「過去」を表す言葉となるので、現在完了では使えなくなるので注意。

He has now left Japan.(今はもう去ってしまった)
He has just left Japan.(たった今去ったばかりだ)
He left Japan just now.(ついさっき去った)<過去時制

 たとえ日本語で「ついさっき去ったばかりだ」と言えても、それを機械的に「He has left Japan just now」とは言えない。このあたり頭を日本語から英語にしっかり切り替えて考える必要がある。決して単純な言葉の置き換えで済ませようとしないこと。

 例文7では「this morning」が使われているが、今がすでに午後ならもちろん、これは間違った英文となる。あくまでも午前中にこの英文を述べていなければならず、そうでさえあれば「I have finished my homework today.」が正しいのと同様に成立する。(this eveningやtonightも同じく、今がその時間帯にあればよい)

 ところで現在時制・完了相の例として、日本人的感覚からはちょっと抵抗を感じるような英文もあります:

My father has been dead for three years.(父が亡くなって3年になる)

 これは直訳すれば「父は3年間に渡りずっと死んだ状態のままでいる」ですが、日本語的に考えると「まるでいつか生き返る」かのようにも聞こえるこの言い回しは英語としては全く自然なものです。人の「死」は戻らない(=生き返らない)ものですから、この英文は

(A) My father died three years ago.(父は3年前に亡くなった)<過去時制・基本相
(B) It is[has been] three years since my father died.(父が亡くなってから3年経った)
(「It is」はアメリカ式、「It has been」はイギリス式)

 と同じ事実を述べていることになります。
 「My father came home five minutes ago.」は必ずしも「My father has been home for five minutes.」を意味するとは限りません(5分前に帰宅し、3分前にまた出かけたかも知れない)が、それは「come home(帰宅する)」という動作をいつでも他の動作(go out againなど)が追う可能性があるからです。しかし「die(死ぬ)」は一旦それが行われれば、「live again」がそれを追うことがないため、「died three years ago」が事実として「has been dead for three years」と同じことを必ず指していると言ってよいわけです。



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140. 過去時制・完了相

 現在時制における完了相が理解できれば、あとはそれを過去にずらすだけで「過去時制・完了相」が理解できます。すべての相について、常に現在時制の中でまず理解を固め、それから想像の中で時間を経過させたり、過去にさかのぼったりすることで、他の時制の中での同じ相が何を意味するかも自動的に理解されます。

 過去時制・完了相の用法は次の通り:

1、完了・結果(<その時までにすでに>~してしまっていた<だからそのときは、、、だった>)
2、継続(その時まで~し続けてきていた)
3、経験(その時までに~したことがあった)
4、大過去(=他の過去と対照的に「それよりも過去」を表す」

 「120. 現在時制・完了相」の用法と見比べてみていただきましょう。「今まで」という部分が「(過去における)その時まで」と置き換わっていて、「~だ」、「~してきた」、「~ある」がそれぞれ「~だった」、「~してきていた」、「~あった」と変わっているだけです。つまり「今日なら完了形現在で話すべき内容」を10年後に振り返って話すと完了形過去を使う」ことになるわけです。
 唯一、現在時制の完了相にはなかった用法として「4、大過去」が追加されていますが、これは他の用法と切り離し別にあとから説明します。(本来、「大過去」は別時制ですが、形式が「had+過去分詞」と過去完了なので、ここに含めて解説するのです。)

 ポイントは、たとえ明確な副詞が書かれていなくても、必ず「過去のある時点」がイメージされており(あるいは文脈からそれが了解され)それが「完了」した終点となるのです。

I have climbed Mt. Fuji five times.
(<今日までに>富士山に5回登ったことがある)
I had climbed Mt. Fuji five times <when I was ten years old>.
(<10歳にして>私は富士山に5回も登った経験があった)

 過去完了は、過去時制の一種ですから「when I was ten years old.」と「過去のある時点」を指す副詞があってもまったくかまいません。というか、なんらかの過去を表す副詞を伴うのが自然です。

I had lived in Tokyo for five years until/before I moved to the U.S.
(アメリカに移るまでの5年間、私は東京に住んでいた)

When my parents arrived at the hall, I had finished playing the piano.
(両親がホールに到着したときにはもう、私はピアノの演奏を終えてしまっていた)

 これらのように「過去のいつの時点で、いつの時点まで」が文章中に明示されていれば理解はしやすくなりますが、そのような時間設定が文脈からなされている場合などは、上記の「until/before...」や「when...」がなくても過去完了は用いられます。

I came home at five o'clock. My father had already left.
(私が帰宅したのは5時だった。父は<その時点で>すでに出かけてしまっていた)

 このように現在完了(現在時制・完了相)さえ理解できてしまえば半ば自動的に過去完了(過去時制・完了相)も理解できてしまいます。
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(大過去)

 さて最初の用法で「4、大過去(=他の過去と対照的に『それよりも過去』を表す」として、この過去完了だけに追加されたものがあることをお話しましたが、これはどういうものでしょうか。

The train has aleady left.(列車はもう行ってしまった)

 これは「has」が現在時制ですから「今の時点」で列車がもう駅にないことを意味しています。しかし、これが「私が駅に到着したときには」という過去の時点を設定すると次のようになります。

When I arrived at the station, the train had already left.

 この英文には「2つの前後関係のある過去」が含まれています。1つは「私が駅に到着した」という過去。もう1つは「列車が行ってしまった」という過去。順序から言えば「先に列車が行ってしまって、そのあと私が駅に到着した」ということを述べています。つまり「過去1」と「過去2」があって、その間にはっきりした前後関係があるということです。「過去1」は「今から見て過去」なので単純に過去形で表現できますが、「ある過去よりさらに以前の過去」というのは、まさか「過去形-ed」なんて形を勝手に作れません。そこで「形式として過去完了」を借りてきて、それにより「過去の過去(=大過去)」を表すのです。
 ここで示した例文は、まだ「完了相」でもあり、完全な大過去の例とは言えません。しかし、これを踏まえて次が理解できます。

I have lost the watch (that) I bought yesterday.
(昨日買った時計を失くしてしまった)

 この英文で「失くした(だからもうない)」のは今。でも、その時計を買ったのは昨日という過去です。そこに前後関係があるのは至って当然で、「先に買う>それから失くす」という順序があります。

 この英文で「I lost」という過去で文章を始めると、「買った」の部分は「lost」よりもさらに過去であることを示さなければなりません。

I lost the watch (that) I had bought the day before.
(私は前日に買った時計を失くした)=失くした前日に時計を買っていた

 この英文のhad bought」は形式としては「過去完了」ですが、「完了相」としての意味はまったくありません。あくまでも「lostよりさらに前」という「過去の過去」を前後関係上、表しているのです。

He didn't speak until I had finished eating.
(彼は私が食べ終わるまで話さなかった)

 これも「彼が話し始める」のと「私が食べ終わる」こととの前後関係を示すため、「had finished」という「大過去」になっています。英語ではあらゆる述語動詞をすべて「現在を基点に時制を示す」ため、過去と未来は簡単に表現できても、さらに過去となると実際不都合が発生するのです。この「大過去」はそれに対応する苦肉の策と言えますね。(日本語なら「前日に買った時計を失くした」でいいわけです。「買った」が「(「失くした」という)過去を基点にした過去」を柔軟に表すことができるので、形として「買った」、「失くした」が同じような完了相であっても、そこに前後関係があることを柔軟に理解できるからです。)



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141. 未来時制・完了相

 これも現在時制・完了相をイメージの中で時間的にスライドさせることで理解できます。  つまり「今はまだ現在完了で表現するわけにはいかないが、この先、『ある時』が訪れれば、それが言えるようになる」内容を表現するわけです。

I will have finished eating in ten minutes.
(10分後には食べ終わっていることだろう) in ten minutes=今から10分後

When you arrive here, I will have finished playing the piano.
(君が到着するころには、私はもうピアノの演奏を終えているだろう)

 いずれもこの英文を口にしている今の時点では「まだしていない、終わっていない」のですが、一定の時間が経過して「ある時が現在となったとき」には、「have+過去分詞」で表現することになる(=will)、という意味を表しています。

 未来時制の完了相は、すべて「現在時制・完了相」を先送りしただけのものですから、用法も同じ(ただ未来のこと)です。


(未来時制・完了相の用法)

1、完了・結果(その時がくれば~してしまっているだろう)
2、継続(その時がくれば~し続けてきたことになる)
3、経験(その時がくれば~したことがあることになる)

When you get married, I will have died.
(お前が結婚するころには、私はもうこの世にいないだろう)

In September, I will have lived in Tokyo exactly for 20 years.
(9月になれば、私は東京にちょうど20年住んだことになる)

If I climb Mt.Fuji one more time, I will have climbed it twenty times.
(あと1回富士山に登れば、私は20回登ったことがあることになる)

 このようにすべて「その時がくれば」を含みに持ち、それを「when, if など」で設定したり、具体的な時間を表す言葉で示したりします。実に簡単な時制表現ですね。(基本となる現在時制・完了相さえしっかり理解できていれば、です)

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