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015.スピーキング

016.発音について

 英語は言語である。したがって何よりもまず「口頭で発音された音声」がその実態と考えなければならない。
 文字化された英文は、音声を記録したものであり、音楽を音符にしたのと同じものだと考えてよい。音符を目でみて「いい曲だ」と思える人はその音符から実際の演奏をイメージできる人である。書かれた英文を読み、その意味を汲み取る際もまた同様に、文字をいったん音声化しなければならない。すなわち「読めなければ」ならないのである。

 「読める」とは英語本来の発音で文字を音声化することであり、英単語をカタカナ読みしている限り永遠に英語は習得できない。英語を学ぶ際、決して単語にカタカナによる「読み仮名」をふってはならない。どんなに面倒でも辞書を引いて「発音記号」を調べていただきたい。これが結局「最短の近道」であると認識して欲しい。発音記号を学ぶつもりのない人はこの先このサイトに書かれている一切の内容が無駄である。どんなに工夫を凝らしても英語の発音を日本語の文字で表現することは不可能なのである。あらゆる文法事項の説明に先立って「発音」についての項目を持ってきたのも、それだけ発音が重要であるからに他ならない。

 英語の発音が重要であるというのは、何もアメリカ人のように発音できるようにならなければならないなどということを意味するのではない。そんな必要などさらさらなく、むしろ妙なアメリカ訛りを避け、どこの国の英語話者にも素直に通じるクリアで正確な発音を習得することが大切だと感じる。たとえそれが日本語訛りであっても気にする必要はない。日本語訛りの英語と「日本語発音」とはまったく違うものであり、たとえ多少の訛りがあっても「正しい発音」は通じる。また訛りは誰にでもあり、アメリカ人から見ればイギリス人の発音は訛っていいるし、イギリス人から見ればアメリカ英語も訛りである。さらにアメリカ人同士であっても地方ごとの訛りがある。  英語はイギリスとアメリカだけのものではなく、フィリピンなど東南アジアにも英語を公用語とする国は存在し、ある種の無国籍言語となってきている。私たち日本人が目指すべきはInternatinal Englishだと思う。もちろん、あなたが将来アメリカに住む予定があり、その地域の言語としての英語を習得したいというならそれは一向に構わない。

 よく耳にする悩みとして「聞き取りが上達しない」というものがある。そしてそういう悩みを抱える人はまず例外なく「自分自身が英語の発音ができていない」。要するに「自分が発音できる音は聞き取れる」という極めてシンプルな法則がそこにある。すなわち聞き取りの能力を向上させるには自らの発音を鍛えることが最短と言える。自分が発音できる音はすべて聞き取れるのである。

 なお「聞き取り」という言葉の意味としては、単に「音が聞き取れる」ということだけでなく、「音(発音)から速やかに意味を汲み取れる」という聴解能力があるが、これについてはこの先詳しく述べる。

 このサイトでは、学校で主に解説される「アメリカ英語」と「イギリス英語」両方の発音について述べる。学習者の皆さんは、自分が感じている必要性や好みに応じてどちらを練習されてもかまわないが、どちらか1つに絞った練習をされるのがよい。少なくとも「ある語はアメリカ発音、別の語はイギリス発音」というようなごちゃまぜは好ましくない。



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017.カタカナで英語の発音は表せない

 非常に頻繁に耳にする質問として「この英単語はどう読むのですか?」がある。しかし、その質問をしてくる人は例外なくといっていいほど「発音記号」を知らない。発音記号の存在自体は知っているのだろうが、それをどう読めばいいのかを学んだことがないようである。そしてこの質問の意図は「この英単語の読み方をカタカナで書き表して欲しい」ということなのだ。
 それに対する答えはこれしかない:「英語の発音はカタカナでは書き表すことができません」

 このサイトは「英語の学び方」を知っていただくのが究極の目的なので、利用者は自らの手で辞書を引くことを避けてはならない。そして辞書の活用法も学んでいっていただきたい。
 辞書には単語の読み方として「発音記号」というものが用いられているはずだ。基本的にはローマ字に似ているが、普通のアルファベットにはない特殊な文字も含まれており、それら1文字1文字がどのような音を表すのかを学習者はまず最初に学ぶ必要がある。これこそが英語学習における本当の第1歩であり、それを抜かして先に進んでも決して前に進めない。正しく読めない単語を(自己流のカタカナ発音で覚えながら)いくつ習得しようと「使い物にならない」のである。

 当初、このサイトでは発音記号を文字単位の小さなJPG画像によって表現してきた。
 それは通常のタイピングでは英語のアルファベットに含まれない特殊な文字・記号が必要であるためだったが、その後、画像を使わなくてもサイト上で発音記号を伝えられる方法を得た。ことによると読者のPC、インターネット環境(使用ブラウザなど)によっては適切に表示されない恐れもあるが、現在のところ、 Firefox, Google Chrome など数種の主要ブラウザで適切に表示されてることが確認されている。

 読者の中には日常の英語学習においてもPCでテキストをタイピングするなどされている方もいらしゃることと思う。そこで発音解説の本編に入る前に発音記号を手軽にタイピングする方法をお知らせしておきたい。これは英語学習そのものとは直接関係ないともいえるので、発音記号を早く学びたい方は以下を飛ばして次の項目に進んでいただいて構わない。

 タイピングといっても普通のキーボードには「æəʌʧʤθð」などの特殊文字は配列されていない。記号から呼び出して対応できる文字もあるが非常に面倒である。

 サイトでこのような特殊文字を表示させる方法としてよく用いられているのは文字コードを使う方法(おそらくこれが最も正統派のやり方だろう)だが、これもまた面倒である上、それが何の文字を表しているのか直感的につかめないため推敲や編集が大変だ。

 そんなこんなで悩んでいたところ非常に優れたツールを知った。

IPA character picker
http://rishida.net/scripts/pickers/ipa/

 「IPA」というのは「International Phonetic Alphabet」のことであり、我々が一般に発音記号と呼んでいるものの正式名称である。 上記サイトを見てみると英語の発音記号でも見たことのない特殊な記号がたくさん含まれていることに気づくだろう。これは英語以外の言語に用いられたり、英語でもさらに専門的に細かい表現をするために用いられたりするものだが、一般の英語学習者が日本国内で市販されている英和辞書で見かけるものに絞ってここでは用いることとする。

 上記サイトは画面上の記号をクリックすることでそれが画面下の欄に表示され、そこからテキストエディタなどにコピー&ペーストできるという便利なものである。さらに文字を表示させたあと「analyze」のボタンを押すと別画面に文字コードの詳細などが表示される。

 一般の学習者が頻繁に使用することはないかも知れないが、時には「どうしても発音記号で伝えたい」ということもある。サイトの掲示板などへの投稿でも、上記ツールからのコピペは有効なようである。

 なおHTMLのソースコードにそのままただコピペしたのでは適切に表示されない。
 このページを表示させているHTMLコードでは<head>タグの中に次の要素が書き込まれている。  

meta http-equiv="Content-Type" content="text/html;charset=UTF-8"

 これがあることでHTMLのソースコードに直接上記ツールからのコピペが利くようになった。ご自身でもホームページ(web siteと呼ぶのが本当は正しい)を作っている方は参考にしていただければと思う。

 あともう1つ、使えそうなオンライン・ツールを紹介しておこう。

IPA Type Writer:http://www.e-lang.co.uk/mackichan/call/pron/type.html

 こちらは英語以外の言語に使われる記号は含まれておらずその分、すっきりと欲しい記号が見つけやすいと思う。

 さらに興味・関心のある方は「how to type IPA」のような言葉をキーワードにしてサイト検索してみると思いのほか沢山見つかるので試してみよう。



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018.発音記号はどうやって学べばよいか

 それほど重要な発音記号だが、「どうやって学べばいいのか?」という疑問の声をよく聞く。これは非常に意外な声だ。というのは、辞書にはどれも発音記号解説が必ず書かれているからだ。つまり、英語が苦手という人のほとんどは「辞書の引き方」さえ学んでこなかった人たちであるようなのだ。辞書の凡例も多分確認したことなどないだろう。

 なお辞書によっては紙面節約のため、詳細な発音記号解説を省略し、個々の発音記号が表す音を含む代表的な単語を例としてそえてあるだけ、というものもある。そういう辞書は中級者以上を対象に編纂されたもので、内容はしっかりしているが、基礎力の欠如した初学者が使いこなすのはちょっと難しい部分もある。

 このサイトでもすべての英語発音記号の説明はするが、もしあなたの手元の英和辞典に詳細な発音記号解説が収録されていない場合は、仕方ないので書店にて「発音記号の解説」に主眼を置いた参考書を入手していただきたい。1つ1つの発音記号について、その音の出し方を「口の形の作り方、舌の位置」など細かく説明してあるものがよい。本のタイトルはいろいろあることと思う。たとえば「英語の発音上達法」とかかも知れないし、「英語音声学入門」なんていう固い名称かも知れない。特別な専門書である必要はないが、とにかく辞書に使われている発音記号が読めないことにはどうにも話が始まらない。

 書かれた英文を正しい音声に変換して初めて意味が発生するのだ。正しく発音されない英語は意味も正しく伝わらないと思って欲しい。
 なお「正しい発音」とは、なにもアメリカ人のように読むことではない。英語ネイティブにも訛りはあるし、個人差もある。英語学習者が身につけるべき英語の発音とは、どこの国に行っても通じる標準的でクリアな発音である。これはなかなか言葉で説明するのが難しいことだが、たとえば

  want to [ wɑ́ntə ]

   という表現をアメリカ人の口語的発音では

  wanna [ wɑ́nə ]  

 と聞こえることがある。この「wanna」というスペル自体、聞こえをそのまま文字化した俗語表現だ。中には、wannaと発音することが「上手で綺麗な英語」だと誤解している人もいるのだが、want to は「want to」と読めばそれでいい。それはまったく正しい標準的な英語であり、完璧な発音としてどこの国でも通じる。教養ある綺麗な英語の発音だと思ってもらえる。英文全体を流暢に読みこなせもしないうちから、want to だけを「wanna」と読むようなことは決してするべきではない。英語の音声に習熟すれば、いつの間にか無意識に「want to」を「wanna」と聞こえるような発音にしてしまっていることもあるだろう。それはわざと「wanna」と読んでいるのではなく、英語の発音に口が十分に慣れてしまった結果、半ば無意識に「英語音声学的現象」として、そうなることがあるのだ。この順序を取り違えて「英語っぽい」発音にとびつかないようにしよう。「英語の発音」と「英語っぽい発音」はまったく意味が違う。
 英語のわからない周囲の人から見れば「英語っぽい」発音をすると「わあ、英語がうまいね!」とほめてもらえるだろう。しかし、英語を学ぶのはそういう英語を知らない日本人に見栄を張るのが目的ではない。あくまでも英語を母語や第2言語とする人たち、さらには他国で英語を外国語として学ぶ人たちとの共通言語として英語を用いるのが目的である。

 日本語において不明瞭で早口の発音をする日本人もいる。その一方、外国語訛りを多少引きずっていながら、日本語として非常に聞き取りやすいクリアな発音をする外国人もいる。我々英語学習者は、その後者を目指すべきだ。いかにもその言語のネイティブっぽい雰囲気を出しながらもネイティブにさえ聞き取りにくい発音をする必要などまるでないということだ。



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019.日本語訛りは恥ずかしくない

 日本人が英語を話すとき、よほどの訓練を長期的に受けた人でない限り多少の日本語訛りを伴うのはしょうがない。そしてそれはまったく気にする必要がないことなのだ。英語圏に30年以上住んでいる人ですら母国語の訛りはそう簡単に消えるものではない。
 この世界にはいったいどれだけの「英語人口」がいることか。そしてその大半はみなそれぞれの訛りを持っている。アメリカ人やイギリス人だって、訛っているのだ。いまや無国籍言語となり、だからこそ国際語として広く用いられている英語には、本当の意味での標準発音が存在しないと言ってもよい。誰もが訛っているのだ。
 ただ、訛っていることと「通じない発音をする」こととは全く違う。そこはしっかりと立て分ける必要がある。日本人が英語の発音を習得するとき、当然最初は日本語の発音の影響が強く現れる。英単語をカタカナ読みしようとするのもその典型の1つだ。
 訛りはかまわないが、それでもあくまでも「英語の発音」でなければならない。重要なポイントをいつくかあげよう。

  1. ある音を出し、ない音を出さない。まずは個々の音素を正しく発音しよう。
  2. 音素そのものと同様に、あるいはそれ以上にアクセントに注意を払う
  3. 早口が上手なのではない。適切な切れ目を入れ、聞く人にわかりやすく発音する。

 日本語の仮名は「あいうえお」以外はすべて「子音+母音」という2つの音素を1文字で表している。すなわち日本語の1文字は1音ではないのだ。「ト」という文字はローマ字で書けば「to」というアルファベット2文字となる。そして「t」と「o」という2つの音を連続的に発音することで「ト」という1文字に相当する音が出る。逆に「t」という1文字が表す音を表現できる文字が日本語の仮名の中には存在しない。だからどんなに表記に工夫を凝らしても英語の発音をカタカナで書き表すことは決してできない。カタカナで書いた瞬間、それはもう英語ではなくなる。英語ではなく「外来語」という日本語になってしまうのだ。

 特に英語では子音単独で発音されるケースが非常に多く、単語が子音で終わるということも珍しくない。さらに子音が連続して発音される単語も多い。

incredible

この単語は「信じられない、すばらしい」という意味の語だが、これをカタカナで書こうとすれば「インクレディブル」となるだろう。
実際の発音は

[ ìn-kréd-ə-bl ]

という4音節。すなわち4つの拍(リズム)で発音されるのだが、「インクレディブル」「i-n-ku-re-di-bu-ru」という7音節だ。単語の長さがまるで違ってくる。「ナシ」というのを「夏みかん」と発音するくらいまったく違う発音になるのだから通じるわけがない。

 発音記号を目で見るだけではなく、実際の発音を耳でも聞いて確認するようにしよう。
 最近はオンライン辞書で発音サンプルの音声ファイルのついたものを多く見かけるようになった。

音声サンプル付辞書の例:Goo辞書

 今はこういう発音まで聞ける学習環境があるので、実にすばらしいことだと思う。学習者のやる気次第で、かつてなら外国に留学しなければ不可能だったレベルにまで日本にいながらにして簡単にたどり着くこともできるようになってきた。


また他のオンライン辞書として「excite英和」でも発音が聞ける。こちらは音声ファイルを自分のPCに保存もできるので、あとから何度も繰り返して聞くなどに便利だろう。

さらに発音も聞ける「英英辞典」として「Cambridge Dictionary Online」もある。

 本サイトでは当初、発音解説で取り上げた単語1つ1ついにてGoo辞書の当該語への直リンクを張っていた。そのリンクについてはGoo辞書の管理者に許可も取っていたのだが、Goo辞書のサイト更新などに伴いリンクが変更されたりもして、それを逐一チェックしきれない状態となったため、個々の単語ごとのリンクはなくすことにした。学習者の方は、ブラウザで別ウインドウを開いておき、そこに辞書サイトを出しておきながら単語のスペルをタイプしてその都度呼び出して欲しい。多少手間は増えるが一度でも自分の手で単語をタイプすることもまた大切な学習体験と言える。
(なお将来的には、外部リンクに頼らず、本サイト独自に音声サンプルを用意することも考えています。)

1つの辞書に発音サンプルがない場合は他の辞書に当たってみるとあったりもする。
これらOnline辞書でどうしても発音サンプルが見つからないときは「016.発音について」で紹介した「AT&T Labs Text-to-Speech:Demo」のサイトを活用するとよいだろう。
URLは「http://www.research.att.com/~ttsweb/tts/demo.php#top

 さて話を元に戻そう。「ある音を出し、ない音を出さない」というごく当たり前の注意事項を守りさえすれば、その発音は通じる。発音が苦手とか通じないと嘆く人は、要するに「ある音を出しておらず、ない音を出している」のだ。theやthatのthを「ザ(za)」という全く別の音で置き換えればそれは「ある音を出さず、ない音を出す」ことであり、thatを「ザット(zatto)」と読めば語尾には本来ない母音「オ」が発音されている。「that」は1音節なのに「ザット」は3音節。「蚊」と「トマト」ほども違う発音だ。




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020.発音記号解説

 普通にキーボードから発音記号をタイプできないため、これについてはかなりの間非常に悩んだ。
 「どうしても発音記号の解説を外すわけにはいかない」と考えた。このサイトの読者は、上で述べたように、しかるべき書物も入手され、あくまでも自分自身の努力で発音の訓練をつんでいただきたい(それが本当に一番の近道なのです!)。このサイトでも、それほど専門的に詳しいことまでは述べないが、一通りの基本を解説しようと思う。

 発音記号については、当初かなりの手間はかかったが、1つ1つの記号をすべてJPEG画像にした。それをつなぎ合わせて表示することで、発音記号がタイプできないという問題をどうにか解決した。しかし表示のバランスの悪さなど多くの課題を残していたのだが、それも有効なツールを入手してテキストのまま発音記号の表示を実現できるようになった。

 このサイトでの発音解説は、初心者が辞書の発音記号が読めるようになることを念頭に置きつつ、句や文を自然に読めるようになるポイントも随所に交えて解説する。さらに大学の「英語音声学」で学ぶような、ちょっと専門的なことがらについても(用語はできるだけかみくだいた簡単なものにして)触れようと思っている。










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