抽象名詞 ( Abstruct Nouns )

 物質名詞に続いて「不可算名詞」の2つめは「抽象名詞 ( Abstruct Nouns )」です。先の「物質名詞 ( Material Nouns )」と、今回の「抽象名詞」をあわせて「質量名詞( Mass Nouns )と呼び、いずれも「数で把握できない(=数えられない)」名詞です。
 これは具体的な物(人や生き物、物体)につけられた名称ではなく、実際には姿形のない「イメージや思考」につけられた名前です。たとえば「愛、喜び、悲しみ、美、平和、教育」など「それは確かにある」んですが、「本、犬、机」などのように具体的で固定的な形を持ちません。すなわち「人間の思考」によって生み出された「概念」につけられた名称です。
 この抽象名詞の中には「別の品詞(特に形容詞)から派生」して作られたものも多くあります。(逆に抽象名詞から作られた他の品詞もあります)
 これについては(もとになる品詞の話がまだなので)他の品詞の中でまたお話しますが、ここでは軽くその例を見ておくに留めましょう。

形容詞から派生した抽象名詞
cruel(残酷な) /krúːəl/ cruelty(残虐性) /krúːəlti/
kind(親切な) /káɪnd/ kindness(親切心) /káɪndnɪs/

抽象名詞から形容詞が派生した例
beauty(美) /bjúːti/ beautiful(美しい) /bjúːtifl/
courage(勇気) /kə́ːrɪdʒ/courageous(勇敢な) /kəréɪdʒəs/

(抽象名詞が普通名詞に「転用」される例)

 さて、品詞というのが単語固有のものではなく、あくまでも「その単語が文中でどう使われているか」の名称だということはすでにお話しましたが、この抽象名詞も、使われ方によっては普通名詞とみなせる場合があります。

kindness /káɪndnɪs/
1、「親切心、親切」という概念を指すときは抽象名詞(複数形もなく、単数形に「 a 」もつかない)
2、「親切な行い」という具体的行為を指すときは普通名詞(だから「 kindnesses /kəréɪdʒəsɪz/」と複数形にもなる)

beauty /bjúːti/
1、「美」という概念を意味するときは抽象名詞
2、「美人」という意味に使えば普通名詞 (複数形:beauties /bjúːtiz/)

 この違いは「物質名詞」の glass(ガラス=材質名)が、「a glass (1個のグラス)」や「a pair of glasses(眼鏡)」という普通名詞にもなることとよく似ています。



独裁者:すべてが失われる(1分8秒)
Charles Chaplin (1889年4月16日 - 1977年12月25日)
『チャップリンの独裁者』(原題:The Great Dictator)
チャールズ・チャップリンが監督・製作・脚本・主演を務め、アドルフ・ヒトラーとナチズムの風刺を主なテーマとしたアメリカ映画。 1940年10月15日に米国公開。
初公開当時ナチス・ドイツと友好関係にあった日本では公開されず、日本初公開はサンフランシスコ講和条約締結から8年後の1960年。

 文中の抽象名詞は以下のスクリプトで赤文字で示してあります。
  1. I'm sorry. I don't want to be an emperor.
    申し訳ないが、私は皇帝にはなりたくありません。

  2. That's not my business.
    そんなことは、私には関係のないことです。

  3. I don't want to rule or conquer anyone.
    人を支配したり、制圧したりしたくありません。

  4. I should like to help everyone if possible:...
    できることなら、すべての人を助けたいのです、...

  5. ...Jew, Gentile, black man, white.
    ...ユダヤ人、異教徒、黒人、白人。

  6. We all want to help one another; human beings are like that.
    我々皆、お互いに助け合いたいのです、人間とはそういうものです。

  7. We want to live by each other's happiness, not by each other's misery.
    互いの幸せを願って生きたいものなのです、互いの不幸でなく。

  8. We don't want to hate and despise one another.
    互いを憎みあったり、軽蔑しあったりしたくないのです。

  9. In this world, there's room for everyone and the good Earth is rich,...
    この世界には、すべての人を包む余地があり、このすばらしい地球は豊かであり、...

  10. ...and can provide for everyone.
    ...すべての人がその豊かさを受けられるのです。

  11. The way of life can be free and beautiful,...
    人生は、自由ですばらしいはずです。

  12. ...but we have lost the way.
    しかし、我々はそのような生き方を失ってしまいました。

  13. Greed has poisoned men's souls,...
    貪欲が人の心を毒し、...

  14. ...has barricaded the world with hate,...
    ...世界を憎悪で取り囲み、...

  15. ...has goose-stepped us into misery and bloodshed.
    ...悲惨と流血に向かって、行進させてきました。

  16. We have developed speed, but we have shut ourselves in.
    我々はスピードを発展させてきて、自分自身を閉じ込めてきました。

  17. Machinery that gives abundance has left us in want.
    豊かさを生む機械は、欲望もほしいままにしました。

  18. Our knowledge has made us cynical.
    我々は知識を使って、皮肉的になってきました。

  19. Our cleverness, hard and unkind.
    賢さを使い...無情で冷酷になってきました。

  20. We think too much and feel too little.
    思考が過剰で、優しい感情に欠けているのです。

  21. More than machinery, we need humanity.
    我々には、機械よりも、人間愛が必要です。

  22. More than cleverness, we need kindness and gentleness.
    賢さより、思いやりや優しさが必要なのです。

  23. Without these qualities, life will be violent...
    そのようなものがなければ、人生は暴力的になります...

  24. ...and all will be lost.
    ...そして、すべてが失われます。


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