物質名詞( Material Nouns )

 ここからは「不可算名詞( Uncountable Nouns または Count Nouns )」に入ります。
 名詞全体を「数えられる名詞=可算名詞( Countable Nouns または Non-Count Nouns )」と「数えられない名詞=不可算名詞( Uncountable Nouns )」に分けて考えることができ、「物質名詞」と「抽象名詞」をまとめて、「質量名詞( Mass Nouns )」ともいいます。

可算名詞
Countable Noun
(Count Noun)
1、普通名詞
Common Nouns
2、集合名詞
Collective Nouns
不可算名詞
Uncountable Noun
(Non-Count Noun)
3、物質名詞
Material Nouns
4、抽象名詞
Abstruct Nouns
5、固有名詞
Proper Nouns
※物質名詞と抽象名詞をまとめて
「質量名詞( Mass Nouns )」と呼ぶことがある。

可算名詞と不可算名詞」の中で軽く触れたように「 bread(パン)」や「 chalk(チョーク)」は、ちぎっても砕いても、そのかけらの名前が同じです。これは「ある形になったもの」に名前があるのではなく、それを作っている「材質」にその名前がつけられているからです。すなわち日本語の「パン」は食パンやコッペパンのように、なんらかの形になっているもののイメージが先行しますが、英語的発想では「パン生地」のことを bread と呼ぶのだと考えてください。

cow and beef

(一般的な物質名詞の例)
 ・water/wɔ́ːtɚ, wɑ́ːtɚ/
 ・air 空気 /ɛɚ/
 ・sugar 砂糖 /ʃʊ́ɡɚ/
 ・salt/sɔːlt/
 ・rice/ráɪs/
 ・iron/áɪərn/
 ・beef 牛肉 /bíːf/
 ・mutton 羊肉 /mʌ́tn/

(日本語感覚では物質名詞だと理解しにくい例)
 ・furniture 家具 /fɚ́nɪtʃɚ/
 ・equipment 設備 /ɪkwɪ́pmənt/
 ・information 情報 /ɪ̀nfɚméɪʃn/
 ・advice 忠告;アドバイス /ədváɪs/
 ・baggage 荷物 /bǽɡɪdʒ/
 ・clothing 衣類 /klóʊðɪŋ/


物質名詞の基本理解

 物質名詞に共通する特徴は次のようなものです:

  1. 材質そのものにつけられた名称。決まった形を持たず、量が多くても少なくても名前が同じ。
  2. そのままでは数でかぞえることができず、容器や単位を数えることで数量を把握する。
  3. 従ってもともと one を意味する「 a/an 」を直接、物質名詞につけることはできない。
  4. 単複の区別がないから、複数形にしない。

 先の「集合名詞」も使い方によって「普通名詞」になりましたが、物質名詞もまた使い方(意味)によって普通名詞的に扱うことがあります。実はすべての名詞が、その基本である普通名詞に一時的に扱いを変えることがあります。それを「転用(本来の使い道と違う使い方を一時的にすること)」といいますが、最初からそういう特殊なことを扱うと混乱しますから、まずは典型的な意味と使い方を学ぶことにしましょう。

 数で数えられないということは、many(多数の)と組み合わせられないということでもあります。日本語の「多くの」という言葉は「多数、多量」の両方に使えますが、英語では、数が多いなら「 many 」、量が多いなら「 much 」と使い分けがあります。その両方の意味に使ってよいのが「 a lot of/lots of 」です。
 これもあとから詳しく説明しますが、「 some/any 」も「いくつかの・いくらかの/いくつでも・いくらでも」と数量両方の意味に使えますから、物質名詞と一緒に使うことができます。

 名詞によっては、意味によって普通名詞だったり物質名詞だったりする例があります:
glass:「ガラス」という材質の意味なら物質名詞。「グラス(容器)」の意味なら普通名詞です。
glasses は、「眼鏡」の意味として使われると、普通名詞ですが、これは「左右のレンズ一組」という発想から「つねに2つで1つ」の複数形しかありません。だから眼鏡1つを「 a pair of glasses 」といい、2つ以上なら「 two pairs of glasses 」と「 pair 」を数えて表現します。

 coffee, milk など本来は物質名詞であり、そのまま数えることのできないものでも、状況から決まった容器を自動的に連想する場合は、「その容器に入った状態のもの」という意味として普通名詞になります。

Two hot coffees, please.

(ホットコーヒー、2つお願いします。[喫茶店などでの注文])

 これを「 two cups of coffee 」と本来の物質名詞として表現することはまったく正しいのですが、喫茶店などでは、「1人前」という「決まった容器に決まった量」でなければ one と呼べないため、その発想が coffee を普通名詞化してしまいます。

 日本人的発想から特に注意しなければならないのは「肉」でしょう。
 食生活に馴染みの深い動物ほど、生きているときと死んで肉になったときとでは呼び名の区別があります(cow-beef, pig-pork, sheep-mutton など)。生きている動物は1匹、2匹、、と数えられる普通名詞と考えますが、肉になってしまったら、これは物質名詞です。「動物」と「肉」で名称が違うものについては、使い間違えるととんでもない意味になりますから注意しましょう。(日本語でも「鮭(さけ)」と「しゃけ」が生きた魚と魚肉として呼び名を区別していたりする例があります。)

I like pigs.

(私は豚<という動物>が好き)
I like pork.

(私は豚肉<を食べるの>が好き)
I ate pork last night.

(昨夜、豚肉を食べた)
※I ate a pig last night.
(昨夜、豚<まるごと1匹>を食べた)

 すべての動物に「生きているとき用」と「肉になったとき用」の名称が用意されているわけではありません。英語話者の文化の中で食用として広く認識されていない動物は、肉になっても名前がかわりません。だから、そういう動物の名前を英文で使うときは、「a,an/the」の使い分けや単複の用法がしっかり身についていないと、これもまたとんでもない誤解を招きます。

I like cats.

(猫<という動物>が好き)
※I like cat.(猫肉が好き)!!

※「ある名称で呼ばれる動物一般」を指す場合、無冠詞+複数形が最も一般的に用いられます。「I like a cat. 」のように「不定冠詞+単数」の言い方は、間違いではありませんが、使われる場面が限られてきます。これは「猫が好き」というより、例えば、ペットショップに連れて行ってもらい、「何か飼う?」と聞かれて、「I like a cat.(猫がいい)≒ I want a cat.」と答える場合などならOKです。

 「文法なんて知らなくても通じる!」と基本をおろそかにする人は「 I like 」に続けて冠詞もつけず単数の「 horse, dog 」などをつなげてしまって平然とするでしょう。たとえそれが状況から「まさか肉を食べたい」の意味でないと常識的にわかってもらえたとしても、その言葉の響きには「馬肉、犬肉」がしっかり込められているのであり、英語話者は、その生々しい言葉の響きに驚き、戸惑い、抵抗感を感じながらも、「文法を知らない教養のない英語」として仕方なく理解に努めてくれているだけなのです。そんな相手の気分も知らず「これで通じるんだから、これでいい」なんて、このサイトの読者の皆さんは決して考えないようにしてくださいね。

 このように「特に肉としての名称が用意されていない動物」を表す名詞を「無冠詞、単数形」で文章に用いると、それは「その動物の肉」の意味になってしまうのです。

I want to eat fish.

(魚<の肉、あるいは魚料理>が食べたい)
※I want to eat a fish.
(魚1匹まるごと食べたい)

 魚程度なら、「魚を食べたい」が「魚の身という食物」の意味でも「1匹まるごとの魚」でもあまり問題は起きないでしょうが、これでも意味するものはちがうのです。

 普通名詞と物質名詞の違いがしっかり分かってくると、「普通名詞は、単数形のとき、かならず最低でも冠詞をつける」なんて規則でしばられたような暗記が意味のないこともわかります。「 dog は普通名詞だ」という固定的な暗記も、これまで述べた理由から無意味なのです。

Dog was all around.

 さてこの英文の意味は?
 今の話の流れがありますから、さほど難しい問題じゃありませんね?この英文の意味は、たとえば犬が車にはねられるなどして、「犬の肉がそこらじゅうにとびちっていた」という状況です。死んで肉辺になってしまえば、a dog は、ただの dog になってしまうのです。逆を言えば「 a dog 」というべきところで「 dog 」といえば、犬肉の意味なのです。(ただし「 hot dog(ホットドッグ=ソーセージを挟んだコッペパンの料理。物質名詞)」を短縮して単に「 I like dog.」とは言いますので、それまで犬肉とは思わないようにしてください。)


(日本語感覚からは物質名詞だと理解しにくい例)

 次の例は集合体を意味しますが、「質量名詞( Mass Nouns )」の仲間です。
 質量名詞は、不可算名詞なのでそのままでは数えられず、a cup of water, a piece of bread とするように information, advice なども a piece of を用いて数えます。
 furniture(家具)が water などと同じ物質名詞というのは、「家具」という和訳イメージからするとピンとこないかも知れませんが、「people, family, audience」などは「同じ姿のもの(=人)」が大勢集まった集合体に対する名詞ですが、furniture を構成するのは「同じ形」の椅子ばかりではなく、「desk, chair, sofa, bedなど」様々な形のものをひっくるめて furniture と呼ぶ点が異なります。

 日本人が日本語で「家具」と言えば、机、椅子などの「具体的なもの」をイメージしますが、英語の furniture は「家具というもの」という「概念」に対する名称だと考えてください。つまり「概念」それ自体は形を持っておらず、だから不可算名詞なのですが、「a piece of ...」によって「1つの具体例」を示すわけです。他の information, advice なども同様に考えます。「概念」は厳密に言えば物質ではなく「抽象名詞」に分類されてもよいところなのですが、一応、「家具」も「アドバイス」も「もの」のうちとみなし、通常は物質名詞の中に含めて考えています。

furniture(家具) /fɚ́nɪtʃɚ/
・ただし移動可能であるものに限られ、移動できなものは fixtureといいます。
 a piece/item of furniture (1点の家具)
 a set of furniture (家具一式)
・「沢山の家具」は「much furniture」で「many」を使わない。つまり不可算名詞です。
information(情報) /ɪ̀nfɚméɪʃn/
advice(忠告、アドバイス) /ədváɪs/
baggage (荷物) /bǽgɪdʒ/
clothing(衣類) /klóʊðɪŋ/

-Your furniture is beautiful.

(君が持ってる家具は綺麗だね)
・furniture に関しては複数形 furnitures を取るべき文脈が考えられません。つまり「常に単数形」でしか現れず、集合体としての意味で文法的にも単数扱いしか受けません。

-It was a sad piece of information.

(それは悲しい知らせだった)
「 information 」自体は不可算名詞。そのため「 a cup of water 」の「 cup 」のように「a piece of (複数なら some pieces of )」を使います。

-2011, Daniel E. Hall, Criminal Law and Procedure: The second formal method of charging someone with a crime is by information. Informations are filed by prosecutors without grand jury review.

「犯罪法と手続について(ダニエルE.ホール著、2011年出版)」:被疑者に罪状を課する第2の方法は、情報によるものである。情報は、大陪審の審理を経ずにファイルされる。)
「information」という語はほとんどの場合、不可算名詞であり、唯一例外的に複数形「 informations 」が用いられるのは法律用語の中だけです。この例文は上級用なので、大学受験程度までなら気にする必要はありません。



物質名詞を含むビデオ

お肉が欲しいよ
 肉( meat ) は典型的な物質名詞ですね。飛び跳ねる犬が、繰り返しあなたに物質名詞を教えています(笑)。

 物質名詞は不可算名詞なので、冠詞(a/an, the)なしの単数形で用いることができます。
 
炒めご飯の作り方
 料理や食材について語るときは、物質名詞が沢山現れます。

 さてこのビデオの中に一体いくつの物質名を見つけられますか?
 
注文:注文したのはこれじゃないよ
 物質名詞「 coffee 」といえば喫茶店。

 喫茶店で間違った注文が届いてしまったときの対応会話です。
 
The Jaffa Flea Market: A Rocking Attraction
7から8行目に分かれた1文の中に「 furniture 」と「 clothing 」という2つの物質名詞が現れています。

This is one of the oldest markets in the world and whereas it used to be a place to find knickknacks and secondhand furniture or clothing, today it is also one of the trendiest spots in Israel
ここは世界最古のマーケットの1つですが、以前は骨董品や中古の家具や衣料品を見つける場所だったのが、今ではイスラエルで最もトレンディな観光スポットとなっているのです。

 


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