集合名詞( Collective Noun )

 集合名詞とは、単数形の名詞が、それを構成する要素全員の集合体を意味するものです。つまり「団体名」のような名詞です。名詞全体を「可算名詞」と「不可算名詞」に分けた場合、集合名詞は、グループの数として数えることができます。また名詞によっては、直接、そのグループの構成員を数えられるものもあります。
 大まかな理解としてはそれほど難しくはないのですが、集合名詞に分類される様々な名詞は、さらに異なった特徴を持つものに分かれており、なかなか一筋縄ではいかない厄介なところがあるのです。ここではある着眼点に基づいて1つの分類を試みますが、これが絶対ではありません。またこの分類の中にも不規則性があり、同じグループ内の名詞で性質の異なるものがあったりもします。
 加えてアメリカ英語とイギリス英語で文法的扱いの傾向性に違いがあったりもするので話はさらにややこしくなります。
 ここでは集合名詞として代表的な単語を通じて、全体像を見てみることにしましょう。

(Type A)
・文法的に複数名詞としての扱いを受けるタイプです。
・そのままの形で数えることができますが、単数の意味を持たないため、単数としては別の名詞が用いられます。

people(人々) /píːpl/
・単数としては a person, man, woman などと表現されます
・普通名詞へ転用されると「民族」の意味。この意味では「two peoples, three peoples」と数えることができます。

police(警察) /pəlíːs/
・単数としては a police officer と表現されます。(男女の区別がある policeman/policewomanは最近では使用を避ける傾向が強くなりました)
・複数の警察官を「five police」ということができるのは「people」と同様ですが、、people が「民族」の意味では普通名詞に転用されるのに対して、police にはそのような使い道がありません。

例文:
-Some people are good; others are bad. 

(よい人もいれば悪い人もいる)
[ people のまま複数として数えることができます ]

-A voteless people is a hopeless people.

(投票権を持たない民族は希望のない民族だ)
[「民族」の意味としては1グループという扱いでの普通名詞]

-Peoples have the right to self-determination.

(いかなる民族にも自決権がある)
(Charter of the United Nations/国際連合憲章の文)

(Type B) ・集合体を「ユニット」として単数扱いするタイプです。
・ただし構成員に意識が行くと複数名詞として扱われます。(単語によってはイギリス英語に見られる傾向です)
・普通名詞への転用があり、「three families(3家族)」、「four teams(4つのチーム)」、「five classes(5つの学級)」「six staffs(6つの部署)」のように数えられます。

family(家族) /fǽməli/
team(チーム) /tíːm/
class(学級) /klǽs/
staff(職員) /stǽf/
audience(聴衆) /ɔ́ːdiəns/
・「職員の1人」という場合は「a staff member / a member of the staff」。
・この種の集合名詞としては他に
government(政府) /gʌ́vɚnmənt/
board(評議会) /bɔːrd/
committee(委員会) /kəmɪ́ti/
company(会社) /kʌ́mpani/
organization(組織) /ɔ̀ːrɡənəzéɪʃn/
department(部門) /dɪpɑːrtmənt/
faculty(教職員) /fæklti/
などがあります。

例文
-My family is very large.

(うちは大家族だ)
[1団体として単数扱い]

-My family are all fine.

(うちの家族は皆元気だ)
[my family = we と考えて複数扱い]

-“All happy families are alike; each unhappy family is unhappy in its own way.” ― Leo Tolstoy, Anna Karenina.

(幸福な家族というのはどこも似たようなものだが、不幸な家族はそれぞれに違った不幸を感じている---レオ・トルストイの「アンナ・カレーニナ」から)

※実際の会話の中では「five family」という形で「five family members」を意味して用いられることがありますが、これは極めて casual な用法で、正しいとみなされるか文法的に間違いと受け取られるかは意見が分かれます。学習者の立場としては使用を避けましょう。

-Our team are all lovely people and we support each other to do the best we can.

(うちのチームは素晴らしい人ばかりで、全力を出し切れるように互いを支えあっている)

-A basketball team is like the five fingers on your hand. If you can get them all together, you have a fist. That's how I want you to play. (Mike Krzyzewski)

(バスケットボールのチームというのは5本の指のようなものだ。すべてがまとまれば拳になる。私は諸君にそのようにプレーして欲しいのだ)

注釈:マイク・シャシェフスキー(Michael William "Mike" Krzyzewski、1947年2月13日 - )は、アメリカ合衆国出身のデューク大学男子バスケットボールチームヘッドコーチ。同大学のバスケットボール部を四半世紀にわたって率い、NCAA男子バスケットボールトーナメントで歴代最多の勝利数と4度の優勝経験を持つ。2001年にバスケットボール殿堂入り。シカゴ生まれ。
 Krzyzewski はロシア系の名前なのでスペルからはどう発音していいか分からないですね。 (発音参照

-Most of (the students in) the class are smart. 


(クラスのほとんどの生徒は頭がいい)
「the students in」と書かれていれば明確に主語は複数名詞ですから述語動詞が「 are 」になるのは当然ですが、「most of the class」となっていても、「most of them」と意味的に同じなので、主語を複数として扱います。

-The class is full of smart students.

(クラスには頭のいい生徒が一杯いる)
 こちらは「1学級」という単位なので単数扱いとなります。

-The customer service staff is not available after 6:00 p.m.

(カスタマーサービスの部署は午後6時以降は業務をしておりません)
 特定の「1つの部署」として普通名詞単数扱い。

例文
-The audience are clapping their hands madly.

(聴衆は皆熱狂的に拍手をした)
 この場合、audience を単数扱いすると、あとのtheir が his/her のどちらで受ければよいか困ることになります。このような場合は、アメリカ式でも複数扱いして、their で受けたほうが論理的問題が発生ないというメリットがあります。
-The audience is/are quiet. 

(「is 」 はアメリカ式、「 are 」 はイギリス式。アメリカ式では構成員に意識が行っても、単数扱いしますが、イギリス式では複数扱いになります。)
-Some works of music have a wide and varied audience.

(音楽作品の中には、幅広く色々な聴衆を持つものもある)
 この「a」は、audience が「一人」という意味なのではなく、形容詞「wide and varried」に連動して現れたものです。

(Type C) 例外的なもの。
folk(人々、みなさん) /foʊk/
・「folk」は単数形のままで people のように内容的に複数の意味を持ちます。それでいて「folks」という複数形もあるのに、意味が変わりません。つまり「特定のグループ」1つを folk といって、複数のグループを「 folks 」といっているわけではなく、「 folk/folks 」のいずれの形であっても同じ「人々」の意味であり、区別がないのです。(この単語自体が口語的なものなので、-s は半ば勢いでついてしまったものなのかも知れません。)

例文
-Country folk(s) are kind.

(いなかの人々は親切だ)
-That's all(,) folks.(決まり文句になっており、ここで単数形 folk は用いられない)

(「これでおしまい」)
・これはテレビ番組(特にアニメ)の最後に出てくる「終わり」の意味の決まり文句です。直訳すれば「これで全部です、皆さん」であり、厳密には「 folks 」という呼びかけの直前にコンマがあるべきなのですが、いつの間にか脱落した書き方も普通に用いられるようになっています。


(英米式による傾向の違い)
 これも大雑把な傾向性でしかないのですが、英式は「意味を中心」に、米式は「形式を優先」させて文法的な単複の区別をする傾向があります。

The staff is/are working overtime.

(職員は皆、時間外勤務をしています)
・ここで「is」を使うのはアメリカ式、「are」を使うのはイギリス式です。アメリカ人が「are」を使った文を見ても間違いだとは感じませんが、「自分なら is/are のどちらをとっさに口にするか」と聞かれれば are というだろう」という程度の差です。

All the staff are out now.

(スタッフは全員外出中です)
・「 staff 」が使われていても「all the ...」となっているときは、イギリス英語においても複数扱いとなり述語動詞は「are」が用いられます。ただ「the staff」だけでも「全職員」の意味であるため、「all をつけるのは意味的に冗漫だ」という批判もあります。

Germany has/have won the competition.

(ドイツ[チーム]が競技に勝った)
・この「Germany」は本来国名ですから、固有名詞であり単数でしかありませんが、イギリス式では「ドイツのチーム」という意味に用いられている場合、その構成員を強く意識して述語動詞を複数の「have」にする傾向があります。

The team are fighting among themselves.

(チームのメンバーが内輪もめしている)
・これも「構成員」に意識を働かせて「 team 」を複数扱いするのはイギリス式で、同じことをアメリカ英語で言うなら、
The team members are fighting among themselves.

と「members」という明確に複数である単語を使うか、
The team is fighting.

と「team」を単数扱いしてしまうところです。ただし最後の文はシンプルなため、前後関係がなければ「内輪もめ」なのか「他のチームと争っている」のかの区別はつきません。



集合名詞を含むビデオ

 いかなる文法事項も「理論解説」だけで終わらないのがこのサイトです。
 学んだことが現実の英語の中で、どう用いられているのかを早速確認することにしましょう。中にはちょっと高度なビデオも混じっていますので、学習者の現在のレベル・段階に応じて、今はまだ難し過ぎると思ったら、今は飛ばしても構いません。

レーガン大統領:「我々人民が政府に指示を出す」

"We, the people" というふうに we と the people が同格に用いられており、people が複数扱いになっているのが分かります。

 「大統領の演説」というと難しそうに感じるかも知れませんが、大変平易な英語を使っています。レーガン大統領は、元俳優なので、言葉もはっきりしていて、声もよくリスニング教材としては非常によいものがあります。

 
My Family Loves Sandwiches
 タイトルは「 My Family Loves 」と family を単数扱いにしていますが、文中では同じことを「All my family like sandwiches. 」と複数扱いでも言っています。これは「All」がついているため、アメリカ英語でも意識的に「 All the members of my family 」と感じられるため、述語動詞も複数に対応した「 like 」となっているからです。
 
Open Door to Staff

 文中(13/11)で「the staff」が「従業員一同」の意味として複数扱いを受け、述語動詞が複数に対応する「 comment 」となっています。

 日本語字幕がないので、ちょっと歯ごたえがあるかも知れませんが、上司と部下という上下関係ではなく、「 team leader 」という肩書きにより、リーダーを中心にした、同じ平面での同心円の関係で組織を運営していく考え方について述べています。ナレーションの音声は極めて明確なので、音声的には大変聞き取りやすいものです。

 
Presentation Rule No. 1: Your Audience is King
 このビデオの9行目では「 audiences 」という形が現れます。この解説でも audience は集合名詞であり、辞書的にも単数形のままで「聴衆全体」を指すのですが、family が1家族、families で「複数の家族」を表すように、audiences という複数形は「異なった時間や場所での別グループの聴衆たち」を表します。つまり、
"audiences" = several groups of people (different times and places)
 ということです。
 では、もしあなたが講演者で、壇上から見渡すと会場にたった1人しか聴衆がいない場合は?
 それを表すとすれば:
"I had an audience of one"
 と言えます。
 
ミシェル・オバマ大統領夫人:「自分のものは要求しましょう」
 Obama大統領夫人の大学卒業式でのスピーチ。2分35秒と長めで内容もかなり歯ごたえのあるものですが、「 folks 」という複数形を用いています。たったその1語の使われ方を見るためだけとしては重い教材かも知れませんが、「自分に分かるビデオ」だけを選んでいては上達しません。あなたがアメリカに1年留学したら、周囲の人はあなたに分かる簡単な英語だけを使って話してはくれません。英語環境に身をおいて、分からない単語や表現が含まれている素材にも進んで触れてみましょう。

 最初は日本語字幕も表示させて1通り見て、内容を大雑把にでも頭に入れ、次に日本語字幕を非表示にして、英語字幕だけで見てみましょう。最後は字幕一切なしで、大統領夫人の言葉に心動かされるようになればしめたものです。  今すぐ成果がでなくてもいいのです。「経験値」というのは、ずっとあとになって身を結ぶものなのですから。


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