洋楽の活用

 日本国内でも工夫1つで英語学習環境を整えることは十分可能です。英語の発音の上達のためにも、英語の歌を覚えることは非常に望ましく効果があります。勉強という構えでなくても趣味の1つとして気楽に聞き流してもよいでしょう。「聞き流すだけで英会話は身につきません」が、環境の一部として英語音声に触れる時間を多く持つのは望ましいことです。英語特有のリズムや言葉のメロディのようなものに耳をなじませることは、本格的に発音の訓練をするときにもきっと役立つでしょう。

 ただし英語の上達を目指して洋楽を活用するのであれば、発音記号を通じて英語の母音・子音を一通りは学んでください。耳で聞こえるままに雰囲気だけ口真似しても「英語っぽい」発音にはなりますが、「英語の発音」にはなりません。

 また洋楽の歌詞は、しばしば俗語的表現が含まれており文法的には標準的な表現でない言葉が含まれていることもありますのでその点は注意しましょう。「文法的には間違いだが、こういう言い方も現実にはする」ということに気づくのはよいでしょう。

music

 詳細については第2「発音」の中で解説しますが、英語と日本語とではそれぞれの言語が本来的に持っている性質の違いによって言葉のリズムの取り方そのものに違いがあります。それを音声学として説明すると結構難しい話になるのですが、音楽を通じて英語のリズムにまず耳と口を慣らしてしまうことは、そういう英語という言葉のリズムに自然となじみますので言葉の習得の上で大変効果的です。

 教材という観点からは発音が明瞭で背後の演奏が言葉にあまりかぶって聞こえないタイプの曲が適切でしょう。昔からカーペンターズなどは発音教材として定番になっています。それに限らず好みの曲でかまいませんので、1曲まるごと歌詞を暗唱して歌えるようなレパートリーを増やしましょう。楽しみながら発音も上達しますし語彙も豊富になってきます。スピーチなどを暗記するのは苦労しますがメロディのある歌なら覚えやすいでしょう。また英語の歌がうたえれば英語話者との交流の際にも役立つことがきっとあるでしょう。

洋画の活用

 私がまだ学生だったころはまだレンタルビデオすら存在せず、映画は映画館に行って見るほかはありませんでした。しかし学生にとって1本の映画を見るために当時でも1000円以上の出費は簡単にできるものではなく、月1回程度、土曜日の夜から日曜の朝にかけて行われるオールナイト上映で繰り返し見るのが精一杯でした。

movie theater

 大学の研究室に「スクリーン・イングリッシュ(現在廃刊)」という月刊誌があり、それにその時々の話題の映画が和英対訳のシナリオ(一部)とともに紹介されていまし た。興味ある映画が上映されているときはその雑誌で十分に予習をした上で最低3回は同じ映画を繰り返しみたものです。(ですから毎回入れ替え制のような作品は避 けました。)

 なけなしの出費に見合った成果を持ち帰るため次のような要領で映画を活用したものでした:

  1. 1回目は素直に作品を楽しむ気持ちで、日本語字幕も見ながら内容やセリフをよく頭に入れて見る。

  2. 2回目は意識的に字幕から目をそらし、英語の音声に特に集中して見る。人物の顔が大きく映っているときは口元にも注目する。すでに1回目でストーリーやセリフの大まかなところは頭に入っているので、思いのほか英語も聞き取れる箇所が多いことに気づきます。

  3. 3回目はメモを用意して、「使えそうな表現」、「上手な字幕翻訳の箇所」などを控えながら見ました。1本の作品の中には「こんな簡単な言い回しで、なるほどそういうふうに使えるのか」と感心したりするところも多く、メモ帳1冊分のお土産をいつも持ち帰ったものです。

 今ではこんな苦労をしなくても、DVDやインターネットのビデオが豊富にありますので、積極的に活用さえすれば、日本にいながらにして海外留学しているのと変わらない効果を引き出せるのではないでしょうか。

 英語の映画に英語の字幕があると細かい聞き取りの確認ができますし、ディクテーションの訓練にもなります。また俳優と同時にセリフを言ってみることで強弱や抑揚まで含めての大変よい発音練習ができます。どんな表現も常に「前後関係、脈絡」があってこそ、どういう意味なのかが決まるものですが、映画ほど完璧な前後関係を与えられながら表現を学べる素材も他にないでしょう。

 作品によっては俗語表現や特定の専門分野の用語が多くて、日常会話などに直接役に立たないこともありますが、自分にあった難易度の適切な作品を上手に選べば最高の学習教材です。

 映画が教材としてすぐれていることは以前から注目されており、学習に適した作品を和英対訳のシナリオに解説までつけた書籍が発売されています。特定の作品や俳優などにこだわるのでなければ古本屋でそういう書籍を入手してから、その作品のDVDを見るというのも安上がりでしょう。

 参考:スクリーンプレイシリーズ

 映画ソフトの活用法は工夫次第で無限に広がっています。決まったマニュアルがあるわけではありません。1つの作品を繰り返して見るのもいいですし、シリーズ物のドラマをどんどん見ていっても構いません。字幕のオン/オフが可能であれば、あえていきなり字幕なしにして見てみるのもいいでしょう。英語圏で映画館に行けば当然英語の映画に字幕などありません。実生活で会話するときもどこにも字幕は出ません(当たり前ですね)。たとえ隅々まで完璧に理解できなくても映像を通じて、つまり俳優の表情や仕草、声の調子などからも多くの情報が伝わってきます。研究によると実際のコミュニケーションでは言語による伝達と言語以外による伝達とでは、言語によるのはわずか3割に満たず、7割以上は言語以外の情報から伝えられているだそうです。その意味で映像素材を通じて現実のコミュニケーションを学ぶのは、まさに「映画を見ている時間だけ留学している」のとまったく同じ環境であるということができます。これを活用しない手はないでしょう。

  外国語の上達というのは「言語体験」の豊富さが大切です。発音や文法の基礎を学んだ上で、多くの実体験を積むことで知識が強化され、自分自身の感覚へと昇華されます。

 最近はインターネットの普及により無料素材が多く出回るようになっていますが、よい作品のビデオソフトならばしかるべき対価を支払ってでも手元において損はないと思います。

インターネットの活用

 本サイトもまたインターネットがなければ存在できませんでした。現代社会においてインターネットはまさに不可欠の存在になっているといえるでしょう。
 インターネットを通じて無料でオンラインの辞書も使えますし、無料とはいえ印刷物の辞書では困難なさまざまな活用法が可能になっています。

 たとえば、「あるスペルで終わる単語」を調べたいという場合など一般の印刷物の辞書では簡単にいきませんが、オンライン辞書ならばオプション指定することで「あるスペルを含む単語、あるスペルで始まる/終わる単語」などを調べることが簡単にできます。

internet

 また英和辞典や和英辞典に限らず、英英辞典、語源辞典、百科事典その他あらゆる種類の事典が活用可能であり、ブラウザのタブを使って複数の辞書を引き比べたりと便利な使い方が沢山できます。さらに辞書によっては音声ファイルで発音が聞けたり、それも英英辞典の中にはイギリス式、アメリカ式両方の発音が再生できるものまであります。これは紙媒体の辞書では無理ですし、高価な電子辞書でさえそこまで実現しているものがあるか分かりません。

インターネットの利点をいかしましょう

 ただし注意すべきこととしてインターネット上の情報は「玉石混交」であり、信頼できるものもあればそうでない情報も多く飛び交っているということです。
 文法や語法などについて分からないことがあると質疑応答の掲示板などに質問投稿すればすぐに多くの回答が得られますが、そういう回答が必ずしも正しいことを教えてくれるとは限らないことを念頭に置きましょう。少なくともそういう場で得られた回答については自分でも調べて裏づけを取るくらいの慎重さが必要です。事実間違った回答を疑問なく鵜呑みにしているやりとりを多く見かけます。

 たとえそれが英語ネイティブからの回答であったとしても「1つの意見」であり正解とは限らないということを忘れないでください。たとえば日本語についての質問に日本語ネイティブなら常に正しい回答ができるかを考えてみれば理解できるでしょう。その言語のネイティブならではの意見からは感覚を学ぶ上で貴重な情報が汲み取れますが、ときにはスペルなどまで正しくないこともあります。日本人でも漢字を間違えたり、敬語など文法的な間違いをするのと同じですね。

 インターネットでは「検索」を上手に活用することで世界をデータベースにして実に色々な調査が可能です。ある英語表現が正しいのかどうかを、そのフレーズでキーワード検索をしてどれくらいヒットするのによって判断材料とすることもできます。しかしこれも注意が必要で、ヒット数の多い少ないだけで単純に「正しい/間違っている」の判断ができないこともあります。

 英語表現について検索するのであれば、まず検索オプションを必ず使いましょう。検索では色々な条件を指定することができますので、「対象とする国」をアメリカやイギリスなどだけに限定してみたり、英語以外の言語で書かれたサイトを対象からはずしたり、さらにはドメインを「.edu(教育関連)」や「.gov(政府関係)」などお堅いドメインに指定してみると検索結果も変わってきます。

 また検索結果として表示された様々なサイトの中の例文をいくつか実際に開いて見て文全体が適切な英語で書かれているか、そのページの趣旨がまじめな内容なのか、気楽な日記の一部や情報的信頼性に疑問のある記述ではないのかなども確認しましょう。すべてについてこれを行うのは無理ですが、検索のヒット数だけにとらわれないためにも個別検証を怠らないようにしなければなりません。

 英語の学習という目的においてインターネットは実に強力な味方です。英語ネイティブとのリアルタイムな交流も可能ですし、映像や音声素材も無数にあります。また小学校から大学教養までの授業内容をそのままビデオで学べるサイトもあり、こうなりますと留学体験そのものです。英語圏の小学校でどのように算数が教えられているかなど、実際に留学してもそれを見学する機会はまれでしょうが、インターネットなら簡単に見ることができるのです。

 カーンアカデミー(KhanAcademy)というサイトはもともとサイトの発起人が個人的に親戚の子供にビデオで家庭教師をしていたのがはじまりだったと聞きますが、今では大学の専門的な内容までビデオ教材によって一般公開されており、日本にいながらアメリカの大学の講義を受けるのとまったく同じ環境が得られます。(ただし非英語話者のための英語学習を目的としたサイトではありませんので、基礎を固めつつ、「実践の場」として活用すると効果的でしょう。)

 またこのインターネットの利点、動画を通じての語学学習の効果の高さなど、多くのメリットを踏まえ、本サイトでは管理者が主催する「EnglilshCentralの動画を活用したオンラインスクール・Round-ER Language Institute」を開講しています。解説により緻密な基礎を固めつつ、同時に豊富な実践の場を得て、必ずや大きな効果を実感していただけるものと考えています。詳細については各ページ左側のスクール・ロゴをクリックし案内ページの内容をご参照ください。

 その他英語学習に活用できる優良サイトをいくつか私のサイトの「リンク集」でも紹介していますので参考にしていただければと思います。


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