学力の包含関係を知ろう

 英語の技能は大きく4つの側面に分けて捉えることができます。
 それはすなわち「話す(Speaking)、聞き取る(Listening)、読む(Reading)、書く(Writing)」の4領域であり、これらが言語習得としてのバランスよい形で総合的に伸びていくのが望ましい姿です。

 自らの日本語を振り返ってみましょう。
 恐らく「読める漢字」と「書ける漢字」を比べてみて読めるほどには書けない人が普通でしょう。それが自然な姿といえます。逆に言えば、「書ける漢字は読める」ということです。中には書き方は知っているが読み方のわからない漢字もあるかも知れませんがごく小数でしょう。

 発音はどうでしょう。自分が出せる音で聞き取れない音がありますか?ないですね。

 このように言葉の技能・学力というのは、互いに包含関係を持っており、「こちらができれば、こちらは自然にできる」関係があります。英語の技能に当てはめると:

1、自分が出せる音は聞き取れる
2、自分が書ける英文は読み取れる

 というふうに「Speaking > Listening」、「Writing > Reading」という包含が関係があります。

 ということは「含む側を延ばすことで含まれる側の力は必然的に身につく」ということでもあります。すなわち

1、自分自身の発音を鍛えることで聞き取りの力は伸びる
2、書く力を伸ばすことで読解力も伸びる

 と言えます。
 発音記号を学ばず、自分自身の発音を鍛えないで「聞き取り」の対策を練るのは非常に効率の悪い取り組み方です。

pic  同様に文法や英作文に力を入れずに「読解力」を伸ばそうとしても遠回りです。
 教科書の英文や問題集の長文を見たら、「これくらいの英文が言えて書けるようになろう」と考えるのが積極的で前向きな効率の求め方なのです。

 詳しくは第2章「発音」の中で述べますが、特に発音をしっかり鍛える努力をすることは、文法理解や読解力を強力に支える重要な基礎となります。たとえ試験中に問題文を音読しなくても、人は黙読の最中にも口の中の各パーツが「実際に声を発するときと同じ動き」をすることが研究により報告されており、英文の意味に即した適切な読み方を正しい発音によってできることで、読解力は飛躍的に伸びます。発音の基本を身につけていない学習者と比較して1時間程度の試験問題なら4倍程度のスピード差となって現れるでしょう。そして速さ以上に「正確さ」が格段に違ってきます。

 発音の基本が備わっていると、英文を苦痛なくなめらかに読めますので、読むことそれ自体が快適で楽しくなり、それが更なる学習効果の向上をもたらします。

 考えてみれば当然ではありませんか?
 カタカナ風の不適切あるいは間違った発音で、つっかえつっかえ読みながら、どこで区切ればいいのかがイメージできず、30行の英文を理解するのと、英語本来の正しい発音でなめらかによどみなく、適切な区切りをつけながら、すらすら読めている場合とでは、どれほど内容把握のスピードと正確さに差がでるでしょう。

 「読める」ということは「意味に応じた抑揚と強弱、緩急」を伴って音声化できることです。英文を語順に従って頭から意味を順次感じ取りつつ、音読できていれば、その英文の内容が自然と音声になって現れます。つまり、和訳させなくても音読させてみるだけで、学習者がその英文をどれだけ理解していて、あるいはどの箇所に理解の戸惑いや間違いがあるのかが分かるものなのです。

 日本語の文章だって「内容が分かっている人の読み方」と「内容が読み取れず字面だけを追って読んでいる人の読み方」では聞いていてはっきり違いがわかりますよね。それと同じです。

 そういう学力の包含関係を踏まえて日ごろの取り組み方をちょっと変えてみてください。

  1. 読み方の分からない単語を許さない。必ず発音記号を調べる習慣をつける
  2. 意味を辞書で調べる前にまず「どう発音するか」を予測してみる。それから辞書の発音記号の結果と予測を比較して反省する
  3. 和訳を強く意識せず、英文を「英語のまま理解しよう」という気持ちで音読する。早口で読む必要はな く、むしろゆっくり目に的確に読む。抑揚、強弱、区切りの入れ方を「意味に応じた」ものとする
  4. 英作文では書く前にまず口で言う。口で言えたらそれを書き留めるという順序を守る
  5. 試験など範囲のある単語をまとめて覚えようとするときは、まずリストを音読だけする。読めない単語をまずなくしてから、意味や用法の学習に移る。人の顔を見てすぐ名前が言えるように、単語を見て即座に発音できるまで練習する
  6. 読解教材などでも「その英文が書けるように」なることを目指す。和訳できて満足せず、その和訳から元の英文にどこまでもどせるかを必ず試してみる(このときも「口で言えたら書く」順序)

 決して楽ではありません。しかし確実に実力をあげてくれます。大切なのはこれらを習慣化することです。

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