★超初心者・MIDI/DTM入門講座★

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<アレンジの初歩>

 前回は音楽理論を是非学んでいただきたいというお話をしました。
 それでも「理屈なんかわかってなくても感性でなんとかなる」とまだ思っている方がきっといらっしゃることでしょう。実際、これまで音楽シーンを大きく変えてきたアーティストの中には基礎的な音楽理論が「なかった」がために楽典の常識に縛られていては決して思いつかない奇抜なコード進行を用いられたという例も多くあります。しかしそういう例にしても体系的に楽典を学んだのではないにせよ「膨大な数のコピー」を経験しており豊富な経験を通じて斬新な音楽感性を培っていたのです。決して鼻歌1つで偶然名曲が生まれたわけではありません。

 今回は非常にシンプルなコード進行とメロディを元に曲としてのアレンジについてごく初歩的な話をしたいと思います。

 出ました!コード進行の「熟語」として以前紹介した「1−6−2−5(−1)」です。
 このコード進行を含む曲を探したらもう数え切れないはずです。たとえそっくりこのままではなくとも、ちょっと根拠のある「変化形」になっていて、実はもともとこれだったりする例も含めれば無数といえるでしょう。

 今回はこの「イチロクニーゴー」のコード進行で単純なメロディをつけてみて、それを「いじくりまわし」ましょう。

 前回の「資料」の中に「音階」と「コード」に関するものがあり、そこに「T,SD,D」という記号が書かれていたのにお気づきでしょうか。これらは「T=トニック」、「SD=サブドミナント」、「D=ドミナント」という意味の頭文字で1つのキーで楽曲が作られるとき、この3つが「主要」な音となります。Cのキーなら「C, F、G」です。
 極端なことを言うとこの3つのコードさえあればそのキーの伴奏はついてしまうとも言えます。そしてその「T、SD,D」という「音楽的役割」はその音階をベースに作られた他の和音もそれぞれが持っています。しかし「C,F,G」の「代わりに使える」という位置づけです。そして同じメロディでも代理コードを使うことによって変化を出したり、雰囲気を変えたりもできるわけです。

 MIDIデータ(SMF:6.65 Kbytes)

 上のMIDIデータは最初の図で示した「1−6−2−5−1(C-Am-Dm-G7-C)」の「べた打ち」伴奏にメロディをつけてみたものです。確かに伴奏とメロディはあってますね。
 まだMIDIデータには何の編集も加えていませんので、なんともつまらないですね。

 伴奏とメロディを「オニオンスキン」機能を使って同時に表示させたのが左の図です。

 上の青く表示されているのがメロディで下のピンク色が伴奏です。

 次にメロディはまったくこのままでコード進行を少し変えてみましょう。

 最初の「1−6−2−5」進行は1小節に1つのコードでしたが、こちらは1小節を2つにわけて前半と後半でコードが違います。そして注目していただきたいのが赤い線でくくったそれぞれ2つずつのコード、すなわち「E7-Am」、「A7-Dm」、「B7-G」、「G7-C」です。

 さきほど「T,SD,D」という1つの調の中での重要な役割がることをお話しましたが、D(ドミナント)コードというのはT(トニック)へと「行きたがる」性質を持っています。ドミナントコードが現れると非常に不安定で落ち着かない感じとなり、それがトニックへ移って「終止感」、「落ち着き」を与えます。

 C(ハ長調)ドミナントコードですがセブンス(=詳しくは「音程」で勉強してね)が加わるといっそうトニックへの進行感が強まります。小学校の音楽の時間など「起立、礼、着席」の伴奏に使われていたのが「C-G7-C」です。この「C−G7−C」で「G7」のままやめられてしまうと実に落ち着かない、気分の悪さを感じますよ。それは「立ったままだから」とかそういう話じゃなくて音楽的な意味で、です(笑)。

 そしてその「あるコードへ向けての進行感を感じさせる」のは「そのコードにとってのドミナントコード」であり、つまりどのコードも「それがトニックだったとき」なんらかのドミナントコードを持ちます。
 上記「E7」は「Am」にとってのドミナントコードであり、他の組み合わせもすべて「ドミナント→トニック」という相対的関係を持っています。

 これはつまり「どんなコードでも直前にはそのコードにとってのドミナントコードを置ける」ということでもあります。だからこのように小節を分解して「次に続くコードのドミナントにあたるコード」を置いてやっても旋律には相変わらず自然になじむ(ことが多い)のです。

 そしてもう1つ大きなことがあります。



 上の図は、「C-Am-Dm-G7」だったコード進行を小節分解して「C/E7-Am/A7-Dm/B7-G/G7」としたものにベースを付けたものです。
 通常コードの「ベース(根音)」というのはそのコードの頭文字(Am ならA=ラ)なわけですが、コード進行という「流れ」の中でそのコードの他の構成音が臨時にベースとして用いられることも珍しくありません。

 そして気づいていただきたいのはベース音が「C-B-A-G-F」と滑らかに音階として下がっているということです。
 これをコードネームとしては「E7(onB)」とか「A7(onG)」などとも表記します。では同じメロディに上記のコード進行を付けた場合を聞いてみてください。

 MIDIデータ(SMF:6.75 Kbytes)

 ほらね?ちゃんと合うでしょう。そして単純な「C-Am-Dm-G7」だったときより何かよりドラマチックな展開の強さを感じると思います。
 なおこのような小節の分解はあくまでも曲想に応じて行うべきものであり、しなければならないものではありません。

 さらに手を加えてみましょう。
 これまで「3和音」での伴奏でしたが、それを「4和音」にしてみます。C(C,E,G)のコードに長7度が乗りますから「C,E,G,B」の「C maj7(シーメジャーセブン)」というコードになります。あるキーにおける音階と、それに3度、5度を乗せた3和音、さらに7度も乗せた4和音の一覧は前のページに一覧があります。



 あれえ?また変なコードが出てきましたよ。「なんでハ長調(Cmaj)の曲に『F7』とか『D♭7』が出てくるわけ?」と思うかも知れません。
 これらは本来そこにあるはずの「B7」、「G7」の「裏コード」というものです。

 左の図は「5度圏」といって1オクターブに含まれる12の半音刻みの音を円形にならべたものです。
 数が12ですからちょうど時計の文字盤と同じように配置されます。そして「裏コード」というのはこの図で「正反対側」にある音を根音にしたコードのことです。
 確認してみてください。Bの反対側にはFが、Gの反対側にはD♭がありますでしょう?不思議なことにこの「一番遠くにある音」が音楽的には互換性を持つんです。

 随分ややこしそうですが、簡単な覚え方があります。
 「Dm−G7ーC」という「2−5−1」の終始パターンでドミナントの「G7」を裏コードにすると「Dm−D♭7ーC」となりますが、この場合のベースの動きは「D-D♭-C」と半音ずつ下がっていることがわかりますね。すなわち「あるコードのドミナントの裏コードとは、そのトニックコードにあたる根音の半音上を根音とする」ということになります。ですから「E7の裏は?」と思ったら、E7-Amという終止形をまず思い浮かべトニックである「A」の半音上つまり「B♭=A♯」をベースとする「B♭7=A♯7」がE7の裏コードだということです。

 MIDIデータ(SMF:6.87 Kbytes)

 なんとも調性のぼけた(ジャジーな?)雰囲気の漂うコード進行になりましたね。でもメロディはずっと同じです。

 同じメロディが繰り返されるとき、1回目と2回目で小節の分解を「しない・する」と変えてみたり、さらにこのような裏コードの使い分けを行うと同じメロディの繰り返しという単調さを免れることができます。あくまでも曲調に応じた判断ですので、雰囲気に合わせて適宜判断してください。

 なんとなく要領がつかめてきたような気分になってきましたか?(笑)わかったような分からないような、という感じかも知れませんね。私だってよく分かってませんから(自爆)。

 でも少なくとも「音楽理論という裏付けがあるとやっぱりいいみたいだぞ」と感じていただければそれが一番私の望む狙いです。

 ではこのページの最後として、上のMIDIのさらに延長として伴奏パターンを変え、リズムセクションもつけたものを聞いてください。メロディも少し装飾音をつけたりしています。また曲の最後でテンポがゆっくりに変化しているのは「conductor」トラックでテンポチェンジをしているからです。詳細はデータを開いて確認してください。

 MIDIデータ(SMF:8.64 Kbytes)



 いかがしょうか?なんだかムラムラと(笑)曲が作りたくなってきましたか?自分にもできそうな気がしてきたでしょう?そうです。できるんですよ!

 最後のアレンジ例を図示したのが上のピアノロールです。ここにはリズムセクションとエレピは現れていませんが、その他の主要楽器がオニオンスキンで同時表示されています。
 楽曲の編成としては低音部のベースから高音部のストリングスまで広い音域をほぼ満遍なく、そして「音かぶり」のないように楽器音が分布していることに注目してください。
 主旋律をかなでるピアノのメロディは中音域に位置しており、聞く人が気軽に口ずさめる範囲を基本としています。

 この先さらに続きとして述べたいと思いますが、このように「すべての音域をカバーする」ことが編曲の基本です。その基本を踏まえた上で「わざと特定音域をあけてやる」こともあります。今回はもっとも初歩的な例としてコード進行の考え方と変化の付け方、楽曲の音域のカバーの仕方などを学び取ってください。(「音楽」を人に教えられるほど私自身分かってないのに恐縮ですが。)



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