★超初心者・MIDI/DTM入門講座★

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<制作の流れ>

 全体を通じての作業の流れは次のようになります:

(音楽制作)

  1. MIDIシーケンサで曲の「打ち込み」をする。
  2. そのデータをDAWソフトに読み込ませ、生歌生演奏の録音を加える。
  3. それを「.wav形式」のオーディオデータとして保存する。
  4. 必要があれば wavmp3 などに変換する。(フリーの変換ソフト使用)

 ここまでであなたは「ピアノ、バイオリン、ギター、ドラムセットなど」多くの楽器によるカラオケを自作し、それに自分の歌を重ねた「音楽CD」と同じ状態のものが作成できます。映像を加えずCDに焼いて市販のプレーヤーで聞くこともできるようになります。
 またいつでも「楽器の差し替え」や「各楽器や歌声のエフェクト変更」、あるいは「歌の録り直し」なども可能です。
 練習用に特定の楽器や歌だけを消した、いわゆる「マイナスワン」音源を作ることも簡単です。

映像制作
1、作った音楽に合わせてあらかじめ用意した写真などをスライドショー的に流すものを作る。
2、それをYoutubeなどにUPできる形式に変換し、実際にネット上で公開する。

 たった1枚の写真(静止画像)だけを終始表示してもいいですし、一切画像を出さず一色だけの画面に歌詞を表示するだけでも構いません。もう少し凝ったことをしたいのなら、複数の写真を次々と表示させ、その画面切り替えにちょっとしたエフェクトを加えてもよいでしょう。画像・映像作成用のソフト、デジタルビデオ(携帯電話のビデオ機能やWeb Cameraを含む)機器があるなら映像やアニメーションを作ることもできます。
 作った音楽に簡単な映像を加える編集についてもあとで述べます。



<曲が作れるために必要なこと>

 最終的な作品を完成させるまでには学ぶべきことが山のようにありますので、本当に「何も知らない」状態から1歩1歩、ステップ・バイ・ステップで形にしていけるよう解説するつもりです。

 音楽についての知識・理解についてはあればあるほど望ましいですが、5線紙の楽譜が読めなくても「ドレミ」の音階が分かる程度でも曲の作成は可能です。でもコード進行の知識など「音楽を作る」という最低限の素養がないと自分が作ったメロディにどんな伴奏をつければいいのかさえわかりませんからせめてギターを多少弾けるとかくらいの方が望ましいです。このサイトではそういう「音楽理論」についてはまでは解説しません(しきれません)。コンピュータMIDI・DAWソフトがなくても一応の作曲や既成曲のコピーができる程度の方であることを前提とします。(もしそのレベルにさえ達していないのであれば、どんな「作曲ソフト」を使っても曲作りは不可能なのです。)

 つまりMIDIシーケンサDAWソフトなど俗に「作曲ソフト」と初心者の人たちが呼んでいるソフトは「勝手に曲を作ってくれる魔法のソフト」ではありません。あなたの頭の中にメロディや伴奏があってこそ、はじめてそれを形に表せるのです。
 とはいえ市販のソフト(あるいは機材)の中には「ポップス調、ロック調」などから選んでメロディに応じた伴奏を自動生成するものもないわけではありません。ドラムパターンにしても「8ビート、16ビート」などあらかじめ用意されたパターンを選んで貼り付けていったり「フィルイン」、「エンディング」などを指定するとそれに合ったパターンを演奏してくれたりもします。しかしそういうソフトなどでさえコード進行がわかっていなければ指定のしようがありませんし、音楽的知識ゼロではさすがに何もできません。

 上手下手は別としてもギターやピアノが弾けるとか、なんらかの音楽的素養が最低でも必要です。だって音楽を作ろうとしているんですから。ソフトはあなたにかわって難度の高い演奏を見事に間違えず奏でてくれます。「あなたが指定したとおり」にです。ですから「指定の仕方」が下手ならばその演奏も下手になります。これはつまり「MIDIデータの作り方」の問題です。

 「MIDIの音楽は機械的だ」という人がいますが、それはまるで見当違いの批判です。言うならば「私には機械的なMIDIデータしか作る技術がない」ということです。楽譜通りに音符を並べれば自然な音楽になるのではないということを理解しなければなりません。これについてはMIDIの打ち込みの解説の中で詳しく述べます。

 音楽的知識があまり豊富でなく、楽器演奏の素養もあまり高くないとしたら、いきなり「作曲」をしようとせず、まずは既成の曲のコピーを沢山行ってください。簡単なコード譜があれば大いに参考になりますし、ちゃんとした楽譜があれば非常に楽ですが、何の資料もないところから「耳だけ」を頼りに例えばCDの音楽をMIDIに打ち込むのです。その際はベースだけに耳を傾けたり、ドラムスのスネアのタイミングだけを聞き取ろうとしたり、普段音楽を楽しんでいるときとはまるで違う「聴き方」をすることになります。そしてそういう訓練を通じて「楽曲」の構成というものが理解できてきます。

 いかなるオリジナリティ(独創性)も多くの模倣(ものまね、コピー)の向こう側に初めて生まれるということを忘れてはなりません。
 そしてオリジナル曲を作ろうとするならば、基本的な楽典の勉強は避けて通れません。音程コード理論について多少の知識が備わっていないのに名曲が偶然生まれることもないとは言い切れませんが、ちゃんとした「アレンジ(編曲)」ができることはまずありえません。

 楽譜も読めない、楽器も弾けない、音楽理論は何も知らない。MIDI/DAWなどDTMの知識もない。-----
 そういう人がたまたまあるアーティストの曲を気に入って「自分もああいうものが作りたい」と思いMIDIDAWなどDTM(Desktop Music)に手を出しても何もできないということを先ず理解してください。もしまだそういう状態にあるのならばMIDIでの打ち込みを通じてでも徐々に音楽そのものの理解を得ていく必要があります。

 いかなるソフトや機材の中にも、あなたの「漠然としたあこがれ」を形にしてくれるようなものはない、ということです。


<MIDIとDAWについての基礎理解>

 ソフトを入手し実際の作業に入る前にある程度の基礎知識を身につけておく必要があります。
 非常に多くの方が(初心者ですから無理ないことなのですが)コンピュータを使っての音楽制作に関して誤解していることがあります。

 「色々な楽器の音を出せるソフトが欲しい」

 楽器の種類は使うソフトとは無関係です。「作曲ソフト」は言うなれば単なる楽譜であり、音楽についての情報を記録するもので、ソフト自体は音を出しません。ソフトによって作られる「データ」は「どの楽器を使って、どんな音を出せ」という命令なのです。その命令を受けて「音源(実際に音を鳴らす装置)」がその命令に応じた音を出します。そしてここでは「Windows内臓音源」がそれにあたります。
 つまりあなたはすでにピアノ、バイオリン、トランペット、ドラムスなど200種類近い楽器をコンピュータの中に持っているのです。「作曲ソフト」を使うことで、それらの楽器の中から好きな音色を指定して、データとして作った通りの音の出し方をさせられます。

 音源」が同じであればどんなソフトを使っても出せる音は同じです。Windows内蔵音源ではどうしても自分の作りたい音が出せないとなったとき、外部機材としての音源(シンセサイザー)を追加購入することとなります。
 「シンセサイザー」とは電子的に様々な音を作り出す装置のことであり、現実に存在する色々な楽器ごとの「波形」を人工的に作り出すことでその楽器の音に似せます。しかし最近では本当の楽器の音を録音し(「サンプリング」という)それをMIDIデータに応じて再生する仕組みのものも多く、いかにも機械的で本当の楽器音に聞こえないということもなくなっています。
 加えて多少の技術が身についてくると、楽器の音に手を加えられるようになりますので、たとえWindows内蔵音源だけであっても、あらかじめ用意されている以上の音の種類を実現できます。MIDIの技術がない人たち、無知な人たちは「Windows内臓音源は音が悪い」とか「Windows内臓音源にはあの音がない」という不満を口にしますが、多くの場合、それは使いこなしていないだけだったりします。

 たとえ高価な機材を購入しても、MIDIの「打ち込み」の基礎ができていないならやっぱりチープで機械的な音楽しか作り出せません。

 上の図はちょっと本格的にDTMを行う場合の制作環境です。
 「MIDIキーボード」を弾いてその「音楽的情報」がパソコンの「MIDIシーケンサ」に記録され、その情報を受けて「音源(シンセサイザー)」が音を出します。

 MIDIキーボードからシーケンサに送られるのは「音」ではありません。それは音楽的情報をすべて数値として表したものが送られ記録されます。たとえば:
1、どの鍵盤を(ノート情報)
2、どのくらいの強さで(ベロシティ情報)
3、どのくらいの長さ弾いたか(ゲイトタイム情報)
 といった情報です。(実際にはもっと沢山の複雑な情報ですが、それについてはこの先説明します)

 MIDIキーボードの鍵盤は「形だけ」ピアノの鍵盤に似ていますがそれは演奏しやすくするためであり、その構造は単なる「スイッチ」なのです。音そのものを出す仕組みはまったくありません。ただ様々な電気的信号を送るだけです。

 MIDIキーボードの信号は「MIDI OUT」端子から出てパソコンの「MIDI IN」に入ってきます。(実際にはパソコン本体にその端子がないので「MIDI インターフェース」という仲介機材が必要です。)その信号を「MIDIシーケンサ」ソフトが受信し記録します。これは「ワープロ」で文書を作るときPCのキーボードで入力するとそれがワープロソフトによって文字化されて表示されるのと同じです。
 ワープロ・ソフトに記録された情報をプリンタが出力すると紙の文書ができますね。それと同様にMIDIシーケンサから(元はMIDIキーボードから)送られた信号を「音源」という装置が受信するとその情報内容(命令)に応じたを出します。すなわち音を出している張本人」はキーボードでもパソコンでもシーケンサソフトでもなく「音源」なのです。この「音源」が無ければなにをしても音は出ないのです。どんな音(音色)が出てくるかは使う音源に依存します。同じ情報であっても音源が違うと聞こえてくる音もまた違うのです。

 とは言っても「ピアノ」のはずの音が「太鼓」になって出てきたのではもう音楽にならないでしょう。シンセサイザーによっては「動物のなき声」や「銃声」などの擬音がそれぞれの鍵盤に振られているものもありますので、基準を無視した音源で自分の曲を再生すると大変なことになってしまいます。(想像つきますよね?)

 でも「グランドピアノ」の音が「アップライトピアノ」になるくらいなら大きな問題は生じません。ヤマハのピアノで弾いても河合のピアノで弾いても同じようなものですね。
 そこで異なる音源で再生しても「なんとか大きな支障のない程度」の違いに収まるようにと「共通基準」が設けられました。それが「GM(General Midi)」などと呼ばれるものです。

 この「基準」についての詳細は Wikipedia の記事などをご参照ください。
1、
General Midi
2、 GSフォーマット

 シンセサイザー(音源)のメーカーはそれぞれ独自の技術を開発して「より多くの音色数」、「よりよい音」を提供しようとしますが、Standard Midi File(SMF)という形式で書かれたMIDI情報でGMGS基準に沿ったデータを受信したときは「その制限範囲内」の音を出すようになっています。使う音源によって同じピアノでもチープな音しか出ないものもあれば「名器」と呼ばれる有名なピアノの音をサンプリングしたものもあり再生したときの印象は随分違ってきますが、それでも「ピアノの音はピアノ」、「バイオリンはバイオリン」という範囲に納まって再生されます。

 これから皆さんに使っていただくのは Windows のパソコンに最初から入っている「内蔵音源」である「Microsoft GS Wavetable SW Synth」というものです。この講座ではこの音源を使うことを前提にして、実際にMIDIデータそのものも公開しますが、私のパソコンで再生したときに聞こえてくる音と皆さんのパソコンで聞ける音は「まったく同じ」ということになります。そうでないと困ります。

 上の図がこれからみんなで共通のものとして使う音楽制作環境です。
 外付けのMIDIキーボードを持っている方はもちろんそれを使っていただいて結構ですが、「何もない」人であってもこのようにパソコンの中に「音源」が内蔵されていますので、先ほど見た豪華な(?)音楽制作環境と同じことができます。
 この解説では読者対象とする人であれば誰もが必ず持っている Windows 内臓音源(Microsoft GS Wavetable SW Synth)をフリーのMIDIシーケンサDAWソフトによって実際に人間が演奏しているような音にする様々な基本テクニックについても述べます。目指すのは(あなたの歌さえ上手ければ)まるで市販の音楽CDだと友人が思い込むほどの仕上がりです。

 MIDI(ミディ)という言葉の意味は Wikipedia などに解説されていますからここで定義をしようとは思っていません。言葉の定義を知ったところでソフトが使えるようにはなりませんし、読者の皆様が望んでいるのは、「早く曲を作りたい」でしょうから、必要最低限の理解を踏まえたら早く実際にソフトの操作を覚えましょう。操作してみる中で色々実感としてわかってきます。

 今知っておかなければならないこと:
1、MIDIシーケンサは「音そのもの」を扱うソフトではない。音楽の情報をすべて「記号化」して記録するものであり、言うなれば「音楽用ワープロ」のようなものです。ですから「MIDIをwav や mp3 に変換」することはできません「変換ソフト」として出回っているものは、実は変換などしていないのです。MIDIのデータを元に何らかの音源を鳴らし(実際の音にして)、その音を録音しているに過ぎません。そして多くの「変換ソフト」には実にチープ(Windows内臓音源より遥かに音が悪い)な音源が組み込まれており、それを再生した結果を録音するため、MIDIデータを作った本人が「何その変な音?」と驚くほどひどい結果しか得られないのがほとんどなのです。(中にはWindows内臓音源を鳴らしてそれを録音してくれるソフトもありますが、そんなものを使うくらいなら最初から自分でMIDIシーケンサとDAWソフトを使って録音すれば済むことです。)

2、DAWとは「Digital Audio Workstation」の略で、MIDIシーケンサ機能に加えて、マルチトラックテープレコーダー(MTR)と同じく実際の音を録音・編集する機能を持つソフトのことです。これ1つですべての音楽制作はできてしまうのですが、この解説ではMIDIシーケンサとしてはDOMINOを使い、それによって出来たMIDIデータを別の Music Studio Producer に移して使います。理由はあとで述べます。

 つまりMIDIシーケンサで「録」はできません。MIDIシーケンサでも便宜上「録音」という言葉が使われますが、これは「例え」としての用語であり、本当の音を記録する機能はないのです。その代わり「どの楽器で、どの音程を、どのくらいの強さで、どのくらいの長さ鳴らすか」などの「情報」が記録されます。その「記録」のことを分かりやすく「録音」と呼んでいるのです。ここをしっかり理解しておいてください。

 一方DAWソフトオーディオデータを扱えますので、本当に「録音」します。それは本当の音ですから「あとから楽器の差し替え」はできません。ピアノの演奏として録音された音は最低限ピアノのままです。
 しかしDAWはオーディオデータの加工・編集ができますので、「音量調整」、「不要部分のカットやつなぎ合わせ」、「音程の補正」、「エフェクト処理」など通常のテープレコーダーに録音したのでは不可能なことが沢山できるのです。  たとえば曲のある部分に「ワーワー」というコーラスがあるとします。そのメロディが1番、2番、3番とまったく同じフレーズとして現れる場合、1回録音するだけであとはそれをコピー&ペーストして使いまわせます。
 キーや速度の変更もできますので、C major(ハ長調)で歌った録音をD major (ニ長調)に移調したり、テンポを多少変えたりという変更が利きます。でもこの種の変更は場合によっては音質の劣化や聞こえの不自然さにつながりますので、編集内容によっては録音をしなおした方がよいこともあります。


上の図がこれから共通して使うMIDIシーケンサ「DOMINO」の画面です。


 そしてこちらが「DAW」ソフトである「Music Studio Producer」の画面。一見するとよく似ていますが、MIDIシーケンサは「Midiデータ」しか扱えないのに対してDAWは「実際の録音」もするためオーディオトラック画面が含まれており、もっと複雑になっています。

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